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43話

次話からようやく決闘が始まります。


レグルスの寮では不穏な空気が蔓延していた。訓練も終わり何故かレグルスの寮に帰ってきた二人に齎された事実に疲れも吹き飛んだのか表情を無くしたアリスとサーシャ。


流石のレグルスもこの場面で眠いなどと言う度胸もなく、口を閉ざしていた。沈黙が支配する部屋で初めに口火を切ったのは、やはりアリスとサーシャであった。


「で?」


抑揚のない声で尋ねたアリス。人間とは本当に怒ると感情を無くすのかと、レグルスは実感していた。


「で? で?」


更に続くサーシャにもいつもの様子は見られない。レグルスとラフィリアを交互に見返し早く続きをとばかりに視線で促してきていた。


「ラフィリアと……契約したのね?」

「で? で? で?」


静かな呟くアリスと壊れたように『で?』を繰り返すサーシャにレグルスは今すぐに逃げ出したい衝動に駆られる。


(やばい……言うタイミングを間違えたか?)


内心で焦るレグルスは隣に座るラフィリアへと助けを求めるように顔を向けた。すると、視線を感じたのかラフィリアは呆れた様子で溜息を吐くと二人に向き直った。


「はぁ、レグルスさんに任せると……バカですね」


何時もはレグルスを肯定するラフィリアであったが、この時ばかりはそんな愚痴が漏れ出した。まるで可哀想な子を見るようにレグルスをチラリと見つめるとレグルスも情けなく視線を返した。


「ちょ!!」

「ん?」


突然聞こえてきたアリスの声にレグルスは首をかしげる。すると、何かを堪えるようにふるふると震えていたアリスはキッと睨みつけた。


「2人で見つめ合って何なのよ!?」

「そ、そうだよ。やっぱりそうなんだ!」


アリスとサーシャは聞かされた内容から最悪の予想を思い浮かべていた。今も彼女達の視点で見ればまるで二人が見つめ合っているように見えたらしい。


「アリスさん、サーシャさん。落ち着いて下さい」

「なによ、ラフィリアの勝ちで終わりよ。他になにがあるの」

「酷いよ、ラフィリアちゃん」


続きを聞きたくないとばかりに首を振る二人。そんな様子を見たラフィリアはもう一度レグルスを見ると再び溜息を吐くのであった。


「聞いてください。契約した事については理由があります」

「お互いが……好き同士なんでしょ!! もういいわ」

「聞きたくないよ」


既に二人の中ではそういう風になっているらしい。瞳を濡らして話す二人はこのままでは大変な事になりそうな雰囲気である。


「いえ、そもそもレグルスさんの説明が省きすぎていましたので……」


そう、その言葉通りにレグルスは何を思ったのか二人に対して『俺、今日ラフィリアと契約したから!》と、まるで何でもないように告げた事が原因である。


事情を知らない二人にしてみればとんでもない内容である。ラフィリアが気付いた時には既に先ほどの状況が作られていたという事だ。


「へ? 説明を省く?」

「ど、どういうこと!? ラフィリアちゃん!」


思わぬ言葉に驚いた様子の二人はそう問いかけた。何か事情があったのかもしれないと、一株の期待を込めた視線をラフィリアに送っていた。


だが、その視線には期待と共に不安が見え隠れしている。ラフィリアは頷くと契約した経緯を説明し始めた。


「そもそも、死神と呼ばれる人にレグルスさんが襲われていた所に私が行ったのが始まりですね。それと、肝心な部分が抜けています」

「死神? それってとんでもなく強い奴よね?」

「な、何でそんな人が?」


授業でも習った五代組織の一角、死神。二人のペアで他の組織や国と渡り合うとんでもない実力者という事は理解している。


二人にしてもいきなりそんな大物の名が出てくるとは思っても見ない様子だった。


「ええ、その死神の説明をまた後でします。本気を出したレグルスさんが負ける程の相手でして、私とレグルスさん、そしてロイスさんにマリーさん共々殺されそうになった所で契約したという経緯です」


かなり掻い摘んでの説明ではあったがその効果は抜群であった。二人はそもそもレグルスが本気を出して勝てない相手という事に驚き、殺されそうになっていた事にも驚愕していた。


