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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第15章 祭りの準備を兼ねた携帯食事業の予行演習
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私用のためちょっと早めの更新になります。師走ですねぇ。

 本日、料理講習会の初日。アマーリエの店が終わった後、ダニーロとパトリックを始め、ヨハンソン夫婦にブリギッテの母親、冒険者ギルドの厨房を任されている職員という村の料理スキルの高い六人がパン屋に集まった。ちなみに高レベルグループは二組でき、前半組と後半組に分かれている。南の魔女とアルギスは後半組になった。

 料理講習会の材料費は美味しい携帯食を作れる人を増やすための教育ということで冒険者ギルドから経費ということでしっかり徴収したアマーリエ。バネッサのケツの鱗までむしり取る気満々である。

 まだまだ顔なじみが少ないパトリックとヨハンソン夫婦が挨拶を済ませ、浄化スキルで清潔にした後パン屋の厨房に入る。

「こ、これは!?」

 見知らぬ調理魔道具の数々に我を忘れたのはダニーロ。パトリックがおさえつつも、どういう道具なのかヨハンソンとともに説明する。

「こっちのコンベクションオーブンは、村の共同石窯と同じように神殿の厨房に設置しますから、アマーリエに使い方をしっかり教わって、オーブン料理を開発してくださいね、料理長」

「も、もちろんです!うう、商業ギルドの宿の厨房がもう少し大きければ、入れてもらえただろうに」

 宿屋の規模のせいで、厨房がそこまで大きくないため、大きなコンベクションオーブンは入らないのだ。

「ヨハンソンさん。これも何れ、魔導焜炉と同じように家庭向けに廉価版作るでしょ?」

 アマーリエがのんきにヨハンソン達の仕事を増やしにかかる。

「ああ、何れね?今はまだそれどころじゃないの」

「特注しようか?」

「ちょっと、勘弁して下さいよ」

 冒険者ギルドの職員の一言に期待に目を輝かせるダニーロ。両手で大きくバツを作って拒否するヨハンソンだった。

「はいはい、皆さん。今日はお昼や携帯食に便利なコッペパンで作るサンドイッチですよ。コンベクションオーブンの使い方と魔導焜炉の使い方を覚えて帰ってくださいね」

 食パンは型を使うため、型の要らないコッペパンの焼き方を覚えてもらうことにしたのだ。そして屋台ではホットドッグやコロッケパンなどのコッペパンサンド系にすることに決めていた。もちろん隠し玉も一つ、既に魔道具職人の親方ベルクと鍛冶職人の親方フェラーリと一緒に開発中である。

 アマーリエは、まず、コッペパンの材料と作り方を書いたレシピを皆に配る。

「このレシピ?」

「ああ、無料登録してますから広めていただいて大丈夫です。まず、ざっと見ていただいて手順を頭のなかでおさらいして下さい。疑問に思ったことはその後、実際に作りますので、都度聞いてくださいね」

 皆アマーリエの言葉にうなずき、レシピを読み始める。ちなみにレシピは、アマーリエが図入りでなるべくわかりやすく書いている。そして彼女の錬金スキルで複製して数を作っておいたのだ。

「それじゃ始めますよ」

 アマーリエはまず材料をそれぞれに紹介し、分量を計っていく。この日のために計量スプーンとカップを領都(バルシュ)から取り寄せ、アーロンの万屋でも購入できるよう取り計らってもらった。

 道具の使い方もみせ、同じように材料を量るところからはじめてもらう。

「これはやっぱり便利ですねぇ。皆同じように作れる事になりますから、均質化を図れますね」

「ええ。料理用のハカリも欲しいんですけどね。薬師さんが使ってるような天秤のもう少し多く量れる物がいいんですけどね。何れは道具屋さんでハカリを作ってもらおうと思ってます」

