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58 フクラキノコ狩場

58 フクラキノコ狩場


 偶然出くわしたクリンとコインコは、俺を目にした途端、魂を抜かれたように真っ白になる。

 よく見ると、ふたりは手を繋いでいた。


「おっ、ずいぶん仲良しになったんだな」


 俺は自分のことのように喜んでいたのだが、なぜかふたりは毛が逆立つくらいにビックリする。


 「さ、最低……!」と冷たく言い放つ様子のクリン。

 「だ、誰のせいだと思ってるんですの!?」と呆れを通り越しているコインコ。


「え? またなにかトラブルか? だったら俺が……」


 それは親切のつもりだったのだが、なぜかふたりは逆鱗に触れられたように叫んでいた。


「「あなたがいちばんのトラブルよっ!!」」


 クリンとコインコは息ピッタリの捨て台詞の吐いたあと、背を向けてお揃いのいかり肩で去っていった。


 少し離れたところには魔術科の生徒たちがいて、ふたりのあとをぞろぞろとついていく。

 魔術科の生徒たちはわざわざ振り返って、俺を責めるような一瞥を投げていった。


 俺は後ろ頭をボリボリ掻きながら、彼らの後ろかについて歩きだす。

 別に後を追いかけてるわけじゃなくて、俺は昇降機ホールから2階に行きたいんだ。

 彼らも昇降機ホールに向かっているようなので、たまたま行き先が同じというだけのこと。


 鳥カゴのような昇降機に入ると、別の鳥カゴの中にいるクリンとコインコと視線がぶつかる。

 ふたりとも手を繋いだまま、俺のことをめちゃくちゃ睨んでいた。


「うーん、なんだかよくわからねぇけど……まあ、あのふたりが手を繋ぐくらい仲良くなってるんだったらいっか」


 すると、俺にしがみついたままのミントが横槍を入れてきた。


「えっ? デュランダルくん、知らないの? 学年代表になったペアは、塔の探索のときに手を繋がなきゃいけないしきたりがあるんだよ」


「へんなしきたりだな」


「いちおう理由があるんだけど……って、そんなことはどうでもいいよ!

 それよりも、ありがとう、デュランダルくん! ずっとお礼が言いたかったんだ!」


「それで俺を探してたのか。ってことは、ステーキコンテストがうまくいったんだな」


 コンテストでの出来事を思いだしたのか、ミントの瞳孔がひときわ大きく開く。


「うまくいったなんてもんじゃないよ! デュランダルくんのステーキは賢者様もモリモリ食べてくれたんだ!

 しかも食べた賢者様たちは、みーんないなくなっちゃったんだよ!」


 ミントは興奮しすぎていて、話が見えてこない。

 ステーキを食べていなくなるというのがよくわからないな。

 ちょうど昇降機が2階に着いたので、俺は鳥カゴから出て、エントランスに向かいながら話を続けた。


「まあ、うまくいったんだったらよかったよ」


「うんっ! もうボクらをいじめる賢者様はいなくなったし、来年からはコンテストを見直すらしいって!

 この世界じゃ賢者様に目を付けられたら終わりなのに、許してもらうどころか、まさか逆にやっつけちゃうだなんて……!

 ああん、デュランダルくん最高! まるで夢みたいだよ!」


「俺はなにもしちゃいないよ。熟成肉を作っただけだ」


「あっ、デュランダルくんの熟成肉は、グルメシア様に献上されることになったんだよ!

