前や後やのあれやそれ
「ジャンナ。君に王妃になって欲しい」
はい。マリーと森から帰ってきて事後処理にかかったとき、決めなきゃいけないのはこれ。
実は婚約者は前から決まってた、ってことにするなら、どっちかとはね。
今この場で確定しなきゃっての急な気もするけど、今までの期間合わせると猶予は十分あったね?
もっとも今回は消去法…
つーか、そもそも、私と婚約するのは誰が、って話が出たら…
ナイアス・・・首を横に高速回転させてますが何か?
ウラノス・・・非常に顔色よろしくなく「で、できれば遠慮させてもらいたいんだが…」
カトル&ポルク・・・「「パスパスパス、パース!」」
…… マリー、そんな可哀想な子を見る目で見ないでくれる…?
ちょっぴり前世でのトラウマが疼くから…
ちくしょー、あんときの合コン~!
ただまあねぇ。 ウラノスがびくつきながら説明してくれたとこによると、
「お前のことは別に嫌いじゃない。むしろ今でも好意的には思ってる。
ただし! あの学園でのアレ…。お前と改めて親しくしたら、また勝手に体が動いてくようになりそうで…」
「お前が悪いんじゃないし、好きでやってたんじゃないのも分かってる。分かってるんだが…!」
あー…、でもこれは仕方ないかも…。 完全にトラウマになってる…。
まあ、事情知ってた私達でも、あの中の人生活ツラかったもんね…
えー? でもそしたらワタシ貰い手は…
え? 王子、私でOKなの? でも…
…… いや。感謝するところだとは分かってますよ?
ただなあ。ウラノス達ってそれなりにはメンタル強いんだよね。
まがりなりにも王子の側近候補。それなりに権力ある貴族の子弟。
それが揃ってここまで逃げ腰なのに… ナゼ、そんなキラキラ笑顔…? どんなメンタル?
「君と一緒なら、学園時代みたいに予想外なことが起こりそう(で楽しそう)だと思うんだ。
うん、ホントあの時はハラハラドキドキしたなあ。 あはははは~」
ちょっ… 今、なんかロクでもない副音声聞こえた! 『空気で会話』スキルは健在です…。
楽しそうとか言った!?
ええーっ! アレ楽しかったの!?
ちょっと待て… メンタル強いのは結構だけど… これってナントカと『紙一重』…?
つーか、王太子、次期王様がスリル好きって…
止めろ―っ! つか、コイツ野放しにしちゃいけねえ…
でもまあ、「君となら支え合って助け合っていける気がするんだ」 とか、
「君なら、どうなるか分からない状況でも、いろいろな手段を思いついてくれて頼もしいと思うんだ」 とも。
ホッ。 一応破滅主義ではないですか。良かった~
うん。 あの状態で支え合って助け合ってたからね。一番、頼り頼られたとは思うかな。
他のとも、こう、戦友的な信頼や絆はガッチリと。
うん。恋愛的なヤツはプチッとなったようだけど…
シクシク…。でも公爵家の養女になって学園での騒動に巻き込まれた以上、あとは王子との婚約しか道が無い。
それにコレ放っておいて変な方に行かれても、ココロ痛みます…。
いや自滅ならまあいいけど、国が荒れたり、国民が迷惑こうむったりしたらさぁ…
権力と、能力もあるし…
ナントカとハサミは使いよう? せいぜい真っ当に進んでくよう、頑張ってエサちらつかせてみよっかな…
王妃の仕事は王の操縦デス、ハイ…。
気を取り直して、マリーも相手決めようね。
あんなのやってたから、結婚するならその体験を共有出来る相手がありがたいよね。
ウラノスは兄で除外だし、双子?
どっちと? って問題があるし、そもそも伯爵家の次・三男。公爵令嬢にはちょっと…
残るは… あ、ナイアスが申し込んだ。
ナイアス、中の人状態の時に、励まされたりして、感謝してるって。
え? 私も励ましてたけど?