「たしかに、あったら便利だねぇ」

「……うちの仕事?」

「いえ、魔力無しで使える道具にします。多分、金属系の加工スキルが高くないと出来ないと思いますけどね」

 ヨハンソンのジト目に手を振って魔道具にしないと言うアマーリエ。

「ふーん」

「このミルクは温かいのね?」

「ええ。ぬるめお湯でもいいんですが、牛乳のほうがコクが出ます。温度が高いのはまだ寒い日に発酵しやすくするためですね。夏場なら今度は逆に材料も冷やしたりします」

 それぞれ量り終えた材料を並べていく。次にアマーリエが粉の混ぜ方や生地のこね方をやってみせていき、皆がそれに続く。アマーリエはそれぞれの手元を確認しながら、ちょこちょこアドバイスをしていく。

「それじゃ、こんな風に生地を丸めてボウルに入れます。そしてこの人肌より高めのお湯を別のボウルに入れ、その中に生地の入ったボウルを重ね、濡れ布巾でボウルに蓋をしてこっちの棚で生地を寝かせておきます。鐘四分の一つ分(三十分)が目安です。夏場は過発酵が起きやすくなるのでこのお湯ボウルは使わないです」

 お湯の温度を確かめ、それぞれ作ったパン生地のはいったボウルを発酵棚においていく。

「ではその間に、コッペパンに挟む具を作ります。まずはマヨネーズの作り方とそれを使った卵ペースト、ジャガイモサラダです」

 ここで、アマーリエはダニーロとパトリックに応援要請し、初めてマヨネーズを作る人のフォローを頼む。卵とじゃがいもをその間茹でて用意しておく。

「一応、うちの店でもマヨネーズは売ってますが、家でも作れるので余裕のあるときは作ってみて下さい」

 その後皆で卵ペーストとジャガイモサラダをこしらえる。

「パセリを刻んで混ぜると風味も増しますし、不足しがちな栄養素もとれますよ」

「刻んで入れれば食べやすいわねぇ。それにパセリは育てやすいからどこのお家でも新鮮なものが手に入りますよ。うちで鉢売りもしてるからよかったら見に来てくださいな。美肌効果があるし、むくみも取れるのよ」

 ブリギッテの母親がアマーリエの言葉を補完する。ソニアがぜひ伺いますと頷いている。

「ジャガイモサラダには刻んだハムも混ぜます。他には刻んで茹でた人参とかブロッコリーの茎、とうもろこし、刻んだきゅうりなんかも混ぜます。旬の野菜を入れて具だくさんにするといいですね」

 出来上がった具は、冷蔵ショーケースで冷蔵し、発酵棚で寝かせていたパン生地を作業台に戻して、コッペパン作りの続きにはいる。

「こんな感じで倍に膨らみました。粉を付けた指で生地を押してみてこんな風に、穴が残ったままなら発酵がきちんと出来てる状態です。生地が戻って穴が塞がるようだとまだ発酵が足りてないので、もう少し寝かせます」

「プスーっと空気が抜けてしぼんじゃう時は?私、夏場にたまにやっちゃうのよ」

「過発酵ですね。その場合は、別の食べ方をするほうが無難です」

「なるほど。たとえば?」

 ソニアの失敗にアマーリエがフォローを入れる。ダニーロは興味津々でその答えを待つ。

「生地を丸く平らに伸ばして、上にチーズやトマトピューレなんかを載せてオーブンで焼いたピザとか、刻んだソーセージ、ローズマリーを混ぜ込んで、フライパンでじっくり弱火で焼いて作るフォカッチャ風とか」

「ふんふん」

「あとは、もっと生地がベトベトするほど発酵していたら、この間食べたあんドーナツみたいに油であげちゃうのもありです。中にあんこ入れなくても少し砂糖を足して甘めの生地にして揚げ菓子にすると美味しいです」

「アマーリエさん、ありがとう。あの発酵を失敗したときの生地でそのままパンを作ると膨らまないし酸っぱいしで困ってたの。今度はその作り方も教えてね」

「過発酵はさせないですが、作り方はその都度、講習会開きますね」

「楽しみにしてるよ」

「皆さん生地の確認できました?それじゃ、次にこれを空気抜きして八等分します。そして一個ずつ丸め、少しお休みさせます」

 アマーリエのやり方を見て、それぞれ作り始める。その後さらに整形をして鐘半分(一時間)ほど二次発酵させる。その間に今度はハンバーグの作り方を教えるアマーリエ。

「ひき肉をこしらえます。ちなみにうちのシルヴァンは風魔法が得意なので、ボウルの中で肉の塊を魔法で刻んじゃったりします。まあ、微調整が必要な魔法ですので、人力で刻みます」

