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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第15章 祭りの準備を兼ねた携帯食事業の予行演習
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土日ドタバタするので早めの投稿です

 店じまいを済ませ、魔道具屋にソニアと一緒に出掛けるアマーリエ。ブリギッテ達からも、家族と一緒に神殿へ見に行くと言われてしまっている。秘密が難しいアルバン村であった。

「何を作ったの?」

「お祭り向けのお菓子を作る道具ですよ」

「?」

「まあ、見たほうが早いですね」

 木工細工のところに必要なものを注文し既に受け取っているため、村の中では、アマーリエがまた何かしでかすようだと噂は出回っていたりするのだが。

「こんにちはー。親方達はいらっしゃいますか?」

「ソニア!お疲れ様!アマーリエにこき使われなかったかい?」

 カウンターで作業をしていたヨハンソンが自分の妻に反応する。

「ハリー!アマーリエは、無茶は言わないわよ?ハリー達が大変なのは自分達も調子に乗って納期を早くしてるせいじゃないの?腕が上がるとかなんとか言って!」

「そーだそーだ」

 ソニアの擁護の尻馬に乗るアマーリエであった。

「うぐっ」

「お!パン屋の娘っ子!来たか!できたぞ!来い来い」

 アマーリエ達が騒いでいると店の奥から、領都のベルク親方(息子)を経年化したベルク親方が顔を出し、アマーリエを呼び寄せる。

「行きます、行きます」

「わたしもいいかしら?」

「ソニアさんは大歓迎だ!ハリーは店が終わってからな!」

「なっ!?親方ずるい!」

「ほら、さっさとその仕事終わらせろ」

 拗ねるヨハンソンを置いて、アマーリエとソニアは、そそくさとカウンターを回って親方の後をついていく。

 店の奥にあるベルク親方の個室に招き入れられると、フェラーリ親方が赤ら顔をニヤニヤさせてアマーリエを待っていた。その前には布が被せられた物体が置いてある。

「「いいか?」」

 親方二人がその布を取る。

「おお!綿あめ機!思ってたとおりのだ!さすが親方達!」

「「そうか!」」

 フッフンと鼻高々な様子を見せる親方達に苦笑するソニアだった。

「早速、試運転しましょう!」

「「もちろんだ!」」

 アマーリエは早速アイテムバッグからザラメとスプーン、細工を頼んでおいた木の棒を取り出す。

「ここに、スプーン一杯分、ザラメを入れまして……親方、起動はこの魔法陣?」

「おう、そこだ」

 魔法陣を起動させると、小さな穴がたくさん開いた金属の筒が回転を始め、ふわふわと白い雲のような物が生まれ始める。

「成功だな!」

「よっしゃ!」

 それを見て拳を上げるベルク親方、両手を拳に握り腕を曲げて脇を締めるフェラーリ親方だった。

「まぁ!雲みたい」

「出てきた、この砂糖でできた綿を木の棒にからませていきます」

 ソニアが驚きの声を上げる中、アマーリエがせっせと綿あめを棒にからませていく。

 ある程度大きくなったところで、アマーリエはソニアに綿あめを渡し、次々出てくる砂糖の綿を木の棒に絡めて、次の綿あめを作る。

「食べていいかしら?」

「どうぞ、どうぞ。はい親方達もどうぞ」

「「おう」」

 綿あめを手渡され、キラッキラした目でそれにそっとかじりつく大人三人。砂糖が出尽くしたところで、機械を止め、三人をニヨニヨしながら観察するアマーリエだった。

「「「!」」」

「甘い!」

「口の中ですぐ溶けちまったぞ」

「不思議だなぁ」

「ふふふ、どうです?子ども達、喜びそうでしょ?」

「大人も喜ぶわよ」

 綿あめを眺めては、かじっったり舐めたりして、その食感を不思議がる大人達。

「あ、砂糖なんで手で触るとベタベタになるから気をつけてくださいね」

「「「ん」」」

 前世、子供の夏休みの工作でモーターと空き缶を使った簡易綿あめ機を作ったことがあるアマーリエ。モーター部分を風魔法で代替してなんとか親方達と前世の綿あめ機に近いものを作り上げたのだ。

「で、親方達すいません。今日、神殿でお披露目することになっちゃったんですよ」

「ああ、そりゃ大事だな。これを祭り当日にお披露目したら大騒ぎになるだろうな」

「ぐはっ、やっぱりか」

 ウンウンと頷く両親方を見て、娯楽のなさを甘く見ていたと実感したアマーリエであった。

「誰も見たことがないんですもの。それに甘いでしょ?騒ぎになると思うわよ」

「あっと言わせたかったのになぁ」

「「言わなかったか?」」

「言わなかった?」

「言ってないー」

「「「ああっ!?」」」

 わざとアマーリエをからかうように驚いてみせる三人に頬をふくらませるアマーリエ。

「ブハッ」

「ハハハ」

「フフフ」

「うう、神殿で驚かすもんね!」

 リベンジに燃えるアマーリエに、さらに大人達は腹を抱えて笑い、アマーリエをなだめ始める。

「大丈夫大丈夫、みんな驚くわよ」

「ブハハ、チビ共も間違いなくお前を崇め奉るぞ。キラッキラした目で」

「そうだな。甘いお菓子が食べられるようになって、チビ共も菓子を買ってもらうためにお手伝い頑張ってるみたいだからな」

 息がつけるようになったベルク親方が、おかしそうに自分の孫の話を始める。

「あら、そうなんですか?」

「おう、息子達の嫁が、手伝いすることないかって聞かれるようになったって言ってたぞ。手伝いしたら、ラスクだっけか?あれをご褒美にやるようにしたんだと。とたんに張り切りだしたって。うちの見習い達も腕上げて、給料貯めて、お菓子を買えるように頑張ってるみたいだぞ」

