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六角氏軍記~戦国乱世を生き抜きたい~  作者: タスマニア


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特産品生産 築城ラッシュ

そろそろ名を知られた武将を出さないと。この作品で1番知名度があるのが三好長慶という事実....

 1552年 4月 伊賀 亀寿丸


 春うららかな日差しの中、私は今上野盆地のほぼ中央にある上野台地の北部にある標高184mほどの丘の上に立っている。ここには元々伊賀仁木氏の館があったが、反乱の際に焼け落ちその跡が残るのみである。


 そして、六角家による伊賀支配の証としてここに城を建てる事が決められたのだ。この地は、北方に服部川と柘植川、南方に久米川、西方に木津川の本流が流れ、新たに築城することとなる城とその城下町を取り巻く要害の地にある。


 城の縄張としては、史実の伊賀上野城にならい、東側の外堀は218間、堀幅12間、南側は488間、堀幅15間、西側は254間、堀幅12間、北側が17間とする。そして石垣は、全面を野面積みとして間詰め石と膠泥(モルタル)そして水抜き穴を整備した物とする。こうすることによって野面積みの弱点である敵に石垣を登られやいすいという性質を打ち消す事が出来る。しかし、強みである高い排水性も同時に打ち消してしまう為、水抜き穴は必須である。


 他にも城壁は二重にし、途中に砂利を入れることで多方面からの火力投射を行えるようにする。城門も二階建ての巨大な櫓門で作り扉は鉄で補強した物を使用する予定である。天井は、瓦で覆う。枡形虎口を二つ連続させたり、多くの武器・弾薬・食料を蓄えるための倉を確りと整備する。


 このように、後の時代の技術も利用したこの城は、工期を4年と見積もっている。もしこの城が完成し、実戦に使用される時は、近江・伊勢のどちらか若しくは両方を失陥した時だろう。


 そして数日後、築城が開始されたのを見届けると藤林長門守の屋敷に入る。甲賀の望月屋敷とあまり変わらない。質素ではあるが貧乏では無い。


 「亀寿丸様の考案された便利な機械のお陰で農業の効率化が進められこのような時期にも普請の為の人足が出せるようになりました。」


 そう私を褒め称える藤林長門守の表情筋は、ピクリとも動かない。雰囲気から喜んでいることは、分かるのだが如何せん表情が動かない故、思っている事が分かりにくい。


 「伊賀の民が裕福になっているなら、私にとって望外の喜びである。長門守失礼だが聞きたいことがある。」


 「ご遠慮なく。」


 「其方ら伊賀衆と甲賀衆の目はよく似ておる。此方の奥底まで見透かそうとする目。忍びは、皆あの様な目をしておる。」


 こう質問すると、藤林長門守の口角が僅かに上がる。


 「我ら伊賀衆と甲賀衆は、得手不得手は異なるもの互いに忍び。似通うのは当然にございます。あちらは敵地での情報収集に長けております。それに対し我らは敵地での破壊工作に長けております。城攻め等では我らをお呼びください。」


 「戦に置いて私は伊賀衆ほど頼りにしているものはない。その為にも伊賀衆を確りと支援するぞ。」


 そう言うと藤林長門守は、ゆっくりと頭を下げ返事をする。やはり表情は変わらない。望月出雲守は、表情が豊かであった。これは、やはり情報収集の為に相手の懐に入る為に必要な物なのだろう。それに対し、藤林長門守の無表情は破壊工作において豊かな表情は必要が無いが故無表情なのだろう。


 藤林長門守を部屋から下がらせた後、部屋の前の中庭に3人の陶工が入ってきた。予め俺が呼んでおいたのである。


 「忙しい中良くぞやってきてくれた。」


 「へえ。六角家の皆様は、儂らのお得意様。呼ばれたら観音寺城まで参る気持ちでおります。」


 「よくぞ言ってくれた。そのような忠義の心が厚い其方らに新たな焼き物の試作をやって貰いたい。」


 「新しい焼き物とはどのようなものなのでしょうか。」


 3人の中でも最も歳を重ねた長老らしき人物が代表して受け答えを行う。そして彼らに作らせる焼き物は、ボーンチャイナ。18世紀ごろにロンドンで発明された焼き物である。この焼き物は、リン酸カルシウムを多く含む牛骨の灰に陶土を混ぜた材料によって作られる。


 特徴としては、炎に含まれる酸素の量によって色味を変えることが出来る。酸素が少なければ、冷たい白色となり、多ければ暖かな白色となる。白磁器よりも低い温度で焼成させることが出来るので多くの種類顔料を使うことが出来る。欠点としては、白磁器よりも表面が柔らかいことや、急激な温度変化に白磁器よりも弱いというものが有る。


 このような特徴を彼らに伝えつつ、唐国よりやってきた書物の写本を渡す。この時代の中国は、工業において最先端を行っている。言い訳とするには最適である。


 「私は其方らの忠義心・陶工としての腕を買っておる。この焼き物を作ることに成功するれば多くの褒美を与える。しっかりと励むのだ。」


 「必ずや成功させまする。」


 恭しく書状を受け取る彼らに声掛けを行い、その返事を聞いたあと下がらせる。


 もっと中国から様々な技術・文化を輸入したい。進んだ文化・技術を取り入れる事こそ我ら六角家が繁栄していくためには必須なのだ。三雲定持と詳しく話し会おう。

次は火器の話になります。

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