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親友に裏切られ婚約者をとられ仕事も住む家も失った俺、自暴自棄になり放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました  作者: 空地 大乃
第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編

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第172話 意外な一面

「よし、スキルの効果範囲も広がったし、畑の拡張するか」


 人参がしっかり育ってくれていたことで、他の作物にも手応えを感じていた。

 特に、まだ芽を出し始めたばかりのトマトには、今後の成長が楽しみだった。


「今度はミニトマトとか、他の作物にも挑戦してみたいな」


 そんなことを考えながら、俺は皆に向かって声をかけると、モンスターたちが一斉に顔を上げた。


「ワンッ!」

「ピキィ~♪」

「モグモグ♪」

「ゴブゥ♪」

「マァ~♪」


 皆もやる気満々だ。畑の充実は、俺たちの生活にも直結するからな。とはいえ、拡張となると資材や道具も追加で欲しい。


「ってことで、ホームセンターに行こうと思うんだけど」

「うん、それなら車をだすよ! みんな乗ってね」


 こうして、秋月の運転で俺たちはホームセンターを目指すことにした。


 助手席に俺。後部座席にはモコたちが所狭しと乗り込み、車内はまるでちょっとした遠足気分だ。


「マァ~?」

「モグッ? モグゥ~」

「ほらほら、シートベルトはこう掛けるんだって」


 モグがシートベルトに絡まって藻掻いていたので直してあげた。全く仕方ないな。


 そんなやりとりに秋月がクスクスと笑う。


「ふふ、みんなほんと仲良しだね」

「ハハ、まぁな。皆も車に乗るのももう慣れたもんだ」


 しばらく走ると、見覚えのある建物が見えてきた。前にも訪れたホームセンターだ。


 中に入ると、道具や資材の棚がずらりと並ぶ。DIY好きにはたまらない光景だ。


「おお……木材のコーナー、前より品揃えが増えてないか?」

「耕作用のフェンスとかも欲しいかもね」


 俺と秋月があれこれ見ていると、ふと隣の通路に見覚えのある顔が。


「……あれ、香川さん?」


 そこには木材の束を抱えた香川 香がいた。


「あら……風間くん? また来てたのね」


 彼女は作業着風のカジュアルな服装で、肩には布製のエプロンを下げていた。


「ひょっとして……DIY、お好きなんですか?」


 俺の問いに、香川は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに少し照れたように笑った。


「ええ、まぁ。変かしら、こういうの」

「そんなことないですよ! すごく素敵です!」


 秋月がすかさず言葉を添える。香川の表情がやわらかくなった。


「実は私もDIYに興味があったんです」

「そうだったんだな。でも、こういうところに来ると何だかムズムズしてくるよな」


 秋月の発言に俺も乗っかった。俺もこの手の工作は結構好きなんだよな。


「じゃあ、よかったら一緒に何か作ってみる? このお店、作業スペースもあるから」

「マジすか。それなら是非!」


 俺たちは香川さんに案内されて、ホームセンター内にあるDIY作業スペースへ移動した。


 モコたちも大はしゃぎで、モグは小さな木片を持って「モグ~!」と得意げな表情。


 作業スペースでは、香川の手際が光った。釘の打ち方も、木材の選び方も的確で、その姿に思わず見惚れる。


「香川さん、すごい……」

「黙々とやれるから、性に合ってるのよ。考え事したいときとか、特にね」


 そんな言葉に、彼女の意外な一面を見た気がした。


「本当に手慣れてるな。随分とやられてるんですね」

「そうね。兄が好きだった(・・・・・)のよ。その影響かしらね」


 香川さんがそう呟いた。


「お兄さんがいたんですね」

「……そうね。それよりも、それ、もっとここをこうした方がいいわよ」


 香川さんに指摘され、俺も手直しする。なんとなくはぐらかされたような? それに、『だった』と過去形なのが気になるところだったけど、デリケートな問題かも知れないし深くは聞かないほうがいいのかもな――。


 その後、俺たちは木製のプランターや、モンスターたちの小さなスツールを作って楽しんだ。


「ほら、モコ用のベンチ、完成~」

「ワンッ!」


 モコがちょこんと座って尻尾を振る。


「ふふ、似合ってるよモコちゃん」


 秋月が笑顔でカメラを構え、撮影しながら「これは絶対配信でウケるね」と呟いた。


 一方でゴブはこの短時間で、立派なテーブルとイスを作り上げ「ゴブゥ~」と満足げな表情で眺めていた。手先が器用だとは思っていたけど、ここまでとはなぁ。


 作業がひと段落したあと、香川さんがふと尋ねてきた。


「そういえば、今回は何を買いに来てたの?」

「畑の拡張に使う資材を探しにね。ちょうどスキルで効果範囲が広がったから、育てる作物も増やそうと思ってたんだ」

「そういえばダンジョンで畑を作っているんだったわね。そうね、今の時期なら――トマトやきゅうり、とうもろこしなんかも育てやすいわよ」


 香川さんが提案してくれた。トマトは丁度他の種類を育てようと思っていたところだ。


「うん。それいいな。モコたちも喜びそうだし」

「マァ~♪」

「モグゥ♪」

「ワンッ!」

「ゴブゥ!」

「ピキィ!」


 そんなふうに盛り上がると、秋月もにっこりと頷いた。


「育てる種類が増えれば撮影映えしそうだし、料理にも使えるね。お弁当とかにしてもいいかも♪」


 確かにな。そこで俺たちは新しい作物の種や苗を購入。買い物とものづくりを満喫した事で、お開きとなる。


「香川さん。今日はお付き合い頂きありがとうございました」

「そんなかしこまらなくてもいいわよ。今日はプライベートな時間なわけだし」

 

 そう言って香川さんが苦笑した。その後は香川さんとも別れの挨拶を済まし、皆で車に荷物を詰め込んで帰路につくことに。


 それにしても、思いがけず香川さんとも遭遇し、少し距離が縮まった気がするな。


 充実した一日になったし、今日は来てよかったよ――

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