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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第18章 問題の片付け方
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「……ファウランド王国王都某所にて秘密の巨頭会談が行われようとしていた」

「アマーリエ?」

「いえ、ちょっと陰謀風に言ってみただけです。あれ、誰も止めないんですか?」

 コソコソと部屋の片隅でゲオルグと内緒話をするアマーリエ。

「いつものことじゃ。気が済むまでやらせておけ」

 アマーリエは、アルバン村からゲオルグ、黒紅、アルギスと一緒に魔女三人によって王都に運ばれ、会見場所に連れてこられた。

 連れてこられた場所には、すでにやんごとなきお方二人が居て、ものすごく低レベルな争いの真っ最中であったのだ。

「お前ばかりずるいじゃないか!」

「フフン!温泉は良かったぞ!こう、体の芯から暖められて、体のすみまでほぐれていくんだ!」

「わしもまだ行ってないのに!」

「いいだろう」

 帝国のやんごとなきお方、フフンと鼻で笑って王国のやんごとなきお方を挑発する。

「ムキーッ」

「村の祭りも面白かったぞ!目新しい食べ物があって、大いに買食いを楽しんだ!」

「!」

「綿あめなるふわふわと雲のような甘い菓子とかソース焼きうどんという素朴ながらもうまい麺料理があった。焼き鳥という単純ながら奥の深い串焼き料理もあったぞ」

 ニヤニヤ笑う帝国のやんごとなきお方に、王国のやんごとなきお方の方は涙目である。

 それを隅の方でゲオルグを盾にして、私は彫像と内心で唱えながら三猿状態を保つアマーリエ。アルギスは、目をまんまるにして、兄達のやり取りを見つめ、魔女三人は黒紅と話をしている。

 ゲオルグの方は毎度のことと、無視をして皇国のやんごとなきお方が連れてきた、インテリ眼鏡な魔法士改め、帝国の宰相補と正式に自己紹介を始めていた。

「初めましてかの。先々代のバルシュティン辺境伯領を賜っておった、ゲオルグ・フリードリヒ・フォン・バルシュテインじゃ。此度は急な話を受けてもらい、感謝しておる」

「私はグリニアス帝国宰相補佐を務めまする、アズリアス・ベルディグリです。ゲオルグ殿のご高名はよく陛下より伺っております」

『緑青!久しいな!今は人のところで過ごしておるのか?』

「久しぶりですね、黒紅。千年ダンジョンで過ごせと申し付けたはずですが?」

『うっ』

 突如、始まった黒紅と宰相補の会話に目を剥くアマーリエとゲオルグ。やんごとなきお方たちは口を開けたまま、アマーリエ達の方に視線を向ける。

 それを見たアマーリエは、礼儀作法のなってない図太い平民面して、その場の収拾を図りに行く。

「(あんちゃんも知らなかったのか……)え、魔法士さんて帝国の宰相補で、古代竜だったんですか?」

「ええ、そうです。今まで古代竜であることは秘密にしていましたけどね。勘のいい竜人の騎士には薄々正体がバレて居たようですが、黙っているだけの賢さが彼にはありましたからね。ちょっと、陛下、そのマヌケヅラおやめください。我が国の恥を晒さないでくださいね」

 緑青の冷たい眼差しに、両やんごとなきお方、慌てて口を閉じた。

「なるほどー。道理であんちゃんにズケズケ物が言えるわけだ」

「貴女も、随分と遠慮のない性格のようですね」

「気のせいですー。でもなんでまた、帝国で(まつりごと)の手伝いなんかやってんですか?」

「帝国の宰相が、とてもできた方でしてね。先代の暗愚な皇帝の元、大変な苦労をしながら帝国が傾かぬよう頑張っていましてね。ここで手助けしないのは、良心に恥じると思ったまでです」

「へー、さすが古代竜一の常識竜!」

「なっ!我のためではないのか!?」

 緑青の言葉に、アマーリエと帝国のやんごとなきお方の言葉が重なる。

「おだてても何もでませんよ。褒め殺しが効くのはそこの黒紅ぐらいです」

『な!?』

 流れ弾に当たった黒紅がショックを受け、愕然としている。

「陛下のような面倒なのを主君と仰ぐ、苦労性の宰相のために決まっているでしょう。何を言ってんです?」

「ブハハ」

「笑うな!」

 緑青にやり込められて涙目な帝国のやんごとなきお方は、王国のやんごとなきお方に盛大に笑われ、拗ねた。

「帝国にも古代竜が居るなら、黒紅ちゃんもアルバン村に居やすくなるかな〜。二国の表面上の力関係は変わらないってことだし」

 王国に、いや辺境伯領に古代竜が居ることで、国家間や領地間のパワーバランスが崩れることが、アマーリエの懸念材料であった。が、帝国にも古代竜が居るとなれば、話は違ってくる。

