33,WE1 『迷宮行脚』 ⑤
前回の投稿は“ 06/22 18:00 ”です。
総合評価 10,000達成しました。皆様の応援のおかげです、本当にありがとうございます。
お祝いで何かやりたいと考えていますが、何も思いつかなかった場合、いただいている感想に一つ一つ答えていく配信をしようかと思っています。
ロックドラコの岩魔法が盾持ちの頭に直撃し、それがとどめの一撃となったのか、光粒子となって消えていく。
人間陣営のパーティーを全滅させたことにより、倒されていた、動く銅鎧が復活。むき出しの刀身を鞘に納めて待機するその姿を見て、私は懺悔するようにため息を付いた。
水魔法使いを擁したパーティーとの戦いは、結果的には勝利で終わったが、課題も多く見つかる戦いだった。
アースディガーの「奇襲」と、私のゴーレム投げによって、水魔法使いを倒した後は、特に苦戦することなく、残った敵を倒すことが出来たが、それまでの動きは、あまり褒められたものでは無かった。特に、火属性の魔法で、動く銅鎧が倒されたときは、正直かなり焦った。
戦闘開始当初は、魔法使いらしき人間が2人いたため、もしかすると水魔法があるかもしれない、と、ミニゴーレムを出していなかったが、私めがけて、本当に水魔法が飛んできた時はかなり慌てた。
何とか、ミニゴーレムを盾にして事なきを得たが、一撃で倒されるミニゴーレムを見て、肝を冷やした。過去に、クエストで戦ったスケルトンの魔法攻撃を耐え、そこからレベルも上がっているというのに、ミニゴーレムはいとも容易く散らされた。この時点で、私の中で水魔法使いを最優先と位置づけるには十分だった。
水魔法使いを警戒して余計にミニゴーレムが出せなくなった私は、どんどん視野が狭くなっていった。
数の上でこちらの有利を取り、さらにミニゴーレムを加えることで、より優勢にするという流れを想定していたが、その作戦が瓦解し、ことを急いてしまった。
ロック・ワームで隙を作り、水魔法を等倍で受けることのできる動く銅鎧に、水魔法使いを攻めさせたところ、横から火属性の魔法が飛んできて、耐性のない動く銅鎧がやられてしまった。水魔法使いを意識するあまり、私の頭から、もう一人の魔法使いが抜けていた。
崩れ落ちる動く銅鎧を見た時は、やっちまったという思いで、思考が一瞬止まったが、アースディガーが水魔法使いに接近していっているのを見て、なんとか正気を取り戻した。
あれが無かったら、負けていたかもしれない。もし、あの場で水魔法使いを仕留めきることが出来ず、私のゴーレム生成にCTがあることを理解されていたら、ただただ魔法を連打するだけで、狩られていただろう。
実際はその後、何とかアースディガーに攻撃を合わせて勝利することが出来たが、今回の戦いは、厳しかったと言わざるを得ない。
戦闘時間こそ短かったが、水魔法の使い手がいるだけで、こちらの行動がかなり制限された。元より前に出ずらい、アース・ブランチやロックドラコが完全に後方で釘づけにされ、突っ込む役割のロック・ワーム、アースディガーが雑に動けなくなった。水魔法が弱点でない動く銅鎧と魔法を防げる私が前に出て戦うのだが、水魔法を警戒しすぎて攻め切ることが出来ない状況だった。弱点が偏ると、ここまで苦しいことになるのか。
そう考えると、敵の主格と動く銅鎧を1:1で交換できたのはかなり、良かったかのようにも思えるが、狙ってやったわけではないので、動く銅鎧を焦って詰めさせたのは、完全に悪手だった。今回を糧にして、次水魔法を使うプレイヤーがやってきたら、もう少し冷静に立ち回りたい。
多数VS多数、それも天敵との戦闘が思ったよりも難かしく、脳みその疲れを感じる。
しかし、イベントはまだまだ続いていくので、今回の戦闘から得た情報を整理しておく必要がある。もう少し頑張ろう。
水魔法使いがいたパーティーとの戦闘は、私の中でイベント開始から3回目の戦闘だった。そろそろ、こちらの情報がバレていると思ったが、どうだったのだろう。
