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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第15章 祭りの準備を兼ねた携帯食事業の予行演習
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お待ちどう様です。

 翌日、店を終えたアマーリエは村役場に向いリラ祭りの概要を確認し、役場の窓口のヨハンにわからないところを確認した後、屋台登録を済ませる。

「ヨハンさん、料理講習会をしたいと思ってるんですが」

「おお!良いですね」

「使える場所や道具の数なんかで、定員が決まると思うので色々確認したいことがあるんです」

「おまかせ下さい。私でわかることは私がお答えしますし、私がわからなくともわかる人物をご紹介しますよ」

「ありがとうございます」

 アマーリエはヨハンから色々聞き出したあと、店に戻ると講習会のおおよその方針を決めようとあれこれノートに書き留めていく。

「よし、料理講習会は、まず料理スキルの高い少人数に最初に教えてグループリーダーに育てよう。んで、料理スキルの低めの人を多く集めて、グループ分けしそこにグループリーダーを入れて講習会の補助役を担ってもらう方向で行こう。ふふふ、村のお母さんたちの料理レベルを上げて、お弁当計画発動だ!おお、シルヴァン迎えに行くの忘れてた!」

 慌てて、出かける支度をして店を出るアマーリエ。神殿に向かう途中で、ベルンとシルヴァンを抱っこしたダリウスに出会う。もちろんぴーちゃんはダリウスの頭の上にいる。

「シルヴァン届けに来たぞ」

「ぴ!」

「嘘つけ。シルヴァンを送るぐらい俺一人でいいといったのに、わざわざ付いてきたのは昨日今日とシルヴァンが食べてた昼飯が気になってたからだろ」

「ばらすなよ!」

「あードライカレーとカレーパン」

 シルヴァンは、アマーリエのカレー続きで良いのかという困惑を問題なしと日本語念話し、昨日はドライカレー弁当、今日はカレーパンとコールスローサラダにドライカレーのライスコロッケを入れてもらっていたのだ。

「こいつときたら、シルヴァンが食ってるのを物欲しそうにジーっと見てな」

「オン」

 ダリウスに同意するように鳴くシルヴァンをベルンは一睨みしてアマーリエに訴える。

「リエ!カレー作ったなら教えてくれよ!ファルにはお菓子作ったら連絡してるだろ?」

「以後気をつけます」

 面倒くさくなったアマーリエはサラッと答える。

「まだあるのか?」

「ありますよ。持って帰ります?」

「持って帰る!」

 昨日、アーロン達が手土産代わりにいくつか持って帰っていたが、それでもまだ残っている。アイテムボックスがあるために、もったいない精神がちょっと壊れ気味のアマーリエだった。ちなみに、港町ローレンで買ったタコも未だアイテムボックスで待機中である。

 店に戻ったアマーリエは地下からカレーパンとドライカレーのライスコロッケを取ってくると、紙袋に入れてベルンに渡す。

 ベルンは早速袋を開け、味見と称してカレーパンを食べ始めた。それをシルヴァンを抱えたまま、呆れた顔で見るダリウス。

「おまえなぁ」

「ふぐふぐふぐ」

「食い終わってから話せよ」

「ング。旨いぞ、これ」

「先に食べたのバレたら、ファルがゴネるぞ?」

「あ」

「考えもしなかったな」

「はい、ダリウスさん。これファルさん対策用に」

 そつなくアマーリエはお茶会の時に作ったベリージャムの瓶をダリウスに渡す。

「これは?」

「この間もらったベリーのジャムですよ。パンにぬって食べると甘くて美味しいですよ」

「おお!助かる!が、果たしてこの一瓶、何日持つだろうか?」

 アマーリエが手渡したのは、日本で市販されているジャム瓶よりも大きなピクルス瓶ぐらいはある。

「バカスカ食べなきゃ、そこそこ持つと思いますけどね」

「う〜ん?」

 ダリウスの顔に浮かぶ表情から、こりゃ大して持ちそうにないと判断するアマーリエ。

「まぁ、またベリーを摘んできてもらえれば、作りますんで」

「わかった。ジャムが無くなる前に摘んでくる!」

「そうして下さい」

 アマーリエとダリウスが話してる間、ライスコロッケの袋を開けて、ひたすら食べるかどうかで逡巡していたベルン。結局、一つ取り出して食べ始めている。

「「「……」」」」

「ぴ!」

「味見は大事だろ!」

 二人と二匹の口よりも多くを語る眼力(めぢから)に言い訳するベルンであった。


「そういや、今日は迎えに来るのが遅かったがどうしたんだ?」

「ああ、リラ祭りに屋台出すんで、その許可を取りに役場に行ってたんですよ」

「お前、村の外に出ていいのか?」

 安全のために隔離されてるのを知っているベルン達は思わずアマーリエに胡乱げに見つめる。

「大丈夫です。大隠居様にも許可もらいましたし、当日は南の魔女さまとアルギスさんとシルヴァンが護衛してくれますし、東の魔女様ももしかしたら西の魔女様とお弟子さん達も休暇兼護衛で来てくれるかもしれないですし」

