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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第21章 村の人々と古代竜と精霊と
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すみません前話を改稿しました。前回のお話から読み直した上で、今回のお話をお読みください。

お手数をおかけします。


「「「気絶耐性スキルがはえた!」」」

 精霊の作った、素材不明の真っ黒スープを飲んでいた人の中から新たなスキル獲得の声が上がる。

「はい〜?」

『ジョルとガイもこのスープ三ヶ月飲んで、スキルを上げてたよ』

「クッ、三ヶ月か……でも気絶耐性スキルがあったら冒険が楽になる!」

「もう一杯持ってきてくれ!」

 冒険者の声に、慌ててスープを持っていく給仕の村の人。

「おお!一口飲んでも気絶しなくなったぞ!もう一口!いける!うまい!もう一口……」

 三口目で気絶した冒険者を、回復士が状態異常から回復させる。

「気絶耐性レベルが低いと三口が限界ってことか」

「私達も状態異常回復魔法のレベルが上ってる感じはするけどさ。美味しく食事したいってのが本音かなぁ」

「これ、魔物の攻略にも使えないか?」

「食べて気絶したところをやるのか!ありだな!」

「……いいんだろうか?まずくて気絶するわけじゃないからいいのか?いやそもそも、気絶耐性のためとかどうなの?」

 変な方に話が転び始めたのを見て、アマーリエが首をかしげるが、精霊の方はニコニコ笑って皆を見てるので、結局気にしないことにしたアマーリエだった。

 そしてなぜか、精霊からスープの作り方を後々伝授してもらった村の料理人スキル持ち達。彼らは、冒険者ギルドの酒場でスープを作って販売し、村の名物として精霊印のスープは、有名になっていくのであった。


 そんな中、バネッサと言えば、せっせと料理を取り分け、古代竜達に運び、甲斐甲斐しく世話をしている。村の女衆も、冒険者達の騒ぎを微笑ましく見ながら、主賓の歓待の方を頑張っている。

