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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第17章 シルヴァンのダンジョン初探索
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いよいよダンジョンです!でもパン屋さんは、パンを焼こうねってことで、シルヴァンがんばりますよー。

 リラ祭りも盛況に終わり、村も平常運転に戻ったアルバン村。ようやく、シルヴァンのダンジョン探索のお墨付きが南の魔女から出され、アマーリエはシルヴァンを連れてベルンと一緒に冒険者ギルドに、シルヴァンの冒険者登録に行った。

「……シルヴァンの冒険者登録ですか?」

 村に戻ってきていたミルフィリアが目をパチクリさせる。

「そうなんですよ。シルヴァンは従魔じゃないんで」

「あ、そうでしたね。ちょっと待ってください。前例のない事なので、バネッサ様を呼んできます」

 ミルフィリアに頷くベルンとアマーリエ。確かに、魔狼単独の冒険者登録など前例はないであろう。

 バネッサを連れて戻ってきたミルフィリアに案内されて、冒険者ギルドの地下に向かうアマーリエ達。そのままシルヴァンはバネッサに試験され、戦闘力はB級と認められ、仮免許ということでC級を発行される。

 一年の間にF級からC級までの課題をこなして試験を受け、仮免許を外し、正式にCクラス認定すると言われ、張り切るシルヴァンにベルンが発破をさらにかける。

 ダンジョンの方は銀の鷹や黒の森の梟と一緒に潜るのであれば、浅い階層は入っていいということになった。冒険者ギルドの許可に胸をなでおろしたアマーリエは、ベルンにシルヴァンのことを頼む。

 

 翌日、朝早くから馬預かり所に行ったアマーリエとシルヴァン。

 そこには既にゲオルグをはじめ、魔女衆とその弟子達、銀の鷹と黒の森の梟が集まっていた。

「うわ〜、錚々たる顔ぶれですね」

 アマーリエはそう言って、皆に携帯食を配り始める。そしてシルヴァンは、アマーリエからお弁当を渡されながら、くれぐれも無茶をせず、怪我をしないようにと念押しされる。

「ほんとにこの人数でダンジョン潜るんですか?」

 過剰戦力に、ダンジョンが壊れやしないのかと心配するアマーリエ。特に東の魔女の暴投っぷりを。この間の祭りで突拍子もないところに飛んで行く魔力花火を見ていたために、大丈夫なのかと首を傾げる。

「たしかにな。ダンジョンの魔物が哀れに思えるぐらい、瞬殺されていきそうだな。さらに過剰になる気もするが、まあ一応、戦いの神と勝利の女神の加護はつけとくぞ。ほれ」

 アマーリエの横で今回はお留守番のヴァレーリオが頷きながら、皆に神の加護を授ける。ちなみにピーちゃんは、ヴァレーリオの頭の上に移っている。ダリウスに頼みましたよとピーちゃんを頭の上に乗せられたのだ。満更でもないヴァレーリオであった。

「シルヴァンの初ダンジョンよぉ!ちゃんと見守ってあげないとぉ!」

「……そこなんですか?」

 南の魔女の言葉に頷いているアルギスとダリウス、ネスキオにアマーリエは呆れた視線を投げる。

「まあ、弟子達のダンジョン挑戦もあるからね」

 西の魔女の言葉には一応納得して頷くアマーリエ。そしてそのまま、胡乱な視線をゲオルグに向ける。

「……そなた、年寄りの冷や水とか思おうておらんじゃろうな?」

「メッソウモナイ!」

「思うとるの。フン!まだまだ現役じゃわ!次の魔物の暴走(スタンピード)にもわしは参加するからの!」

「え、まじですか?大丈夫なんですか?」

 アマーリエは、ゲオルグの後ろで苦笑しているカクさんとスケさんに確認する。

「大丈夫ですよ」

「問題ない」

「そうですか。頼りにしてます、大隠居様」

「おう、任せておけ!では、皆の者、出発するとしようかの」

 ゲオルグの声で馬車に乗り始める。そんな皆にアマーリエは手を振って店へと戻った。


 銀の鷹と黒の森の梟の馬車に分乗し、ゲオルグ達はアルバン村を出る。馬車は、春の盛りの道を一路、ダンジョンの門へとひた走る。

「オン!」

「今回は、お前のお試しみたいなものだから一階層目のコメが出る部屋からいくぞ」

「オン」

「大した魔物はでないから、緊張しすぎるなよ?お前の場合、昼の弁当の中身でも考えて力抜きまくってるぐらいのほうが動きがいいからな」

「キュゥ」

 ベルンからの新人に向けるとは思えない真逆の言葉に、シルヴァンがうなだれる。

 シルヴァンは中身とアマーリエのところで暮らすせいで、何処かに野生が忘れ去られがちになっていたのだ。そのため変に、戦闘を意識しすぎて、体のキレがなくなっていたのだ。

 それが、この間の訓練の最中、綿あめの機械に集中力を奪われ、俊敏な動きに戻ったせいで、皆から考えるな感じるんだと言い切られてしまったのだ。

「まあ、でもこの人数だからなぁ。お前の出番はなさそうだな」

「クゥ」

「そぉねぇ。一階層に出てくるのなんて、東のの範囲魔法で一瞬で殲滅よぉ」

 そこにアマーリエが居たならば、シルヴァンのデビュー戦になってなくねと突っ込んだだろう。シルヴァン自身もちょっと首をひねりながら、まあいいかとベルンと南の魔女の話に頷いておいた。

