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35,WE1 『迷宮行脚』 ⑦

前回の投稿は“ 06/24 14:00 ”です。

 『おめでとうございます!!ダンジョンを防衛しました!!!』


 3日間続いたイベントが終了し、メッセージウィンドウとアナウンスが脳内に流れる。


 色々なことが起きたが、私たち魔物陣営はダンジョンを防衛することに成功した。

 攻略度は結局69%と、80%以上に達することは無く、完全にとは言えないが、ダンジョンを防衛したということで、報酬を受け取った。


 勇者を名乗る人物が現れ、一瞬のうちに倒されたときには、ボスがまずい!!と思い、すぐさまイベントページを開き、攻略度の増減を固唾をのんで見守っていたが、結局、ボスが倒されたかのような大きな変動は無かった。



 中ボスだけ倒して、どこかに行った・・・?



 理由はわからないが、あの勇者はボスと戦うことなく、どこかへと去っていったようだ。

 私の考えを読んでいるかのように振る舞い、圧倒的な力を行使していったあの人間は何だったのだろうか。おそらくプレイヤーではないのだろうが、あまりにも飄々としているところから現代人らしさも感じた。



 NPCだとしたら、現れた原因はこっちの陣営に魔王が現れたから?

 勇者お披露目を兼ねたイベント戦だった?



 独りで考えていてもわからないので、他にも情報はないかと、掲示板を調べると、徘徊型のプレイヤーから、とてつもなく強い金髪碧眼が来ていると書き込みがあった。

 しかし、それはただ勇者に討伐されただけであり、彼の名乗りを聞いていたのは私だけだったようなので、彼の目的含め、掲示板で共有したところ、魔王と対になる存在が現れたと、スレ内は盛り上がった。


 スレ内で、なぜイベント中に勇者が現れたのかも議論し合ったが、「お披露目したかった」以上の理由を見つけることはできなかった。結局、攻略度に影響を与えることもなく、いなくなってしまったのだからそれ以上でも、それ以下でもないのかもしれない。


 ただ、気になるのは圧倒的な勇者の強さだ。

 正直、何をされたのかもわからなかった、掲示板内ではおそらくイベント用の強制即死攻撃だと結論付けられていたが、発生が全く見えなかったので、イベント用の攻撃でなければ正直理不尽が過ぎる。まぁ、強すぎて逆にワクワクしたところもなくはないけど。いつしか私もあんな攻撃ができるようになるのだろうか。



 ともかく、イベントは無事(?)終了し、報酬も手に入れることが出来た。

 私たち魔物陣営への報酬は、攻略度(防衛度)によって異なり、今回は69%ということで報酬の量としては普通だ。

 最大の報酬は20%未満での防衛によって手に入れることが出来るが、イベントの様子を見るに20%未満の防衛は、ほぼ不可能だろう。なので、実質最高報酬だ。喜んで受け取ろう。


 報酬の内容は



 ・1000G

 ・ポーション(小)×3

 ・ランダムスクロール[R]×2

 ・ランダム装備引換券[R]×2

 ・ランダムアイテムボックス[R]×2

 ・称号『突発魔王軍!』(WE1参加証)

 ・集合写真×1

 ・レベルアップ経験値[5]



 という内容。

 集合写真、経験値以外は参加するだけでもらえる。

 かなりおいしいイベントだった。


 プレイヤーほぼ全員に1000Gが配られたことによって、バザールが賑わいそうだなと思いながら、私は商品となりうる「ランダム装備引換券[R]」から使用する。



 ・スカルロッド×1(魔力+7)

 ・銅の鎧×1(防御+6)



 私の引換券からは以上の二点が手に入った。

 [R]というのは“レア”という意味だろうが、私が結構な数を狩って手に入れた「マンティスクロ―(+5)」よりも上昇値が大きいことから、イベント外ではなかなか手に入りずらい装備なのではないだろうか。

