表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第20章裏 問題児の尻拭いも大変なんです!
87/175

 アルバン村に着いたウィルヘルムとゲオルグ達。

「まあ、立派な結界が三重に!」

「わぁお!すごいわねぇ、この結界」

 村の前に転移してそうそう、古代竜達の張った結界に興味津々と目を向ける魔女二人。早速目に魔力を宿して、魔力感知スキルを発動する。

「そんなにすごいんですか?」

 キャッキャ喜ぶ、レジェンド級の魔法師二人の様子に、ウィルヘルムが尋ねる。

「魔法を放ったらぁ、反射される仕様になってるわよぉ」

「わぁ」

「物理攻撃も反動が来るようになっていますね」

「おおぅ」

「「侵入しようとしたら取り込まれるのもそのままね」」

「い、いいのかな?」

 さらなる過激な仕様変更にウィルヘルムが首を傾げて、魔女を見る。

「いいんじゃないのぉ?魔物の暴走(スタンピード)もあるんだし」

「守りが堅いと、安心して外で戦えますからね」

「はあ、そうですか」

「思った以上に、大事になっとる気がするんじゃが?」

「お祖父様、リエが絡んだ結果なんですから、もう今更ですよ」

「……そうじゃったの」

 もうそういうものと受け止めているウィルヘルムとまだ少し諦めのつかないゲオルグであった。

「さ、古代竜がどうなっているのか見に行きましょう!」

 古代竜に会えることにワクワクしているウィルヘルムであった。四人は村の中で行き会った村民から、古代竜達が神殿で、職人達をはじめとする村人や冒険者達とおしゃべりしていると聞き、神殿へと向かう。

 その途中、ダールからウィルヘルムに相互通信機で王から古代竜のアルバン滞在許可が折りたと連絡が入る。

「思った以上に早かったですね、陛下からのお返事。一両日はかかるかと思っていたのですが」

「断るにしても誰が断れるんだという話じゃからの。できんことを議論するほうが時間の無駄じゃわ」

「確かに。で、ダールから村の人同様に古代竜からもしっかり納税してもらえと言われたんですが」

「そのあたりは、お前に任せたからの」

「ちょっ!お祖父様!」

「わしゃ、隠居。あくまで補佐。話の大筋をみたら、砦に行くからの?アマーリエが砦で何をやらかすか、わかったもんじゃないからの」

「そりゃそうですけど」

 道道出会う村人から情報を得たゲオルグ。古代竜よりも、アマーリエがまたやらかすほうが恐ろしいと、心はすでに砦の方に行ってしまっている。一応、ゲオルグの中にウィルヘルムがヘマをしないだろうという信頼はあるのだ。

