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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第23章 ベレスフォード商会からの新情報
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おまたせしました〜

 パン屋が閉まる頃、帰ってきたシルヴァンと黒紅。冒険者ギルドで依頼を済ませて、リンジーを商業ギルドの宿まで送り届けてから戻ってきたようだった。

「お帰り、シルヴァン。黒紅ちゃん」

「「「お帰りなさい」」」

「オン!」

『ただいまなのじゃ〜。主!料理長殿からジャムの乗った一口パイをもらったのじゃ!」

「あら、良かったね。ダニーロさん、最近パイ生地の研究にハマってるみたいだからね」

『みな喜んでた!リンジーも目がキラキラしておったぞ』

「ええ〜いいなぁ。ダニーロさん、村でお菓子販売しないのかな?」

『いっぱいもらったから、ブリギッテ達にも分けるのじゃ!』

 なにげに気前よく、もらった一口パイを分け始める黒紅であった。ケチンボに思われたくなかったシルヴァンは、渋々ながら、自分の分から皆に一個ずつパイを配る。

「あらあら、シルヴァンもありがとう」

 ナターシャに言われてでれるシルヴァンであった。

「ん!サクッとしてほんのり甘いパイ生地に、ちょっと酸っぱいベリーのジャムがあってて、美味しい」

「うん、さすがダニーロさん。パイ生地もうまく焼き上げてる」

 店じまいを終えて、黒紅達から分けてもらったパイを食べながら一息つくアマーリエ達。

「アーロンさん、なんの話だろうね?」

「多分色々だと思う」

 ブリギッテから話を振られ、アマーリエはロニーが最初にパン屋にやってきた日を思い出しながら答える。

「「「?」」」

「温泉村のこととか、携帯食のこととか多岐にわたるんじゃないかなぁ」

 アマーリエが首を傾げながら答えると、ソニアが村の食料品店で聞いた話を口にする。

「ソースも商会で作り始めたんじゃなかった?食料品店店主(アントーニさん)がベレスフォード印のソースができたら仕入れるて言ってたわよ。なんてたってソースの会会長だもの、アントーニさん」

「へ〜、ソースの会の会長てアントーニさんだったんだ。私はてっきり商業ギルドの誰かかと思ってたよ」

 アマーリエの言葉に、顔の前で手を振って否定するブリギッテ。

「カレー粉もでしょ?今はまだウコンがダンジョン産のしかないから村の商業ギルドの専売だけど、いずれウコンがどこでも手に入るようになったらベレスフォードのカレー粉を仕入れるって、アントーニさんが言ってたわ」

『おお!お店で買えるのか!?かれーこは?』

 イワンと食料品店に買い出しに行ったナターシャが、村の中だけで販売許可のおりた、商業ギルド印のカレー粉を買ったのだ。

 カレー粉は、一般栽培された魔力のないウコンを待ってられないと、カレーの会の会員達がごねにごねた結果、村の中での販売が早まったのだ。

「ウコンの栽培の方はまだ始まったばっかりだけど、ダンジョンと近い気候の場所でもベレスフォード商会の薬草専門の人が栽培を始めるって言ってたよ。待ってられないとかなんとか言ってた。カレーを心置きなく食べたいからって」

 ブリギッテが、自分の薬草園であった話を皆に話す。

「カレー好き……どんだけ」

「キュゥ」

「うちは、寒冷地でも育てられる方法と寒冷地でも育つ品種作りになるみたい。なんか、お互い頑張りましょうって、父もアーロンさんもかなり力が入ってたよ」

「なるほどねぇ、おじさんには頑張ってもらいたい」

 ブリギッテの話に、頷いて皆にお茶のおかわりを淹れるアマーリエ。しばし、村の噂でまったりした後、自宅に戻ったブリギッテ達であった。

「さて、そろそろ商業ギルドの宿に行こうかな」

「オン!」

『妾もいくぞ〜』

「……ま、いいか」

 呼ばれてない二匹を連れて行くのはどうなんだろうと思いつつ、真面目な話だろうから黒紅達が飽きてきたら、ダニーロかメラニーのお手伝いでもさせればいいかと割と適当なアマーリエであった。