 特に、この「銅の鎧」には見覚えがある。動く銅鎧(ブロンズ・アーマー)が装備していた、というか操っていたものだ。もしかすると、中ボス部屋でランダムに配置されていた魔物の装備が手に入るのかもしれない。売るには少し忍びないが、お金に換えて私の血肉となってもらおう。


 今回、一緒に戦った魔物たちが共に写っている「集合写真」に礼を言いながら、次は「ランダムアイテムボックス[R]」を使用する。



 ・「魔法の羅針盤」×1

 ・「ミニボム」×1



 このようなアイテムが手に入った。


 まず、「魔法の羅針盤」は使用することで、一度手に入れたアイテムがある方向を指し示してくれるらしい。下手すると、もう一度「魔力の残滓」を手に入れることが出来るかもしれないが、何の意味があるかわからないし、かなり有用なアイテムであるため、使用法は慎重に検討したいと考えている。


 もう一つは「ミニボム」。使用することで、敵に固定ダメージ30を与えられるようだ。私の天敵みたいなアイテムを引いてしまった。

 丸い私の手でどうやって投げるんだ、と思ったが、ゲームシステム上、一応投げつけることは可能らしい。装備等の差はあれど、アイテムの使用に種族間の差は無いのかもしれない。


 こちらも[R]のアイテムボックスということで、今までと違い、素材以外に利用価値のあるアイテムを手にいれることが出来た。また、これらは、何となくバザールでも売れそうな気配がするので、後で試しにバザールを覗いて面白そうなアイテムがあったら買ってみたいと思う。


 そして、最後に使用するのは、お待ちかねの「ランダムスクロール[R]」。何の魔法が出ようと、私が使える初めての魔法だ。



 ・スクロール【エンチャントファイア】×1

 ・スクロール【エスケープ】×1



 おぉ、こちらも[R]ということで、なかなかいいスクロールが出たように見える。


「エンチャントファイア」は武器に一定時間火属性を付与する魔法だ。属性の無い武器を制限付きとはいえ、火属性にできるので、弱点持ちの相手に対して有効な一手となるだろう。

 私自身、属性攻撃など一度もしたことが無いので、うれしい気持ちになったが、私の拳は武器判定ではない。涙を流しながらバザールに出すことを決めた。


「エスケープ」は戦闘時のみ使用できる魔法で、戦闘開始以前に通過した、最も近いリスポーン地点にワープできるとのこと。

 これは間違いなく、あたりだ。ほぼ復活薬を一つ貰ったに等しい。場合によっては、少し危険地帯でも無茶な探索が出来そうだ。バザールには出さず、自分の身が危なくなったら使用しよう。



 ランダム系の引換券から出たアイテム類を、私は満足げにインベントリに仕舞い込む。

 装備品と「エンチャントファイア」が使用不可なため、金銭に変わってしまうが、それはつまり、バザールに出品される私の欲しいアイテムを自由に買えるということ。


 他のプレイヤーよりもむしろいい買い物ができる、とゴーレムの思わぬ利点にほくそ笑むと、私は最後に残された「レベルアップ経験値[5]」を使用し、レベルを一瞬で5上昇させる。



 ――――――――――――――――



 種族:ゴーレムリーダー Lv18



 HP:109/109 


 MP:13/13



 力 :42


 魔力:9


 防御:116


 魔防:50


 速 :5



 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯


 <通常スキル>


「転がり」:Lv1  「採掘」:Lv2



 <種族スキル>


「火耐性」:Lv2  「風耐性」:Lv2


「斬撃耐性」:Lv2 「水脆弱」:Lv5


「ゴーレム生成」:Lv1(60/60)



 <パッシブスキル>


「体重」:Lv1  「飲食不要」


「不思議な瞳」



 <称号>


「こだわりのPK」


「ジャイアントキリング」


「突発魔王軍!(WE1)」


 ――――――――――――――――


 「レベルアップ経験値」は倒した人間から得られた経験値が纏まっていただけの物。私はレベル5分集まっていたということだろう。イベント最終日あたりは散々戦っていたし、むしろこんなものかと驚いた。


