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16話 決戦は金曜日?

それぞれの濃い自己紹介もそこそこに園芸部の活動が始まった。


キワモノ揃いの園芸部の先輩方ではあったが、活動を始めると実に素晴らしい手際の良さを見せた。旬を終えた花をプランターから撤去し、秋夏に向けての苗の交換をしている。

ペチュニア、マリーゴールド、マーガレット、クレマチス、キク等その他様々な苗を入れ換える予定だ。

土で汚れてしまうので皆軍手をして、ジャージの上からエプロンを着て作業している。

2年生の3人衆は基本は派手さを排し、地味に見えるけど近くで見たらいい女を目指しているらしい。

男の子の隣に急接近して何気ない仕草で落とすのが得意技なんだとか。

確かに近くで見ると眉はきっちり整えられているし、目元はアイプチで補正したのだろう、ばっちり二重になっている。

BBクリームでニキビ後を薄く巧みに隠しているのも確認できた。

ルージュは使用していないようだ。色つきタイプのリップクリームを使用しているのだろう、ほんのりと薄紅になっているのが分かる程度だ。

母さんや夏美にさんざか化粧品について散々調教……もとい教育されたのでこういったことに日の浅い僕でも彼女達の努力の形跡が理解できた。

あとはテレビで見たメイクアップアーティストのGEKKO さんの受け売りだ。


メイクを嫌味にならない程度に施しているので彼女達は、目的はともかく……男性に見えにくいところまでおしゃれに気を使っているのが分かる。

そんな先輩達が土汚れを気にせず、てきぱきと淀みなく作業しているので、園芸そのものは好きなのだろうと思った。

少人数ながらしっかり温室の手入れがされていたことに納得がいった。

男の話ばかりだけどやるときはやる。

そんな先輩達に僕は尊敬の念を抱いた。


「千秋ちゃんなーにっかなー?」

僕が見ていることに気づいたのか、佐々木先輩が声をかけてきた。

「先輩達の手際が良いのでつい……さすが先輩だなーって」

「アハハハ、千秋ちゃんとの初日の活動だし、先輩らしいところ見せなきゃね。」 


「合コンで初日の活動をサボタージュした連中がどの口で……!」

背後で吉野先輩がわなわなと震えている。


「それは建前で千秋さんのポイント稼ぎよ。」と眼鏡の位置を指で手直ししつつ竹井先輩が言った。

「千秋ちゃんと仲良くなれば合コンに来てもらっていい男をいっぱい集められそうだからねー」

と日森先輩が核心のところを暴露した。

そうだそうだ、!この世は男とカネよー!と盛り上がっている。


この人たちの下半身の欲望に忠実な生き方に僕はしびれもしないし憧れもしないぞ!


「んー、千秋ちゃんもしかして恋愛に興味ないの?」

「2年生のイケメンセレブATM くんをふったって噂になってるよね。」

「絞れるだけ絞って捨てちゃえばよろしいのに。」

イケメンセレブATM !?あんまりな言い種に驚愕する。

彼なりに真剣な告白だったのだ。

付き合ってやる気は100%ないけど。

「恋愛は、今は分かんないです……恋愛すらできないかも。……どうやって恋愛するのかも」

正直な気持ちだった。

そもそも中学生の頃恋愛をしたことがない。

この先どうなるかも分からない。

体と心の一致しない僕は誰が恋愛対象になるんだろう。

男の時ははっきりと女の子が恋愛対象だったのに、この体になってからだんだんと鈍感になってきているのだ。

更衣室の着替えは別物だけど。

もしかしたらこのまま一生どっちつかずなのかもしれない。


「かー!うぶだねえ千秋ちゃん。私の中学2年生の時代を思い出すわー。」

「……?その頃貴女、三股がバレて修羅場になってませんでした?男の子達が鞘当ての喧嘩で全員病院送りになってたような……貴女はその時既にケロリとして次の男にアプローチしてましたね。」

「あっれー?そうだったっけ?まあ、私にも純粋な時期があったってことでどうか。」

佐々木先輩は大口を開けて大笑した。


「まあ、なんだね。男も女も食べて寝て性欲を満たせば充実した人生を送れるのは変わんないワケよ。きっと私たち人類は原始時代からずっと獣同然で進歩なんかしてないんだわ。複雑に見せかけてるだけ。だからとにかく誰と○○したいとかじゃなくて、千秋ちゃんみたいに恋愛感情そのものに悩めるのは進歩の兆しなわけよ。だからそのうちきっといい恋見つかるわよ?あ、私今、いいこと言った?アハハハハハ♪」


佐々木先輩は一気にしゃべって満足そうに笑っている。

加奈子ちゃん…は呆れているな。ジト目で先輩を見下した表情だ。僕も同感。

この人たちのように開き直ったりはできそうもない。

まだ僕は思春期なのだ。時間は待ってくれてはいる。慌てずゆっくり模索すればいいのだ。

この人たちのように振る舞ったところで悩みは晴れないだろう。僕はそう結論付けた。


おしゃべりしつつも作業は順調に終了し下校時間になった。茜色の空が夕刻を告げている。


「じゃあ、また来週ねー悩める少女よ。」

「悩んだら先輩らしく相談ぐらいのってあげるわ。」

「そうそう、今度の合コン千秋ちゃんが行かなくても、千秋ゃんが来るかも!?って話題で男の子を釣るからねー。男の子の全額負担にして。」

えげつないな!?日森先輩!

「「お疲れ様でした先輩。」」


先輩達に別れを告げ、僕は加奈子ちゃんと土日の過ごし方について話し合いながら部室を後にした。



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