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六角氏軍記~戦国乱世を生き抜きたい~  作者: タスマニア


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北伊勢の統御

レポートなどにおわれて更新できませんでした。

 1553年 10月 観音寺城 六角忠定


 北伊勢という土地は私の曽祖父高頼の頃より六角家が自らの勢力圏としていた土地である。しかし、近江・伊勢・伊賀の3カ国に勢力が急拡大した事によって、近頃北伊勢の国衆の手綱が緩んでしまっている。最も反抗的な千種氏は、父義賢によって完全に没落した。しかし、それでも他の国衆の反抗的な態度は収まらなかった。


 千種攻め以降は、私の叔祖父であり、梅戸氏の養子に入り家督を継いだ梅戸高実が北伊勢を統治していた。だが、梅戸氏は北方一揆の盟主的立ち位置ではあるが、強力な権限を持っている訳では無い。それに加え、本来関係の無い朝明郡の十ヶ所を傘下に加えたことで梅戸氏が制御できる範囲を越えてしまったのだ。


 父義賢としても、新たに手に入れた北伊勢の領地を与えたり、家臣を送ったりしているが領地は飛び地となったり、家臣を送り過ぎると旧来の梅戸氏家臣との軋轢が大きくなるからあまりに人数を送れない。


 解決に手間取っているうちに、反梅戸・六角で北伊勢国衆が結束しつつあるという情報が齎された。北伊勢の国衆の一部に美濃の斎藤道三の手が伸びているという。近江国内でも減封をくらい、不満が燻っている浅井家家臣にも手を伸ばそうとしているようだ。


 平穏に見えた六角家領国内では伊賀を除き近江・伊勢においてそれぞれ火種を抱えており、美濃のマムシがその火種を大火にしようとして策動している。




 「皆忙しい中よく集まってくれた。」


 父義賢が評定に集まった家臣達に労いの言葉をかけていく。このような行いが家臣達の心を掴むのだろう。


 「今日の評定は、忠定が参加する。皆遠慮せず、いつも通り振舞って欲しい。」


 「では、早速始めましょう。」


 蒲生定秀が、評定の音頭をとる。今回の評定には、六角六宿老を初めとする重臣達しか参加していない。主な議題としては、やはり領国内の不穏分子に対する対応だ。


 「伊賀・甲賀衆からもたらされた情報によると美濃の斎藤が北近江・北伊勢において怪しい動きをしているとの事。されど確たる証拠までは掴めておらぬとのこと。」


 最近、伊賀国守護代に任ぜられた三雲定持が話す。やはり、策略家である道三。そう簡単に尻尾を掴むことは出来ないようだ。


 「道三め、主君を追い落とすだけでは飽き足らず、汚い手で近江や伊勢を掻き回すつもりか。」


 「しかし、確固たる証拠が無い中、道三を詰問した所で煙に巻かれるのが関の山でしょうな。」


 進藤賢盛が毒を吐く。縁戚関係のあった土岐頼芸を追い落とした斎藤道三は、六角家中において憎まれていると言ってもいい。加えて、佐々木家庶流や幕府奉公衆などの名門の多い近江では、卑しい身分から成り上がった斎藤道三への風当たりは激しい物がある。


 彼の発言に同調するように三雲が話す。


 「ならば北伊勢においては、怪しい国衆共に人質の差し出しと、ここ観音寺城に当主自ら忠誠を誓いに来るように書状を出しましょう。さすれば、国人共をふるいにかけることが出来ましょう。」


 平井定武が基本的な解決案を示す。


 「平井加賀守の案は最もである。他に案はないか?」


 「御屋形様、某は北伊勢においてはこのまま国衆が蜂起するまで放置し、一挙に討伐し北伊勢において武威を示し、六角家の支配を確固たるものとするのがよろしいかと考えます。」


 そう発言するのは後藤賢豊。最近の父義賢のお気に入りの1人である。


 「その意見は危険すぎる。もし、北近江と北伊勢で同時に蜂起されては、それを好機として斎藤道三が近江に乗り込んで来るかもしれぬ。本国の北近江を完全に支配下に取り込めぬ現状、北伊勢において、攻勢に出るのは本国をいたずらに危険に晒すことになる。」


 蒲生定秀が逸る後藤を宥める。


 「もし攻勢をかけるなら、北伊勢ではなく北近江で行うべきだ。本国を安定させてこそ、外に打って出ることが出来るのだ。」


 「蒲生の言うことは最もである。しかし、近江国内では、無用な戦を起こしたくは無い。北近江は、浅井久政に国衆の統制をしっかりと取るように伝えよう。出来なければ本格的に北近江の統制は京極に任せるようになると圧力をかけよう。さらに、京極高吉に廃城となっていた上平寺城を修復させ、国境の防備と、浅井氏への牽制としよう。今浜には、布施公雄を城代として派遣しよう。」


 父義賢が北近江の統制について結論を出す。北近江は南近江の国衆などにも大きく関係のある事柄。すぐに仕置きをする事はできないので、正しい判断であろう。これである程度は、北近江は秩序を取り戻すだろう。しかし、それは問題をただ先送りにしたに過ぎない。いつか、国衆達は蜂起するだろう。


 「忠定、お前はどう思う?」


 「父上のお考えでは、ただ北近江の問題を先送りにするだけでしょう。しかし、ここで稼いだ時間で北伊勢国衆を征伐すれば、内憂外患のうち、近江国外の外患を取り除くことが出来ましょう。その後に、腰を据えて内憂を取り除けばよろしいかと。」


 「其方は、後藤の意見に賛成か?」


 「無論ですな。これは、六角の直轄領の拡大の好機でありますし、これより活躍する家臣への褒美の為の土地を確保しなければなりませぬ故、肥沃な北伊勢の土地を確保する事は重要でしょう。」


 「御屋形様。よろしいのですか。」


 蒲生定秀が北伊勢国衆を攻めることを許可するのかを問う。


 「蒲生、ここは若人の力を見てみよう。忠定、後藤と共に北伊勢攻略の計略を考え実行せよ。失敗は許されぬぞ。忠定、お主の軍と後藤の兵そして、伊賀の兵のみで攻めとるのだ。国衆をどの様に蜂起させるかはお主らの自由にせよ。しかし、どの様な仕置をするかは、高実と詳しく話し合い決めよ。事を起こす時は、私への報告も忘れるな。」


 「承知しました。」


 ここで、一挙に国衆を討ち取り、斎藤道三の鼻をあかしてやろう。

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― 新着の感想 ―
滅茶苦茶失敗しそうですね。 斎藤道三に勝負を挑もうとするなんて大した度胸だな。 というか、元服してから主人公の一人称変わった気がする。
 『チャンス』ではなく『良い機会』『好機』が妥当かと。
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