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転生吸血鬼さんはお昼寝がしたい  作者: ちょきんぎょ。
本編

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鉄と血の意志


「はふー……緊張したなぁ、もう」


 溜め息を吐きながら、僕は背後に向き直る。

 視線を向けた先、玉座に座っている女性はぱちぱちと手を叩いて、


「なかなかいい演説だったぞ、クロガネ」

「帝王様、僕はただの技術者だからこういうことは苦手だよ」 


 投げつけた嫌みを、相手は笑って受け流した。

 血のように赤い髪をかきあげて獰猛に笑う女帝は、偶然なのだろうけど、僕が元々いた世界では『血』を意味するブルートという名前を持っている。

 女性にしては随分と重い響きだが、彼女には似合っていると思う。事実、帝国の主たる彼女の歩む道は血にまみれているのだから。


「私だって、お前が造るものは苦手だ。かめら、だの、てれび、だの言われてもさっぱり分からない。適当に触るとすぐに壊れてしまうしな」

「はいはい、適当に触ってエラー吐いたらチョップで直そうとする時点で分かってたよ」

「えらー?」

「あー、いいよいいよ、こっちの話」


 かくんと首を傾げる動作はまるで少女のようで、いくつもの血だまりを作ってきた女帝のイメージとは少し離れるが、これも彼女の一面だ。

 なんにでも興味は持つけれど、それを理解しなくても構わないと思っている。細かいことを気にしないのは王の器だとは思うけれど、こちらの苦労が減るわけではない。


 ……僕は指導者向きじゃないしな。


 自分のことは自分が一番良く分かっているつもりだ。

 僕は指導者に向いていない。あくまで技術者だ。他人には欠片の興味もない。

 遺伝子操作をして部隊を作って見たこともあったけれど、自分の子供とも言うべき猟犬たちを見てもなんの感慨も沸かないのだ。せいぜい、成果としての戦働きが気になる程度でしかない。

 人の命を数と物としてしか処理できない僕は、間違いなく将や王としての器を持ち合わせていない。


「ところで、共和国に送り込んだ猟犬部隊は何人死んだ?」

「報告はまだだけど、意外と損耗はしていないはずだよ。照明弾と伯爵を出して、逃げを打つのが予想より早かったし」

「そうか。では、残りの者に褒美を与え、死者には墓を建ててやるがいい。惜しむなよ」

「仰せのままに、っと。みんな喜ぶよ」


 そう、こんなふうに作られた命にすらも気を回してやるような精神性が、僕には無いのだ。

 猟犬部隊に心を与えたのは、ただ数が減ったときに彼らの怒りや悲しみによってさらなる戦果を期待したから、という実験的な措置でしかない。

 僕はそんなものは持ち合わせていないけれど、時に人の死が遺された者に大きな影響を与えることは知っている。猟犬部隊の作成は、そのためのデータ収集以上の意味は無かった。


「ふっ……」


 彼らは思った以上に働いてくれて、洗脳吸血鬼兵の制作に大きく貢献してくれた。僕にとってはそれだけが事実だ。多くの犠牲は出したものの、『黒』の伯爵さえ手中に収められたのだから。

 作った道具が役に立ったのは嬉しい。猟犬部隊は生みの親である僕を慕っているようだけど、それは成果には関係の無いことだ。やる気には直結するだろうから、止めることも無いけれど。

 そうした僕の態度が、数名の離反者を生み出したことも事実だけど、特にそれを止めるつもりもない。

 使えなくなった道具には、興味が無いのだ。


「さあ……僕の価値を定めよう」


 僕の価値は、技術者であるということ。

 この世界は僕が生きていた世界よりもずっとずっと遅れている。魔法という存在がある分、技術の進歩が緩やかだったのだ。

 だけど鉱物はあり、世界の理はほぼ変わらない。つまり科学反応の発見や技術的なものの作成は可能だった。


 そこに魔具(アーティファクト)などのこの世界にある独自の技術も取り入れて、僕は飛行船などの道具を製作した。

 転生する前から持っていた知識や、技能というアドバンテージにより、僕ひとりでも多くの技術をこの世界にもたらすことができた。


 本来の時計の針を大きく動かすような行為だけど、そんなものはどうでもいい。周りなど知ったことではない。

 僕はこの世界で自分の価値を定める。そのために使えるものはなんでも使う。

 その点において、僕と彼女は共通している。目的のためなら手段を選ばない僕たちは、当然のように手を結んだ。


「それでは、世界を相手にしてみるとしようか。クロガネ、期待しているぞ」

「その期待には応えたいね」


 彼女の望み通りに、すべての敵をねじ伏せる。

 それが僕がこの世界で定めた価値であり、誰にも一番を譲れないもの。

 玖音の一員として、誰よりも上に行く。それは別の世界であったとしても変わらない僕の行動理念だ。


「あの日、君と誓った約束の先を見に行こう」

「果たす、とは言わないのだな」

「価値を定めるのは、これからだよ」


 この異世界の価値はどれほどか。

 帝王様の夢の価値はどれほどか。

 転生した僕の価値はどれほどか。


 すべてを決めるために、僕も力を振るうとしよう。

 僕がここにいるのは、望みを叶えるために転生したがゆえなのだから。


今日はちょっとアナウンスがあるので、よければ私のマイページから活動報告の方に目を通してもらえるとありがたいです。それでは、よろしくお願いいたします。

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