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六角氏軍記~戦国乱世を生き抜きたい~  作者: タスマニア


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美濃のマムシ

史実では斎藤道三に追い出された後、とても苦労する土岐頼芸ですが、この世界ではどのようなことになるのでしょうかね。

 1550年 11月 観音寺城


 籠巻きにされて、城へ送り返された後、後詰めとしてやってきた三雲定持に拳骨と説経を喰らうこととなった。


 曰く、若様が軍勢に着いて行こうとしたことは、賢持のことを信用していないと言外に言っているようなものであり、彼の名誉・面目を大いに傷つける行為であること。


 まだ元服すら行っていない子供を戦場に出すことは、六角が子供すら動員しているという風聞を許すこととなり、六角氏の面目を潰す事となる。


 このような事を言われ二度目の拳骨を喰らうこととなった。申し訳ないと感じた俺は、定持に賢持宛の謝罪の書状を託すことで、反省の態度を見せることとした。この後も三好との戦に一区切りをつけた父や祖父にまた怒られると思うと考え無しに飛び出した事を後悔してしまう。


 何とか帰城してきた、祖父らの怒気を沈めるために自主的に謹慎して居たところ、驚きの報が入ってきた。


 隣国美濃守護である土岐頼芸が家臣の斎藤利政(後の道三)に追放され、六角氏を頼ってきたのだ。


 お陰で俺への説経は軽く済ませられ残りは三雲定持に一任され、3人にこってり絞られる事態は何とか避けることが出来た。


 しかし、三雲定持は城周りの警護の見直しを計ったり、俺への監視を強め前より一層俺に近侍するようになった。お陰で最近は、部屋の中で漢文を読んだり、和歌・漢詩を作ったり、手紙の書き方を叩き込まれている。


 暫くは雌伏の時を過ごさなければならないようだ。



         11月 稲葉山城


 新たな城主を迎えた稲葉山城の一室でマムシと言われる男が思考にふけっていた。その男は、下手に喋りかけようものなら、一刀の元に切り捨てられそうな雰囲気を醸し出している。


 そして今、この男の脳を支配しているの2人の名家の人物であった。1人は自らが追い出した土岐頼芸、もう1人は美濃に逃げ込んできた京極高広だ。


 土岐頼芸は隣国の近江守護六角定頼の娘婿であり、その繋がりは強固なものである。それに対し、京極高広は近江において六角氏と並び立つ京極氏の現当主であり、今や近江の覇者となった六角氏と敵対している人物である。


 ここで選択を間違えると、未だ混乱している美濃に更なる戦乱を持ち込むこととなってしまう。


 より良い選択をするために男は筆と紙を机に並べ現状を整理する為に、今の国内外の状況を書き記し始めた。


 (今の我らの最大の懸念は六角、朝倉などの勢力と再び戦になること。そして最も戦に発展しそうなのが六角ではあるが、今は三好との戦に掛かりきりなので此方に向ける力はそれ程多くは無い。


 その次の朝倉は加賀国一揆と争いが続き我らに構う余裕な無い。六角の仲介によって停戦したとしても、相互の不審によって此方に兵は出せまい。


 嘗て土岐頼芸を担いでいた織田は今や儂の娘婿。今の段階では何処の勢力も土岐頼芸を担いで美濃に攻めて来る力も大義もない。国内の事に専念出来るわい。)


 土岐頼芸によって更なる戦乱が持ち込まれないと確信した男は、次は京極高広の扱いについて考える。


 (今取れる選択肢は幾つかある。1つは公、内密どちらか、または両方で彼を支援し、六角と争わせる。1つは何の助けも出さず、傍観する。もう1つは、捕え引き渡す事で六角との関係改善の一助とする。


 1つ目は、六角との関係が決定的に悪くなる故論ずるに値しない。2つ目の静観する。これがこの中で最も良い選択肢であろう。3つ目、これがこの中で最も悪い選択肢であろう。このような事をすれば儂が六角の威に屈したと取られんわい。さすれば儂も土岐と同じように国内の信用を失いかねん。)


 対六角の方針を決めた男は満足気な顔をしながら立ち上がり、急ごしらえの茶室に向かって歩いてゆく。嘗て自らの主人が書いた鷹の絵を見ながら、茶の湯を嗜むために。



          同月 観音寺城


 斎藤に追い出された土岐殿。何度も追い出され、もう慣れたのかと思って会ってみるととてもくたびれた様子であった。


 何とか手に入れた守護の座を抵抗することすら出来ず、何処の馬の骨ともしれない斎藤道三に奪われたのだから仕方があるまい。


 父や祖父も頼芸の美濃復帰に向けて尽力すると言っているが、三好と戦っている中で背後の斎藤を刺激したくないので恐らく形だけの行動になるだろう。


 史実でも六角氏は三好との戦いで結局土岐頼芸を美濃に復帰させることはできなかった。この世界では、俺の鷹の絵の師匠ということもあり何とかしてあげたいが、先の騒動のせいで行動を起こせないでいる。


 しかし、追い出されたとはいえ名門土岐家の当主である。そして史実で、斎藤氏は一色と言う土岐よりもさらに名門の苗字を名乗らなければならない程の影響力がある。


 これを頼芸を何とかして繋ぎ停め、美濃支配の大義として手元において置くか、道三の国譲状みたいに美濃守護を譲って貰いたい。


 何にせよこのまま近江に逗留してもらい、六角氏の美濃支配の大義名分として、何時か役に立って欲しいものだ。

恐らく斎藤さんは、これ以降暫く出番がありません。よって次出てくる時はキャラが変わっているかもしれません。


ご意見・ご感想お待ちしております。

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斎藤氏は一色と言う土岐よりもさらに名門の苗字を名乗らなければならない程の影響力 ↑ 斎藤氏「が」一色と言う土岐よりもさらに名門の苗字を名乗らなければならない程の影響力 では ここで蛇足ですが 一色を斎…
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