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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第20章 すねた子の機嫌を治すのは大変なんです
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 すべての準備を済ませ、砦に行くことになったアマーリエが、シルヴァンにまた留守を頼もうとすると、もふもふちゃん、キュウキュウ鳴きながらアマーリエにしがみつき、銀の鷹達を見回し、目で訴える。

「「「「「「リエ、シルヴァンも連れて行け」」」」」」

「シルヴァン?」

「ピスー」

「連れてってやれ」

「コメ調理できるし役に立つよ」

「魔法も使えるから、多少は役に立つでしょ」

「騎士の方で怪我してる方が居たら治癒もできますよ」

「何か変なものが居たら、シルヴァンの気配察知もあれば探しやすいぞ」

「おいてくのもかわいそうだろ」

 銀の鷹達がマジな顔でシルヴァンを推すことに首をかしげるアマーリエ。しょうがないので念話で理由を聞く。

『してその心は?』

『拗ねると面倒なんだよ』

『昨日拗ねて機嫌治すの大変だったんです。私、お菓子半分提供しました』

『ぐはっ、補充させていただきます』

『ダリウスさんにあーんされて夕飯食べてたんだよ。そうしないと夕飯食べなかったんだ』

『すねててもそれはそれで可愛かったんだがな』

『そりゃよかったですね』

『神殿の隅っこでふてくされてて、一緒に遊べなくてつまんなかったぞ』

『神殿の中で鬼ごっこやかくれんぼしたらヴァレーリオ様に叱られませんか?』

『物を壊さなきゃ良いと許可貰った!子どもたちも一緒だ!』

『自由だなぁ』

『あんなに拗ねる魔狼、初めて見たわ』

「色々と、申し訳ありませんでした」

 アマーリエは、心の底から陳謝したのでした。

『主!妾も行くぞ!』

 小さくなった黒紅が、アマーリエの懐に飛び込んでくる。

「黒紅ちゃんはご両親と一緒に村を守ってくれると助かるかな。大隠居様がたぶん、一家で村に住めるように色々融通してくれると思うから、お話しも聞いといてほしいかな」

『任せておけ!村の衆をしっかり守るぞ!じーじとはちゃんとお話する!』

「お、うん、お留守番頼んだよ(いつの間にじーじ呼びに?)」

 あんたのほうが年上だろうと内心で首を傾げつつも、黒紅に留守番を頼んだアマーリエ。

(リエのやつ、古代竜を連れて行ったらノール殿に雷落とされるのがわかってて、回避しやがったな)