前回、前々回と違い、今回はミニゴーレムをほぼ、使わなかったので、相手のリアクションが読めず、情報の共有度が測れなかった。投擲したミニゴーレムが動き出すことに対し、前の2パーティは少なからず反応を見せてくれていたので、そこから、まだこちらの情報が共有しきれていないと判断していたのだが。実際は掲示板等に書き込まれていてもおかしくない。ただ、中ボスを選択したプレイヤーも結構多いだろうから、書き込まれていたとて、すぐに流れてしまって、対策しきるのは難しいはずだ。何度も書き込みがされるような、よほど強い魔物陣営のプレイヤーでない限り、個別の対策は取られない。そう考えてもいいかもしれない。
机上の空論ではあるが、対策を取られていないと考えるのであれば、少しは戦いやすい。私のスキルは連打できない仕様上、冷静に弱点を考えられると弱い。ただ、知られていないのであれば、びっくり箱のように、わからん殺しができる性能はあると思うので、情報差をうまく使って戦っていこう。
そして、掲示板でも話題になっていた、人間陣営の動きについてだ。
どうも、徘徊型を選択したプレイヤーたちが、やたらと強い敵と当たる機会が増えてきたらしい。
人間陣営がボス弱体化の仕様に気づいたのだろうか。
流石に、気づくには早すぎると思うので何か別の理由があるはずだが、掲示板内では、人間陣営側にデス制限があるのではと推理されていた。
上級者をできるだけ倒されないようにし、残機を残しつつ、初中級者がボスの情報を取りに行くという戦法を取っているなら、辻褄が合うとのこと。確かに、ボスを倒すことだけを考えれば、それが最も効率が良いかもしれない。
ただ、そうなるとまずいのは私たち、魔物陣営だ。
初中級者が情報を取って、暇を持て余した上級者が徘徊型を狩り、図らずもボスを弱体化させているのであれば、こんなのほとんど最適解だ。
何とかして止める必要があり、それをする方法は、徘徊型が上級者を止めるか、私たち中ボス部屋の魔物が侵入者に絶対負けないかだ。
人間陣営のプレイヤーの情報共有を・・・、無理か。私のスキルが知られていないのと同様に、私たちも、何人も何組もいる人間陣営を細かく覚えてはいられない。目の前の敵にきちんと集中した方が得策か。
中ボスよりも徘徊型の方が影響力が大きくなってきたんじゃないかと驚きつつ、結局、まともに頑張ることが一番であると、結論を出す。
とりあえず、掲示板で何度も話題になっている人間陣営のプレイヤーだけ、確認しておこう。
私は再び掲示板に目を移し、有名プレイヤーの情報を頭に入れ始めた。
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「ダイキ」
本名、井上大樹。17歳。
元気で、お調子者の高校二年生。スポーツは得意な方だが、勉強はそうでもなく、高校には幼稚園からの付き合いであるヒロトに半強制的に勉強させられた結果、合格できた。活発な性格のため、クラスの中でも友達は多い方だが、ゲームで遊ぶ時には決まってこの4人で集まる。二つ上の兄がおり、何でも自分よりも器用にこなす兄を甚く尊敬している。
「ヒロト」
本名、進藤博人。17歳。
落ち着きがあり、良く周りのことが見えている高校二年生。勉強が得意で、学校のテストでは常に一桁の順位をキープしている。幼少期から両親の仕事が忙しく、本を好んだヒロトに対し、申し訳なさと、手のかからないありがたさから、本を買い与え続けた結果、同年代の子供と遊ぶことが少なくなり、友達がダイキ以外いなくなった。現在は社交的になり、クラスの委員長を務めている。
「アヤカ」
本名、鈴木彩華。17歳
明るく、人当たりのいい高校二年生。熱心に何かを頑張るわけでは無いが、どんなことでもそれなりの成績を収めることが出来るセンスを持っている。対人関係が得意で、教師はおろか、学外にも友達がいる。幼馴染の4人とは小学校で出会い、本ばかり読んでいるヒロトをアヤカが連れ出し、それにダイキとユキがついていく形で交友関係ができていった。
「ユキ」
本名、佐々木由紀子。17歳
清楚で、物静かな高校二年生。勉強、スポーツ共に優秀だが、内向的な性格のため、クラスの女子から疎まれることも。しかし、アヤカと行動するようになってからは友達も増え、敵対視されることも減った。大人しい性格だが、かなりの負けず嫌いで、負けが込み始めると露骨に不機嫌になる。その点をアヤカに注意されると、さらに不機嫌になるため、日常生活においても結構な頻度でバトルが勃発する。
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