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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第21章 村の人々と古代竜と精霊と
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すみません。ちょこちょこ改稿しました。読み直しをお願いします。精霊さんのことすっかり忘れてたよ……。ドラゴン同士じゃカニバリズム(人同士の共食い)じゃなくただの共食いですね……。

 職人のオヤジどものドヤ顔とともに魔法光に照らされ、役場前に設置された厨房設備が銀色に輝き、存在感を放っている。コンベクションオーブンに廉価版魔導コンロ。そしてなぜかフライヤーまで設置されている。

 今まで魔物討伐に費やされていた職人技が、生活魔道具にも本領を発揮された瞬間であった。

「ヨハンソンさん?フライヤーがあるんだけど?」

 アマーリエは近くにいたヨハンソンに声をかける。

「ああ。料理講習会のときに、君んちのをみた冒険者ギルドの職員がうちに頼んだんだよ」

「え、そうなの?まあ、フライヤーはそんなに扱いが難しくないですけど」

「うん。それに冒険者ギルドの酒場で、揚げ物が最近人気になってきてるんだよね。鍋じゃ間に合わないらしくって」

「知らなかった」

「君が知らない間に、君がおっぱじめたものがいろいろ浸透し始めてたりするんだよ」

「そっか〜」

「じゃあ、僕はあのフライヤーの油の用意してくるから」

「あ、お願いします」

「リエ、職人さん達すごいね」

 ちょっと呆然とした様子のウィルヘルムが、アマーリエに話しかける。

「(どこの料理スタジアムか?)凄いですねー。これそのまんま、料理の祭典の本戦会場設備として使えそうですよ。あ、そうだ!司会進行役の人も要るかも」

 呆れ混じりでウィルヘルムに答えるアマーリエ。その横でシルヴァンがポカーンと設備を見ている。

 設置を手伝っていた冒険者や村人でさえも、その仕上がり具合に感嘆の声を漏らしている。

「そうなの?じゃあ、陛下に言っとくよ。調理魔道具はいくらで貸し出そうかな」

 アマーリエの感想を聞いて、ニコニコしながら王国のやんごとなきお方に貸しを作る気満々のウィルヘルムであった。

「その前に、調理魔道具普及させて、皆が使えるようにしないとだめでしょうけどね」

「そうだね。ふふふ、各地の職人をどう育てようね?商業ギルドと職人ギルドと相談しなきゃ。四年でなんとかなるかなぁ?」

 やることがいっぱいと口では文句を言いながらも、楽しそうにニコニコ笑っているウィルヘルム。そのお腹の中であちこちにいっぱい貸しを作って、うるさ方の貴族達が文句を言えないようにしてやろうと思っているのは誰の目にも明らかだった。

