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六角氏軍記~戦国乱世を生き抜きたい~  作者: タスマニア


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尾張撤退1

 1555年 不破関 六角義賢


 朝倉宗滴との直接の交渉を経て、幕府からの赦免、官位官職の改めての承認、幕府奉公衆から押領した領地は金銭による保証によって権利を得ること等を認めさせた。中でも最も大きなものは土岐頼芸殿の美濃国主の地位の確認である。つまり、斎藤道三の美濃守護の地位は剥奪されたも同じ。



 息子忠定に高須城を攻め取らせたので、そこに土岐頼芸殿に入ってもらう。その辺一帯を土岐頼芸殿に治めてもらえばよかろう。



 「さて、忠定はまだ織田を攻めあぐねておるのか。」



 「今は、岩倉城を囲んでおられる様子。」



 「戦というのは非常に難しい物。それが一勢力を滅ぼそうとするなら尚更。麒麟児とはいえ不得意な事もあろう。無理をして大きな損害を被ることこそ真の愚策。忠定には無理攻めをするなと伝えろ。」



 義賢は、伝令を送り出すと後藤賢豊と向き直って今後の事に話す。



 「さて、斎藤を美濃国主の座より引きずり降ろし、土岐頼芸殿も一応美濃に入国させることが出来た。ここで斎藤と織田両者とも手打ちにしたい。斎藤と出来るとは思わぬがな。」



 「斎藤は難しいでしょうが織田は、交渉の余地があるかと。あれは背後に今川を抱えておりますゆえ。織田伊勢守家の遺領と海西郡・海東郡の津島を始め幾つかの領地を返せばよろしいでしょう。」



 「うむ。忠定に書状をしたためよう。我らは些か戦を長くやり過ぎた。領内の民をこれ以上苦しめる訳には行かぬ。」



 まだまだ、領内に余裕はある。この余裕がある内に講和を結び東の国境を安定させたい。家臣達も疲れが目立つ頃であろう。尾張の一部を奪い取ることも出来るであろうし、北畠家のお家騒動にも介入していきたい。内側でやるべき事が山積みになっている。



 斎藤を大いに破り、溜飲をさげ公方様より赦免いただいた今これ以上戦う理由もない。広がった領土をしっかりと治め、次の世代に引き継ぐこと。我が六角が天下に大きく飛躍するとしてもそれは次の忠定の代であろう。それまでは、父定頼より引き継いだ領地を安定させることこそ第一の役目。



 

   1555年   岩倉城  六角忠定


 織田信長に怯えて、じっとしている間に軍の一部を持って高須城を落としたが、どうやら土岐頼芸殿が入る事になった様だ。ここから土岐頼芸殿がどうやって勢力を盛り返していくか楽しみである。



 「お初にお目にかかります。それがし、森可成と申すもの。葉栗郡蓮台に居を構えております。」



 「六角忠定である。して、森殿は何故ここまでこられたのか。」



 「六角殿の御威光と徳を慕い、どうか家臣の末席に加えていただきたくやって参りました。」



 思いもよらない人物がやってきた。森可成。もう、織田信長に仕えていたと思っていたが何の因果かわざわざ服従を伝えに最前線にまでやってきた。しかし、これは好機。攻めの左三を召し抱えることができるとあらば断る理由がない。



 「武勇が諸国に鳴り響く森可成殿が我らを慕ってここにやって参られたのはこの忠定とても嬉しく思う。」



 「されど、森殿。織田家の勢力が衰退した今六角家ではなく斎藤家を頼る道もあったが何故我らを選ばれた。」



 三雲賢持が疑問に思っていることを聞いてくれた。織田家の影響を排除したとはいえ、織田信長と親戚である斎藤利政と結んで抵抗するならともかく、全く関係の無い六角の元に来たのは疑問が浮かぶ。



 「あえて一言で申すなら、頼りにならぬからでございます。斎藤殿は確かに実力でいえば美濃国主であられるかもしれませぬが、今や六角殿に大いに敗れ、土岐頼芸殿も尽力で舞い戻ったこの状況では頼ろうにも頼る事など出来ませぬ。加えてこの可成、斎藤利政の庶長子である長井道利と不和であり頼れませぬ。」



 確かに、斎藤一族であり重臣でもなる長井道利と揉めているとあれば選択肢はひとつしかないか。



 「分かった。領地の安堵状をだし、我らへの服属を認めよう。」




 「ありがたき幸せ。これからは六角殿のため粉骨砕身の思いで仕えさせていただきまする。」



 そう言って平伏する、森可成の目の前で祐筆に安堵状を書かせて花押を最後に記す。



 「さて、早速だが森殿には郡司として竹ヶ鼻城に入ってもらい葉栗郡を統治してもらう。これは対斎藤の最前線。攻めの左三の武勇に期待している。」



 「早速の大任。この森可成にお任せあれ。」



 人手が足りないのでこれは好機とばかりに早速大任を与える。ただ、郡司に任命ということで何人かの豪族より奪った土地を加増した分の安堵状も渡すと森可成は喜びながら帰っていた。しかし、中々の筋骨隆々の男であった。あの筋肉から絞り出した力で振るう槍はとても恐ろしいであろう。



 森が帰ると入れ違いになったが父上より織田との和睦を結ぶべしとの手紙がやってきた。完全に持久戦に陥りつつある現状では、ここが最後の引き際だろう。当初の意気込みは何処へやらさっさと尾張での戦を切り上げで伊賀・北伊勢に帰りたい気持ちでいっぱいだ。都合の良い言い訳も出来た。早速那古野城に向かって使者を送ろう。

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 まさかの森さん服属(笑)
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