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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第15章 祭りの準備を兼ねた携帯食事業の予行演習
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「そう言えばアーロンさん、ゲオルグ様とこの間温泉に行かれたんですよね?」

 アマーリエは、話が途切れたところで話題を変える。

「おう!ありゃぁいい!うちの行商衆に、それぞれの行商経路で温泉が湧く場所を確認するよう通達しておいたんじゃ」

「父さんがいきなりお湯の沸く泉の場所を報告しろなんていい出して、皆心配してましたよ」

「失礼じゃの、わしゃまだボケとらんぞ」

「その確認もしてこいと言われて私が来たんですよ、フフ。まあ、杞憂でしたけどね。引退しても大商いの種を拾ってくるあたり流石ですね、父さん」

 息子の失礼な発言に、口をへの字に曲げるアーロンだった。

「おじいさま!わたしもオンセンに行ってみたいです」

「おう、行こう行こう。可愛げのない息子は留守番じゃ」

 ベーっと大人気なく息子に舌を出すアーロンにアマーリエが苦笑を浮かべる。

「父さん!そりゃぁないですよ!辺境伯様が起こす一大事業ですよ!今これに近い商会は我々だけなんですからね!」

「わかっとるわい」

「あはは。でもアーロンさんのところが絡むなら、旅行会社をたててもいいんじゃないですか?」

「「「旅行会社?」」」

「魔力溜まりが管理されて、魔物が出にくくなれば人の行き来も増えると思うんですよ。そこで、行商に慣れてるアーロンさんのところで集団旅行の旅程を用意するんですよ」

 アマーリエが前世のパックツアーの話をアーロン達に聞かせる。

「確かに。こちらのご領地なら、温泉村や領都を目的地としてちょっとした旅行を楽しめる商売がはじめられそうですな」

「温泉村の宿ってどうなりそうなんですか?」

「あそこは、砦跡を改修して、ここの商業ギルドがメインで高級宿屋にするのと」

「ほうほう」

「村の中の方は、庶民向けの木賃宿を作って温泉の管理と宿の管理を村の衆がすることになったんじゃ」

「んじゃ、両方の旅行計画立てられますね」

「おお!貴族方や金持ち向けの旅行と庶民向けということですな」

「他に温泉が湧くところも見つかれば、そこに宿を作ってもいいですし」

「人里離れた場所は難しいような?」

「案外、人の来ない場所に行ってみたい人もいると思うんで、冒険者の方を護衛に雇って自然を楽しむ方向で旅行ってのもそのうち出るかもしれませんよ」

「ウム、物好きはおるからのぅ」

「いろいろな旅行の計画があれば、いろんなお客も来ますねぇ」

 アマーリエの話に、いろいろな旅行計画を頭のなかで練り始めるロニーであった。

「最初は、アーロンさんのところの行商衆の皆さんに、各地の温泉に入ってもらってそれぞれの良さを調べてもらうほうがいいでしょうけど」

「それは大事じゃの」

「ええ。調査は大事ですね。それに実感があれば、人への勧め方も身が入りますからね。いやー、商売の種が次々に。人手がうちも足りなくなりそうだ」

 ロニーがあれこれ考えながらウンウンとうなり始める。

「人手が足りないなら、宿商売が得意な商家さんを巻き込んで支店作ってもらえば、商いの繋がりも広がりますよね?」

「「確かに」」

「アマーリエさんすごい。色々商売を思いつくんですね!」

 リンジーのキラッキラした目で見つめられ、あははと誤魔化し笑いをするアマーリエだった。

「まあ、でも魔物や盗賊の危険がない場所が増えないと難しいと思いますけどね」

「ウム。ここのご領地なら可能じゃな」

「フフ。こちらの発展を真似したくなれば、賢いご領主ならばまず領地の安全を図るようになるでしょうよ。そうなれば我らも商売しやすくなりますね」

 にやりと笑うロニーに、アーロンがなかなかそう考えられる領主は少ないぞとため息をつく。

「アーロンさんところが領地経営指南とか請け負えないですか?」

「「うちがか?」」

「ええ、話を聞き入れそうな柔軟なところから、うちの領地の発展の噂話でもして焚き付けるんですよ」

「嬢ちゃんは怖いこと言うのぅ。貴族方に商人が物申すのか?」

「商業ギルド主導でもいいんですけどね。貴族とも商いのあるアーロンさんのところとかの方が話しが早いかなーって」

「そりゃ、たまに領地のことで相談は受けますがね。……フム、簡単なところから解決していけばいいのか」

 ロニーは商会が大きくなるに連れて、領地のことで相談してくるようになった小領地の貴族達の顔を思い浮かべる。

「実績がつけば、相談してくる人も増えると思います。相談料もきちんと取って、ちゃんと責任果たせばより相談してくる人も増えると思います」

「フムフム。ただでは碌な客しか来んからの。慎重な客ほど適正価格というものにうるさい。が、逆に売る方にしてみれば安全な客が来るということじゃの」

「ええ。売り買いの価格ってのは客をふるいにかけるってことですからね」

「はぁ、アマーリエさんに嫁にきて欲しいですが、あいにく紹介できるような良い息子が手元に居ないのが残念でなりません」

「リンジーさんが居るじゃないですか」

 突然湧いた嫁取り話に慌ててアマーリエが実の娘がいるじゃないかと話をそらしにかかる。

「わたし、おじいさまのところに住むわ!それでおじいさまとアマーリエさんから商売の極意を学ぶの!」

「リンジーさん、まずはお父さんのお店とか、ご親戚のところに下っ端として現場を見てきたほうがいいですよ」

 リンジーの意気込みにも、慌てて、下積みからやったほうがいいとアドバイスするアマーリエ。

「え」

「そうじゃの。ロニーもお前の叔父達もわしについて行商に出て、店に出て下から順に上がってきた。まず現場の空気を知ることが大事じゃの。ベレスフォードのお嬢さんではなく、リンジーという商人として一人でまず何が出来るのか見極めてごらん。一人で出来ることに限りがあると知ればどう人に頼むのかもわかるようになる。商いとは人と人を繋ぐもんじゃからの」