「「……レジェンド級三人の護衛だって?」」

「すごいでしょ!」

「頭が痛いわ」

「……何がどうしたら、そういう話になるんだ?」

「んー、魔力溜まり事件の慰労会も兼ねて?」

「「ぐはっ」」

「温泉も堪能してもらって、良さを知ってもらえばさらに他でも温泉できるかな~とか」

「誰が慰労するんだ?」

「私が料理でおもてなしですかね?護衛していただくかもですし。祭りのときの食べ物は金額の上限だけ決めて奢ろうかな。あ、一日ご領主(ウィルヘルム)様も視察を兼ねた休暇でいらっしゃるんですよ。東の魔女様が送り迎えしてくれるそうです」

「村祭りなのになんか大事(おおごと)になってやしないか?」

「どうなんでしょうね?ベルンさん達はリラ祭りは?」

「だいたいダンジョンに潜ってるからなぁ。潜ってないときは休んでるわけで」

「じゃあじゃあ、今度は参加しましょうよ。面白いもの出しますよ!屋台で」

「まあ、行くか?リエ、屋台の資材をどうせ俺たちに運んでもらおうとか考えてるだろ?」

「えへへ、バレました?指名依頼出しときますね」

「報酬は携帯食料でいいぞ。カレーパンは必須な」

「あいよー」

 そんなこんなで、アマーリエは屋台と講習会の準備をすべく、店が終わるとあちこちに出かけ、夕飯はいつの間にか神殿でとることが習慣化されつつあった。

 もちろん、銀の鷹や黒の森の梟達、南の魔女とアルギスもダンジョンに探索に行き、その間、訓練不足のシルヴァンはパン屋の小僧をしながら、ヴァレーリオやスケさんカクさん、東の魔女やたまにゲオルグに訓練してもらっていた。

 村の方は、ダンジョン探索の冒険者達が少しずつ増えはじめ、保温マグや保温瓶が飛ぶように売れ、美味しい携帯食の需要が増え始めていた。そのせいでパン屋の方も大忙しになっている。

 結局、冒険者ギルドに携帯食事業を起こす前に、助走ということでパンを卸すことになった。冒険者ギルドの食堂の方は、料理スキルの高い村の有志によって保温マグに入れるスープやポトフが作られている。

 アマーリエはこれをきちんと事業化して、他の人の収入源になるようにするつもりなのだ。

 そして、アマーリエの料理講習会の詳細が気になった村の人々の要望によって、神殿を借りて説明を行うことになった。

 

 神殿の礼拝堂には村民を始め、ゲオルグ達や冒険者達、村に滞在している人達も集まっていた。神殿の舞台に立ったアマーリエは、思った以上に集まっている人々の顔を見渡して、内心で娯楽の普及もしないとダメそうだと思いながら、話を始めた。

「えー本日はお日柄もよく……」

「前置きはいいから、本題に!」

 村人からのツッコミに苦笑いしてアマーリエは本題に入る。

「あはは。わかりました。では、料理講習会についてお話しますね」

 アマーリエは、まず場所を自宅の厨房と神殿の厨房を使うこと、冒険者ギルドとアーロンのところで廉価版コンロを貸出する(レンタル)制度ができたこと、そして最初に少数の料理スキル上級者に料理を教えてから、順次料理スキルの低い人達に組んでもらい、そのグループのまとめ役に先に教えたスキル上級者を付けることにすると説明する。

「もう一つ、今後、美味しい携帯食の普及のために料理を覚えた方達に携帯食を作っていただきたいと思っています」

「「「「「「反対!」」」」」」

 来ていた村のおじさん達は一斉に立ち上がって異を唱える。

「え?」

「うちの母ちゃんの旨い料理を他の男に食わせるわけにはいかねぇ!」

「「「そうだそうだ!」」」

 まさかのお父ちゃん達による嫁愛と言う名の分厚い壁に阻まれたアマーリエであった。冒険者達はポカーンとその様子を見、ゲオルグは笑いを堪えるように下を向く。

「ちょっと、落ち着いて座って下さい」

 アマーリエの言葉に、それぞれの奥方達に服の裾を引っ張られ席に着くオヤジどもであった。

「冒険者ギルドの食堂でお母さん達、料理してるじゃないですか」

「あれは、皆で作って混ざってるからいいんだ!」

「えー、じゃあ、内職じゃなくて、日を決めて皆さんでまとめて作るならいいんですよね?」

「「「「それなら問題なし!」」」」

「お父さん方にも料理覚えてもらって、参加してもらいますからね?」

「「「「臨むところだ!」」」」

 威勢のいい親父連中ににっこり笑って徹底的に仕込んでやると誓ったアマーリエだった。そう、この日、こうしてアルバン村の鬼軍曹が誕生したのである。

「なら、魔物の暴走(スタンピード)の時も炊き出し係が増えて心強いですね」

「「「「「「応とも!任しとけ!」」」」」」

 村の男衆が自分たちの勢いでした返事に、家に帰った女衆や子どもたちの楽しみにしてるというプレッシャーでちょっぴり後悔が入ることとなる。

 アマーリエの話の後、神殿でスキル精査をしてもらい、料理講習会に参加したい人は料理スキルレベルと器用値を申告してもらい、グループ分けをすることになった。

 後々、ダニーロによる料理の基礎講座なども開かれるようになり、他の村からの参加者なども増え、辺境の地は美味しい物が食べられる観光地として温泉とともに発展していくことになる。

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