 商業ギルドの宿屋の受付で、ゲオルグの在室を確認するアマーリエ。

「いらっしゃいませ、パン屋さん。黒紅様、シルヴァン。食堂の方に皆様お揃いでございます。ご案内いたしますね」

「あれ?食堂なんだ。夕食食べながらなのかなぁ?」

『ダニーロの作ったものか!』

「オン!!」

 案内係の後をウキウキしながら続く二匹に苦笑しつつ、アマーリエもその後に続く。

 そして、食堂の貸し切りの札の下がったドアを開けられて、中の面子を見て目が点になるアマーリエであった。

『おお!緑青!とその仮の主!王太子も来ておるのか!』

 パタパタとなんちゃって冒険者風魔法士な格好の緑青に向かって飛んでいく黒紅。シルヴァンの方は口を開けたまま、アマーリエの方に顔を向ける。

「……聞いてねぇ」

「キュゥ」

 ボソリとつぶやいたアマーリエに、困った様に相槌を打つシルヴァン。

「シルヴァン、こいこい」

 冒険者風の装いをした帝国のやんごとなきお方に呼ばれ、渋々そのそばに寄っていくシルヴァンであった。

「アマーリエ、そなたも早う、ここに座るんじゃ」

「久しいな、アマーリエ。元気か?」

「はいー。先代様もお元気そうで何よりですー」

 がっくりと項垂れながら、ゲオルグと何故かこちらも冒険者装束な先代辺境伯(フリードリヒ)の間に座るアマーリエであった。ゲオルグの横にアーロンと緊張した顔のロニーが座っている。フリードリヒの横には商業ギルドのギルド長とベーレント副ギルド長が座っている。

 アーロンとロニーは大商会の代表として、皇帝と宰相補、王太子と何度か顔合わせをしている仲である。アーロンの方は付き合いも長く、やんごとなきお方達の人柄もよく知っているので泰然としているのだが、まだまだ慣れていないロニーの方は緊張が抜けないでいるのだ。

 一方のギルド長とベーレントは昔からお忍びでやってきている冒険者な三人をよく知っているのでポーカーフェースのままである。

「あのー」

「なんじゃ、アマーリエ?」

「アルギスさんは、あんちゃんが来てるの知ってるんですか?」

 眼の前の一応冒険者(、、、)にジト目を向けて、あえて砕けた口調で話しかける。

「いや?」

 アマーリエの言葉に、不思議そうに首を傾げる帝国のやんごとなきお方。

「えー、内緒ですか!?それまずいですって!せめて話の後に呼んであげてくださいね!来てたのに黙って帰ったとかバレたら絶対、あのあんちゃんスキーごねるし拗ねる!後で面倒くさいから、必ずアルギスさんに会ってから帰ってくださいよね!」

「お、おう」

 アマーリエの勢いに押されて、頷く帝国のやんごとなきお方。その様子をどういった関係なのかわからず、怪訝な顔をして見つめるロニーだった。

 緑青の横に座っている冒険者風の装いをした王太子は、吹き出すのをこらえて横を向いている。

「あなた、パン屋の娘にはかたなしですね」

「うぐっ」

 緑青に突っ込まれ、言葉に詰まる帝国のやんごとなきお方。

「あ!緑青さん!お仲間にはちゃんと村の入口からはいるように言っといてくださいよね!来るたびに村の結界壊されたら、うちの精霊さんが泣いちゃうんで!」

「うっ、わかりました。キチンと伝えておきます」

 苦い顔で頷く緑青を見て、黒紅が尊敬の眼差しをアマーリエに向け、帝国のやんごとなきお方が溜飲を下げるのであった。

「それと皆さん。今日はお忍びなんですよね?冒険者の格好ですし?アーロンさんも呼んだつもりがないのに、来ちゃってるんですよね?先代様もそっちの冒険者のにーさんも」

「うっ」

「あ、はい」

 にーさん呼ばわりされて目を丸くし、素直にうなずく王太子を見て、ゲオルグが手で顔を覆う。

「じゃ、遠慮しませんよ。冒険者(、、、)の皆さん?」

 コクコクと頷く帝国のやんごとなきお方と王太子。緑青とフリードリヒは、しょうがないなと表情に出し、一つ頷いて応える。

「では、いつもどおりで」

 にやりと悪どく笑って、言質をとったアマーリエだった。ロニーは、アマーリエがその場の人々がどういった人物かわかっていて、あえて自分のペースに持っていくその手腕に目をキラキラ輝かせて見つめている。

「パン屋さん!パン屋をやめて商業ギルドで働きませんか!」

「ベーレントさん!なんでそーなるんですか!?」

「あなたの手腕は素晴らしい!」

「お断りしますよ!しがないパン屋なんで!」

「しがないとかぬけぬけと。今やアーロンさんに劣らぬ大商人ですよ!貴女!」

「やめて、マジやめて!」

 何いい始めるんだこのやろうとアマーリエは、ベーレントを引きつった顔で見る。それを見た黒紅が、ベーレントの至近距離にでる。

『ぬ、主の嫌がることをするのは妾が許さぬぞ』

「あ」

『どうなのじゃ?』

「今のはなかったことに」

『うむ、主はパン屋が好きなのじゃ』

「ですよね!」

 ドアップ状態の黒紅に、滝汗流しながら同意するベーレントであった。

「オッホン。そろそろ、話を始めてもいいじゃろうか?」

「どうぞ!」

 アーロンの助け舟にいそいそと乗ったのはベーレントである。

『おお、おじい。始めてくれ』

 こうして脱線しまくった会話が、アーロンによってもとに戻されたのである。

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