 グルメシア様が自らが食べてみたいっておっしゃったんだって!」


「それって、そんなにすごいことなのか?」


「すごいなんてもんじゃないよ! グルメシア様は世界じゅうのおいしいものを食べ尽くしてて、もう自分から食べ物を欲しがることなんてなかったのに!」


「そうか、よかったな」


「そんな、他人事みたいに……!」


「グルメシアとやらよりも、俺は今日の晩飯のほうが気になるよ。

 エントランスにも着いたし、探索をしたいから、そろそろ降りてくれよ」


「えーっ、もうちょっといいでしょー?」


「なんでだよ」


「だってデュランダルくんってば、抱き心地が……」


 しかし次の瞬間、ミントはなにかを思いだしたかのように、「あっ、そうだ!」と俺から飛び降りた。


「そういえばフクラキノコを採りに行かなくちゃいけないんだった! じゃ、またね、デュランラルくん!」


 ミントは舌たらずなのか、俺の名前を噛んでいた。


「デュランでいいよ、先輩」


「あはは、じゃあね、デュランくん!」


 バイバイと手を振って、ひと足先に走り去っていくミント。

 俺はそのあとを追うようにしてエントランスを抜け、2階の廊下へと出た。


 この塔はエントランスは生徒が大勢いるのでモンスターが襲ってくることもなく、安全地帯とされている。

 しかしエントランスから一歩廊下に出ると、モンスターがいる地帯になるのだが……。


 さすがに階層が低くて人の行き来も多いせいか、雰囲気はエントランスとあまり変らなかった。

 それどころか、エントランスに入りきれなかった出店が軒を連ねている始末。


 俺は、街の大通りのように賑やかな廊下を、おのぼりさんのようにキョロキョロと見回す。


「とりあえず、人気のないところに行ってみるとするか。そしたらモンスターがいるかもしれない」


 適当に通りを歩きはじめると、別の部屋に繋がる廊下の前で、人だかりができているのが見えた。

 そこには、さっき別れたばかりのミントの姿もある。


 門番のようなごつい剣士に食ってかかっていた。


「ここの入場料は昨日まで千(エンダー)だったじゃないか!

 それなのに今日になっていきなり値上げだなんて、ひどすぎるよ!」


 見上げると、部屋の上には手作りの看板がかかっていて『フクラキノコ狩場』とある。

 どうやら、狩場の入場料のことでモメているようだ。


 ……っていうか、塔はみんなのもののはずなのに、入場料を取るヤツがいるんだな……。

 新鮮な驚きとともにやりとりを眺めていると、門番の剣士は「それがどうした」みたいな横柄な態度でミントに言った。


「ひどい? 何がひどいんだよ? 嫌なら入らなきゃいいだけのことじゃねぇか」


「そんな! 夕方までに、ここのキノコを酒場に持って帰らないといけないんだよ!」


「そうかい、だったら1万の入場料を払うんだな」


「いくらなんでも足元を見すぎだよ! 10倍だなんて!」


 まわりにいた入場希望者たちも「そうだそうだ!」と賛同する。

 しかし門番の剣士は彼らを乱暴に突き飛ばして追い払う。


「うるせぇ! 商売の邪魔だから、入場しねぇんだったらあっちへ行け!

 文句があるんだったら俺じゃなくて、ここをシメてるスターフィッシュ様に言いな!

 スターフィッシュ様はいま療養中で、金が必要なんだ!」


「……ふーん、そういうことだったのか」


 俺がひょっこり話に加わると、門番はサッと青ざめた。


「ひっ!? ひいいっ!? お、お前は……でゅでゅでゅデュランダルっ!?」


「おい先輩、塔はみんなのものだろう? 金なんか取らずにタダにしろよ」


「そ……そそそ、それは……!」


「お前、『ダイブフレンズ』か? だったらスターフィッシュに言っとけ、文句があるんだったら俺に言えってな」


「はっ、はひぃっ! どどど、どうぞ、お通りくださいっ!」


 上級生の門番はサッ! と横によけて、狩場への道を開けてくれた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 思い出せた、料理娘だ。(ミントだしなー。) [気になる点] ん? 改訂版? 感想と内容がズレてる……順番変更とかもあるな……。 [一言] 賢者を更迭出来る権力者がデュランを認めた! (認め…
[良い点] 清々しいほどボコボコになってく [一言] 詠唱のフリガナの手間がすごそう
[一言] スターフィッシュが無様に負けちゃったから取り巻き達もこれから酷い目にあうんでしょうね。
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