「父さん、リンジーは」

「女だから嫁に行くんですか?他の商家に大事な才能取られて良いんですか?商いが好きでやりたいって一番大事な才能ですよ。本気で好きでなきゃ、やり抜けないんですから」

 ロニーの言葉に唇を噛んだリンジーを見て、すかさず口を挟んだアマーリエ。

「うっ」

「リンジーちゃん、他所のお家にお嫁に行くのも悪くはないと思います。それはそれで大事なことですから。でも、商いをやってみたいんですよね?なら、どんな立場になっても出来るように下地だけでも作っておいたほうがいいですよ。準備ができてなきゃ、機会があっても逃がすだけです。出来る商人は機会が来る前に準備するもんです」

 アマーリエの真剣な顔に思わず息を呑むリンジー。

「うむ。商いは遊びじゃァない。人様のために行うもんじゃ。その感謝を銭に変える仕事だと思え。それが信頼を貯め、商いを大きくするんじゃ。生半可な気持ちなら、やめておくんじゃ」

 いつもニコニコ好々爺のアーロンも真面目な顔で孫娘を諭す。

「わかりました。やってみます!お父さま、お店の見習いと同じように扱ってくださいますか?」

「ううう。甘やかしてしまいそうだなぁ、わたしでは。お母様とも相談させてくれないかリンジー?」

「まぁ、即断即決のお父さまが、お母さまに相談ですか?」

「流石にお前のことを独断で決められないねぇ。お母様の娘でもあるんだよ?」

「そうですわねぇ。でも、お母様は反対なさらないと思いますけど」

「うん。反対はしないと思うよ。でも、うちではなく他の商家で修行してこいぐらいは言うと思うなぁ、君のお母様は」

「あ、そうですわね」

 ぽんと手を打って、自身の母親の言動を思い起こして納得するリンジー。

「僕としては、君をお嫁に出すってだけでも心が潰れそうなのに、他所の商家に預けるだなんて……」

「親ばかじゃのぅ」

「娘は可愛いんです!父さんは息子ばっかりでしたからね!」

「孫娘は目に入れても痛くないぐらい可愛いわい!」

「あはは、爺馬鹿炸裂。お母様、結構厳しい方なんですね」

 アマーリエの言葉にリンジーは首を傾げ、自分から見た母親を評する。

「公正さを伴った厳しさだと思います。お父さまもおじいさまも私には甘いですから手加減なさるの。それってわたしとしてはあんまり嬉しくありませんの。だからお母さまの厳しさは、わたしにはかえって安心といいますか。もちろん、お母さまも私やお兄さま達に厳しいだけではないんですのよ?」

「ウム。そこを買って嫁に来てもろうたんじゃ。娘や息子といえど商いに手は抜かせない、しっかりした嫁でわしも安心じゃ。うちの息子どもの嫁御達は皆しっかりものじゃし仲がいい。うちの商会も安泰じゃ」

「へ〜」

「本当は、妻もここに一緒に来る予定だったんですけどね。ここに来る途中でこちらの領都の方で金属に書ける絵の具や廉価版の魔導焜炉の話を聞いて、それの仕入れに腰据えて取り掛かりだしたもので」

「お母さま、これはかかわらなきゃ大損だって、もっと大きな話はお父さまに任せたからって、こっちの話は私に任せてアルバンに行ってくださいって」

「お、ちゃんと情報収集しておったんじゃな。バルシュ支店も大丈夫そうじゃの」

 ロニーとリンジーの話にアーロンが満足そうに頷き、アマーリエの方は思わず天を仰いだ。

「わぁ、なんかすいません。せっかくの家族水入らずの邪魔した気がします」

「「「?」」」

「いやあ、金属に魔法陣を彫るのが難しくて職人が育たないなら、金属に書ける絵の具作っちゃえばってうっかり口にしちゃったもんで」

「嬢ちゃんが発端か!」

「あははー。焜炉も火口一つにして量産しやすくすればいいんじゃないかって、焜炉普及してほしかったんでつい。ほんと申し訳ない。仕事が一段落したら、ご家族でゆっくり温泉につかって、骨休みしていって下さい」

 思わず頭を下げたアマーリエだった。それにロニーとリンジーは慌てて大丈夫だからと答える。

「嬢ちゃんや、普及版のコンロで確か料理講習するとかなんとかゆうとらんかったかの?」 

「ええ、こちらでもぼちぼち普及版コンロが売れてるようですので、使い方も兼ねて料理講習会しようと思ってますよ」

「わしも、参加してええかの?」

「それは、もちろんですよ。あ、そうだ!また巻き込んじゃいそうですけど、携帯食事業とかもやってみませんか?」

 アマーリエは料理講習会をとっかかりとして、先々色々事業として発展できそうな飲食業についてアーロン達と話し込んだのであった。

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