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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第23章 ベレスフォード商会からの新情報
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 結局、地図と測量士に関しては即決せず、後回しにしたトップ二人。ロニーの方はそれなりに手応えを感じたようで、今後の話の方向によっては、測量士も切り札になるとニコニコ顔である。

「オッホン。では、温泉の話に戻すぞい」

「あ、ごめんなさい。お願いします」

 地図そのものに話を脱線させたアマーリエが、アーロンに謝って続きを促す。

「まずは、うちの行商達から上がってきた、温泉の湧く位置じゃ。こちらが帝国のもの、こちらは王国じゃ」

「ふむ、結構湧いておるもんじゃのう。さてうちはどうじゃ?」

 ゲオルグが、王国内の印の多さに驚きつつ、自領に目をやる。

「王領地に、二箇所ですか」

「皇帝直轄地には三箇所、皇弟直轄地にも二箇所ありますね」

 白地図に記された、温泉の湧く場所を見て自分に関係のある位置をすぐさま把握する王太子と緑青。

「赤い印はかなりの高温で、黄色い印は適温、青い印はぬるい湯になります」

 ロニーが指で印を指しながら、説明していく。

「ほう、そこまで調べたか」

「ええ。そして大きな丸が温泉量が多い場所、中位の丸がフロとして利用できそうな量の場所、小さな丸がフロにするには難しい量の場所ですね」

 フリッツの言葉に頷きつつ、説明を続けるロニー。それを真剣に見つめるおじさん達。それをあまり興味なくそわそわ見ているシルヴァンと黒紅に気が付き、アマーリエがダニーロの手伝いをしておいでと厨房に送り出す。

「なるほど。そうなると王領地ですぐに温泉として使えるのは、今工事を始めているここだけになるんだね。もう一つは高温で温泉の量が多い。工夫が必要になるね」

「ええ」

「皇帝領は、二箇所すぐに温泉にできるようですね。領都に近い、ここから始めれば良さそうですね。その次にこちら。もう一つはぬるいが温泉の量が多いのですか。沸かせば使えそうですね」

「……沸かすとなるとかなりの魔力が必要かと?」

 そう言って考え込み始めるロニー。

「近くに、魔力溜まりがあったらそれを利用できませんかね?」

「ああ、なるほど!」

 気軽にいうアマーリエに、ギルド長がその手があったかと腰を浮かせた。

「いや、そうなるとやはり国の管理下に置く必要が出るね」

 しかし、王太子が手を組み合わせテーブルに肘を付き、難しい表情をした顔をその組んだ手の上に乗せる。そして、国内の他の温泉の印を記憶するかのようにじっと見つめ始める。

「足湯という、足だけ温泉につかる方法もありますよ?いきなり素っ裸で風呂だと嫌だって人も多いでしょうから、まず足から温めて、全身の血流を良くして温泉の良さを体感してもらうっていうのもありですよ?」

 アマーリエがさっさと代案を出す。アマーリエは、旅の途中に騎士達を裸にひん剥いて、温泉に放り込んだことは忘れているようである。

「まあ、魔力溜まりや魔石がなくとも、我らの鱗を使えばなんとでも」

 フンスッと鼻息荒く、緑青が言い放つ。

「うわ、力技きた。そりゃあの鱗、並の魔石以上に魔力ありますけど、はげますよ?」

 無茶振りキタヨとアマーリエが緑青を止めにかかる。

「温泉に入りたいんです!竜の体でね!皆の抜け鱗を集めればなんとでもなります!」

「……さようですか」

「アマーリエ、アズリアス(あいつ)がうちの王都の屋敷に来たのは、うちの温泉村に、もっと広いユブネをつくらないのかっていう相談で来やがったんだよ」

 そう、こっそりとアマーリエに耳打ちするフリードリヒ。それを聞いたアマーリエがげっそりした顔でブツブツ言い出す。

「黒紅ちゃんが爆発させた火山の側にでも、好きなだけデカイの掘りゃいいじゃねーか。絶対温泉の一つぐらい湧いてるって。人も来ないだろうし快適だと思うんだ」

「なるほど!黒紅が生まれた火の山ですね!早速行ってきます!」

「え、アズリアス!?いきなり何を言い出す?うちの領地や国の話はどうするんだ?」

「あなたがちゃんと聞いてなさい。あなたの国でしょう?では失礼」

 そう言ってそそくさと退席した緑青に、唖然となる帝国のやんごとなきお方。ついこの間、自国の宰相補が古代竜と判明し、緑青が身バレしたことで開き直るようになったことにまだ慣れていないようである。

