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転生吸血鬼さんはお昼寝がしたい  作者: ちょきんぎょ。
本編

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水底の一行

「とにかく、僕たちは魔大陸に渡らなければいけないので、早めに帰してもらえると助かるんですが……」

「まあそう言うな、ゆっくりしていくがよかろう、どうせわらわが許可せねばこの海底都市からは出られぬのだから」

「……監禁、ということですの?」


 さすがに文句を言いたくなったのか、クズハちゃんが眉をひそめて言葉を作る。

 どうやら言葉が通じているところと、リシェルさんが理解していないところを見るに、クティーラちゃんが喋っているのは共和国語のようだ。

 クズハちゃんの隠す気のない不信感を浴びても、小さな女王は涼しい顔で、


「監禁とは、失礼な言い方をするのう。ただ、客人をもてなそうというだけじゃぞ?」

「無理やり連れてきたのは客人、というんですの……?」

「客人に決まっているとも! なにせわらわが認めたのだから!」


 言葉がまったく通じていないけど、とにかく相手は僕たちを開放する気はないらしい。


「クズハちゃん、ちょっと落ち着きましょう」


 とりあえず、ヒートアップしてきたクズハちゃんをなだめて落ち着かせる。

 どれだけ文句を言ったところで、今僕たちを守っている泡がクティーラちゃんの魔法によるものなのは変わらない。

 いくら吸血鬼が頑丈でも、さすがに深海の水圧でも耐えられるかというのは試したくないし、生きていても海面に戻るまでに窒息するのは確実だ。

 当然、僕よりも確実に脆い身体をしているフェルノートさんやゼノくんはひとたまりもない。


「おもてなしとやらを受ければ、帰してくれるということですね?」

「ふふ。そう急くな急くな。わらわの町を見ればきっと気に入って、帰りたくなくなるとも」

「……妙に自信があるのね」

「それは当然! わらわは完璧じゃからな!! 当然、わらわの造る都市も完璧ということだ!!」


 完璧な人はたぶん背後の操舵輪のことを忘れて後頭部を打たないと思うのだけど、ナシと言っていたので黙っておいた。

 どうしたものかと思っていると、ゼノくんが一歩を前に踏む。


「つまり、女王様はこの町の価値を知って欲しいということですね」

「うむ、話が早いのう、そういうことじゃ!」

「では、こちらも女王様の話が突然で混乱している部分があるので、ちょっと話をさせてもらっても構いませんか?」

「ううむ……確かにそうかもしれんのう。よかろう、許す!」


 ゼノくんは女王様にうやうやしく一礼を返し、こちらに向き直ってきた。


「今は彼女の言うことを聞いておくほうがいいと思います」

「……ゼノくん、なにか考えでもあるんですか?」

「この相手……ええと、クティーラ女王はこちらに興味を示して、こっちにもなにかを見せようとしています。それはつまり、俺達の言葉で言えば商談がしたい、ということです」

「商人らしい考えね……でも大丈夫なの、ゼノ。アレどう見ても話を聞かないクチよ」

「箱入りお嬢様がワガママ、なんてよくあることでしょう。具体的になにを求めているかが明確ではないですが……それは彼女が言うように、この町を見て回れば分かるのかもしれません」

「……一度、見てみる、ということですの?」

「うん。お互いになにも知らないままだと商談はできないからね。相手はこちらを引き込んできて、帰るなと言う。勝手な言い分だけど、もうこっちはテーブルにつかされているんだから、なんとかその中で得をしよう」

「……この場合の得は、全員無事で開放、ですね」

「はい。そしてこれは、俺の得手でしょう」


 ゼノくんは商人だ。まだ若いようだけど、いくつもの旅を経験していて、たくさんの商談をまとめてきたのは、ここまでで十分分かっている。

 旅慣れしているのもそうだし、そもそもこの異世界で行商人という職業はかなり危険な部類だ。そのゼノくんが任せていいというのなら、大丈夫だろう。


 なにより、今このメンツの中で冷静に交渉事ができるのはゼノくんくらいのものだろう。

 フェルノートさんは優しいけど真っ直ぐで、腹芸はどう見ても苦手だ。

 クズハちゃんは純粋で交渉には向かず、リシェルさんは交渉以前に会話ができない。

 僕に至っては面倒くさがりなので、交渉なんて仕事はそもそも向いていない。


「まあ、ええと……こう言ってはなんですけど、女王様は純粋そうなので、多少だまくらかしてでもなんとかしてみます」


 ゼノくん本人も笑顔でそういうことを言ってしまうあたり、やはり商人らしく損得はきっちりと考えている。


「……では、少しの間ここに滞在しましょうか。リシェルさんには僕から伝えておきます」

「お願いします、アルジェさん。なるべく早く話をまとめるから、と言っておいてください」

「分かりました。では、そっちはゼノくんにお任せします」


 ゼノくんはにっこりと笑うと、自分が着ている服を軽く整えて、クティーラちゃんの方へと歩いていく。

 滞在がどれくらいになるのかは謎だけど、その間の衣食住なども、ゼノくんならきちんと話を通してくれるだろう。

 僕の方は、いつも通りに話が通じずにきょとんとしているリシェルさんに説明しつつも、これからのことについて考えていた。

 話がまとまるまでどれくらいかかるのかは謎だけど、その間は暇だ。

 リシェルさんのことは気になるけど、動けない限りはどうしようもない。手伝えることがない限り、やることはない。

 どこか、ゆっくりお昼寝ができるところがあればいいのだけど。

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― 新着の感想 ―
RPGでパーティーに商人を入れる理由がこれやねww
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