「私が砦の方に送りましょうか?」

「東の、何度もすまんが、頼む」

「よろしいんですよ、リエちゃんたら面白いんですもの」

 魔法馬鹿の無責任極まりない言葉にがっくりするゲオルグだった。

「あたしはぁ、アルギスさんのお守りもあるしぃ、村で待機するわねぇ」

「はい、お願いします。私の護衛もお願いしたいところですけど」

「無茶言わないでぇ。一人で古代竜一頭でも難しいのにぃ三頭も相手できないわよぉ。穏便に話し合いしてちょうだいよねぇ」

「……はい」

 あっさり、実力のある年寄り連中から、獅子の子落としを食らったウィルヘルムであった。

「「ゲオルグ様!若様!」」

「……しもた」

 神殿の前で、カクさんとスケさんに声をかけられ、あっという顔をするゲオルグ。

「やっぱり!我らのことをお忘れでしたね!」

 こちらはこちらで、やっぱりかという顔をするカクさんとスケさんであった。

「すまん、すまん。立て続けに大事が起こったからの。連絡するのをころっと忘れとったんじゃ」

「「……」」

「ところで、アルバン砦の方も何やら大変なことになって居るようじゃが?」

 ゲオルグは、ジトーっと見てくる二人の機嫌を直すのを早々に諦め、あえて別の話題を振る。

「はぁ。いつものことですが報連相は忘れずにお願いしますよ?」

「わかったわかった。それで?」

「砦の厨房の壁が壊れたらしく、アマーリエとシルヴァンが、銀の鷹と一緒に炊き出しに向かいましたよ」

「なんと!ん?アマーリエとシルヴァンが一緒と……な?」

 イヤーな予感が背中を駆け上ってくる感覚に、顔が引きつり始めるゲオルグだった。

「ええ。一緒ですよ。何かやらかす前に、止めに行ったほうが良いと思われます」

「じゃの。これウィルヘルム、わしゃ、すぐに砦に向かう。古代竜との交渉は任せたぞ!東の、いくぞ!」

「はいはい」

「へ!?お祖父様?」

 ウィルヘルムが止める間もなく、ゲオルグ達は村の外へと向かったのであった。

「元気ねぇ〜。さ。ウィルちゃん、交渉頑張ってよぉ」

 南の魔女から調子よく肩をポンポンと叩かれ、ウィルヘルムはがっくりうなだれる。

 そしてそのまま、有無を言わさぬ南の魔女によって、神殿の中へと連行されたのであった。



「ご領主様、連れてきたわよぉ」

 南の魔女の声に、食堂に居た村人達は視線をそちらに向けるが、見ちゃいけないものを見たせいで目をそらしてしまう。

 ずりずりと引きずられるウィルヘルムの姿にデジャブを覚えたのはアルギス。そっと目をそらしたのはヴァレーリオだった。

「お、おう、戻ったか。ご領主殿、こっちだ。漆黒殿と辰砂殿が待っているぞ。おい、誰か子ども達と遊んでいる黒紅殿を呼んできてくれ」

 ヴァレーリオの声に、村人の一人が黒紅を呼びに行く。なにげに村人に馴染んでいる古代竜一家である。ちなみに、子ども達と黒紅の監督を押し付けられたのはネスキオである。ヴァレーリオのこいつが一番反射神経が良いという一言で決まったのである。

「魔女様おかえりなさい。ご領主殿、この間ぶりですね、さ、こちらにどうぞ」

 南の魔女から、ウィルヘルムを渡されたアルギスが、漆黒と辰砂が座る席の前に座らせる。村人と冒険者達は興味津々で、ウィルヘルムの応対を見守っている。

 ウィルヘルムが人払いをしなかったのは、何かあったら助けてもらおうという腹づもりがあったからだ。

「漆黒殿、辰砂殿。これがここの領主だ。」

 ヴァレーリオのこれ(、、)扱いに、ショックを受けつつも、若輩者と諦めて、古代竜に挨拶をするウィルヘルム。

「はじめまして、現在この辺りの地を治めております、ウィルヘルム・フォン・バルシュテインと申します。お目にかかれて大変喜ばしく思っております」

「「……」」

 ウィルヘルムのきりりと表情を改めた、なんちゃって領主姿に不信の眼差しを向ける漆黒と辰砂。

「ウィルちゃん、素のあんたのほうが良いわよぉ」

「ですか?」

 容赦なく突っ込む、南の魔女に情けない視線を向けてから、ウィルヘルムは漆黒と辰砂に確認を取るように素の姿に戻して聞く。

「我らと会えて嬉しいという言葉は本物だ。だがその言葉遣いには隔意を感じるから率直に話していただけるほうが嬉しい。そもそも、我らは相手の表層意識を読む。取り繕うだけ無駄と思ってくれ、ご領主殿」

「わかりました!じゃ、率直に!うちに住んでもらうのは構いません。でもみんな納税してるんで、お二人も税金納めてださい!」

 交渉もへったくれもない、あまりにあれな物言いに周りの村人達のほうがずっこけた。冒険者達の方は、古代竜相手に遠慮も何もない言葉に、逆に感心して小さく拍手をしている者までいる。

「え?まずかった?」

「いや。村や領地を運営するのに金が必要なのだろう?だが、我らが今持ち合わせている貨幣は、ここで流通しているだろうか?」

 いたって真面目に受け答えする漆黒の言葉に、首をかしげるウィルヘルム。

「あれ?人の中で暮らした経験がお有りなんですか?」

「ごくたまに、混ざることもあるぞ。緑青のようにずっと人里にとどまることはないがな。竜によって関わり方が違うのだ。」

「へー」

「欲しいものがある時に、物々交換できない場合がある。そういう時にこの貨幣というものは便利だ。私は、喰らった魔物の魔石を貨幣と交換したんだ。魔石はそのまま食べると色んな意味でまずいからな」