「あんちゃん、古代竜に交渉するなら、向こうが喜ぶものを提供しなきゃ」

「むぅ。こんなことなら宰相も一緒に連れてくればよかった。アズリアスを宰相が探しておったから、我が一肌脱いで探してやったのに!」

 なんだかんだ、一生懸命やってくれてる部下には優しいらしい帝国のやんごとなきお方であった。

「あんちゃんそれさー、二人して失踪状態になってんじゃないの今?連絡した?宰相さん、心配してない?」

 緑青(エンシェントドラゴン)からも心配されるほど過労気味な、まだ見ぬ帝国の宰相の気苦労を思ってアマーリエが確認する。

「あ」

「しょうのないやつだな。私が連絡しといてやろう」

 幼馴染(フリードリヒ)は呆れ顔で、アイテムポーチから筆記用具と簡易転送陣を出し、帝国の宰相にお手紙をしたためた。直ぐに返事が返ってきている。かなり心配していたようである。

「ほれ、返事。お前の護衛も行き先を知らなかったみたいだぞ?帰ったらちゃんと謝っとけよ」

「あわわ。ちょっとスキルであいつのそばに飛んで連れ戻すつもりだったんだ。宰相すまん」

 やんごとなきお方と緑青の無事を喜ぶ宰相の手紙を読んで、思いっきり頭を下げる帝国のやんごとなきお方でありました。

 そんな状況を無視して考え込んでいたロニーが、覚醒して声を上げた。

「……古代竜と一緒の温泉!宣伝効果が高そうですね!父さん?」

「ロニーさん、落ち着いて。流石に溺れるから、一緒に入った人が」

「ロニー、黒紅様は小さなお姿になってくれておるんじゃ。古代竜はもーっとでかいんじゃ。目印にはなるじゃろうがの。人と一緒はむりじゃわ」

 アマーリエとアーロンが、呆れた顔で首を横に振る。

「むぅ。あら。宰相補様は?」

「火の山に温泉探しに行っちゃっいましたよ」

 キョロキョロするロニーに、アマーリエが答える。

「え、あの前人未到の地に?魔物すら住まないと言う火の山に?」

「大昔は国があったみたいですよ」

 そう言ってアマーリエが、ロニーに黒紅のスキル判定紙を見せ、まだ読んでいなかったフリードリヒもそれを回し読みする。そんなこんなでまた話が脱線するが、もとの話題へ、ゲオルグが引き戻しにかかる。

「これ、それでこの温泉をどこが主軸で運営するかという話じゃろうが?」

「ええ、そうなんです」

「そうなんじゃ、大将。他にも有用な温泉が湧いておる。各領地の領主殿にも話を回したい。が、温泉を知らねばそのありがたみもわからぬし、知っても皆が皆喜ぶとも思えんのう」

「貴族ばかりがその利益を享受するようでも困りますしね。辺境伯のところのように、最初から場所を分けて利用するなど考える方ならいいんですが……独り占めしたい馬鹿も居ますし」

 眉をしかめて、王太子がのたまう。先ごろの、アマーリエの誘拐の主犯だった貴族を思い出してむっつりする王太子であった。

「うーん、そうなると温泉旅行かなぁ、やっぱり」

「「「「「「温泉旅行?」」」」」」

 初耳の国のトップ二人はキョトンとアマーリエを見て、毎度のごとくいやーな予感が背中を駆け上った辺境伯領の元トップ二人は渋い顔でアマーリエを見る。商業ギルドのワンツーの方は儲け話かもと目を輝かせて、アマーリエとアーロン達を順繰りに見る。

