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六角氏軍記~戦国乱世を生き抜きたい~  作者: タスマニア


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色々

時間が中々進まない。

 1552年 3月 観音寺城 三雲定持


 「定持、この書状には其方も賛同しておるのか?」


 書状を読み終えた義賢様が私が差し出した、望月出雲守の娘を若様の側室として婚儀を取り交わしたいとの甲賀衆の連判状について私の意思を問う。


 「私も賛同しております。」


 そう言うと義賢様は、顎に手を当て考え込む。先程まで公家の方々と交流されていた義賢様は、いつもの直垂ではなく狩衣を着ておられる。義賢様が狩衣を着ていると普段の学者のような雰囲気も相まって武家では無く高貴な公家のように感じる。伊勢北畠当主の北畠具教の方が余程武家らしい。されど日置流弓術を納め、自らの馬術の流派を起こすなどその雰囲気に似合わぬほど武芸が達者であられる。文武に置いて隙がない、我ら武人の手本となる様なお方である。


 「あい分かった。側室として迎え入れ入れることを認めよう。甲賀衆は、長年の協力関係にあったとはいえ家臣としては新参。ここで絆を太くして置いた方が良いであろう。」


 私が別の事を考えている間に義賢様は、決断を成された。


 「返書においてはこの三雲定持がしたためさせていただきまする。」


 「分かった。最後に私の花押を記せばよかろう。次いでに褒美も一緒に渡せばよかろう。」


 「そのように致しまする。」


 「所で定持、亀寿丸が甲賀で望月出雲守の娘に熱烈な愛を込めた短歌を2,3句読んだと耳にした。どのような内容であった。」


 さて、困った。亀寿丸様からは、決して口外しないように言われている幾ら主君とはいえ、話しす事は亀寿丸様の信頼を裏切ることとなる。


 「その様子は、亀寿丸から口止めされておるな。」


 「申し訳ありませぬ。幾ら義賢様とはいえ、亀寿丸様との約束を破る訳ことは出来ませぬ。」


 「分かった。無理に聞くとはせん。では、お主から見てその短歌は、上手であったか?」


 「.....荒削りではありましたが、相手への感情をしっかりと込めた歌でありました。」


 「そうか、そうか。では後は場数を踏ませるだけのようだ。三雲定持、此度の亀寿丸への同行大儀であった。」


 某の答えに義賢様は、顔を嬉しそうに綻ばせ大きな声で笑っておられた。恐らく甲賀から帰ってきた後、亀寿丸様が前よりも真剣に和歌に取り組んでいることを見て甲賀で恥をかいたのではないかと心配されていたのであろう。



 1552年 4月 丹波 八上城周辺 三好長逸


 我らは、丹波で挙兵した細川晴元方の波多野元秀を討伐する為に奴が籠る八上城を5千の兵で囲んでいた。しかし、この挙兵は波多野元秀だけの挙兵では無く我らの背後の摂津において、芥川常信・池田長正・小川吉安ら摂津国人が一斉に蜂起したとの報告が陣中にもたらされた。


 恐らくこの蜂起は、我らが半世紀に及ぶ晴元方支持から氏綱方支持に変わったことに対し、不信感を抱いていた国人達が我ら三好の摂津・丹波での支配が固まりつつある現状に焦り示し合わせて挙兵したのだろう。しかし、この反乱を治めることが出来れば我らの支配は磐石となるだろう。


 三好長慶様が我ら在陣の諸将を本陣に集めた。長慶様が諸将を前に口を開く。


 「皆の衆も知っての通り、摂津国で反乱が起こった。残念ながら八上城攻めをここで切り上げる。急ぎ摂津に帰らねばならん。長逸、其方は京におられる晴元殿の三男を越水城に連れて来るのだ。彼を旗頭にされると厄介だ。」


 「承知致しました。」


 殿は、事前にこの情報を知っていたのか、反乱を起こした芥川らの先手を取るように指示を出していく。これぞ儂が使えるべき主君、諸人が仰ぐ北斗泰山。我らは殿の指示を受け一斉に陣を引き払う準備を始める。長慶殿の元で我ら三好一族は繁栄を謳歌するのだ。



  1552年 5月 近江 観音寺城 


 今、観音寺城では大きな改築や防御力の強化が行われている。観音寺城は、政庁としての役割が強いのだが、防御力は高い方が良いと言うことで、新たに石垣を築いたり新たな曲輪を作ったりしている。ここの作業には多くの人足が投入されると共に、俺の命で立ち上げられた野戦築城を専門とする部隊も投入されている。


 この部隊は、近代的な円匙やピッケルを用いて穴を掘り、猫車を使用して土砂を移動させている。5百人で構成されたこの部隊は、日頃の訓練の成果かかなり早い速度で作業が進んでいる。流石に彼らは石垣を積むことはできないが確りと固められた地面を作りつつある。


 城壁においては、竹筋を通した三和土の壁を二重にしその間に砂利とその接着剤となる膠泥モルタルを使用し、鉄砲対策とする。また、内側に大きく張り出した屋根を作り上から降ってくる矢の対策を行う。そして大きく間隔を開けて大砲を据えることのできる砲台も作っておく。据える大砲はまだまだ試作の段階であり、遠い将来の事になると思うが。


 今月の25日に父は、三好長慶に丹波から無事に帰国したことを祝う書状を出したようだ。最盛期を迎えている三好家と争うことは無駄であることを父上はよく知っている。まずは、美濃が荒れる1556年までしっかりと力を蓄えなければならない。美濃を抑えることが出来れば、六角家は天下を抑える事が出来るだろう。

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