「その状況での突破口が契約だったということも要因です」

「そ、そんなに死神って強いの?」

「お兄ちゃんが負けるってそんな……」


どんな場面でもダラダラしながらも勝っていたレグルスが負ける相手。アリス達はそんな規格外の死神の強さに固唾を飲んだ。


「正直に言うとあのままでは勝てるビジョンが全く沸かなかったな。相手は更に竜姫と契約してたから手の出しようがないな」


レグルスもまたその時の事を思い出したのか会話に入ってきた。一般的な話になるが、竜姫と契約した滅竜師の力は抜きん出たものである。


それもハーローという強大な滅竜師が契約したとなれば尚更である。


「そ、それで契約というわけね」

「でも契約かぁ……」


そんな状況ならば契約という選択を取った事に非難は出来ないとばかりに発した言葉。


感情を抜きにすれば、契約しなければ殺されていたのだから理屈では納得するしかないと二人は一度大きく深呼吸をした。


だが、彼女達の中でも中々折り合いがつかない事でもある。契約とは滅竜師と竜姫が生涯を共にする相棒パートナーである。


複雑な表情をしたままアリスは続きを促した。


「それで、死神は何で来たの?」

「私としても要領を得なかったのですが、レグルスさんを契約させる為と言っていました。言葉を借りると竜王の棲家に封印されている竜王の封印を強固にするためと……」


ラフィリアとしてもハーローの言葉に対して理解はそこまで及んではいない。信用できるのか? といった部分でも首を傾げざるおえないのだ。


だが、レグルスの能力と自分自身にある竜姫の力にスポットを当てれば納得する部分も出てくると何とも言えない事である。


「何だかよく分からないわね」

「そうだよね」

「レグルスさんと私達がサラダールと関係しているという風に聞こえましたね」

「まあそんな感じだった。聞く前に逃げられたんだが」


ここでようやくレグルスが会話に加わって来た。どうやらアリスやサーシャが落ち着くのを待っていたらしい。


「って事は?」


ここまでの流れでレグルスとラフィリアが契約した経緯はわかった二人。そして、ラフィリアが初めに話した肝心な所に焦点を当てた。


ラフィリアはそこで微笑むと二人に向かって話し始める。


「死神はレグルスさんが複数の竜姫と契約できると言っていました。それが肝心な事です」

「「な!?」」


サラリと呟かれたとんでもない発言に言葉を上げた二人。だが、そんな驚愕もすぐに消えた。話の流れから考えればそんな事もあるのか。といった具合である。


「それって……確証はないわね? レグルス」


先程まで見せていた暗い表情は消え失せ、真剣な眼差しでレグルスを見つめるアリス。


「ああ、俺も分からんな。だが、試してみるか?」


レグルスはそんな言葉を呟いた。契約出来るのか分からないのなら試してみれば早いだろうという単純明快な発言である。


ラフィリアと契約した彼としては今さらアリスやサーシャと契約する事に抵抗はなかった。それ程に彼女達とレグルスの関係は等しいものであるようだ。


「お兄ちゃん?」

「契約ってこと?」

「ふふ、やはりそうきましたか」


アリスとサーシャは聞き返す。そして、ラフィリアは薄く微笑むのみであった。


「ああ、契約だ」


アリスとサーシャはお互いに視線を合わせる。そんな様子を暫くレグルスは見ていたのだが、不意に二人はくすりと笑う。


「はぁ、私はいいわ。こんな流れでするもんじゃないでしょ?」


最初に口火を切ったのはアリスであった。その表情には全く、といった具合である。さらに続くように


「私もそう思う! お兄ちゃんは乙女心を分かってないんだよ!!」

「いきなり何だよ?」


いつもの調子に戻ったらしいサーシャは人差し指をレグルスに突きつけると声を張り上げた。よく分かっていないレグルスを見てアリスとラフィリアもやれやれといった風に視線を合わせている。


「うーん、三人で一気にすればいいだろ?」


ピンと来ないレグルスはそんな発言をした。すると、アリスはキリッと眉尻を上げるとレグルスの元へとズカズカと歩み寄って行った。


「いい、契約は結婚と同義よ! 確認でしてみました、ってそんな訳あるか!」

「うお!? なんだよ」

「そんな適当にやるもんじゃないってことよ」

「そうだそうだ!」

「レグルスさんは相変わらずですね」


何故かラフィリア迄もが加わりやれやれと肩を竦める三人は既に先程までの険悪ムードは消えていた。


「わ、私はレグルスにちゃんと契約してくれって……い、言われないとやらないわよ」

「お兄ちゃんはそういう所が抜けてるよ、全くもう」


アリスは顔を赤らめながらそう呟く。それに続けてサーシャもそう話した。そんな様子をラフィリアは静かに見守っていた。


ここまで来ればようやく何を言いたいのか理解したレグルスであった。ようするに、しっかりと手順を踏んで契約しろ、という事である。


だが、彼女達には肝心な部分が抜けている。言い出しにくそうにレグルスは話した。


「でも契約できなかったらどうすんだよ?」

「その時はその時よ! どっちみち私はレグルスと一緒よ」

「ふむふむ、アリスちゃん言うねぇ〜。私もお兄ちゃんと一緒だよ! 妹だからね」

「ちょ、サーシャ……うぅぅ」


自分の発言を持ち出される形になったアリスはジト目でサーシャを睨みつける。だが、恥ずかしそうにしながら弱々しくである為か凄みが感じられない。


「アリスちゃん可愛い〜」

「さ、サーシャ……」

「プロポーズだよ、今の」

「くっ。サーシャ! ちょっーー」


サーシャはすぐさまアリスから距離を取るべく態勢を整え、アリスもまたサーシャの元へと向かおうとした時


「分かった分かった。そう言う事なら任せろ」


放っておくとまた面倒な事になりそうな予感がひしひしと伝わってきた為にレグルスは声を上げた。


ピタリと止まるアリスとサーシャ。目をキラキラさせながら振り返ると期待した様子でレグルスを見つめている。


「期待してるわよ」

「今から楽しみだよ」

「レグルスさん、頑張って下さいね」


口々に告げられた言葉にレグルスは面倒そうな、それでいて何処と無く満足した様子で頷いた。


「ま、本気を出したら俺は凄いからな」

「なら、明日の決闘も本気を出しなさいよ!」

「手を抜いたらすぐ分かるもんね」

「ふふ、いつも通りで何よりです」

更新が遅れてすみません。。バタバタしておりまして、出来るだけ頑張ります!!

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