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六角氏軍記~戦国乱世を生き抜きたい~  作者: タスマニア


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近衛稙家襲来

ゆっくり投稿していきます。

1545年9月 観音寺城

 いま、城は上から下までの大騒ぎである。なぜなら、前関白近衛稙家が観音寺城に来るという、先触れの使者がやってきたからである。これは、何度も将軍を匿ってきた我々六角氏に取っても青天の霹靂であり、大騒ぎになっているわけだ。


 父、祖父、家臣たちは見苦しい所が無いように道を掃除、整備したり、自らの屋敷を飾りたてるのに大忙しである。さらに、持て成しの為の食材、贈り物の選定を行っている。


 我が家も公家との交流を持っているが、摂関家の中でも1番の家格を誇る近衛家相手だとあまり勝手が分からず、先触れの使者に色々と指南をお願いしているようである。やはり、大名は非常に忙しい。体面を保つために皆必死である。


 俺は、弟が産まれた時のように何もできることがない。祖母と共に弟と部屋で遊んでいるしかない。


 前関白が使者としてやって来るということは、今回の献金は大きな成果をあげることが出来たと考えていいだろう。朝廷の権威は衰えたとはいえ、まだまだ大きい。毎年、献金を行っても、有り余る利点がある。


 「皆、万事抜かりはないであろうな。」


 「「御屋形様、家臣一同準備は整っております。」」


 亀寿丸達が別室で遊んでいるのと同時刻、本丸では一通りの準備を終えた定頼、家臣団が明日やって来る近衛稙家を出迎えるための手順の最終確認を行っていた。家の名誉に関わる事であり、小さな失敗ですら許されないのである。


 手順の確認が終わり、家臣達が各々の屋敷に帰ったあと、定頼は義賢に亀寿丸を自らの部屋に連れてくるように命じた。息子の義賢に連れられ、テトテトと入ってくる。時に大人顔負けの発想で大きな成功を収めるが、普段は年相応の可愛い孫である。


 自らの前まで亀寿丸を呼び、彼を抱き上げ膝の上に座らせる。頭をゆっくりとなでながら、話しかける。


 「亀寿丸、お前が朝廷へということで差し出した献金は無事に朝廷へ送られた。そして、明日お褒めの使者として前関白の近衛植家殿がやってこられる。これは、我が家にとって名誉なことである。」


 「おじい様、朝廷に我が六角家の勤皇の思いが伝わったようで、この亀寿もうれしいです。」


 亀寿丸のハキハキとした返事を聞きながら、頭をなでる。


 「儂は、優秀な息子と孫に恵まれた。いつ死んでも思い残すことはないのう。」


 「父上、冗談とはいえ、気の弱いことを。某も亀寿もまだまだ、若輩の身、父上の教え、導きが必要ですぞ。」


 「ならば、もっと厳しくしていこうか。」


 息子と軽口をたたいていると、膝の上の孫が眠りに落ちていることに気づいた。賢いといってもまだまだ、幼子である。眠気には勝てなかったのであろう。息子に孫を託し、部屋から下がらせ、明日の饗応に備える。


 昨夜は祖父定頼に呼ばれて、褒められていたが眠気に勝てず寝てしまった。やはり、この体がまだまだ子供であることを思い知らされる。今、三雲定持の屋敷にお邪魔している。本丸では観音寺城に到着した近衛稙家に対する饗応が行われており、行き場のない俺は本丸から三雲屋敷に追い出されてしまった。しかたがないので、読書にいそしんでいる。


 亀寿丸が読書している時、本丸では近衛稙家が上座に座り、帝からの手紙を読み上げ、直筆の経典を定頼に手渡していた。


 「帝は六角定頼殿の勤皇の意思にいたく感激され、直筆の経典を下賜されることになられた。帝はこれからも、忠誠を尽くすようにと仰っておられた。」


 「不詳六角定頼、帝のお言葉しかとこの胸に刻ませて頂きました。これからもより一層の朝廷に尽くしまする。」


 帝からの贈り物、帝に対する感謝の手紙などを相互に受け渡し終えると、祝宴が始まった。祝宴は、厳かな雰囲気で粛々と進んでいった。出される料理も食材を厳選し、腕利きの料理人が魂を込めて作ったものが出されていく。


 稙家は、祝宴に出される料理を食しながら、六角氏との婚姻関係を築こうとしている、自分の正しさを確信した。出てくる料理の完成度、使われている食材の良さから中々の財を成していることがうかがえる。また、礼儀作法も家臣を含め良く指南されている事が分かった。


 祝宴が終わり、早々に部屋から退出すると、稙家は小さな部屋に通された。そこで少し待つと六角定頼、義賢親子が入ってきた。ここからは、朝廷の使者としてではなく近衛家の当主として六角定頼と向き合うことになる。


 「六角はんに、是非とも受けて欲しい話があるんや。」


 「内容によりますが、稙家殿直々の願い是非ともお聞かせ願いたい。」


 「六角はんのお孫さんとうちの娘とで婚姻を結び、六角はんの家と縁を結びたいんや。」


 近衛家との婚姻を切り出された定頼は腕を組み、少しの間考え込んだ。頭の中で利害を計算する。


 「稙家殿、此度の提案承知しました。」


 稙家は、自らの提案を受け入れられた事により上機嫌になり、お酒を煽りはじめた。定頼も目出度いことであるとお酒を進める。義賢も定頼と一緒になり、お酒を勧める。


 今回の会談は、稙家が完全に酔いつぶれた事でお開きになったのであった。

ご意見、感想お待ちしております。

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― 新着の感想 ―
なぜ公家言葉にしなかったのか…
[一言] 婚約するとのことだが大丈夫? タカられたりしない?
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