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第七十五話:魔法の練習

 話していて思うけど、よくもまあこんなにもすらすらと設定が出てくるものだ。

 確かにアリスはきちんと設定を練ったとはいえ、そこまで細かく決めていたわけではない。

 ドラゴンのくだりとか、重要な部分以外はこんな感じだろうと割と適当に決めたものだ。

 それなのに、聞かれたら「ああ、この話か」とすらすらと設定が思い浮かんでくる。

 それどころか、設定した覚えのない、例えば好きな食べ物はなんだとかそう言うものまですらすら出てきた。

 あれか? 実際に書き込んではいなくても、俺の想像の中の設定がそのまま反映されているのか?

 いや、それはおかしい。だって、考えてなかったから設定を書かなかったのであって、別に頭の中でこうと決めていたわけではない。

 それなのに、「好きな食べ物? ああ、肉!」って感じに答えられるわけがない。

 いったいどういうことなんだろう。今考えたことがそのまま設定になってるんだろうか。

 確かに、好きな食べ物は何と聞かれたら、なんだろうと考えるだろう。そんな俺の深層心理の考えが設定として口をついて出たってことなのだろうか。

 だとしたら、恐ろしいな。

 いくら自分の考えだとは言っても、無意識のうちに思ったことがそのまま自分の設定になるって怖すぎだろ。

 ただでさえイケメン好きなんておぞましい設定があるのに、これ以上悩みの種を増やさないでほしい。


「どうかした?」


「いや、何でもないの……」


 顔に出ていたのだろうか、アルマさんが心配そうに顔を覗き込んできた。

 まあ、設定が無尽蔵に増えるっていうのは怖いことだけど、どうしようもないことだから置いておくとしよう。

 今はそれより、アルマさんの育成をどうするかということだ。

 このままただ街道を走っているだけでは魔物と遭遇する確率はかなり低い。かといって、シリウスの救出を急いでいる今、わざわざ森とかに潜ってレベル上げをしに行くのも違う。

 王都に着くまでの間って感じで言ったのに、これでは何の意味もないんだよなぁ……。

 一番楽なのは、道中で偶然にも魔物が現れたりすることだけど、あんまり弱いと経験値を稼げないし、そもそも護衛の二人が真っ先に狩ってしまう気がする。

 ある程度の数がいればいいんだけど、果たして街道にそんな都合よく魔物が現れるだろうか?

 ……ないな。


「お嬢様、そろそろ町に着くようですぞ」


 そうこうしているうちに、町に着いてしまったらしい。

 一応、この馬車は王都から離れるように移動していたようだけど、俺が王都にシリウスがいるかもしれないという話を信じて、王都の方に舵を切りなおしている。

 もちろん、まだ王都に着くには時間があるけど、そろそろ日も暮れそうだし、今日はこの町で泊ることになりそうだな。


「アリス、宿に着いたら【治癒魔法】の使い方教えてね」


「え? あ、はいなの」


 つい反射で返事しちゃったけど、どうやって教えればいいんだ。

 確かに、俺は【ヒールライト】も【エリアヒール】も使えるけど、それは『スターダストファンタジー』のスキルである。この世界の【治癒魔法】とは違うものだ。

 マリクスの兵士達が【弓術】を覚えられたように、練習すれば使えるようになるかもしれないけど、俺はそもそも【治癒魔法】のやり方を知らないのである。

 【弓術】は一応弓を使っていたから教えられたけど、【治癒魔法】なんてどうやって教えればいいんだろうか。

 それとも、【ヒールライト】も教えれば習得できる?

