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おまけ ストレッチパワーがたまってきただろう?

昨日の侵入成績。

結晶槍×2、混沌、苗床。

ガシ、ボカッ 私は死んだ。

肩こりがひどい


土曜日のある日、家庭菜園に新しい畝を作ろうと鍬を振るっていたときに自覚した。

男の子時よりも身長が伸びたので鍬は以前より軽く感じるのだが、代わりに胸部にデッドウエイトがついたため、

鍬を振るうたびに肩に負担がかかってくるのだ。

時おり肩をもみほぐしてみるのだが、血行が一時的に改善されることで気持ち良いってぐらいで解決には至ってなかった。

正直つらい。

我慢の限界を迎えるのも時間の問題だろう。

それだけじゃない、女の子になってから1ヵ月と少しで徐々に大きくなってきている気がするのだ。

脂肪の塊なので当然重量も増しているはずだ。

手遅れになる前に対策するべきだ。

このままではいずれ地球の重力に肩を殺されかねない。

誰かに相談すべきかと身の回りの女性陣を頭に思い浮かべた。


1人目、母さん

胸は平均的なサイズのCぐらい。悩みは理解できるだろうが、変態なので却下。


2人目、夏美

胸はほとんどない、悩みは理解できないだろうし、弄られるので却下。


3人目、加奈子ちゃん

胸のサイズはA。胸が小さいことを気にしているので、彼女のプライドを傷つけてしまうかもしれない。

相談するのは遠慮しておこう。

胸なんかなくても加奈子ちゃんは可愛いよ。


4人目、先輩方

吉野先輩はなんとサイズがF!しかし、母さん以上の変態のため却下、論外。

他の先輩方もからかわれること必至のため、却下。


なんてこった僕には相談できる女性が誰一人いないぞ!

悩んでいるところでお尻のポケットのスマホが震えた。

メッセージアプリの新着をお知らせしている。

差出人はヒロトからだ。


『午後から空いてるか?』

彼らしい簡潔な一文だ。

ヒロトのお誘いなら断る理由などない。

『空いてるよ、ヒロトが誘ってくるなんて珍しいね。』

『たまには外で一緒に体でも動かさないか?一人だとモチベーションが上がらなくてな。』

昔からヒロトに付き合って休日や放課後に運動をすることがよくあった。

その割に筋力もスタミナもほとんどつかなかったけどね。

自身の成果はともかく、僕がいるだけでヒロトのモチベーションが上がるなら喜ばしいことだ。

『いいよ。どこでやるの?』

『市内のスポーツ公園で14時からでどうだ?準備ができたらそちらまで迎えにいく。』

スポーツ公園か。

確か、3000ヘクタールのかなり、広めの公園だ。

緑豊かな公園で景観にもかなりこだわっているので歩いているだけでも楽しいだろう。

運動不足の体にもちょうどいいかもしれない。

運動不足?そうか、今、僕の手には文明の利器がある。

肩こり解消のヒントをこのスマホがナビゲートしてくれるかもしれない。

試しに検索してみると出るわ出るわ。

マッサージから筋トレの方法まで動画つきで紹介してくれるところもある。

とりあえず検索候補の最上段のサイトをタップする。

ふむふむ、上半身の筋肉量の不足が肩こりの要因のひとつとされているとある。

やはり胸を支えるだけの筋肉をつけないといけないのか。

『もちろん上半身だけでは体のバランスを損ねるので全身運動を心がけましょう。

しかし、急な筋トレや激しい運動は禁物。まずはストレッチと軽い運動から。』

へえ、ためになるなあ。

一人でできるストレッチのやり方を動画と説明付きで紹介してくれている。

画面をスクロールして情報収集を進めていく。

えーとなになに、『彼氏にしてもらいたいマッサージ100選♪』

気になったので動画を再生してみる。

わあ、密着しすぎだよこれ。

恋人同士でもあんなところまで触っていいもんなの!?

お尻触られてるよ!?

でも、動画の女の人気持ちよさそう……

ヒロトにお願いしたらやってくれないかな?