「ああ、うちのもせっせとできる仕事手伝って、先輩におごってもらってるぞ」

「へー、そんな効果が出るとは思わなかった」

「甘い菓子なんて冒険者からの王都の土産で年に数回食べるか食べないかだからなぁ。しかもありゃ甘すぎて」

「あんまり子供にゃ、与えたくないんだよな。王都の菓子は」

 顔をしかめるベルク親方にフェラーリ親方も同意するように言葉をつなぐ。

「そうなのか。全然知らなかった。おやつは自分ちで作ってたからなぁ」

 小さな頃から、おやつは父親と母親の手作りだったアマーリエ。しかも王都のお菓子は領主方にブロックされて入手不可状態だったのだ。

「パン屋さんとこの菓子は、程よい甘さだからな。疲れたときにちょうどいい。プリンだっけか?あれも美味いな。食感とほろ苦いソースがいい」

「塩辛い方も酒飲みに好評だぜ」

「そうですね、ハリーも甘い方よりチーズや胡椒味のラスクのほうが好きですもの」

 飲ん兵衛らしいフェラーリ親方が、塩味の菓子も人気だと話し、ソニアが相槌を打つ。

「楽しんでもらえてるようで、良かったです」

「んじゃ、そろそろ神殿に行くか?」

「うちの店も、早仕舞いしてくらぁ。このところ魔法瓶と魔法マグの生産で皆頑張ってたしな、皆連れて神殿に行くぞ」

 ベルク親方が出かける用意を始めるとフェラーリ親方も自分の店に戻った。ベルク親方は、親方の部屋の前でたむろっていた職人達にキリの良いところで仕事を終わらせ、神殿で新しい魔道具のお披露目をするから気になるやつはこいと、声掛けしてアマーリエと一緒に神殿に向かう。ソニアはヨハンソンと一緒に行く事になった。

「魔法瓶製作の山は越えました?」

 アマーリエは、魔道具屋の忙しさが気になってベルク親方に聞いてみる。

「おう。数はだいぶ揃えた。後は個別に必要な大きさのものを注文取り始めてる感じだ」

「なるほど」

「簡易焜炉の方も、もう十分な数は作っといたぞ。次はオーブンの廉価版を準備しなきゃだな」

 仕事の早い親方衆に目をまんまるにして、疑問を投げかけるアマーリエ。

「王都や領都から注文こないんですか?」

「アーロンさんとこから注文受けたが、それは数を絞って定期納入にしたから問題ない」

「ほうほう。順調に普及し始めてますね」

「息子ンとこは大変そうみたいだがなぁ。住んでる人の数が違うからな」

「そうですよね」

「生活魔道具屋が増えるのはいいことだ。世の中それだけ平和になったってことの証だからな」

 にこやかに話すベルク親方にウンウンとうなずき返すアマーリエだった。途中商業ギルドの宿屋でゲオルグ達と落ち合い、神殿にむかう。

 そして、神殿はいつの間にか人でいっぱいになっていたのであった。

「アマーリエ?」

 仁王立ちのヴァレーリオに出迎えられ、肩をすくめるアマーリエ。

「すみません、急遽リラ祭りで出す、新しいお菓子を作る魔道具を神殿でお披露目することになりまして……」

「そりゃアル坊から聞いた。シルヴァンの野郎は、訓練中、今までの魔狼にあるまじきどん臭さが嘘のように、軽やかに南のの魔法攻撃かわしまくってやがったしな。訓練後の楽しみに浮かれて、変な緊張がとれてたようだ」

「ありゃま」

「んで、瞬く間に噂が村に流れたんだな?」

「みたいですー」

「まあいい。祭りで大騒動が起きるより、遥かにマシだな。ほれ、皆今か今かと待ってるぞ」

 こうしてアマーリエは結局、せっせと綿あめを作ることになり、親方達にはわたあめ機を、木工細工師のところには棒を追加注文することになったのである。

 村の子供達からは、食べられる雲を作る偉大なパン屋さんと認識され、よくわからない尊敬を集めることとなったのである。

 そして、祭りまでの朝市で他の村の人にも綿あめをお披露目して、騒動にならないようにすることとなり、強制的にアマーリエも朝市に出店することとなった。ついでに自身のパンも置いて、ちゃんと商売したアマーリエであったが。

 以降、綿あめは、砂糖がまだまだ高価なためにお祭りのアイテムとして各村のお祭りで出店されるようになり、やがてそれが他の村へと広がっていくことになる。

 下々から広がったために、国王陛下が口にするのはかなり経ってからであった。しかも、綿あめの存在を知るのは、皇帝陛下の弟自慢からである。王宮の奥でちょっぴり騒動が持ち上がったが、アマーリエは知る由もなかった。

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