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親友に裏切られ婚約者をとられ仕事も住む家も失った俺、自暴自棄になり放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました  作者: 空地 大乃
第二章 冒険者登録編

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第23話 過去を話した

「――ひど過ぎます! 浮気したうえに仕事のミスを風間さんに擦りつけるなんて!」


 俺の話が終わると同時に、秋月は拳を握りしめ食事用に設置していたテーブルを叩いた。


「まぁ、俺にも油断はあったさ。今思えば証拠を残さなかったのが甘かった」

「いえ、甘いのは会社とその二人です! 許せないっ」

「ワウワウ!」

「ピキィ~!」


 モコは毛を逆立てて尻尾で地面を叩き、ラムはライトブルーの光をポッと灯して怒りを表現してくれる。――ラムって体が光るんだな。

 それにしても、怒ってくれる仲間がいる──それだけで報われるものだ。


「でもほら、悪いことばかりじゃなかったさ」


 俺は腕についたソケットを軽く叩いた。瑠璃色のジョブストーンが淡く輝く。


「農民ジョブのおかげで“特殊な野菜”を育てるメドが立った。あの栄養たっぷりの土壌なら、良いものが作れる」

「そんなことが出来るなんて、ジョブストーンってすごいものなんですね」


 秋月が目を丸くする。ジョブストーンについてよく知らないらしいので、効果をかいつまんで説明した。


「なるほど。このジョブストーンがあれば特殊な力が身につくんですね」

「まぁ“特殊な職業”に就く感じだな。スキルを覚えれば色々できる」


 ジョブは肉体にも影響する不思議なシステムだ。


「そして風間さんが覚えたジョブが農民、と」

「あぁ。農民ジョブのおかげで“特殊な野菜”を育てるメドが立った。ここの土は魔力と養分が桁違いだからな」

「販売できれば山の固定費をまかなえますね!」


 秋月はスマホを開き、農産物の直販サイトやクラウドファンディングのページを次々とスクロールしたが、すぐに眉間へ深い皺を刻んだ。


「……え? “加工・流通前に国家登録が必要”?」


 俺もタブレットで同じ文書を読み込む。


【特殊植物等取引管理法】

魔力・特殊成分を含む農産物は国またはギルドの検査・許認可を要し、個人販売は禁止。

違反した場合は没収および罰金二百万円以下。


「要するに、売るにはギルドへの申請や検査証が必須。検査費だけで十万円単位か……」

「許可が下りるまでも時間が掛かりそうです。これでは初年度から販売は難しいですね……」


 ため息が重なる。八十万円のダンジョン税と固定資産税を合わせた百五十万円は、簡単に消える数字ではない。


「資金調達の前倒しが必要だな。だけど山を手放す気はないんだろ?」

 秋月は拳を握りしめ、力強く頷く。


「はい! お爺ちゃんの山、絶対に守りたいです」

「そうなると別の手段が必要か――」


 そこで俺たちはまた頭を抱える。モコやラムも唸るように鳴いて一緒に悩んでくれていた。


「そうだ! ダンジョンの中で配信するのはどうでしょうか? これなら規約に触れませんよね」


 秋月の案に俺もハッとした。確かに冒険者が配信しているチャンネルは多い。


「見てください! ライフスタイル系でも十万、二十万再生はざらにあります! あ、でも危険行為やスキル乱用でBANされている人も多い」

「過激配信者の末路だな。ジョブの力は外で好き放題使えない」


 ジョブ能力は使いようによっては危険だ。だから法律で厳しく制限されている。


「でも、ここはダンジョンだし畑仕事なら問題ありません」

「あぁ、安全面もクリアだ」

「それなら、ここでの生活を配信したいです! モコちゃんもラムちゃんも可愛いし、きっと人気が出ます!」


「えぇ!」

「ワウッ!?」

「ピキィ!?」


 俺の驚きに合わせるように、モコとラムも飛び上がった。思わぬ方向へ話が転がり始めた。

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