甲賀へ 2
作者は、現在学生ですが女性との交流経験が薄く、彼女も出来たことがないので恋愛とはなんじゃいな?という感じです。アドバイスがあればお教えください。
1552年 3月 甲賀
ゆっくりと進む一行を少し離れた草むらから眺める2人の人物がいた。
「千代殿、早く帰りましょう。今頃屋敷は大騒ぎでございますぞ。化粧や衣服を整えるのにはかなりの時間がかかるのです。顰蹙を買って六角家に睨まれれば、我らは生きて行けませぬぞ。」
「平八、静かに!もう少しよく見てから屋敷に帰るぞ。」
大柄な男が草むらに身を縮め潜みながら自らの主に諫言する。しかし、それを聞き入れる事無く少女は、一行の観察を行い続ける。
「見ろ平八、あの先頭におる男が三雲定持殿であろう。湿気た顔をしておる。全く面白みの無い男よ。宮仕えの男共は、皆あの様な顔をしておるな。お!その後ろが、父上の言っていた亀寿丸か。同い年と聞いていたが中々大柄じゃないか。」
「千代様、我らが協力者として自由にやれていた時とは異なり、今や六角家に忠誠を誓いその家臣となっております。そのような言葉は、お父上が悲しまれますぞ。それはそれとして、確かに大柄ですな。背丈は、5尺4寸はあるのではないでしょうか。あのまま成長すれば6尺は軽々と超えるでしょうな。千代様、早く帰りましょう。」
「一度手合わせをしてみたいな。次は間近から観察するとしよう。」
一行に対し、観察した感想を述べたあと平八の提案を受け2人は屋敷に戻っていく。この後両者はこっぴどく怒られることとなった。
ゆっくりと進みながらついに望月屋敷に到着した。馬を繋ぎ屋敷の中に入ると家主の望月出雲守の出迎えを受けた。
「亀寿丸様、三雲定持殿、此度の訪問歓迎致しますぞ。ささ、こちらにどうぞ、亀寿丸様に挨拶する為に甲賀中の国衆が集まっております。」
出雲守の案内を受け部屋に入る。そこには甲賀中の主だった国衆が集まっていた。彼らの視線を浴びながら上座に座る。
「此度の訪問に置いて其方らの働きは、三雲定持からよく聞いておる。大義であった。観音寺城に帰った時、其方らの働きを父上に報告しよう。さすれば父上から、褒美が与えられるであろう。」
「我ら甲賀衆は皆、従三位上六角左近衛大将義賢様に絶対の忠誠を誓っていることをお伝えくださいませ。」
「必ず父に伝えよう。」
彼らの口上を受け、事前にしっかりと練習したように返す事が出来た。今回の訪問に置いて彼らが財を出し合い道の整備、食材の手配を行っている事を三雲定持より聞いた。
「私個人から其方らに贈り物がある。是非とも受け取ってほしい。」
六角家の家紋が焼き入れられた桐の箱をここにいる国衆達の名前を呼び渡していく。箱の中には、絹織物や石鹸、小さいが金塊が入っている。「頼りにしている」等の一言を伝えながら渡す。反応は上々である。細やかな気配りをする事は、しっかりと国衆の心を掴む事が裏切りを防ぎ、彼等からの支持を得るために必要なことだ。
贈り物を配り終わった後、部屋を移動しそこで国衆達による饗応を受ける。しっかりと慣例に沿った膳が出てきた。これが中々堅苦しいのである。身分によって料理の内容や食器、膳の形や数が異なるからだ。つまり、俺と国衆とでは同じ部屋に会していても、その身分に応じた配膳を出さなければならないのだ。
(俺なら覚える事ができずに粗相を連発しそうだな。)
そう思いながら、彼らの配膳の様子を眺める。彼らも忍び働きをしているのか動きが非常に洗練されている。やはり彼らは確りと味方につけておかなければならないと感じる。
「場も温まってきた所で舞をご覧に入れましょう。」