 レベルが上がった結果としては、特に変わりは無いように思える。

 称号がきちんと反映されているのみで、ステータスの伸びもいつもと変わらない。

 もしかすると、噂の新スキルが・・・とも思っていたが、そんなことは無く、ほんとにただステータスが上昇しただけのレベルアップだった。


 強くなってはいるので、別段文句はないが、新スキルを期待していたので、少しばかり落胆する。やはり、レベル以外にも条件があるのだろうか。


 また、ちょっと気になって、掲示板をのぞいてみたところ、流石にLv20で再び進化することはなさそうだ。ゴーレムリーダーとしての戦闘経験はかなりのものになったが、流石にもう進化となるとあまりにも早い。



 いつになるかはわからないが、また、進化することになるのだろうと、未来の姿を想像し、ワクワクした気持ちでステータスを閉じると、今回の戦利品を整理するため、バザールに出品の準備をし始めた。





 ―――――――――――――――――――――――




 勇者より、親愛なる冒険者諸君へ。



 今日は、君たちの初仕事に横やりを入れてすまなかった。

 見守るように言われていたが、流石に間に合わなそうだったので、手を出してしまった。本当に申し訳ないと思っているよ。


 ただ、実際のところ、あのオオトカゲを倒したわけでは無いから許してほしい。


 わざわざ出向いたのに、迷宮に巣喰う魔物を倒し、ダンジョンを消滅させなかった理由は、あのダンジョンの奥地に“魔王”の力が色濃く渦巻いていたからだ。

 もちろん、奴におびえて逃げ出したわけでは無い。君たちはまだ、弱い。そんな君たちの前で、奴と戦うわけにはいかないからね。

 幸い、あの場所に魔王はいないようだったけれど、刺激しないよう退散させてもらったよ。君たちのおかげで、ダンジョンは十分抑制されていたみたいだしね。



 さて、本題だが、君たちは“古都”を知っているか?

 数百年前に滅んだ、小さな国の亡骸なのだが、私たちの主人はこの“古都”こそが、魔王が狙う次なるダンジョンの発生地であると予言した。


 そこで君たちには一刻も早く“古都”を目指し、先に占領、整備することによって、魔王に対する牽制を行ってほしい。

 魔王の配下たちが“古都”の捜索をしているかは定かではないが、私たちが先に占領すれば、奴らも自由に動けない。


 無事、占領することが出来れば、ダンジョンを作ることはできない。が、“古都”を奪還すべく、魔物の軍勢が押し寄せてくるだろう。

 しかし、私たちの力を合わせれば、そんな軍勢恐るるに足らない。激しい戦闘にはなるだろうが、私も参戦するので安心してほしい。


 とにかく、まずは“古都”だ。

 奴らより先に“古都”を見つけ出し、魔王の計画を阻止してほしい。



 私たちの力で、人類の未来を守ろう。



 …………



 人間陣営が80%以上を達成すると、最後に勇者が現れ、魔王の力によって復活した虹晶蜥蜴ドラコ・イリデッセンスを討伐してイベント終了となります。


 人間陣営が20%未満を達成すると、最後に勇者が現れ、ボスを倒し、プレイヤーに報酬は与えられないものの、ダンジョンは抑制されます。(各地で魔物の大発生&強敵遭遇率上昇は回避不能)


 80%以上達成した場合のみ、ダンジョンが消滅。人間陣営がこのエリアに到達した際、キャンプや店といった自陣営内で建設することが出来る建物を作ることが出来るようになり、駐屯地化することが出来ます。

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『見守るように言われていたが、流石に間に合わなそうだったので、手を出してしまった』 これって「人類側のプレイヤーが弱すぎるので急遽テコ入れしました」って運営からのメッセージと取れるので…
[一言] よかったよかった、次回は魔物攻め側可能性大か、期待できますね!
[一言] 戦闘において有効な攻撃を行うためには相手の三倍の兵力が必要となる『攻撃三倍の法則』があるから、次回は冒険者側がかなり有利な状態で始まりそう。
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