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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第16章 一年目のリラ祭り
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 アルバン村にリラの花が咲き始めた頃、西の魔女が各魔女の弟子を引き連れてアルバン村を訪れた。中に帝国から来たという、新しい神官も一人混じっている。神殿で出迎えたヴァレーリオが、やって来た西の魔女達を口悪く歓迎する。

「おう、これはこれは!引きこもりエルフが珍しいな」

「あんた、こんな片田舎に飛ばされてたの?知らなかったわ」

 きれいな森の緑を映したかのような瞳を細めて、西の魔女が応酬する。

「良いぞ〜、片田舎のくせに面白いことがいっぱいだぞ。そっちが弟子か?珍しくあんた達の弟子にしては素直そうなのばかりだな?」

 揃って会釈する弟子達に、ニヤッと笑って答えるヴァレーリオだった。そんなヴァレーリオを後ろから小突いて、南の魔女が弟子達をねぎらう。

「ヴァリー?うちの子達はいつだって素直ないい子ばっかりよぉ?魔力溜まりの消滅も頑張ってんのよぉ。あんた達、しばらく村でゆっくりしていきなさいねぇ」

「そうですよ。とてもいい子達ですからね」

「あんたの時代は、問題児ばっかりだったけどね」

 東の魔女を見て、西の魔女がボソリとこぼす。東の魔女は南の魔女の弟子の一人だったのだ。東の魔女の伝説はその頃から遡るのである。

「で、お前さんが皇帝陛下からアル坊を補佐するように言われた神官か?」

「はい、ネスキオです。よろしくお願いします、アルギス様も」

 殊勝そうに頭を下げる、猫目に泣きぼくろのあるネスキオをヴァエーリオは鷹揚に頷く。

「様はいらないから。同僚だ」

「わかった、よろしくな、アル」

「……よろしく。まあ、いいけど」

 かぶっていた猫三枚ぐらい外して、遠慮なくタメ口で話しかけてくるネスキオに、ちょっと唖然となるアルギスであった。

「それじゃ、あんた達は神殿で寝泊まりしなさいね。ヴァレーリオの言うこと良く聞いて、神殿の仕事を手伝うのよ。宿泊費が浮くから」

 なにげに財布の紐は堅い、西の魔女であった。

「あたし達はぁ、今から温泉村行ってくるから、アルギスさんの護衛頼んだわよぉ」

 村の中だからと自分の依頼を弟子に下請けさせる南の魔女。

「パン屋のアマーリエさんとシルヴァンから少魔力で魔法を使う方法と、目での魔力感知の方法を習うんですよ?わからないことはマリエッタに確認しなさいね」

 東の魔女は、マリエッタとアマーリエ、シルヴァンに弟子の訓練を押し付けた。

 三魔女から順に言いつけられ、コクコクと頷く素直な弟子達。

「ではあとは任せた」

「頼んだわよぉ?」

「しっかり励みなさい」

 そう言って、三魔女達はさっさと温泉村へと行ってしまったのであった。残された弟子達は、呆然である。

「なんだ、あいつら、弟子は温泉に連れて行ってやらんのか?」

 残されたヴァレーリが目をパチクリさせる。

「オン!オン!」

 様子見していたシルヴァンが、ネスキオと魔女達に置いてきぼりにされた弟子達に愛想を振りまく。

「ああ!これがあの魔狼!?ほんとだ!魔狼なのに可愛い!」

 ネスキオはムギュッとシルヴァンに抱きつき、いきなり抱きつかれたシルヴァンは硬直している。

「ちょっと!あなた、いきなりなんなんですか!離れなさい!」

 アルギスが力任せにシルヴァンからネスキオを剥がす。

「え〜、ケチぃ。ちょっとぐらいいいじゃん」

「あなたはシルヴァンの好みじゃありません!」

 ((((勝手にシルヴァンの好みを語っちゃ駄目だろう?))))