今まで体育で2人でストレッチなんて数えきれないほどやってきたし、

僕達は男同士だからやってくれるよね。



そんな訳で市内にある公園にやってきたのであった。

ジョギングする社会人風の若い男性や、犬の散歩をする高齢の夫婦。

遊具で遊ぶ子供達にそれを見守る、父と母。

広い公園だけあって、中々の賑わいだ。

天気のよさもそれに拍車をかけている。

今日は暑いので、僕は学校指定の半袖の白いシャツに紺色のハーフパンツの格好だ。

ヒロトは自前のジャージを着ている。


「ねえヒロトまずは何をするの?」

「ストレッチからしていこう」


ヒロトは早速体をほぐし始めた。

あ、それ動画で見たやつだ。

僕もヒロトに倣って手足を動かしていく。

一人でのストレッチを5分ほどかけて一通りこなした。


「よし、体もほぐれたし池の方まで軽く走ってみるか。」


そうだ、ペアでのストレッチもせっかくだからやってもらおう。

スマホを取り出して、お気に入りに入れていた動画サイトを立ち上げる。

「ねえねえ、ヒロトこの2人でやるストレッチをやってくれない。」

「ほう、確かに陸上部でも一人でできないストレッチはペアでやっているからな。

いいことだと思うぞ。

……ん!?

待て千秋、これを俺がお前とやるのか?」

画面を覗きこんでいたヒロトが問う。


「ダメ……かな?最近肩こりがひどくてさ。コレが原因で。」


僕はおっぱいを下から前腕ですくって持ち上げて見せる。


「この重量感、多分両方合わせたらキロあるよキロ。おかげで肩がこってこって。」

「わかった!わかったからわざわざ見せなくてもいい!!