 ベルンが呆れたように二人の会話に肩をすくめる。

「リエ、そろそろ行くわよ」

「はい。じゃ、黒紅ちゃん行ってくるね」

『いってらっしゃい、主!』

 そんなこんなで、あれこれ村人に手渡されたものを積み込んで、グゥエン達とアマーリエ達はアルバン砦に向かったのである。


『しくしく、シクシク、ズズズ〜』

 砦の騎士達は、ポルターガイストが止み、今度は精神攻撃を受けていた。頭に直接聞こえてくる泣き声に、皆顔面蒼白で右往左往している。

「誰が泣かした女性なんですか!」

「そんな話はこの砦にないからな!女を泣かすような情けない男はこの砦にはおらん!」

 砦に長く居る騎士が、女性騎士の咎める声に慌てて答える。

「「「当たり前だよ!あたし達の目の黒いうちは、ここで不幸になる女なんざ出しゃァしないからねぇ!」」」

 砦の料理人である、肝っ玉母ちゃんズの力強い声にはっとして頷く女騎士。

「レイスなんて居ないはずでしょ?」

「範囲拡大した浄霊魔法は効いてません!泣き声の原因はレイスじゃないです」

「じゃぁ、何が原因?」

「誰か何とかしろ!」

「無茶言うなよ!」

「おい!ここなら泣き声が聞こえないぞ!」

「本当か!」

 一人の騎士の声に、わらわらと皆がその場所に集まっていく。

「ホントだ聞こえない!」

「ウォ、ここはまだ聞こえる。もうちょっとそっちか?」

 なんだかんだで、声の聞こえる範囲と聞こえない範囲の境界上に騎士が立つことになってしまっていた。

「只今戻りました!」

「グゥエン!」

「何事ですか?」

 アマーリエを連れて戻ったグゥエンが、砦の中庭で弧を描いて佇む騎士達に疑問を投げかける。

「実はだな……」

 砦の司令官の状況説明に、絶句するグゥエン達と銀の鷹達。

「あの~、先に腹ごしらえ済ませちゃいませんか?」

 膠着してる状況に、アマーリエが別なことをして、一旦思考のクールダウンをすることを勧める。

「お、リエ坊!久しぶりだな。お前の言うとおりだ。腹が減ってちゃ、まともな考えも浮かばん」

「お久しぶりです、騎士様。村の人から差し入れありますよ」

「そうか!助かる。皆、先に食事だ!」

 馬車を使って配給場所を設営し、食事を騎士に配り始めるアマーリエと銀の鷹達であった。

 しばらくして、食堂を調査していたノールと准騎士が中庭にやってくる。

「みんなひどい!先に食べるなんて!」

「食い気だけで生きてくのは、リエだけで十分だ!」

 准騎士にげんこつ飴を食らわせて、黙らせるノール。

「……食い気だけで悪かったですね。ノールさんは朝食抜きで良いんですね」

 おタマを握り、ジト目でノールを見つめるアマーリエ。

「げっ!?リエなんでお前がここに!?お前が居たらまた騒動になるだろう!」

「失礼しちゃいますね!私が居なくったって、もう十分騒動の範疇じゃないですか!」

「さらにでかくなるって言ってんだよ!」

「よぉ、リエ。久しぶり。お菓子持ってきてないのか?」

「なんだ、ガストンさんとこのはなたれ小僧は、こんなところに飛ばされてたのか。あんた、やってけてんの?」

「はななんか垂らしてないやい!大丈夫だよ!それよりお菓……」

「菓子より食事をちゃんとれ!」

 再度ノールにげんこつを落とされ、准騎士は頭を抱えてうずくまっている。

「……相変わらずだな。はい、ノールさん食事」

「ああ。ありがとう。ほら立て!報告に行くぞ!」

 ノールは朝食の乗ったトレーを片手に、准騎士を引きずりながら司令官のもとへ向かう。

「みんな、朝食は行き渡りましたかね?それで砦の料理人さんはどちらに?」

 アマーリエはシルヴァンとともに、砦の料理人、肝っ玉母ちゃんズに紹介される。そして、持ってきた簡易コンロを使って、仮設厨房を騎士達に手伝ってもらいながら設営し始める。

「あんたほんとにこの穀物食べるのかい?」

「ええ、美味しいですよ」

 アマーリエの言葉に顔をしかめる母ちゃんズ。

「殻を取ってオートミール風にしたんだけど。芯が残るわ、変な臭がするわで、不評でねぇ」

「そりゃそうでしょうねー。米はどの状態で保存されてますか?」

「この殻のついたまま、アイテムボックスにしまっているよ」

「なら食べる分だけこの殻を外してるわけですね」

「ああ、そうだ」

「うーん、食べ方としてはこの殻を外した状態の玄米を食べるのと」

「うんうん」

「さらにこの米を精米、米をつくと言って外側を削って食べる方法があります」

 そう言ってアマーリエはリュックから、籾、玄米、精米を取り出して母ちゃんズに見せる。

「ふん、さらにこのまわりを削るだね?」

「これから魔道具屋さんで、精米機を作って貰う予定ですが生活魔法で精米も出来ます」

 そう言ってアマーリエは寸胴鍋に玄米をみっしり入れ蓋をしてしっかり抑えて、風の魔法で中をかき混ぜる方法を料理人に教える。

「笊に空けると削った粉が出ます。これを糠といいまして色んな事に使えますので取り置きしていただいていいですか?」

「わかった!」

「今日は、この精米の炊き方と玄米の炊き方を教えますね」

 そう言うとアマーリエは先に精米の炊き方を実演しながら教える。そして、次に玄米の炊き方を教え始めた。

「玄米は一晩水に漬ける必要があります。なので寝る前に軽く洗って、たっぷりの水に漬けておきます」

「ふむふむ」

「後は精米と同じように炊けば大丈夫です。もう一つはびっくり炊きと言って水につけておく時間がない場合の炊き方になります」

「ほうほう」

「さっと洗いまして、だいたい玄米の量の1.2倍~1.5倍の水の量を鍋に入れ、塩をひとつまみ入れます。強火で炊きます。焦げるのが心配でしたら途中で蓋を取っても構いませんよ」

「ふむふむ。精米の方とは違うんだね」

「ええ。あっちは火を弱くしてから蓋を開けて、中の温度が下がると炊きムラが出ちゃいますので」

「ふむふむ」

 アマーリエは鍋に洗った玄米を入れ、たっぷり水を入れ、鍋を火にかける。その間に、炊けた精米で塩むすびを作る方法を教える。鍋から香ばしい香りがし始めると、焜炉の前に戻る。

「しばらくしたら、お湯が減って香ばしい匂いがして、米がピシパシと爆ぜるような音がし始めます」

「ふむ」

 ピシパシ言う音を料理人に聞かせるアマーリエ。 

「で、ここで蓋を取って冷水を0.8倍~1.2倍、だいたいこれぐらいですね。入れて、さらに炊きます」

 そしてまた、テーブルに戻りおにぎりを作ってもらうアマーリエ。頃合いを見てまた焜炉に戻り蓋を開けるアマーリエ。

「こんな風に蓋を開けて、お湯がほぼなくなり穴が開けばあとは水気が完全になくなるよう弱火にして、水気を切ります」

「ふむ」

「火を切って、蓋をしてしばらく蒸らせば完成です」

 塩むすびを先に料理人試食してもらう。

「!美味しい!ほんのり塩味が効いて、穀物の甘さが引き立つね」

「そのまま食べにくい方が居たら、そうやって出してあげてください」

「わかったよ!あとは考えてみる」

「ええ」

「こちらのゲンマイのほうもいい?」

「ええ」

 玄米の試食をはじめる料理人達。

「ふむ、こちらのほうがよりコメの香りが強いな。あとぷちぷちした食感かねぇ」

「あたし達が作ったオートミールよりはるかにおいしね」

「ああ、多分オートミールも先に水かミルクにつけておいてから作れば、芯が残らずおいしいと思いますよ」

「なるほど!コメというのは最初に水でふやかす必要があるのだね」

「そういうことですね」

「色々助かったよ」

「いえいえ」

「ほんとに助かった。パン焼き竃の方は作るのに時間がかかるからねぇ」

「けど、パンが食べたいやつはどうする?」

「アルバン村の役場に私が村に来るまでの備蓄のパンが残ってるらしいので、それで良ければ買い取ってもらえると嬉しいと伺ってます」

「わかった。司令官殿に頼んでみるよ」

「後、少量で良ければパン焼き竈が出来るまではうちで注文受けますよ」

「頼んでいいかね?」

「はい。米は体力回復が少しですが付くので、余程じゃない限りパンをという方も少ないと思いますので」

「そうだね。それじゃあ、そう言う方向で司令官殿に話をつけるよ」

 一通り、米の炊き方を教えて、パンの方は竈が直るまで少量なら引き受けることにしたアマーリエであった。

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