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六角氏軍記~戦国乱世を生き抜きたい~  作者: タスマニア


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尾州侵攻3

これからもゆっくり更新していきます。

 1554年 4月桑名城 六角忠定


 千草城より前進して、桑名城に入った。梅戸高秀の先鋒や藤林長門守の第二陣から佐屋に上陸後、津島を制圧し勝幡城を占領し順調に進撃している旨の報告があった。



 織田信長が軍を率いて来た場合は、防御に有利な地形に陣取りみだりに動かず援軍を要請するように言いつける。此方は負けなければ良いのだ。



 桑名城で一旦軍勢を止めると、桑名城に蓄えである武器・弾薬・食料を勝幡城に船を持って運び込む。それと同時に並行するように城の増築等を行わせる。勝幡城は、1538年頃より廃城となっているからだ。




 次の日、遂に我々は尾張の地に入った。勝幡城に入ると藤林長門守の出迎えを受けた。



 「梅戸高秀様たち、先鋒衆は順調に蟹江城に向けて道中の城を占領しております。」



 「そうか、信長や美濃の動きについて情報は入っていないか。」



 「信長に関しては、不気味な程動きが見られませぬ。恐らく今川が不穏な動きを見せているからでしょう。ただし、兵や兵糧等を買い付けておりますので近々何らかの手を打ってくると考えるのが当然かと。美濃では、安藤守就以下1000人の兵を再び援軍として派遣する動きが見られます。」



 「両者共に予期していなかった我々の動きによって混乱しているようだ。我らはこの混乱が続くうちに庄内川以西を完全に切り取る。長門守、岩倉織田家との交渉はどうか。」



 「あちら側も信長の伸張に危機感を感じておりました様で色よい返事をいただいております。我らがもう少し戦果を出せば手を結ぼうとしてくるかと。」



 ここで岩倉織田家との手を結ぶことが出来れば織田斎藤同盟を分断することが出来る。そうすれば、今川と共同して信長をすり潰せる。



 「分かった。必ずや同盟を結ぶのだ。」



 「お任せくだされ。」




 蟹江城 梅戸高秀



 此度の戦は、順調に進んでおる。若様よりお借りした青銅砲4門と木砲10門を使い松葉、深田両城を1日で攻略する事に成功した。木砲が5門使いもにならなくなったが、それに見合う十分な戦果であった。



 今囲んでいる蟹江城は、我らが接収して最前線の守りの要としたいのでなるべく無傷で攻略したい。どうやらまともに兵を集める事ができていないようだ。



 「ここで敵の援軍が来ると厄介だ。一挙に攻め落とすのが吉である。配下の諸将に一斉攻撃の使いを出せ。牛の刻より攻めかかるとな。此度の戦では砲は城門を破る時にのみ使用する。」



 伝令が走り去ると、本陣も慌ただしくなる。木砲が一門ゆっくりと引き出されていく。あちこちで部隊が移動しているのが見える。



 そして午の刻になると鉄砲隊の発砲と共に梯子を持った兵を先頭に長槍隊が一斉に城に向かって走り出す。それに対する城側の攻撃は余りにも少なすぎる。



 城門前には、木砲が据えられると同時に轟音が鳴り響く。あまりの轟音に城からの反撃が一瞬止まった。それを見逃す我が軍勢ではない。既に大砲の轟音に慣れた兵達は破られた城門より、城内に乱入する。蟹江城は、城主織田民部以下200人の兵が全て討死した。対する我らの損害は、死傷者合わせて100人ばかりであった。攻城戦は僅か一刻で終わりを迎えることとなった。



 「若様に我々が蟹江城を落としたことを急いで伝えよ。そして、我らは今より城の片付けを行うと同時に城の防備を固めるのだ。何時敵が川を渡って攻めてくるやもしれぬ。周囲の地形の調査も忘れるな。」



 作戦の第一段階は成功したも同然である。あとは、若様達と如何に連携してこの地の支配を確固たるものとするかだ。





 那古屋城 佐久間信盛



 突然の六角氏の侵攻によって尾張の国は大混乱に陥っている。特に我らにとっては村木砦での戦いでの勝利に冷水をかけられた様なものであり、その混乱は計り知れぬ。



 六角の侵攻と同時に今川が怪しげな動きを繰り返し、我らの行動を牽制していくる。恐らく偶然であろうがおかげで我らは二正面作戦を強いられておる。その後の六角の勢いは止まることなく僅か数日で庄内川以西を瞬く間に制圧した。



 最前線となった前田家等の国衆からは出陣の催促が矢のように飛んでくる。このような状況になってなお、筆頭家老である林秀貞殿は主君信長様と反目し合っている。また、他にも信長様の弟君であられる信行様を新たな当主として担ぎあげようとする動きも見られるようだ。我が家中は、混乱の最中にある。



 「殿、今や我が家中は乱れ多くの者が混乱しております。ここは、どうか兵を纏め出陣の構えだけでも見せるべきではありませぬか。」



 家中の混乱を治めるための策を信長様に献策する。それを聞く当の本人は、奥方であらる帰蝶様の膝に頭を乗せ寛いでおられる。



 「信盛、其方の心配よくわかる。献策大義である。されど暫し待つのだ。」



 「殿!このまま家中の混乱を放置すれば戦う前に我らは負けるかもしれませぬぞ。」



 帰ってきたのは何時もの殿らしからぬ消極的なものであった。村木砦の戦いで恐ろしい程の果断さを見せた人物と同一とはとても思えない。



 「信盛、俺を信じろ。決して負けはせぬ。」



 某の不安な胸中を察したのか殿は起き上がられると、某の近くまでやってきて囁いた。



 「もうすぐ、清須で大きなことが起こる故その時が反撃の狼煙ぞ。」



 その声色は、村木砦での殿の声と全く同じであった。殿の秘策ありと感じた某はただ、頭を下げ御前より下がるのであった。

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誤字なのか判断しかねるので…「午(うま)」の刻ならほぼ12時前後なので、早い時間とは言えないし、「牛(うし)=丑」の刻なら真夜中2時前後なので、日が変わった直後なので、めちゃ早い時間ではありますが、多…
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