「「「「((((ご領主様から黒いものが立ち上ってる気がするのは何故?))))」」」」

 朝、神殿で古代竜相手に交渉とも言えない直球勝負のポヤポヤ若領主を見ていた村人達が、思っているよりも実はしっかりしてるのかもと思い直した瞬間でもあった。

 ダールによって、順調に調教されているようだと、辺境伯の影の実力者をよく知るアルバン村の古老達は、安心安心とうなずいている。

「んじゃあ、始めますか」

 アマーリエとダニーロ、パトリックを軸に、村の料理スキルの上がった村人達が厨房に集結する。そこにはなぜか、主賓のはずの半透明の土の精霊も混じっている。

 そして、山と積まれた食材の台の前で何を作るか相談を始める。

「黒紅ちゃんがカレーを気に入ってますので、料理のいくつかにカレー粉を調味料として使おうと思います。カレーの会所属の方に、カレーライスをお願いしようと思います」

 アマーリエの言葉に頷く、カレーの会所属の村人数人。

『カレーって何?』

「あれ?精霊ちゃん。なんでここに?えーっとカレーはこれから出す料理のひとつだよ。あちこち旅してたなら、似たようなものを食べたことがあるかもねぇ」

『楽しみ!』

「お客さんだからあっちで待っててくれていいんだよ?」

 そう言ってゲオルグとウィルヘルムがいる辺りを指差すアマーリエ。

『ウィルちゃんがね、ジョルとガイが食べたものを食べてみたいって!私も二人の好物だったスープを作るの!』

「ありゃ、なんかすみませんね、お客様なのに」

『いいの!喜んでもらえるの嬉しい!』

「んじゃ、そこの材料好きに使っていただいて構いませんので、作ってくださいな。新しい魔道具の使い方はそこにいる……ベルク親方が教えてくれますよ。ね!親方」

 うっかり通りがかったベルク親方を指さして、生贄にしたアマーリエだった。

「おっ!?おう!なんかわからんが任せとけ!」

『お願いしまーす』

 精霊の何故か補助役になったベルク親方。ただその好奇心のせいで、精霊の料理のほうが気になり、いそいそと精霊に魔道具の使い方を教え始めた。

「さて、カレーに入れる、お肉どうしましょうね」

「オークの肉があるようですよ。これでカツを作って、カツカレーにしては?カレーそのものは玉ねぎと人参を入れた簡単なものにして」

 ダニーロの言葉に周囲の村人から歓声が上がる。

「そうなると、カツ担当の人が何人か必要ですね」

「料理スキルがなくても、衣を付ける作業はできますから人を増やして手伝わせましょう。野菜を切る係も増やして」

 衣付け担当とカツを揚げる担当を決め、衣をつけている間に、じゃがいもも揚げてもらうことにするアマーリエとダニーロ。

「シルヴァンともう一人か二人、コメを炊く係で」

「オン!」

「私が」

「俺も」

「「お願いします」」

 シルヴァンと村の二人が米の入った袋を持って調理台に移動する。

「オーブンで野菜とキノコのチーズ焼きをつくりましょうか」

「そうですね。後は具だくさんのスープ」

 野菜が足りないのは良くないとダニーロが提案するとアマーリエも同意し、汁物も増やす。

「コカトリスは香草を詰めて丸焼きはどうでしょうか?」

「良いですね。あとカレー粉を使ってタンドリーチキン(つぼ焼き風ドリ)にもしましょう。マジックパイソンって、これ蛇肉?」

「ええ、かなり大きな蛇でしたよ。皮は魔法職の方の装備になるらしくって、魔法職の方々が舞い上がってましたね。皮が大きいからいっぱい装備が作れると」

「へ〜。んじゃぁ、お肉の方は塩胡椒して揚げますかぁ?」

「ではこちらも、カツ担当に任せましょう。こちらの衣は片栗粉(ポテトスターチ)と小麦粉を合わせたものをお願いします」

 次々と料理を決め、割り振っていくアマーリエとダニーロ。パトリックは振り分けられた村人の補佐をしていく。

 料理を担当しない村人達は冒険者と一緒に、今度は机と椅子を運んで宴会会場の設置を始める。

 米担当のシルヴァン達は、米を研ぎ終えるとアマーリエに時間経過をしてもらい、米に水を吸わせて米を炊き始める。

 それぞれ肉を切ったり野菜を切ったりと下準備を始め、台の上の食材の山を減らしていく。

「リエちゃん、なんか料理の速度が上がってない?」

「くっ、まさか今日生えたばかりの料理量産加速スキルが活躍するようになるとは……」

 パトリックの疑問に、半泣きで答えるアマーリエ。

「何、そのスキル?」

「実は……」

 今日砦で起こったことを話すアマーリエの横に居たダニーロが、俄然張り切りだす。どうやらスキルを獲得したいらしい。

「……いろいろ大変だったね」

「ええ」

 相変わらずだなと苦笑しながらも、アマーリエを慰めるパトリックであった。

 皆それぞれの調理に移り、アマーリエは時間経過の必要なカレーをスキルを使って熟成させたり、オーブンの前で、焼き上がりを確認したりとあちこち走り回りながら料理の仕上げに入っていく。

