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六角氏軍記~戦国乱世を生き抜きたい~  作者: タスマニア


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甲賀、伊賀国衆服属

最近の寒暖差はおかしい。

1545年10月 観音寺城

 近衛稙家が京に帰ってから近衛家と近しい公家の方々から大量の手紙がやってきた。その内容は殆どがこれからも定期的な支援を要請するものだった。公家に良い顔をして、朝廷との関係を良くしたいと思っていたがここまで支援を要求されるとは思わなかった。


 返信の手紙に僅かばかりの銭、清酒、石鹸等を包み京に送る。これからも定期的に銭をなどを送るために更に金策に励まなくならなくなった。


 さらなる金策、六角氏のために、祖父から国衆を服属させる許可を貰ったので、書状を作成する。そして、三雲定持との連署で甲賀の国衆達に六角氏に服属する事を求める書状を送る。


 恐らく三雲氏が裕福に成った事を知っている甲賀の国衆達は心が引かれるのではないか。1人でもいいので国衆が服属してくれたら、そこへ石鹸などの生産を委託することで銭を稼がせて裕福にする。これを第2の実績として服属を迫ることができるとだが。


1545年10月 望月屋敷

 ここ、望月の屋敷には六角氏から服属を迫る文を受け取った国衆達が話し合うために集まっている。


 「諸君らはこの書状についてどう思う。忌憚無き意見を聞かせて欲しい。」


 望月殿の言葉と共に国人衆が堰を切ったように話し出す。曰く、鉤の陣で我らは自治を認められているので拒否するべき。三雲があれ程裕福になったのだから、この書状にある銭を稼ぐ術も信頼出来るので臣従すべきなど様々な意見が出てくる。


 皆の頭にあるのは三雲家がいきなり裕福になったことだ。それに引っ張られたのか山中家も裕福になっている。両家とも数年前までは我らと余り変わらぬ生活をしていたのが突然良い生活をしているのだ。羨ましくない訳があるまい。この地は余り米が取れぬ故、草や透破として活動する事で銭などを得ている。新たに銭を稼ぐ術ができるなら、妻、子供に贅沢をさせてやれるし、一族も養うことができる。


 某はこの書状を信じ服属しても良いと思っておる。もし約束を反故にされたのなら離反してまた元の暮らしに戻るだけだ。


 一通りの意見が出揃ったのだろう、採決を取る流れになっている。


 「では採決を取ろう。服属に賛成のものは紙に丸を書き、反対のものはバツを書くように。」


 紙と筆が配られ、各々が印を書く。そして籠が回って来て、その中に紙を中に入れていく。そして全員が入れ終わると、望月殿が票を数えていく。


 「丸の方が数が多かったので、我ら甲賀衆は 六角氏へ服属することに致す。しかし、相手方が約束を違えた場合は皆六角との縁を切るように。この内容を起請文に起こし誓ってもらう。」


 この内容には、誰も反対はしない。我々の力の源泉は団結力なのだから。後日、案文をつくり各家に回す事になったのでこれにて会合は解散となる。


 我らも三雲家のように六角氏に服属する事で豊かになれると良いのだが。


1545年 10月 観音寺城

 甲賀へ送った書状への返信が帰ってきた。六角氏へ服属する故、近江守への取次ぎをお願いしたいとの事だった。正直受け入れられない可能性もあると思っていたのだが、そうはならなくて良かった。しかし、何故伊賀の国人衆からも取次ぎを願う書状が来ているのだろうか。


 流石に、伊賀からの書状が来ることは予想していなかった。更にその書状を持ってきたのは藤林家当主藤林長門守その人であった。


 「長門守殿、六角氏へ服属をするということは伊賀国衆達の本意であるのか。」


 「は、その通りでございます。されど伊賀国南部は北畠の影響下にあり、此度六角殿の威光を頼って来たのは北部と中部の国人衆であります。」


 「祖父に早急に取り次ぐ故しばし別室にて待たれよ。」


 長門守が下がったあと、定持をすぐさま祖父の元に走らせる。そして、俺は長門守へ持たせるお土産の選定をする。選び終わったお土産を持って隣部屋に移る。


 「これはこれは、分不相応な贈り物をありがとうございまする。」


 「いやいや、甲賀衆からの書状が届いたと思ったら長門守殿が書状を携えて来られたので驚きましたぞ。」


 「某は甲賀の方にも領地を持っておりまして、そこから三雲領の発展具合を知っておりました。そして、何時か交を結べないか考案しておりました時、甲賀衆が六角殿へ服属するという情報を耳にはさみました故、我ら伊賀衆も同じように服属を申し出た次第。」


 伊賀衆の服属の経緯を聞いていると進藤貞治が長門守を呼びに来た。どうやら、祖父との面会を取り付けたらしい。長門守はこちらに一礼してから進藤貞治に案内を受け部屋から出ていった。


 一刻ほど経ったあと、定持が祖父と長門守との会見の結果を教えてくれた。結論から言うと伊賀衆の服属は認められ、これにより六角氏は甲賀、伊賀北部中部の国衆達を被官として取り込む事になった。


 新しい国人衆の統治には、父義賢が行なう事になったようだ。国衆達を使って金策をしながら彼らを富ませなければならない。自分の言い出した事だがこれは難しい問題になるだろう。

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