出雲守は、そう言って手を叩くと楽器を持った数人と1人の少女が出てきて、少女が音楽に合わせ舞を踊り始めた。少女の愛らしさも相まってとても美しいものであり、目が離せないものであった。
幸せな時間とは直ぐに過ぎるもの、舞の時間はあっという間に過ぎ去ってしまった。少女はサッと奥に下がっていった。
「亀寿丸様、あの女子を気に入られましたか?」
「うむ。余りに美しく見入ってしまった。」
どうやら望月出雲守には完全にバレていたようである。周囲に知られてしまったと思うと少し気恥しさが出てきて顔が赤くなってしまった。
「あの女子は、某の娘千代にございます。亀寿丸様が気に入らたのなら、傍で酌をさせましょう。」
此方が返事をする前に出雲守は、千代を呼び出し挨拶をさせる。
「望月出雲守の娘千代と申します。どうか千とお呼びください。」
残念ながらこの後の事はよく覚えていない。普段殆ど飲まない酒をかなり飲んでしまい気付いたら寝床に転がっていた。起こしに来た三雲定持になにか粗相をしていないか聞くと、何度か千に関する短歌を読んだあと酔い潰れてしまったらしい。
「若様は奥手であると思いましたが、あの様な場で口説くとは積極的でありますな。」
「定持、それは誠か?」
「誠にございます。今から諳んじてご覧に入れましょうか?」
「いや、要らぬ。」
三雲定持に朝から、こうからかわれることとなってしまった。まさに穴があったら入りたい気持ちである。
朝食を取り終わった後、部屋にやってきた望月出雲守と話す。
「亀寿丸様、京仕込みの短歌誠に素晴らしゅうございました。千代があれ程顔を真っ赤にしておる所を見たのは昨日が初めてであります。」
「そうか、いきなり其方の娘を口説くという粗相をしてしまった。どうか許して欲しい。」
「許すも何も亀寿丸様がお気に入られたのは、当家の名誉にございます。亀寿丸様と御屋形様である義賢様のお許しがあれば千代を側仕えの侍女として差し出しましょう。」
「されど千殿が首を振られるかどうかが分かりませぬ。」
「千代は武家の娘このような事になるなど重々承知しております。」
「分かった。父上が許して下さるのなら、侍女とは言わずそれなりの立場で迎え入れるつもりである。」
「私の方からも御屋形様に書状を出しましょう。」
にこやかにな出雲守の目は、公の場で娘を口説いた責任を取れと言っているようであった。その気迫に押され仕方が無いという言い訳をしながら話を纏めた。
望月出雲守
時は少し遡り、亀寿丸が酔い潰れ饗応がお開きになった後の事である。その後、部屋に帰った望月父娘は、先程の亀寿丸について話し合う。
「まさかお若いとはいえあれ程亀寿丸様がお酒に弱いとは思わなんだ。加えてお前を口説く為にあれ程熱烈な短歌をお読みになるとはな。」
「親父やめてくれよ!あんなに口説かれて俺は相当恥ずかしかったんだぞ!」
「お前があれ程顔を赤くしたのは生まれた時以来ではないか。今思い出しても笑いが止まらんわ。」
はっはっはと大きな声で笑っていたが、突然真顔になると自らの娘に亀寿丸の人物について尋ねた。
「直ぐに酔っちまったけど、頭はよく回る印象だったな。後、酔っても俺の体を触ったりはしてこなかったから、酒乱では無いな。正直、接した時間が短すぎて全然分かんね。」
「言い忘れておるものがあるぞ、意外と積極的である事と短歌が上手いことじゃ。」
出雲守が再び揶揄う様に言うと、千代はそっぽを向いて部屋から出て言ってしまった。
圧力鍋について多くの質問を頂きましたので回答します。圧力鍋と言いますが、現代の物程の圧力はかけられず、規模も台所位の大きさの非常に大きなものです。更には、使用の最中に何度か爆発が起こっています。
ここらへのお話も書きたいと思っているのでお待ちください。