 そう言って、漆黒は腰の巾着から、いく種類かの貨幣を取り出す。キラキラ輝く金貨に、ウィルヘルムは目を見開いて驚く。そして、漆黒に金貨を触る許可をもらってしげしげと金貨を見つめる。

「わぁ、帝国のミリウル金貨だ!金の純度が高くて、もう流通してないやつ!うわー、うわー、初めて触った!父上に見せてもらったことがあるけど、触らせてもらえなかったんだよね」

「うーん、久しぶりに見たね。今は殆ど、表にはでてこない貨幣だが、確かにミリウル金貨だね」

 そばに居た西の魔女が、ウィルヘルムの持つ古い帝国金貨を見てうなる。

「やっぱり本物ですか!うわーうわー」

「喜んでもらえて嬉しいが、税として納められるだろうか?」

「ええ、もちろんです。これで全然問題ないです。この金貨なら、大体五枚で一年分の納税額になりますよ。今流通している、十万シリング金貨なら十枚です。他にも労役で払ってもらったり物納も受け付けてますよ。うちの領地は割と融通がきくんですよ。納税額は、稼ぎや職業によっても上下しますけどね。あ、そうだ!解体スキルお持ちですか?」

 ものすごくざっくり説明するウィルヘルムに、ちょっと心配になる村人達。後でちゃんと古代竜達に自分達の領地の税制をちゃんと説明しようとこっそり話し合う。

「解体スキル?」

「魔物の皮を剥がしたり、鱗をとったり肉や骨を取るスキルだよ」

 首を傾げた漆黒と辰砂に、そばに居た職人が簡単にスキルの説明をする。

「魔物を倒す時に解体スキルが有ると、いろんな部位が自分でとれるようになるんです。ないと魔石と何かが残るぐらいですけど」

「我らはそのまま魔物を食らう故、気にしたことがなかったが、あるとどうなる?」

「村に、解体した魔物の素材を売っていただいて、そのお金で税金を収めたり、人の作るものと交換してもらったりできますよ。宿屋に料理人も居ますから、魔物のお肉で料理も作ってもらえます」

「なるほど!それはよいことを聞いた!」

「村の職人さんも魔物の素材があれば、技術が上がりますから喜びますよ」

「「「そんでご領主はその売り上げを税で持っていくんじゃねーか」」」

「ちゃんと、領地運営に使ってますよ!嫌だなぁ」

 突っ込みを入れる村の職人に、真顔で横領してないからと訴えるウィルヘルム。

「ご領主は、嘘は言ってないな」

 こちらも真顔でうなずく漆黒に、ウィルヘルムはキラキラした視線を向ける。

「うう、保証してもらえた。嬉しい」

「ご領主様、わかってらぁな。冗談さ」

「そうですよ。ご領主様方が一生懸命、領地を守って下っさってるって、ちゃんと知ってますよ」

 ちょっとすねたウィルヘルムをなだめる村の衆であった。

 その後は、黒紅達の家をどこにするのかという話や納税方法の話、魔物の暴走(スタンピード)の際に助力を得られるだろうかと言った話を済ませる。

 話が終わると、黒紅と辰砂を村の女衆が手伝って家の用意をし、漆黒は冒険者ギルドで解体スキルを生やしたあと、魔道具屋のベルク親方からアイテム袋を受け取ってすぐさま魔の山へ狩りに飛んでいった。

 ウィルヘルムはと言うと、ダールに砦がどうなったのか報告を聞いてから屋敷に戻ると連絡を入れた後は、情報収集と称して、アルギスと南の魔女と一緒に村のあちこちを歩き回わって羽根を伸ばしていた。

 村の人から嫁はまだか攻撃を受け、精神的ダメージを蓄積させたのはここだけの話である。


これで裏話は終了です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