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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第17章 シルヴァンのダンジョン初探索
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※本日2話目です。ご注意ください。

『ピンポンパンポン!古代竜(エンシェントドラゴン)の戦闘不能により、勝者は侵入者!古代竜(エンシェントドラゴン)撃破及び戦闘手段、戦闘時間等を検討した結果、上位装備他諸々を報奨として進呈する!受け取れ!』

 皆の頭のなかに声が響き、カバ並みに大きな宝箱が空中から現れ、ドスンと地響きをたて地面に落ちる。

「か、勝った?」

『勝ちです!』

『わ、妾の負けなのか!?そ、そんな!?シクシクシク』

「な、泣き出したのか?」

「それより、宝箱!」

「そうです、中身確認しないと!上位装備って言ってましたよね?」

 魔法マグの中のすすり泣きに、ダリウスが反応するも、皆視線は宝箱に釘付けである。

 魔法職は防御魔法を解除し、魔法マグごとシルヴァンを放置し、皆で宝箱に近寄る。グレゴールが、確認のため宝箱を調べる。

「大丈夫。罠はない。解錠するよ?ダリウスさん、手を貸して。この蓋重いから」

 グレゴールが何事もなく鍵を開け、ダリウスが蓋を開けるのを手伝う。箱からまばゆい光が漏れる。

「おお!」

 宝箱の中身を真剣に調べ始める皆をよそに、シルヴァンはドラゴンの入った魔法マグともう一つのお弁当が入った魔法マグをこっそり取り替え、アイテムバッグにしまい込む。

「うーむ、これはアーロンに鑑定を頼んだほうがよいのぉ」

「そうですね。まさかこんなことになるとは……」

 ゲオルグの言葉に皆が頷く。

「この大きな宝箱どうやって運び出します?」

 グレゴールの言葉に、また皆の頭のなかに声が響く。

『宝箱に手を当てて、思う大きさを想像してください。その大きさになります』

 その言葉のまま、グレゴールが宝箱に手を当て、ワイン箱程度の大きさ想像する。すると宝箱はスルスルと小さくなっていった。

「わぁ」

「それじゃ、これ持って帰るか」

『またのお越しをお待ちしてます!』

「お邪魔しましたでいいのかな?」

「いいんじゃないか?『また来る!今度は、少人数でな!』」

「確かに。毎度、古代竜出されたらたまらん」

『そうしていただけますと、こちらも助かります』

「『他の連中にも周知徹底しとく。じゃあな』」

『ごきげんよう』

 アマーリエとの念話で、脳内の会話に慣れのある銀の鷹達は、ダンジョンとの会話にも慣れてしまい、そのまま適当に会話を終了させてしまう。

 このままの大人数だと、また何が起こるかわからないと判断し、一旦撤収することに決めたベルン達。皆で一階層目の転移陣から零階層へと移動したのであった。

 そして、一階層の部屋にぽつねんと残った魔法マグが一つ。

『……忘れてた。古代竜(エンシェントドラゴン)回収しとかないと』

 ぼんやりと人形が部屋に現れる。ダンジョンの主だった。ダンジョンの主は、魔法マグを拾い上げる。

『これどうやって開けるの?魔狼ちゃん、叩いてたっけ?とりあえず一回……』

 魔法マグの口がちょっと開いて、プ〜ンとカレーの香りが辺りを満たす。

『え?これ自動カレー生成器なの?古代竜(エンシェントドラゴン)カレーになっちゃったの?どゆこと?』

 魔法マグを手に持ったまま、呆然と立ち尽くすダンジョンの主でありましたとさ。


 一方、ゲオルグ達は慌てて村に帰り(もちろん道中で、シルヴァンに戦闘中にいきなり飛び出すなと釘を差すのは忘れてない)、神殿にアーロンを呼ぶことにする。グレゴールがシルヴァンを連れて、アーロンを呼びに行く。途中、閉まったパン屋の前でシルヴァンが止まる。

「あー、リエも呼ぶの?わかった。アーロンさん呼んでくるから、リエとパン屋で待ってて」

「オン!」

 シルヴァンは、パン屋の中に入り、グレゴールはアーロンの万屋まで走り出す。

「オンオン!」

「おかえり〜、シルヴァン。もう戻ってきたの?一泊するんじゃなかったっけ?」

 厨房から、シルヴァンを迎えに出るアマーリエ。シルヴァンはその周りを周りながら、一緒に厨房へと入っていく。

「なんかあったの?」

「ンーウォ」

 アイテムバッグに顔を突っ込んで、保温マグを取り出して厨房の作業台に置くシルヴァン。

「え?食中毒とか言わないでよ?」

「ウー、ウー」

「違うの?開けろって?何か採ってきた……」

 魔法マグを全開して、首をかしげるアマーリエ。

「トカゲ……なわけないよね?一階層って言えども……羽付いてるし」

 魔法マグの中は水とトカゲでめいいっぱいになっていた。チャプチャプしている羽つきトカゲの羽を掴んで引っ張り出すアマーリエ。

 アマーリエは、シルヴァンのドヤ顔に、ますます首を傾げる。その心境は、飼い猫にGを咥えてドヤ顔された時に近かった。トカゲから落ちる雫が、作業台の上で固形化し、キラキラ虹色に輝く石に変わる。