「ふむ、そうなりますね」

「やはりそれが一番かのぅ」

「そうそう実感の伴う宣伝て、大事ですからね」

 ロニーとアーロンの言葉にうなずいて、アマーリエがちらりと温泉の虜になった商業ギルドの二人を見る。

「各地の商業ギルドの職員を巻き込むのもありですね。ここみたいに」

「やはりギルドの助けは要るのぅ」

 ニヨッと笑って言ったアマーリエに、ニヨッと笑い返した大商会の二人。それに、本気の笑顔で胸を叩いたのは商業ギルドの二人であった。

「「お任せください!」」

「【温泉布教の会】を商業ギルドで立ち上げております!」

「まず手始めに領都と近隣領地の商業ギルド職員を、研修という名のもとに、温泉村を堪能する予定ですから!」

「「根回し大事!」」

「チョッ、布教って!?いつの間に!?早!早いわ」

 生き生き語る商業ギルドの二人にツッコミをいれるアマーリエ。

「「何をいいますか!遅いぐらいです!」」

「あの、温泉に浸かった時の開放感!」

「体の芯からあたたまる、あの癒やし!」

「「これが売れずに何が売れましょうか!!」」

 二人の勢いにドン引きしたのは、それなりに位の高い人びとであった。

「そうなんじゃ!」

「ですよね!」

 商人達の方は、和気あいあいと温泉を語り尽くす勢いでしゃべくりまくっている。国のトップ二人は、その勢いを目をまんまるにして眺め、ボソリとつぶやく。

「「うちの連中もこれぐらい真剣に楽しくやってくれたらなぁ」」

 顔を見合わせてしみじみした、帝国のやんごとなきお方と王太子であった。

「……父上、私、巻き込まれない内に温泉村を堪能してきてよろしいでしょうか?」

「逃げる気か?」

「どうせ、後で貴族絡みは私の仕事になるんでしょ?このところ、誰かさんのせいでクソ忙しかったですからね!癒やしは必要なんですよ」

「いひゃい、いひゃい、はなひてせんらいさま」

 フリードリヒにウリウリと両頬を片手で掴まれたアマーリエであった。

「ま、よかろう。夫婦水入らずで楽しんでこい、といいたいが王妃様がのぅ」

 ゲオルグがあごひげをしごきながら、天井を見上げる。

「……リエ?」

「え、私ですか?」

 フリードリヒがじーっとアマーリエを見つめる。これほど雄弁な目をかつて見たことがあったろうかと、アマーリエは現実逃避する。

リエ(、、)?」

「……わかりましたよぉ。なんか考えます。というか、奥様とにーさんのお母さんって娘時代からのお友達なんでしょ?仲良しなのは先代様より長いってことでしょ?」

「深さじゃ俺のほうが(まさ)ってるわ!とにかくそちらの御母堂をなんとかするのがお前の仕事ナノ。目標!夫婦水入らず!」

「ちぇー。だったらにーさんのお父さん呼んじゃう?」

 アマーリエが王太子の方を見て言う。

「呼ぶな」

「呼ばんでええ」

「留守番させといてください。国の仕事が回らなくなりますから」

 にこやかにいい切った、王国の偉い人達であった。

「なら、お菓子用意しますから、にーさんはお母さんの相手してくださいよぉ」

「いいよ」

「んじゃぁ、先代様!一日だけ!それ以上は無理!にーさんのお母さんはシルヴァンと黒紅ちゃん付けますから一日アルバン村体験でもしてもらいましょう!」

 ちび台風に護衛兼案内役をさせて自分はパン屋の仕事を全うしようと図るアマーリエ。

「ああ見えて、母も若い頃はここに通ってたよ?見るところなんてないんじゃない?」

「いろいろ変わったこともありますし!なんとかなります!というかなんとかします!」

 なら朝から神殿の訓練(と言う名のガチの鬼ごっこ)にでも放り込んでやれと、お腹真っ黒なことを考えるマーリエであった。

「あ、うちの妻も混ぜていただいても?」

 ロニーがいろんなことを計算に入れつつ、妻を参加させる旨を申し出る。

「いいんじゃないですか。先代様は、村の探検に行きたいと奥様を言わせないように、必死で奥様に甘えてくださいね!上から物言ったらだめですよ!」

「……わかった」

 何故か国規模の話から、個人規模に話が収束しているアマーリエ達であった。

すこしすずしくなりましたね〜。暑さ寒さも彼岸まで!温度計29度!自分の耐暑スキルに白目むきましたわ。

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