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親友に裏切られ婚約者をとられ仕事も住む家も失った俺、自暴自棄になり放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました  作者: 空地 大乃
第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編

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第113話 深い穴の底

 下へ下へと俺たちは落下していた。一体どこまで続くのかわからない。下には先に落ちていたホブゴブリンの巨体も見えた。その後で紅葉とゴブの姿。どうやら崩落に巻き込まれたのはホブゴブリン以外では俺と紅葉とゴブだけだったようだ。そしてお互い何とか手を放すまいと必死だが、この高さでは正直絶望的だ。


 このままでは地面に叩きつけられて終わりだ。一体どうしたらと思った直後、ホブゴブリンが何かに呑まれた。それはゼリー状の何かだった。いやこれはまさか、スライム?

 

 そう思った直後俺たちはスライムと思われるその表面に落下し反動でボヨンっと跳ねた。


「キャッ!」

「ゴブッ!」

「わわっ!」


 弾かれた俺たちはそのまま地面に落下。だが痛みはない。あのスライムが衝撃を吸収してくれたのか。


「大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫だよ」

「ゴブゥ――」


 紅葉とゴブが無事だったことに安堵する。そしてスライムの方を見たが、巨大な半透明の体の中にホブゴブリンがそのまま収まっていて体内では大きな眼球がギョロギョロと蠢いていた。


 ヤバいな。ラムと違ってこいつは人に懐きそうに思えない。今はホブゴブリンという餌にありつけてこちらに興味がなさそうだが、あれを消化した後はどうなるかわからないぞ。


「出来るだけそ~っと、この場所を離れるんだ――」

「う、うん」

「ゴブゥ……」


 俺たちは巨大なスライムの注意が向かないよう出来るだけ静かにその場を離れた。幸い巨大なスライムが俺たちを襲ってくることはなかったが、この場所がヤバい場所なのは伝わった。


 少なくともダンジョンに入った直後はそこまでヤバそうなモンスターは出てこなかった。なんならほぼゴブリンだった。


 だけどよく考えてみたらここはダンジョンなのだし、他にもモンスターがいてもおかしくはない。


「一体どこまで落ちたんだろうな……」


 天井を見ながら呟く。このあたりは天井が高く横穴も広い。だからこそあれだけの巨大なスライムが生息しているんだろうが、それはつまりあのレベルのモンスターが他にも彷徨っているかも知れないということだ。


 しかも今は俺と紅葉、そしてゴブだけだ。怪我した時に治してくれる相手もいない。


 わりと絶望的な状況だが、紅葉やゴブがいる前でそんな態度を見せるわけにはいかないな。


「大丈夫だ。俺がついているからな。とにかく上を目指そう」

「う、うん。そうだね」

「ゴブッ!」


 少しは紅葉の不安が取り除かれただろうか。とは言え、此処から先は出来るだけ戦闘は避けていきたいな。


「ちょっと見てみるか……」

  

 俺は近くの壁でステータスを表示してみた。ホブゴブリンとも戦ったし何か変更はないだろうか。


ジョブ名:農民

装備者:風間 晴彦

ジョブレベル:2

戦闘力:D

魔法力:D

信仰力:C

生産力:B

成長力:C

スキル

土壌改良(10㎡)、土鑑定、耕作力向上(小)、栽培力向上(小)、農民用中級鍬術、鍬強化、土穴砕、天耕撃、土竜突、天地返し


 

 見たところジョブレベルなどに変化はないが、スキルの鍬術が中級に上がっていた。更に天地返しという新しい技も覚えていた。


 ホブゴブリンとの戦闘がいい経験になったということか。後はこの技がどれだけ使えるかではある。とは言え無駄な戦闘は避けたいから慎重に進んでいかないとな――

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