「なんじゃこら?」

 慌ててトカゲを作業台に置き、その石をつまみ上げて観察するアマーリエ。

「ダイヤに似た輝きだけど、いくらなんでも水がダイヤに変わるわけないしなぁ?」

「ケプッ」

「うぉっ!?何?このトカゲ生きてるの!?もしかして、魔法マグの水の中で溺れて、仮死状態だったとか?状態維持の魔法かかってたから死ななかったとか?」

 慌てて、トカゲの蘇生を試みるアマーリエ。お腹を押すと、ゲホゲホとむせて、水を吐き出すトカゲ。その水はまた、作業台の上でキラキラした石へと変わっていく。

「あ、ここ焦げてる?シルヴァン、回復魔法、お願い!」

 アマーリエに言われて回復魔法をかけるシルヴァン。トカゲのお腹の焦げがきれいになっていく。

『ケホッケホ』

「大丈夫?どこか苦しかったり痛くない?」

 トカゲを手のひらですくい上げて確認するアマーリエ。シルヴァンの方は大人しくそれを見ている。

『ゲホ、ゴホッ。怖かったのじゃ!狭いし苦しいし、自分の涙で溺れそうになるし!ウオーン』

 アマーリエにしがみついて泣き始めたトカゲの背中を、慌てて、なだめるようにさする、アマーリエ。トカゲの涙は、アマーリエの体に触れるとキラキラした石に変わり、床に散らばっていく。

「あー、もう大丈夫。外に出たから!もう大丈夫よ~(トカゲの念話?)」

『トカゲではないわ!妾はれっきとした古代竜(エンシェントドラゴン)じゃわ!』

「思考が読まれた?えんしえんとどらごん〜?」

 一瞬思考が止まりそうになったアマーリエ、ぐっと踏ん張って胸元の竜だと主張するトカゲに視線を下ろす。

『表層思考を読んで会話をするのじゃ!竜族はの!』

「じゃあ、思考を読めないのは竜じゃないのね?」

『そうじゃ!あれは亜竜、トカゲに過ぎぬ』

「ありがとう、一つ賢くなったわ」

『ウム。ならばよろしい』

 落ち着いたらしい、古代竜に話しかけるアマーリエ。いきなり泣き出した上に、小さい姿しか見ていないために、まだ子供なのかもしれないと判断したアマーリエだった。

「それで何があったの?」

 アマーリエの言葉に、起こったことを話し出す古代竜。

『……そんなわけで、魔狼の知恵に負けたのじゃ。悔しいが負けは負けじゃ。観念する』

「あー、私の前居た世界じゃ、古今東西あった話だからねぇ」

 そう言ってちらりとシルヴァンに視線を投げるアマーリエ。シルヴァンの方は空口笛を吹いて知らん顔をする。

『ぬっ、そなたの居たところではそんなに簡単に竜が捕まってしまうのか!?』

「いや、おとぎ話の中で、悪魔や竜を小さくして、瓢箪や瓶に入れちゃう話があるんだよ」

『なんと!恐ろしい世界!』

 カタカタ震えだす古代竜に、アマーリエが確認する。

「それでさ、ダンジョンから外の世界に連れ出しちゃってるんだけど、おうち(ダンジョン)に帰る?」

『いや。負けは負け!助けてもろうたし、潔うそなたに従うぞ!』

 パーっとあたりが輝いて、アマーリエ、古代竜をテイムしてしまったのであった。大事件である。

「え?」

「ええー!?」

 ちょうどアマーリエとシルヴァンを迎えに来たグレゴールが、うっかり現場に立ち会ってしまう。

「ワウ」

 グレゴールに軽く挨拶するシルヴァンを見た古代竜が、カッと目を見開く。

『ぬぅ!この駄狼!口惜しや〜』

 シルヴァンに飛び掛かりそうになる古代竜を慌ててアマーリエは掴んで、念押しする。

「ちょ、ちょっと待って。その子、うちの子だから」

『そなた、狼の獣人なのか!?そんな気配せぬぞ?』

「いや、なんでそうなる?違うから。家に住んでるの、シルヴァンていうの。仲良くしてね?」

『ぬぅ、主の言う事ならば致し方ない。仲良くしてやろうではないか、駄狼』

 古代竜の上から目線に、ベーっと舌を出して答えたシルヴァンだった。それにカチムカした古代竜が、シルヴァンを追いかけ始める。厨房の中を走り回る二頭にアマーリエはがっくりと項垂れる。

「え?え?今、光ったよね?ダリウスさんの時みたいに?え?え?不味くない?」

「この上もなく、不味い状況になりましたよ、グレゴールさん」

 顔をひきつらせて答えたアマーリエだった。


成人のお祝いに。(続きが気になると思いますので、あはは)


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