 もし習得できるのなら、レベルアップで取得する意味がほぼなくなるけど……。

 一応やるだけやってみるか? 教えてくれと言われてるし、やるだけやってみるとしよう。


「ジョン、宿は取れそう?」


「はい。町の町長に話を通して、泊めていただくことになりました」


「え、町長の家なの?」


 てっきりそこら辺の宿屋に泊ると思っていたんだけど……でも確かに、アルマさんは貴族だし、普通の宿屋には泊まれないか。

 高級宿屋とかならワンチャンありそうだけど、それより先に町長がもてなすことが決定したらしい。

 そう言えば、貴族とは思っていたけど、どれくらいの爵位なんだろうか。


「私も泊まっていいの?」


「もちろんよ! いいわよね、ジョン」


「はい。すでに話は通してあります。ただ、アリス様はお嬢様の従者という扱いになってしまいましたが」


「まあ、それくらいならいいの」


 まあ、何の後ろ盾もない冒険者よりも、そっちの方が自然だしちょうどいいだろう。護衛というには幼すぎるしな。

 そう言うわけで、町長宅へと馬車を進める。

 町自体はそれなりの規模で、町長の家も立派なものだった。

 お風呂あるかなぁ。ぜひとも入りたいところだけど。


「ようこそお越しくださいました。アルマ様、本日はどうかごゆるりとおくつろぎください」


「ありがとう。そうさせてもらうわね」


 出迎えてくれたのは少し派手な服を着たおじさんだった。

 それなりにはぶりはいいのかな? 服といい、調度品といい、素人目にもいいものに見える。

 試しに鑑定してみたら、金がふんだんに使われているようだ。

 成金趣味だなぁ。シュテファンさんはこんなことしてなかったんだけど。

 とりあえず、アリスのイケメンレーダーに引っかからない人で何よりだ。


「さて、アリス、さっそく行くわよ」


「行くってどこへなの?」


「決まってるわ。庭よ」


「庭をご覧になりたいのですかな? 我が家には自慢の庭がありましてな、どうかその目で楽しんでいただければと」


 町長が少し得意げにそう話す。

 多分、庭に行くのは魔法のやり方を教えてほしいって意味なんだろうけど、そんな場所でやって大丈夫かな……。

 まあ、多分そんな無茶はやらないだろう。危なそうならやめさせればいいし。


「ほら、アリス、早く!」


「ああ、ええと、お待ちくださいなの」


 一応従者らしく振舞っておこうかとも思ったけど、口調のせいで台無しである。

 一応、【礼儀作法】のスキルは生えてきたっちゃ生えてきたんだけど、レベルはなぜか0だった。

 これって、知識としては身についているけど、実際に使うのは難しいってことなのかな。

 他の異世界製のスキルは最初からレベル1はあったのに、0があるとは思わなかった。

 まあ、これに関しては諦めた方がいいかもしれない。あるいは、レベルアップの恩恵で無理矢理取得するかだな。


「わぁ、綺麗!」


「お褒めに預かり光栄です」


 庭は確かに綺麗だった。

 色とりどりの花が咲き誇り、かなり丁寧に手入れされていることがわかる。

 こんな場所で魔法の練習なんてしていいのだろうか。暴発でもしたら大惨事な気がするけど。


「よければお茶を用意しますが、一緒にいかがですかな?」


「いいえ、やりたいことがあるから遠慮しておくわ」


「そ、そうですか……」


 一緒についてきていた町長がしょぼんとした顔をしている。

 まあ、この庭は自慢したくもなるよね。俺だって綺麗だと思うもん。

 でも、アルマさんの興味は魔法にしかない様子。割とおてんばなのかもしれない。


「それじゃあ、さっそく教えてくれる?」


「教えるのはそこまで得意じゃないから、そのつもりでいるの」


「わかってるわよ」


 わかっているのか。それはそれでなんか寂しい気もするけど……。

 まあ、それはどうでもいい。今は魔法についてだ。

 俺はフレーバーテキストを参考に、【治癒魔法】というか【ヒールライト】の説明を始めた。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒールライトだけでも有ればこの世界での生存率が段違いだろうなぁ そうかウサ耳メイド……
[気になる点]  結局レベルアップ分の経験値は元々持っていた1レベル分のみ(ˊ̱ωˋ̱)これは“弓術”のように指導して“治癒術”のスキルが生えるかどうかに魔改造の期待がかかって来ましたな、アルマちゃん…
[一言] え!?一時的とはいえ従者になるんですか? じゃあメイド服を着ましょう!きっと似合いますよ
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