「貴女も色々、腹積もりがあるようですが、ここで話すのも何です。温泉村に行きましょうか」

「はいぃ?」

 なぜそうなるんだと首を傾げるアマーリエ。

「やった!行こう!温泉村!」

 温泉に行きたかった緑青と王国のやんごとなきお方のせいで、急遽、会談場所が温泉村に変更されることになったのであった。


「……ないわー」

 ぶちぶち言いながら、アマーリエは錬金スキルを使って、川原の石を机と椅子に変えていく。魔力が足りないのでそれぞれの魔女から分けてもらった魔石を使って、魔力の充填をしながらである。

「なぜ人が増える?」

 ゲオルグが王国のやんごとなきお方を止めるために、一人で温泉村に行ったのが王妃にバレたら面倒ですと言ったせいで、王妃と皇太子までついてくることになったのだ。国に関わる大事な話もあるのだからと。

「……温泉に行きたかっただけじゃないか。黒炎の竜(世界の災厄)が復活した話はおまけでしょ!」

「ぶちぶち言わないのよぉ。ほらぁ、さっさと手を動かすぅ!」

 東の魔女に、防御結界(アマーリエが自前のやり方を教えたら喜々としてやった)を張ってもらった後、南の魔女と一緒に宴会の準備になったのだ。

 黒紅は王妃と東と西の魔女と一緒に温泉に入っている。小さい姿のままなので、なにげに王妃に気に入られている黒紅であった。

「人に(かしず)かれ慣れているはずの人間が、なぜ、ああも平民適応能力が高いんだ?」

 やんごとなきお方達は喜々と平民の服に自分で着替えを済ませ、遊ぶ気満々で温泉村に運ばれてきたのだ。

「何言ってんのぉ。あんたのとこの王族は、皆、冒険者資格あるわよぉ」

「は?」

「初代がそもそも冒険者なのぉ。慣例として、王族は十二歳から冒険者になるのよぉ。だから、自前である程度のことは出来るわよぉ。アルギスさんのお兄さんは、王国に人質として来た時に王様と一緒に冒険者やったせいよ」

「……うちで冒険者の扱いがかなり良いのはそのせいか」

 もちろん魔物の退治をしてくれる存在として、他の国でも冒険者の地位はそれなりにあるのだが、ファウランド王国では、さらに冒険者の人としての資質も問われるため、相乗効果として一般市民からの冒険者へのウケはすこぶる良いのだ。

「そうよぉ、王族に倣って、貴族連中も冒険者資格取るのよ。ま、質はそれぞれだけどぉ。準備できたぁ?料理出していくわよぉ」

 アイテムボックスから料理を取り出し、テーブルに並べていくアマーリエと南の魔女。

「ほぼ、なし崩しの義務なんですね、冒険者になるのが」

「冒険者にならないと外圧がかかるわねぇ、なんでならないのかって。のっぴきならない事情がない限りは、ほとんど冒険者の資格取ってんじゃないかしらぁ」

「そりゃそれで、向いてない人間には大変そう」

「皆が皆、戦闘職になるわけでもないし、そのへんは配慮されてるわよぉ」

「なら良かった。逆に勘違い野郎とか出て、身分とあいまって変な被害がでそうな気もするけど」

「あんたって、貴族で冒険者なんてかっこいいって夢見ないのねぇ。考え方が現実的よねぇ」

「現実に生きてますんで、おめでたい思考にはなれませんねー」

「たまーに勘違いな上に変なの出るけど、この国で冒険者が尊敬されるのは、そういうのが淘汰されるようにできてるからよぉ。安心しなさいなぁ。一般人に被害が出ることなんてめったにないわよぉ」

「皆無じゃないんですね、気を付けます」

 アマーリエの言葉に肩をすくめる南の魔女。

「ま、そのほうが安全ねぇ。さてとぉ。とりあえず、料理は机にのるだけ出したわよぉ」

「後は、様子見ながら追加しますよ」

 机の上に所狭しとアマーリエが必死に作った料理とゲオルグが用意した飲み物が用意されている。

「頑張ったわねぇ」

「ええ、動いてもらわないと困るんで」

「大丈夫でしょ。なんだかんだ楽しいこと好きだから、あんたのとこの王様は」

「あんちゃんも、アルギスさんがやりたいって言えば、全てなげうってでもやり遂げてくれるでしょうしねー」

 そう言って腹黒い笑みを浮かべるアマーリエを見て南の魔女は深々とため息を吐いて言う。

「あんたってぇ、人の弱みを容赦なく突いてくわよねぇ」

「突き方次第なんで。反撃食らうような突き方をしないのがコツですけどね」

 アルギスに【世界・食の祭典!第一回古代竜杯!古代竜の加護を得る料理人は誰だ!?】の経済効果や、祭りが増えればあんちゃんと一緒に視察という名で色んな所に遊びに行けるぞと吹き込んだアマーリエであった。

「あんたにはぁ、踊らされないように気をつけないとねぇ」

 しっかり踊る気になってるアルギスを傍で見守っていた南の魔女であった。あんちゃんスキーを止める気はないらしい。

「盛大に踊りたくなるよう太鼓叩きますんで、踊り明かしてくださいよー」

「んまぁ!あんたって()はァ!」

 軽くアマーリエの頭を小突いた南の魔女であった。

 そんなこんなで、温泉から上がってきた人々によって、夜の河原での宴会が幕を開けたのである。

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