第24話 放置ダンジョンで配信?
「それじゃ――このダンジョンの日常を〈配信〉しちゃいましょう! 先ずは皆の様子を撮影ですね」
秋月がスマホを掲げるや、モコとラムは「ワウ!」「ピキィ!」と賛成の声(?)を上げた。
たしかにダンジョンでの様子をライブ配信する冒険者は多い。だが、そこで俺は大事な事実を思い出した。
「……あっ。肝心なことを忘れてた」
「え? 何か問題があるんですか?」
「俺――まだギルドに登録してないんだよ」
ジョブストーンを装備した者は、例外なく冒険者ギルドに届け出る義務がある。登録前にジョブ能力を公的に行使し、報酬を得たら違法行為にもなりかねない。
「登録必須なんですか!?」
「そう。法律で決まってる。未登録のまま配信したら BANどころか罰金コースだぞ」
秋月の肩がガクンと落ちたが、すぐ顔を上げた。
「なら今すぐ登録しに行きましょう! ギルドで手続きすれば配信も堂々とできますよね?」
「ワウワウ!」
「ピキィ~!」
二匹の勢いもあって話は早い。が、俺にはもう一つ懸念があった。
「問題は――モコとラムをどう説明するか、だな」
農民ジョブの俺が、テイマー系でもないのにモンスターを二体連れて行く。警戒されても不思議じゃない。
「そんなの正直に『仲良くなった』って言えばいいんじゃ……」
秋月はあっけらかんと笑うが、俺は腕を組んでうなる。ジョブの不一致を突かれたら言い訳が苦しい。
――そのとき、ネット検索にひっかかった記事が目に留まった。
●“テイム”以外で従順化したモンスターについて。
特定ジョブでなくても〈餌付け〉により従属し同行させた例がある。ただし、許可が下りるかはギルドの判断によるところが大きい。
「……なるほど。餌付けによる前例があるらしい」
俺はしゃがみ込み、二匹と目線を合わせる。
「モコ、ラム。ギルドでは『畑の作物をあげて仲良くなった』ってことにしよう。協力してくれ」
「ワン!」
「ピキッ!」
二匹が力強く(?)敬礼したので、腹を括るしかない。
登録には街の支部ビルへ向かう必要がある。公共交通機関でモンスター連れは目立ちすぎる――と考えていたら、秋月が胸を張った。
「それなら私の車で行きましょう!」
駐車スペースに置かれていたのは年季の入ったオフロード車。ボディは小傷だらけだが、丁寧にワックスが掛けられている。
「渋いな。中古?」
「祖父の形見なんです。免許返納の時に譲ってくれて……」
ハンドルを握る秋月の横顔に少し影が落ちる。が、すぐに表情を引き締めた。
「大切に乗ってます。カーナビは私が付けましたけどね!」
自信満々の笑顔に釣られ、モコは尻尾をブンブン、ラムはボディをぷにぷに震わせて応援している。
俺は助手席に座り、モニターに住所を入力。ナビが経路を読み上げる。
『目的地まで約四十分です』
「では――出発!」
クラッチを踏み込み、ギアが滑らかに入る。旧式マニュアル車とは思えないほど安定した発進だった。秋月の腕は確かだ。
窓の外で風が唸り、山道を抜ける頃には舗装路。緑のトンネルを抜けて街並みが広がり、ビル群が目前に迫る。
登録が済めば、合法的にダンジョンライフ&畑づくりを配信できる。――資金調達の道が、少しずつ開けてきた気がした。
「よし、あとは冒険者ギルドで登録するだけだな」
「はい! モコちゃん、ラムちゃん、一緒に頑張りましょう!」
「ワン!」
「ピキィ~!」
オフロード車はエンジン音を弾ませ、目的地へと走り抜けた。
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