「オン?」

 道から少し離れた場所に見える石の砦を見て首を傾げるシルヴァン。

「あれが、アルバン砦だ。魔物の暴走(スタンピード)での戦いの要になる」

「温泉村で見た騎士を覚えてるか?」

「オン」

「彼らがあそこにいる」

「オーン」

 カクさんとスケさんの説明に頷くシルヴァン。

「あそこでの防衛が失敗したら、アルバン村での防衛になる」

「キュゥ」

「負けられんのだ」

 二人の言葉に神妙に頷いて、その時がきたら自分も頑張るぞと気合を入れるシルヴァンであった。

「ほらぁ、シルヴァン。あれが、アルバンダンジョンの門よぉ。変わった形でしょぉ」

 南の魔女が指差す方を見て、目が点になるシルヴァン。アルバン村に来たときにはアルギスに抱え込まれて、外の景色を全然見ていなかったから、石の鳥居に余計に驚いているのだ。

「あらぁ?どうしたのぉ?」

 南の魔女に慌てて首を横に振って、シルヴァンはなんでもないと答える。

「あの門は面白いんだぞ。楽しみにしてろ、シルヴァン」

「オン!」

「リエが来たいと言い出さなくて、本当に良かった」

「来てたらぁ、ぜぇったいなんかやらかしそうよねぇ」

 しみじみ言うベルンに南の魔女も肩をすくめて言う。シルヴァンはそんな二人を見て首を傾げる。

「戦闘の時はおとなしくしてそうなんだが、終わってコメが生えてる続き部屋に入ったら、はっちゃけそうだからな」

 ダリウスの言葉になるほどと頷くシルヴァンであった。

 あれこれ教えてくれる皆の話に頷きながら、シルヴァンは馬車からの景色を堪能する。しばらくすると、馬車は石の鳥居の前にたどり着いた。シルヴァンは、御者台から飛び降りて鳥居に駆け寄る。馬車も余裕で通る鳥居の周りを、匂いをかぎながら小走りで周辺チェックを始める。魔力の匂いがきついが、他に変わったところもない鳥居に、シルヴァンは首をかしげる。

 ただ、原っぱのど真ん中に、石の鳥居がぽつねんと建っているだけなのだ。

「クスクス。興味津々ですね、シルヴァン」

「だな。おい、シルヴァン!戻ってこい」

「オン!」

「御者台で待ってろ」

 馬車を降りたベルンに言われ、御者台に戻るシルヴァン。

「ウフフ、シルヴァン、今からベルンのすることよーく見てるのよぉ」

「クゥ」

 南の魔女に言われベルンを注視するシルヴァン。姿勢を正したベルンから、ふわりと魔力が立ち上るのを感じる。そのまま一礼するベルン。

 すると石の鳥居の真ん中に、賽銭箱が現れ、シルヴァンは思わず口が開いてしまう。ベルンはアイテムポーチから何やら取り出し賽銭箱に放り込むと馬車に戻ってくる。その間に賽銭箱は姿を消してしまう。

 戻ってきたベルンをシルヴァンは口の開いたまま見つめる。

「あれがアルバンダンジョンに入るための通行証だ」

 そう言うとベルンは馬車を動かし始める。

「アルバンダンジョンができた頃は、石の門の脇にダンジョンの入り方が書かれた立て札と一階層目の通行証の入った籠があったそうよ」

「そうねぇ、あたしが駆け出しの頃はあったわねぇ。いつのまにか無くなったのよねぇ」

「今は階層を攻略完了する度に、その階層への通行証がアイテムポーチに入ってるの。いらない通行証は冒険者ギルドで買い取ってもらえるのよ」

「ただねぇ、攻略してないと下の階層にはいけないからぁ、使えるのは自分が攻略できた階層までなのよねぇ」

「他じゃ見ないよね。ほんとここのダンジョン変わってるよ」

 マリエッタと南の魔女、グレゴールの言葉にただ頷くシルヴァンであった。

「ほら、シルヴァン。門をくぐるぞ」

 ベルンの言葉に慌てて前を向くシルヴァン。鳥居の中の空間が歪み、馬車がそこを通過すると原っぱの中に馬車預かり所と二件ほど建物がみえ、さらにその奥に社が見えた。口が開きっぱなしのシルヴァンであった。

「シルヴァンたらぁ、顎が外れちゃうわよぉ」

 南の魔女にそっと口を閉じられ、我にかえるシルヴァン。ベルンの方をキラッキラした目で見つめる。

「居りていいぞ、シルヴァン。ただし呼んだらすぐ戻ってこいよ」

「オン!」

 馬車を飛び降り、ダーッと駆け回り始めたシルヴァンであった。

「子供みたいねぇ」

「……初めてアルバンのダンジョンに潜った時のダフネがああだったなぁ」

「そうだったなぁ」

 しみじみと言うベルン(おかん)ダリウス(おとん)ダフネ(三女)はそうだったと頷く。

「ただの原っぱに、いきなり建物がでたから驚いたんだ」

「ダフネぇ、ここ、空間違うからねぇ?」

「え、そうなのか?南の魔女様」

「そうよぉ。石の門と門が転移魔法で繋がってるのぉ。ここは亜空間なの、だから……」

「ゴイン!」

「キャン!」

「広いように見えて、空間の境界の壁があるからぶつかってしまうのですよ。あなた達もやたらめったら走り回ってはいけませんよ」

 東の魔女の言葉とキュウキュウ鳴きながら戻ってくるシルヴァンを見て素直に頷いた魔女の弟子達であった。

「そう言うあんたも、子供の頃、思い切りここの壁にぶつかってたじゃないの」

「それで、ここは限りがある空間だってわかったから良いではありませんか」

 西の魔女と東の魔女のやり取りに、思わず吹き出しそうになって、口を覆った冒険者達であった。

次巻発売まで後5日!ツイッターにてやんごとなきお方とヴァレーリオ神殿長を公開しますね!

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