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六角氏軍記~戦国乱世を生き抜きたい~  作者: タスマニア


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和睦3

色々と忙しかったので、かなり期間が空きました。ぼちぼち更新していきます。

   6月 那古野城 佐久間


 我らに斎藤方からの急報が入った。何と、六角方と将軍が和睦したというのだ。将軍と朝倉は、越前に兵を引き、残った斎藤殿は、美濃に引き上げようとした所を六角勢に追撃を受けたようだ。これにより、我らへの援軍は斎藤本軍の援護の為に引き返してしまった。



 我らと尾張にいる六角勢の軍勢の差は小手先の技でどうにかなるものではない。占領地の動揺を抑えることが出来たら六角は川を越えて進軍してくるであろう。背後の今川も不穏な動きがある。



 悪い話の中でも、些細ながら良き話もある。我ら家臣団の筆頭家老である林秀貞殿と信長様の和解である。織田家存続の危機に遅まきながら家中の団結を図ることが出来た。



六角との最前線にも大きな変更が加わることになった。信長様の御一門である織田信光様が岩倉城に入られることになった。信光様は、先代織田信秀様に従って小豆坂の戦いに出陣し武功を挙げ、小豆坂七本槍の一人として名を馳せたお方。殿も安心して任せることが出来るだろう。




              森可成



 我ら森家は今や大きな決断を迫られておる。父可行が親交を温めていた織田家に臣従を決めようとした矢先、六角が伊勢より攻め上り瞬く間に尾張の西半分を攻めとった。今戦線は膠着しているが背後に今川を抱える織田家では押し返すのも難しいであろう。加えて、西美濃の諸将を率いて戦っている斎藤道三も将軍に梯子を外され、押し込まれているようだ。



 「可成、儂は隠居し当主の座をお前に譲る。信長と親しかった儂では六角は受け入れぬだろう。」



 何度も行われている父との談議でこの様な話しが飛び出してきた。当主としての責任を取らなければ家臣の収まりもつかぬであろう。



 「わかりました。父上、この森可成まだまだ若輩者ですがこの森家の当主として盛り立てて参ります。」



 「可成、いきなりの大仕事であるが頼むぞ。」



 翌日、家臣一同を屋敷に集め当主の交代と六角家に服属する方針を伝えた。幸いな事に反対意見は出ることはなかった。早速書状を認め、使者を送った。悪い様にはされないだろうが、全く関係のない間柄故、どのような返書が帰ってくるか全くわからぬ。



 当主となって、日々父が背負っていた重責の一旦を感じる。これでは、戦場で槍を奮っている方が何倍も気楽である。



        清須城 六角忠定


 父義賢より、将軍との和睦と斎藤勢への追撃という二つの朗報が届いた。直筆の書状からは、日頃より斎藤に溜め込んでいた鬱憤をこれでもかと晴らす事ができて痛快の極みであることが伝わる。



 翻って、自らのいる尾張に目を向けると完全に戦線は膠着している。ただし、指を加えて那古野城を見つめているだけではない。占領した郡に家臣を郡司として置き、反抗的な豪族や国衆を討ち直接支配を進めている。



 岩倉城落城の衝撃で一時期完全にやる気を無くしていたが、青地茂綱や宮部継潤等の励ましにより、何とか持ち直すことができた。清須城の拡大改築を進め、街道を整備し目の前の五条川に橋をかけさせている。



 「若様、架橋作業は順調に進みつつあります。これで川を憂いなく往来できるようになるでしょう。仮に織田方が橋を壊そうと上流から艀を流そうとも杭を打ってあるのでビクともしないでしょう。」



 「青地茂綱、先方は織田信友と其方に任せる。速やかに川を渡り岩倉城を包囲せよ。後続が到着次第、陣地を変え那古野城からの敵を待ち構えるのだ。」



 「御意。必ずや敵を打ち砕いて見せましょう。」



 「茂綱、博打を打つようなことはしなくて良い。我らは勢力を維持し、圧力をかけ続けることが勝利への道。加えて今の我らは、火薬が不足しておる。大砲用の火薬を火縄銃に回さなければならぬ程。」



 最初の方に大砲を派手に使い過ぎたのが良くなかった。ただでさえ、火縄銃や火炎放射の為に大量の火薬を使用するのに供給量は非常に少ない。使用をなるべく控えなければなるまい。

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