「辰砂さん、一応妊婦さんだけど、お酒って大丈夫なの?」

 村のおっかさんの一人が、辰砂にお酒を勧めていいのか迷い、確認を取る。

「人と違って、酒精は魔力に変えられるから大丈夫よ」

「あらまあ、呑兵衛どもには羨ましすぎる能力ですね」

「うふふふ」

 大丈夫ならといくつかの酒瓶をバネッサに手渡していく村の人達。

 一通り精霊スープの方も落ち着いて、皆それぞれの話題へと移っていく。

 細工職人達は、ウィルヘルムとゲオルグから食の祭典の報奨に使われる竜のうろこの細工を頼まれ、飲み食いしながら、和気あいあいと意匠をどうするか話し合っている。

「鱗の細工の方も技術大会にしますか?」

「それもありじゃな。できの良いものになにか報奨をつけ、食の祭典の優勝者用にするのもよかろうな」

 ウィルヘルムとゲオルグは職人達の様子を見て料理だけではなく、他の産業も参加できるよう検討をし始める。

「細工の大会ですか!?そりゃ、世界食の祭典みたいに世界規模でやるんですかい?ご領主様!」

 ゲオルグ達の声を拾った村の一人が突っ込む。

「細工だけじゃなく、色んな分野の大会があったほうが良いと思うんだけど一緒にやるほうがいいのか、別々にやるほうがいいのかわからなくてさ」

「博覧会方式もありますよ」

 アマーリエが前世を思い出して万博があったなと意見を言う。

「はくらんかい?」

「色んな分野の最先端のものを、国ごとにお披露目する会ですよ」

「国の交流が増えるから、いろんな技術を目にして、それぞれ刺激を受けるんですよ」

「なるほど〜」

 ざっくりと万博の主旨を説明するアマーリエに、ゲオルグとウィルヘルムはなるほどとうなずき、職人達が俄然やる気になっていく。

「武術大会や魔法大会もいいですよね。いろんな人が色んな分野で活躍する機会があるのって大事だと思うんですよね」

「ふむふむ」

「魔法の大会!面白そうね!魔法ギルドに掛け合ってみましょうか」

 西の魔女が、魔法大会に食いつき、東と南の魔女に声を掛ける。

「そうねぇ、若手にもぉ古参にもぉ、もっといろんなものを見る機会は必要よねぇ」

「うふふ!たのしそうですわね」

 魔女たちの言葉に、弟子達も心が踊り始める。

「パン屋さんは、食の祭典は、パン職人の部門に出るのか?」

「私は、見るだけの人になるつもりです。色んな所の料理を見て食べて回れたらすごく楽しそうだから」

「なるほど!そういう楽しみ方もあるな!」

「ええ。でも、あちこち行けない人には、遠くで行われてることを他の地域でも見られるような魔道具ができたら、きっといいですよねぇ」

「おお!そりゃ面白そうだな!」

 魔道具職人の一人に火をつけたアマーリエ。

 そこからどんどんと話が広がっていく人々であった。

 しばらくして、食べることが一段落したらしい漆黒達に気づいた村の鍛冶職人の一人が話しかける。

「漆黒様。人になってる時でも戦えるんですか?どんなふうに戦うんです?」

「もちろん戦えるとも、人と同じようにね。人が扱う武器は一通り、わたしも扱うよ」

「ほうほう。基本的な武器や防具はどうしてるんです?」

 気になったことをあれこれと聞き始め、他の興味を持った武器職人達も集まってワイワイと鍛冶の話で盛り上がり始める。そこに冒険者達も加わって、武器や防具談義がそこここで花開く。

 女衆の方は、辰砂に妊娠中の話を聞いて、村でどのように援助したり対処したりしたらいいのかと協議を始めている。

 シルヴァンはと言うと何がきっかけか、黒紅とおいかけっこを始め、そこに子ども達が混ざって大鬼ごっこに展開してしまっている。ネスキオと魔女の弟子たちがよくわからないままその監督を始めている。

「ま、怪我しなきゃいいか。お守りもちゃんとついてるし。お母さん達もゆっくり安心して食事ができるしね」

 アマーリエも止めもせず、片目でシルヴァン達の様子を見つつ、自分も食事をとっている。そのうち、子ども達が疲れてどこかで寝コケ始めるだろうから、回収だけ忘れないようにしないととアマーリエは頭の中でメモをしておく。

 大人達がワイワイ飲み明かす中、広場の端の芝生の上でシルヴァンと黒紅を中心に子ども達が集まってウトウトしていたが、本格的に寝始めると母親達が集まってくる。

「うふふ、かわいいわねぇ」

「シーッ、静かに!起きちゃうわよ」

 クスクス笑いながら、子ども達の可愛い寝顔をしばし堪能する母親達。そして、父親を連れてくるとそれぞれの子を抱えて、一旦家で寝付かせ、広場の宴会に戻って来て宴を堪能する。

 こうして村ではめったにない大掛かりな宴会に村の人も冒険者も、古代竜達も満足し、また宴会をやろうという話をしている。

「月に二回はどうだ?」

「それぐらいがいいね。本当は毎日でもいいが」

「飽きちまうからな!」

「ワハハ」

「月に二回?いや、女子会と男子会と子供会をもうやってるのに?含めずってこと?」

 一日大量の料理をしていたアマーリエは、盛り上がる村人から離れて首をひねっている。なんだかんだすべての宴会の料理に巻き込まれるからだ。

 ああでもないこうでもないと月に二回、宴会を開くことを決めた村の衆。しっかりどの日に大宴会及び女子会、男子会、子供会を開くのかも決めて、参加希望者で宴会することにしてしまう。食材や道具は皆で持ち寄りにして、大いに飲んで食って楽しもうと気炎を揚げている。

「ははは、まじか?」

「なんか楽しそうでいいね。わたしも、仕事を頑張って終わらせて、食材を用意して参加できるようにしょうっと!社交界なんかより遥かに楽しいし」

「そりゃ、気楽な村の飲み会ですからね。貴族の社交とは違うでしょうよ。でも、どうやってここまで来るんです?」

 すっかり混ざる気でいるウィルヘルムに、水を差すアマーリエ。

「うっ、魔女様方を毎回雇うのは、流石に懐が……本気で転移陣の開発考えようかな」

「やること増やして大変になるのは、ウィルヘルム様ですよ」

「ぐぅ、わかってるよ。せめて月一回!」

「いや、来なくていいですから」

「なんでだよ!」

「心おきなく村の人に飲み食いさせてあげてくださいよ」

 居たら邪魔だと暗に言うアマーリエに、うるうる眼になるウィルヘルム。

「何が何でも早く隠居してやるんだもんね!」

「へいへい。さっさと跡継ぎよろしくおねがいしますね」

「うううう」

 泣きの入ったウィルヘルムを西の魔女に渡し、領都の屋敷に送り届けてくれるよう頼むアマーリエ。

「また面倒なものを……。さっさと返してくるか」

 そう言って西の魔女は、風魔法でウィルヘルムを持ち上げると村の外に出て、領都に転移したのであった。

 こうして、村の宴会は幕を閉じたのであった。

今日はこちらの方涼しいです。というか、室温21度で肌寒く感じちゃうぐらい暑いのに慣れた自分が恐ろしい。ファーヤーン(毛がもふもふ生えた毛糸)の編み物が捗る捗る。

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