「のり塩ポテトと塩ポテト揚がったよ!パイソンの塩胡椒揚げも持ってって!」

 揚げ物担当が、揚がったものを盛り付けて給仕担当の村人に渡していく。

「オンオン!」

「コメ炊きあがりました!」

「カツの方は?」

「できた順でいいなら、揚がってますよ!」

「じゃあ、主賓から順に、カツカレー持っていって!」

 カレーの会所属の村人が、気合を入れて米とカレーとカツをきれいに盛り付けていく。

『父上!母上!カツカレーです!刺激があって美味しいのですよ!』

 ちび型黒紅が、人化したままの漆黒と辰砂に喜び勇んで前に置かれたカツカレーを勧める。漆黒と辰砂はおっかなびっくりカツカレーをスプーンで口に運ぶ。

「「!」」

『どうです!』

「うまい!」

「美味しいわ」

 それだけ言うと漆黒と辰砂は、せっせとカツカレーを流し込み始めた。

『の!?妾も食べねば!父上と母上に全部食べられてしまう!?』

 慌てた黒紅も皿に顔を突っ込んでカツカレーを食べ始める。

 その様子を村人達は嬉しそうに見守る。もちろんカレーの調理を担当している村人達の方はそのペースに焦りを覚え、せっせとカレーの増産に入る。

「お、俺もそのカツカレーというのが食いたいんだが」

 古代竜の食べっぷりを見ていた、村に来て間がない冒険者の一人が給仕の村人に声を掛ける。

「はいはい!すぐお持ちしますよ」

「俺も!」

「わたしも!」

 次々と声の上がる中、給仕を交代しながら村人達は料理を運び、食べ、酒樽を持ち込んで宴会を盛り上げていく。

『できた!』

 精霊の声に、皆ハッとなる。すっかり存在を忘れていたようである。

「できましたか?じゃあ盛りつけして……」

 傍に近寄って鍋の中を覗き込んだアマーリエが絶句する。

「どうした?どんなスープが……」

 木鉢を持って盛り付けの手伝いに入ろうとしたパトリックも、中身を見て絶句する。

「「「どうしたの?」」」

「いや、その色がね……イカ墨は食材になかったよね?」

「色?イカスミ?」

 首をひねるアマーリエに、怪訝な顔をする調理担当の村人達。

「香りは美味しそうないい香りなんだよ」

 慌ててパトリックがフォローを入れる。

「とりあえず、頼んだウィルヘルム様に味見してもらおう!大丈夫だよ!色が黒いだけだと思う!初代様方がちゃんと食べてて生きてるんだし!」

「「「「「(それ毒味っていうんじゃ?)」」」」」

 いい切ったアマーリエに、顔を見合わせる村の衆であった。が、誰も毒味をするとは言い出せず、木鉢に真っ黒スープを注ぎ、頼んだウィルヘルムのもとへと運ぶ。

「……」

『すごく美味しいって二人が言ってくれたスープだよ!』

「い、いただきます!」

 ニコニコ笑う精霊に、怖いと言えず、男は度胸とばかりに一匙すくって口にするウィルヘルム。そんな彼を固唾をのんで見守る人々。

「!美味しい……」

 ドサッとその場で気絶したウィルヘルムを慌ててて抱き起こすゲオルグ。アーロンがすぐさま、スープを鑑定する。

「【気絶するほど美味しいスープ:土の精霊が精魂込めて作ったスープ。材料******】ぐっ、精霊様のスキルが高すぎてそれしか鑑定できなんだ」

「「「「はぁ?」」」」

 アーロンの鑑定内容に意味がわからず怪訝な顔をする人々。そんな中、勇気ある冒険者の一人が、ウィルヘルムの食べたスープを一口、口にする。

「うまい!……」

 一言言ってぶっ倒れた冒険者を仲間の回復士が慌てて回復させる。その後、好奇心の強すぎる人々によって、気を失いながらも精霊のスープを完食する姿が、宴会会場のそこここでみうけられた。

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