 アマーリエは包丁でひき肉にした牛肉と豚肉を六対四で合わせ、塩胡椒し粘りが出るまでこねていく。

「かさ増ししたいときは古いパンを粉にして、牛乳を入れて柔らかくして混ぜるといいですよ。そうするともっとフワッとした口当たりの食感になります。刻んだ玉ねぎを炒めて混ぜると野菜の甘味が出て、肉の臭みも消えますよ」

 二人ずつに分け、玉ねぎなし、生のみじん切りタマネギ入り、炒めたみじん切り玉ねぎ入りのハンバーグのタネを作ってもらい、整形していく。

「この丸めたタネを楕円に伸ばして真ん中を凹ませます」

「「「「「「?」」」」」」

「焼いてる間に膨らんでくるので、先に凹ませとくんですよ」

 最初に表面を中火で焼いて、弱火にして蓋をしてじっくり焼き上げる方法を教える。

「うーん、やっぱりこの魔導焜炉すごいですよね。火の調節が竈より断然楽」

 ハンバーグを焼きながら冒険者ギルドの職員がしみじみ言う。

「そうよね。うちもこの間、簡易焜炉を買ったんだけど、つきっきりで鍋を見てる必要がないからその間に他のことができるようになって、子供の相手をする時間が増えたのよ」

「それは良かった。作ったかいがあります」

「ええ、ほんと魔導具屋さんのおかげだわ」

 ブリギッテの母親とヨハンソンがほのぼのと会話を繰り広げる。

「うちは冒険者に簡易焜炉を貸出するから、今度使い方の講習会をすることになってるんだよね」

「へ〜」

「これで、美味しいもの作れるようになれば、ダンジョンの探索も頑張れるはず!」

「そういうもん?」

「そうですよー。ダンジョンの深度が深くなればなるほど今までの美味しくない携帯食のほうを食べる機会が増えますからね。早く地上に戻りたくなるみたいですよ」

 パトリックと職員が話し始める。

「実際、美味しい携帯食の需要が増えてますからね」

「みたいだね。俺もたまに駆り出されるし、スープ作り」

「これからもよろしくおねがいしますね!料理人さん!」

「うんー」

「ホイ、焼けました?それぞれ混じっちゃわないように分けてバットに入れてくださいね。これはアイテムリュックに入れて焼きたてをはさみますからね」

 アマーリエが焼けたハンバーグをバットに盛って、リュックにしまっていく。

「それじゃ、次にコンベクションオーブンの使い方を。まずここの文様に軽く触れて下さい。これが中温のオーブンの温度になります。しばらくすると熱くなりますので、その間に整形したパン生地をこの天板に間隔を開けて並べていきます。オーブンが温まったのを確認して、天板をオーブンに入れていきます。鐘八分の一つ分(十五分)焼きます」

 オーブンの中段を使って六人分のパンを一気に焼いていく。

「さて、その間に今度はソーセージを炒めるのと茹でるのと作りましょう。キャベツも粗く刻んで塩ゆでします」

 アマーリエは茹でるだけ、茹でて炒める、炒めるだけと三通り教え、茹でキャベツを作る。

「リエちゃんそろそろパン焼けたんじゃない?」

「そうですね、窓から確認しますか」

 順にオーブンの扉のガラス窓から、パンの焼け具合を見ていく。

「きれいなきつね色ね」

「大丈夫そうですね、出しましょう」

 アマーリエは天板を取り出し、冷却棚に乗せていく。

「私の分を焼いてる間に、具を挟んでいきましょうか」

 アマーリエは自分が作った分を焼き始め、具材を分け始めた。


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