第132話 ダンジョンに戻った翌朝にて
俺たちは秋月の車と、楓が運転する車に分乗して帰路についた。すでに夜も遅かったので、送ってもらえて本当に助かった。
帰宅後は秋月や紅葉に「お休み」を伝え、ダンジョンへ戻った途端、俺たちはあっという間に眠りに落ちた。やっぱり、昨日の事件で相当疲れていたんだろう。
外の鳥の声で目を覚ますと、朝の光が差し込むなか、モコ、ゴブ、マール、ラムが俺に抱きつくような形で寝ていた。なかでも新入りのゴブもすっかり馴染んでいて、その寝顔を見てると、本当にゴブリンか?って思うほど可愛い。
さて――昨日は帰ってすぐ寝たから、みんな腹が減ってるはず。朝メシの支度をするか。そう考え、起こさないようにそっと抜け出した。
「そうだ。畑も見ておかなきゃな」
水やりをする前に、軽く様子をチェックすることにした。ダンジョン内に作った畑は今のところ順調に育ってるけど、何があるかわからないからな。
ところが、パッと見には問題なさそうだった畑の近くで、土がモコモコと盛り上がって動き出し、そのまま畑へ近づいていった。かと思うと、育てていた芽のいくつかが土の中に引きずり込まれた。
おいおい、泥棒か? でも人間じゃなさそうだよなぁ。
近くにあった鍬を握りしめながら見守っていると、土の塊がそのまま離れようとする気配がある。やむを得ず、俺は昨日覚えたスキルを使った。
「天地返し!」
威力を抑え目にしつつ、土ごと相手を吹き飛ばす。すると土の中から一匹のモグラ――いや、モグラっぽいモンスターが空中に飛び出してきて、地面にゴロンと転がった。
「モグゥ!?」
地面に落ちたソイツは、目を回して気絶している。普通のモグラにしては大きいが、モンスターとしては小柄な部類かもしれない。少なくとも凶暴な感じではなさそうだ。
それにしてもこいつが畑泥棒の正体か……さて、どうするかな。
「ワン?」
「ゴブゥ?」
「ピキィ?」
「マァ?」
悩んでいると、起き出したモコたちが集まってきた。そろってモグラを覗きこんでる。
「こいつ、畑の芽を抜いて持っていこうとしてたんだ。それで捕まえたんだけど……」
俺が簡単に説明していると、モグラがうっすらと目を開け、びくっと身をすくませた。つぶらな瞳は愛嬌があるけど、こちらを見てすぐに逃げようとする。
「モグぅ~!?」
慌てて地面を掘りはじめたが、力が入らないのか、すぐにバタリと倒れ込んでしまった。
「お、おい大丈夫か!」
「ワン!」
「ゴブゥ!」
「ピキィ!」
「マァ!」
急いで駆け寄ると、モグラは苦しそうにお腹を押さえている。そして――
――グゥ~。
腹の音がはっきり聞こえた。なんだ、こいつ、腹が減っていただけなのか……。思わぬかたちで出会ったモグラだけど、さて、この先どうしたもんかな――。




