36,情報
前回の投稿は“ 06/25 12:00 ”です。
バザールに装備類と、「エンチャントファイア」のスクロールを売り出し、一度ログアウトすると、ログイン時には装備品類が売れていた。
「エンチャントファイア」のスクロールは少し高価すぎたのだろうか。
周りの売店を覗いた際に、ランダムスクロール[R]から出たであろうスクロール類を2000Gで売り出していたので、私もそれに倣って2000Gで店に並べたのだが、手に取ってくれる人はいないようだ。
私には使えないアイテムなので、しばらくはこの値段で販売しておいて、あまりにも売れなかった時は値段を下げようと思う。
「スカルロッド」と「銅の鎧」はそれぞれ900Gで販売した。こちらも周りの売店を参考にして付けた値段だったが、イベント報酬の1000Gに収まる範囲だからか、双方ともに売れてくれた。
そのため、私が今持っているお金は合計で、2800G。
ポーションは現在8個持っており、そこまで急を要しないので、何かいいものが無いかと物色することに。
売店を見て回ると、ちらほらランダムアイテムボックスから出たであろうアイテムを売りに出している店がある。やはり、アイテムボックス産のアイテムはバザールで売りに出せるようだ。
あいにく、私がゲットしたアイテムは利用価値の高いものだったため、売店には出さなかったが、それは他のプレイヤーも同じようで、みたところ、あまりいいアイテムは置いていないように見える。
人によっては、自分のスキルでできることとアイテムの内容が被ってしまい、アイテムを売りに出す、なんてパターンが無いかと考えていたが、そのようなアイテムは見当たらない。
それならばと思い、今度はスクロールを探しに行くと、攻撃魔法を扱う魔物が、売りに出しているのか、私が使ってみたいと思える魔法が沢山売りに出されていた。
火属性の攻撃魔法や、周囲を索敵する魔法といった様々な魔法が売られているが、それらはおそらく初級の魔法ではない。このような、段階の進んだ魔法が売られているのもまた、レア度[R]たる所以なのだと感じた。
値段はどれも2000Gほどと、私のように、皆、周りの誰かの値段を参考にして付けたことが察せられる。
そのため、私は買おうと思っても1枚のスクロールしか買えない。まだ、買うと決めたわけでは無いが、できるだけ使い道があるものを買いたい。
売店を周り、しばらく悩んだ末、私は一枚のスクロールを購入することに決める。
魔法の名前は「ロックウォール」。土属性の魔法で、地面から岩の壁を作り出せる魔法だ。
攻撃型ではなく、防御型の魔法を選んだ理由は、こちらの方が最大火力を出せると思ったから。
前々から思っていたが、私の攻撃は結局、体重を活かしたものが一番強い。だからこそ、高台のような高所から落下する攻撃がしてみたいと考えていたのだが、重くとろい体ではそのような場所に行けることがなかった。
しかし、このロックウォールを使えばそれが解決できるかもしれない。壁を使って高所に行くもよければ、そのまま落下することもできる。攻撃魔法を飛ばしてみたいと言う思いもあるが、ミニゴーレムで、ある程度遠距離攻撃はできる。それであれば、必殺の最大火力を持っておくというのが、最も今後に活きるのではと考えた。
2000Gを使用し、スクロールを購入する。
一度限りの必殺技。だからこそ惜しみなく使おう。
購入したスクロールをインベントリに仕舞い、余ったお金でポーションを一つだけ補充すると、私はバザールを閉じ、今後の予定について考える。
とりあえず、岩場を抜けてさらに西の方へ進んで行こうと思う。
岩場でやり残したことと言えば、夜の探索をもっと細かくすることだけれど、流石に拠点以上の発見は無いだろう、クエストの報酬としては十分だと思う。
岩場を出るとなると、この拠点もしばらく使えないということになる。
集落や新しい拠点を見つけない限り、バザールも使えないのか・・・
ポーションの残量が気になるところだが、あいにく私には「エスケープ」のスクロールがある。危なくなったら逃げればいいので、少しはポーションの節約にもなるだろう。
ただ、拠点のことを考えると、できるだけゴーレムが居そうな場所に進んで行った方がいいのだろうか。
今までの経験からして、そんなに簡単に拠点が見つかるとも思えないけど、可能性を残しておくという点では、生息地らしきところを進んだ方が、生存率があがりそうだ。まぁ、固執しすぎるのもよくないと思うし、できれば、ぐらいの感覚でいいのかもしれないが。
また、イベントで人間陣営と戦ったことから、そろそろ人間陣営とかち合いそうな気がしている。
魔物陣営と人間陣営の初期リスポーン地点はかなり離されたところに設定されており、早々戦闘にはならないよう出来ている。
私自身、ゲーム開始から、そこまで遠くに進んではいないため、まだまだ、人間の陣地とは距離がありそうだとは思っている。だだ、わざわざイベントで顔合わせをしたのだから、何らかの要因で今後も接触していくことは予想できる。
それに、魔王と勇者についても気になる。
私たちはゲームプレイをする際に、魔物として、人間陣営と争うということしか聞かされておらず、私たちの頂点に魔王がいることなど知らなかった。
全く予想していなかったと言えばうそになるが、突如現れた上司の存在に困惑しないわけでは無い。とりわけ、あれ以降、魔王から何のアクションもないことに困っている。
漠然とした、“人間陣営との争い”という大きな目標を私たちの陣営は持っているのだが、そこに至るまでのロードマップ的道しるべは、偶発的に起こる神託やクエストぐらいしか存在しない。
何か魔王様から指示があれば違うんだけれど、とも思うが、イベント終了直後からあれやれこれやれと言われても、しょうがないのかもしれない。さすがに今後接触が一切ないということは無いと思うので、とりあえずは進むことにして、人間陣営との争いはその時その時で対応していけばいい。MMO的に考えても、運営側からあーだこーだ言うのは避けたいのかもしれないし、今後は私たち自身が人間側と火種を作っていく必要があるのかもしれない。
自発的に人間側にアクションを起こすとなると、今度は勇者について知りたくなってくる。
今後のイベントやゲームプレイにおいて、勇者は魔王同様絶対に絡んでくることになるだろう。あの圧倒的な強さが、常時振るわれると考えると対策は必至、検証班も情報を欲しがっていたので、どこかで彼について知る機会が欲しい。
人間陣営にしたってそうだ。掲示板を閲覧できなかったり、情報統制がされていることから、私たちは人間陣営が何人でパーティーを組んでいるのかさえ知らなかった。
人間陣営と勇者の情報。
これらをどこかで手に入れる機会があれば、自然とゲームは動いていくはず。というか、あのイベントで魔王と勇者が出てきたのは、両陣営に敵の存在を意識させる役割もあったのではないだろうか。
今までは魔物を狩ったり、クエストをやったりと、結構のほほんとやってきたが、これからは、自分を強化するだけでなく、敵のことも知っていかなければならない。
攻略組のように、私よりもずっと先に進んでいるプレイヤーからも、人間陣営らしき姿を見たという報告は無いので、人間の陣地はまだ先になるかもしれないが、この世界のマップがどのような構造になっているかはわからないため、誰でも人間と接敵する機会はある。
そうなるとやはり、今後の目標は、少しでも前に進むこと。
それで人間陣営とかち合うもよし、レベルが上がって強化されるもよしだ。
一周回って西に向かう理由付けができた私は、岩場の拠点に別れを告げる。
なんだか、少しずつ魔物陣営としての自覚が芽生えてきたなぁ、と苦笑しながら、私はさらに先へと旅立っていった。
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