京極蜂起 4
今回も中途半端な所で切れます。
京極高広視点で最後まで突っ切るかもしれません。
佐和山城周辺 浅井久政
「殿、六角へ送った密使が相手方の書状を携え帰って参りました。」
「うむ。良くやってくれた。」
浅井久政は密書を受け取ると貪るように読む。その顔は最初安堵していたが、段々表情が厳しくなっていく。
「殿、書状には何と書かれていたのですか。」
気になった側近が書状の内容について尋ねる。
「六角方曰く、我らは戦の陣立で我らから見て左手つまり山側に陣取り、寝返った国衆と京極高広を淡海側に陣取らせるようにと言ってきたわい。」
「それは中々無理難題を言ってきますな。特に主戦派の家臣を抑える事が困難では有りませぬか。」
「確かにそうだ。しかしそれをやらねば、浅井家は家臣諸共滅亡することになりかねん。幸いなことに、京極が討ち取られれば、我らへの処罰の重さも変わって来るであろう。此度の機会必ず行かせねばならん。」
何と言われようと浅井家存続のために力を尽くす事を決めた浅井久政、信頼する近しい家臣達とどう陣取るかの話し合いは夜を徹して行われた。
京極高広
「我らは明後日、川を渡り六角勢を蹴散らし定頼に孫と重臣の首を送り付けようでは無いか!」
京極高広は本陣に集めた諸将に向かって檄を飛ばす。今朝、六角方の使者が堀秀基の正室の首桶を持ってきて、
「京極高広が兵法を知らぬが故に堀秀基殿の御正室がこのような姿になってしまわれた。京極高広は今一度童たちと共に机を並べ兵法を学ばれるがよろしい」
との口上を述べ挑発してきたからである。これには、堀秀基・京極高広は激怒し、大軍を頼みに川を推し渡り向岸に陣取る六角勢を攻める事を主張し、それが受け入れらることとなった。
陣立としては左翼が浅井久政、中央が堀秀基・今井等の国人衆、右翼が京極高広という配置となり、最後に先鋒は堀秀基が務める事となった。
京極勢は佐和山城包囲に2千を割き、戦に参加するのは凡そ8千、対する六角勢は対陣中にさらに援軍を得て6千となっていた。近江の南北の名門が再び刃を交わす事になる。
犬上川 六角亀寿丸
どうやら、相手方はこちらの挑発に乗りこちらとの合戦をやる気満々のようだ。兵力については、抑えの兵を残せば我らとの戦力差は殆どない。
ならば川を渡ってくる敵を分断し、再び川に追い落とせばいい。さらに、浅井久政がこちらと通じている今、我らが勝つ確率はかなり高い。
今回の戦は、とある出会いがあった。
先日、とある若い坊主が我らの陣を訪れてきた。名を宮部継潤と名乗った。彼曰く、桓武平氏土肥氏の後裔で坂田郡醒ケ井の国人土肥真舜の子に生まれ、浅井郡宮部村の湯次神社の僧侶宮部善祥坊清潤の養子となって比叡山で修行をしたのち僧侶となった。
しかし、俗世で手柄を立てたいと言う思いがあり、仕官先を探していたところ大きな戦があると耳にして、実際に戦場に来て我らに仕官したと言うことだ。
「宮部殿の出生的には、我らの敵方である浅井に使えるのが筋ではないか。」
恐らくここにいる皆が疑問に思っていることを三雲定持が宮部継潤に問う。
「それに関しては、某は一度俗世のしがらみを絶って出家した身今この身には何のしがらみもござません。どうか某に活躍の場を与えてくださいませぬか。」
「そなたの熱い気持ちはよくわかった。しかし直ぐに一軍を任せることは出来ない。三雲賢持の配下として、此度の合戦で功を挙げよ。」
一応新たな人材を迎える事が出来た我らは京極勢との合戦に備え堅牢な陣地を作り、兵馬をしっかりと休めており、準備は万端である。
犬上川 京極高広
この合戦によって我ら京極家の行く末が決まるであろう。伸るか反るかの大勝負、必ず勝たねばならぬ。陣太鼓、法螺貝の音と共に先鋒の堀秀基が軍を進め河を渡って行く。
六角勢は不気味な事に渡河中の堀秀基勢を襲うことはなく、岸から離れた陣地に篭っているだけであった。
我らも堀に続いて渡河を行う。反対側の浅井勢に動きが無い。我らよりも大勢である4千の軍勢。動かすのには時間がかかるのは仕方あるまい。
我が軍勢の渡河が殆ど完了した頃、先鋒の堀秀基より戦は既に始まっており、早く敵の側面を攻撃して欲しいとの伝令が届いた。
ちらりと浅井勢を見ると先鋒が既に川を渡切りつつあったので、最も早く渡るように催促しながら、我らも堀勢を援護するために軍勢を整え前身する。
戦所で、堀勢は青地・三雲勢の2つの部隊と打ち合っており、我ら京極勢は両者が堀との闘いに集中している隙を突き、三雲勢の横っ腹を掻っ捌く。
「者共、三雲の小童に戦のやり方を教えてやろうではないか!」
儂の言葉と共に一挙に三雲勢の横っ腹を突き崩す。相手も若いとは言えさすがは六角家重臣である三雲対馬守の倅、部隊の動揺を抑えすぐさま対応して来おった。
されど、少しづつ三雲勢を陣地へ押し返す。青地勢は何とか堀勢が防いでおるので我らは三雲勢に集中出来る。このまま押し込んで、本陣で暴れ回ってやろうではないか。
そう意気込みつつ儂は、戦の大局を知るために、馬から周囲を見渡すと不思議なことに気付いた。我が左翼を務めているはずの浅井勢が一兵も居ないのである。
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