 訓練に参加し、遠巻きに様子を見ていた冒険者達の心の中は一つになった。来たばかりの弟子達はアワアワと状況が飲み込めず、喧嘩を始めた神官二人をどうやって止めたものかと、右往左往し始める。とても素直で真面目なようである。

「……どっちもどっちだと思うのは俺だけか?」

「アルギスさんも落ち込んでた分を差し引いても、最初はシルヴァンにべったりでしたからね」

 コソコソとベルンとグレゴールが所見を語る。

「二人共、落ち着け。シルヴァンが困ってるだろう」

 ひよこ載せダリウスが喧嘩を始めた二人を止めに入る。

「!ひよこ!かわいい!」

 アルギスを放り投げ、ダリウスに抱きつかん勢いで向かったネスキオ。

「【威圧】」

「ちょ、ダリウスさん、何スキル発揮しちゃってんの!?」

 いきなりスキルを発動したダリウスにグレゴールが驚きの声を上げ、マリエッタが首を横に振る。

 ダリウスに威圧されたネスキオは、ダリウスの一歩手前で硬直している。とばっちりを受けた弟子達も硬直していた。

「何人たりも、ピーちゃんには触れさせん」

「いや、ちょっと、お前それやりすぎだから」

「何やってんですか?」

「「リエ」」

「パン屋さん」

「西の魔女様がお見えになったって聞いたから、ご挨拶に伺ったんですけど」

「ちょっと遅かったわね、さっき三人で温泉に行っちゃったわよ」

 マリエッタが村の門の方角を指差して答える。現場の緊迫感のなさ(主にダリウスの頭の上のひなが原因)から、事態を無視して会話を始めるアマーリエ。スルー力検定一級である。

「ありゃま。あれ、新しい神官さんも居るんだ。掃除の人手が増えてよかったですね。ヴァレーリオ神殿長」

 ダリウスの前で硬直している、茶色い猫っ毛の神官服姿の男を見て、アマーリエがヴァレーリオに声をかける。

「なんか一癖もふた癖もありそうなやつだがな」

 顎をさすりながらヴァレーリオが相槌を打つ。

「みたいですねー。あっちがお弟子さん達ですか?」

 まだダリウスの威圧に固まってる新顔達を見てアマーリエが確認する。アマーリエは子ども達にだるまさんがころんだを教えてやろうと心のなかでメモしたのであった。

「そうだ。朝はそっちのパン作りを手伝わせるぞ。昼間は神殿でシルヴァンと一緒に訓練な。夕方、一緒に神殿で料理修行すりゃ、東のが言ってた魔力操作もうまくなるだろ」

「あれ?そうなんですか?まあ、手伝いの手が増えるのは助かりますけど、いいのかなぁ?」

 こうして弟子達のスケジュールは勝手に組まれていくのであった。

 なんとかなだめすかされたダリウスが威圧を解除し、それぞれ自己紹介が始まる。その日はそのまま、アマーリエと一緒に神殿で夕食を作り、プリンの作り方を教わった魔女の弟子達だった。

「……ネスは料理、まるっきりダメなんだな」

「うん。食べるの専門。はぁ、プリン美味しい」

「しょうがないから、作ってやる」

 なんだかんだ仲良くなっているアルギスとネスキオであった。


 一方温泉村に転移魔法で跳んだ魔女三人は、村の中で湧き出ていた温泉の近くにできた木賃宿に、宿泊することにした。河原の温泉には後で行く予定である。砦跡の方にできる予定の高級宿屋が、まだ砦の解体工事中だからである。

 ちなみに、木賃宿の風呂桶は木の風呂桶が作られ、温泉が引き入れられている。大浴場が二つと大きめの(巨人族を考慮したため)家族風呂が三つもある、風呂場だけは立派な木賃宿になっていた。