……女の子も大変なんだな。」

僕の気持ちを多少なりとも理解してくれたようだ。

ヒロトはしばらく目を閉じて考えこんでいたが、覚悟を決めたのか深い息を吐いて頷いた。


「やるだけやってみるが、初めてやるストレッチは期待せんでくれよ。」

「いいよいいよ。物は試しってね。」


スマホをアスファルトの上に置き動画を1から再生していく。

最初は肩のマッサージだ。

僕があぐらをかいた状態で、ヒロトが背後に回って腕を上に引っ張っていく。

手首をがっちりと掴んで優しく伸ばしてくれている。


「あ、ん……」

気持ち良くてつい声が出てしまった。

「痛くないか?」

「大丈夫、気持ちいいよヒロト。んっ

そろそろいいかな。

今度は僕がやってあげるね。」


僕がしたのと同じようにヒロトがあぐらをかく。

背中に回ってヒロトの両腕を抱きかかえた。

ヒロトが長身なのでほとんど密着していないとうまく引っ張れないのだ。

光景としては地面に刺さった身長程もある太い杭をひっぱっているようなものだろうか。

「んしょ、んしょ。」

強すぎず弱すぎずの力加減を意識しながらヒロトの腕をひっぱる。

「うお、ちょっと待った!やめてくれ!」

「ごめんね痛かった?」

「そうじゃない!とにかくやめてくれ!俺はいいから!他のをやろう!な!?」

よくわかんないけど、ヒロトが嫌がってるならやめておこう。

役にたてなくて残念だけど。

「じゃあ、次のやっていくね。

ヒロト、うつ伏せになって。」

「こうか?」

「うん、そんな感じ。」


動画内の動きに沿って僕も体を移動させる。

うつ伏せのヒロトの太ももの裏に跨った。

お尻のリフトアップマッサージだ。

お尻と背中の間ぐらいの部分を手の平で上下にマッサージする。

ヒロトのお尻は流石陸上選手か筋肉が発達していて固かった。


「お客さんこってますねえ♪」

あまりに固かったので冗談めかして言ってみる。

「そ、そうか?意識したことはないが陸上選手は足腰が命だからな。……うぐ、しかし、これやる必要あるのか?」

「ん~多分ないね。」

「ないのかよ!?」

「あ、でも僕はやってもらいたいかな。

交代しよ交代。」


さあやれと僕はうつ伏せになった。

「なあ、それ、絶対にやらないと駄目か?」

「ダメ?」


だって、あれ気持ちよさそうだもん。


「ヒロトならイヤじゃないよ?」

「イヤとかそういう問題じゃなくてだな。

お前は今は女だ。分かるな?」

「残念ながらそうだね。」

「女の子の尻に触ったら失礼だろう。」

「ヒロトは僕が男だって分かってくれてるじゃないか。ノーカンだよノーカン。」

「いや、たとえ千秋でも駄目だ。加奈子が相手でもできん。俺のルールなんだよ。尊重してくれるとありがたいんだが。」

「うーん、ヒロトがそこまで言うなら。」

幼馴染でも女の子の体に遠慮するあたりは共感できる。

確かに僕が男の子の時に加奈子ちゃんに同じことをやれと言われたら拒否するだろうし。

女の子の体ってほんと不便だよ。


「さあ、もうストレッチは十分だろ?走ろうぜ。」

「いいよ。置いてかないでね。」

僕達は軽く駆け出した。


走りながら眺める公園の景色は中々格別だ。

この時期満開のサツキツツジや気になる彫刻、モニュメントなんかを見かけるたびにコースを外れて目で楽しんでいく。

アスファルトだけでなく芝の柔らかい感触を足の裏に感じて走るのも新鮮だ。

ゴールに定めた池の近くまでやってきた。

池から水を引いているのか、水場が設置されている。

水深30センチほどのドーナツ状のプールみたいなやつだ。

中心部からは噴水の水が降り注ぎ、水のカーテンに子供達がきゃっきゃっと戯れている。

そんな子供たちの微笑ましい姿を横目に通り過ぎようとしたときヒロトが声をかけてきた。


「千秋、そこは走らない方がいいぞ。」

「へ?なんで?」

「足元が危ない。」


足元?何の変哲もない芝だと思うけど。

何より端的なその説明では脅威の度合いが分からない。


「え、だから何?きゃ!」

ヒロトに重ねて尋ねようとしたところで、

足元から突如として大量の水がクジラのようにしぶきをあげた。

どうやら時間差で水を噴出する噴水が地面に設置されていたらしい。

この瞬間に子供達は大興奮だ。

僕も突然のことに驚きはしたものの汗ばんでほてっていた体に冷たい水は気持ち良かった。

子供達は服が濡れるなんて最初から気にしてない。

僕も童心に帰ったようで、楽しくなってきた。

「あはは、濡れちゃった♪」

ヒロトが言わんこっちゃないという目で見ている。

僕を子供扱いして大人気取りか。

よろしいならば、キミも道連れだ。


「えい♪」


僕だけずぶ濡れで家に帰るのも癪だったので、腕を引っ張って噴水の餌食にする。

「へっへっへ、ヒロトもずぶ濡れだね。これで僕だけ目立たずに帰れるよ♪」

「お前なあ……」

ヒロトの声は抗議こそしているものの顔は笑っている。

小学生の頃のヒロトを見ているみたいで懐かしくなった。


「っ!?」

が、その顔を急に僕から背けた。

「どうしたの?顔赤いよ?」

ヒロトの顔を下から覗きこむが目を合わせてくれない。

「透けてる!!からそれ隠せ!!」

透けてるって何が?

ってそりゃ濡れたら服が透けるか。

体操服の布地は薄めだし。

自分の首から下に視線を移すとそりゃもう派手に透けていて、ピンクのブラジャーがくっきりと自己主張していた。

胸からお腹にかけて体操服が水でぴっちり張り付いている。

ハーフパンツも同様で下着のラインをくっきりと浮かび上がらせてお尻の形が丸見えだ。

僕の顔がかーっと熱くなった。

こういう時何て言えばいいんだったか、

最近夏美から借りた少女漫画雑誌のワンシーンを思い出した。

そうだ、あれかな?


「ヒロトのえっち……」



「ぐはっ!!!!」


何のダメージがあったのか、ヒロトは僕の前で生まれて初めて意識を失った。

「わあん!ヒロト!?ヒロト!?」

僕は必死にヒロトに呼びかけたが服がほとんど渇くまで目を覚ますことはなかった。  

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