あと、強制力で私と意に沿わないイチャイチャやらされてたの、邪魔してくれてたのも、と。
あ~…。 まあ、そういうシナリオではあったけど…
で、今後とも支えてくれないか、って。
ん? ここは俺に付いて来い!って言うとこじゃ…? せめて一緒に歩め。
まあ、今さらか。
えっと、マリー? そんなにこっち気にしなくていいからね。
さっきそいつに全力で断られたことなんか、これっぽっちも気にしてませとも。 ケッ。
そんなこんなで、王子と私、ナイアスとマリーの婚約が決定。
残りは、あのゲームの最中、私たちの行動に、疑念を覚えていたお嬢さんたちに、あとで話持ってってみるらしい。
そだね。彼女らもちょっと戦友みたいなものだし、能力も信頼できるしね。
うまくいくといいね~
****
卒業式典で、なんとか今までの行動、フォローは入れられた。
あの様子だと、おおむねは誤魔化せた様子。
まあ、これからの行動でもっと説得力は出してかないといけないだろうけど…
ひとまずは終わった…
式典後、みんなして王城に引き上げてきて、今度こそ終わったーって、親御さんたちと喜び合って。
私も混ざりつつ、こんな時には… 祝杯じゃーっ!
うん。前世で大きな仕事終わった後、飲んでたの思い出すわ。
テーブルに置いてたワイン、勝手に注いでたら… ん? マリーもいる?
えーっと、ちなみに以前のお年は…? 成人してた? じゃ、いいか。
ちなみにこっちでの成人は半年後。
でも! ようやく終わったんだから、今日くらいいいじゃないかーっ!
一気に空けて~ あ、ちょっとキた…
「(ゲーム終わって)よかった。(強制力切れて)よかったよぅ…」 えぐえぐ…
マリーもつられて「やったー! なんとかなったよぅ…」 うわーん…
ああ、ちょっと涙腺が。 いや前世の経験からしたら、そこまで醜態は晒さないはずですよ。
それだけなんとかなったことに安心したんだってば。
酔ってんじゃないよ。
あ、王子達もつられて飲みだした。
おや王子、珍しくハイね。 人の手握ってぶんぶんしてる。
ナイアスはマリーの手でやってるし、ウラノスは肩バシバシと。痛そう…
カトルとポルクは、いつも通り二人で走り出して… あ、柱にぶつかって目回した…
あ、王様たちの視線、ちょっと生温くなってきた…
そろそろ止めなさいって? はーい。
そんなこんなで、本日は王城にてお泊り。 つーか、いずれこっちがお家。
「大丈夫ですか」
あ、侍従長さん。お水持ってきてくれたんだ~。
まあ、出来るならお話も、かな。
「はぁーい、大丈夫で~す」
お前やっぱ酔ってんじゃ… って目は無視して。
「どうにか大丈夫でした。ご心配おかけしました」
あ、一瞬表情消えた。
「ええ。こちらも安心いたしました。できるなら皆さん幸せになっていただきたいですからね」
うん。 いざというときのお願いはしておいたんですね。
何って… 強制力が、ずーっと消えなかったときの、身の振り方。
ゲームの映像、マリーと思い出した限りは、せいぜい結婚式まで。 その後の描写は無し。
なら。 結婚式終わって、王太子妃になって、公務するようになって、それでも言動が学園時代と変わらなかったら…
うん。 その時は、できればあんまり痛くないようにしてほしいけどね。
でも。 私もずーっとそんな醜態晒して、周りに迷惑かけるようなことは、本意じゃあ、ね。
うまくいくなら、他のはヒロインが消えたら元に戻る可能性もあるからね。
公爵様からゲームの話があったであろう後、王城に行った時に ちょっとね。
王妃教育やってる間に、それなりに知り合いにはなってましたからね。
一番実行しやすいであろう立場だから。 王様や公爵様に宛てた同意書も託して。
うん。でも無事、強制力から解放されたからね。
よかったよかった。
今後は、健全な普通のお付き合いでお願いしますね。