 風呂桶の種類は、アマーリエが木の物、ステンレスの物、タイルの物、ホーローの物を紹介した。手っ取り早かった木の風呂桶が採用されたのだ。

 そして相変わらず、温泉禁止命令が解除されておらず、アマーリエは温泉村がどうなっているのか行った人からの伝聞でしか情報がない状態であった。

 温泉村は、現在建築ラッシュで、戻ってくる元住人用や新しくやってくる住人用に、古い家を修繕したり、新しく建てたりと木賃宿の方も建築関連の職人らが寝泊まりし賑わっている。もちろん村の人も時々、温泉を利用していたりする。皆温泉に入ると身体が楽になると実感しているのだ。

 養蜂産業も養蜂家が招かれ、それに従事する村人も出てきている。開墾開拓され、甜菜の畑も徐々に作られていたりする。着々とアマーリエが立て、ダール達が修正した計画が進んでいるのだ。

 木賃宿に着いた魔女達は、早々に家族風呂に一緒に入る。

「はぁ、これが温泉?生き返るわぁ。……なんか賑々しくなったわねぇ、この村。ちょっと前まで泊まるのに気がひけるほど、貧しかったのに」

 人が増えた村を見た西の魔女の言葉に、東と南の魔女が頷く。

「温泉いいでしょぉ。村の人も、良い表情になったでしょぉ?」

「この地に移ってきた頃みたいに生き生きしてるわよねぇ。温泉に入るようになったせいもあるのかしら」

 伊達に長く生きてない西の魔女が、開拓当時の村人の顔つきにもどったと頷く。誰も何百年前の話だとは突っ込まない。

「温泉もでしょうが、努力が報われる、いい環境になりましたもの」

「そうねぇ、頑張っても報われないんじゃ、気持ちが続かないものねぇ」

 東の魔女の言葉に西の魔女が頷く。

「ゲオルグ殿やアマーリエさんをはじめ、皆が頑張ってますよ。ほんと」

「あら、うっかり!魔力溜まりのきっかけの()に会うの忘れてた」

「ああ、そのまま温泉に来ちゃったもんねぇ。あとで会えばいいわよぉ」

「それで西の。魔力溜まりの方はどうです?」

「まだざっくりよ?どうも、アルバンの先にある魔の山脈に、すべての魔力溜まりの根がつながってるみたいなのよ」

「んまぁ!地下を通って魔力が泉みたいにぃ、あちこちに湧いてるってことぉ?」

「魔の山脈を調べないとまだはっきりしないけど、今の時点での推測ではそんなところよ」

「魔の山脈が魔力の大本なら、アルバンの魔物の暴走(スタンピード)はなくなりそうにありませんね」

 困った表情を浮かべて頬に手をあてる東の魔女。

「そうね。次の暴走のあとじっくり調べるしかないけど、その可能性は高いわ」

「ならぁ、辺境伯の一族は、その任を解かれる事がまだまだなさそうねぇ」

「そういう契約だからね」

「エルフの里の、古文書の調べの方はどうなんですの?」

「今、若いのせっついて調べさせてるけど、爺共のほうがねぇ。無駄に長生きしてんだから、その分の知識を搾り出せっていいたいわよ」

 長命種であるがゆえに、短命種の生死の流れの速さや変化に対応できない(親しい者がすぐ死んでしまう環境に耐えられない)エルフの殆どが里を出ず、ゆっくりした時間の中で生きているのだ。西の魔女や南の魔女の父のように里を飛び出すエルフのほうが少ないのである。

「はぁ、しかし、この温泉て!いいわ〜。長年積もってきた淀みがなくなる感じがする〜」

 木の大きな風呂桶で手足を伸ばし、まったりと湯を堪能する西の魔女。

「ほんとぉ気持ちいいのよねぇ。あの芋っ娘にしては、まともな発見だったわねぇ」

 魔女達はまったり温泉で噂話の花を咲かせたのであった。

今日辺りから学生さんは冬休みですかね?わたしも旧正月過ぎ辺りから長めの休暇取るぞー(なんかあかんフラグ立てた気がするが気にしない)

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