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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第13章 シルヴァンのダンジョン探索準備と村の噂
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ただいま、次巻の原稿整理中であります。まだ、色々とかかりますので詳細はまだまだ先になります。首をなが~くしてお待ちくだされ。では、本文をどうぞ。


 お茶を皆に配ったアマーリエは、筆記用具を隣の部屋から持ってくる。

「シルヴァン、もう一回鞄つけてみてくれる?」

 マーサに頼まれ試着するシルヴァン。

「あらぁ、いいじゃない。動きやすそうねぇ」

「オン!」

「袋の口は開きっぱなしだけど、拡張魔法が付くから、中身はこぼれ落ちないか」

「そうねぇ」

「シルヴァン、このノートその袋に入れられる?」

 アマーリエに聞かれて、シルヴァンは風魔法でノートを浮き上がらせ、袋の中に入れる、

「あらまぁ、器用ねぇ!」

「入れられるけど、拡張魔法の袋の場合、手を入れて取り出すものを思い浮かべる必要がありますよね?」

「そうなのよね」

「鼻先突っ込める?」

 アマーリエに言われて頭を袋の方にやるシルヴァン。あともうちょっとで袋に鼻先が届きそうなのだが。

「もうちょっと後ろにつけるか袋の幅を出したほうが良さそうね」

 マーサが巻き尺を取り出し、寸法を測り直す。

「袋の口が大きくなったら、垂れ下がりますよね?」

「紐で結んで止めようか?」

「うーん、それじゃシルヴァンが開け閉めしにくいからなぁ……」

「そうねぇ」

「磁石あります?」

「磁石?あるけどどうするの?」

「袋の口の内側に、鉄の板と磁石を付けて留め具にするんですよ」

「なるほど!それいいわね」

 マーサがノートにアイデアを書き留めていく。

「それぇ、人のにも使えそうねぇ」

 南の魔女が言うとアルギスも頷く。

「加工しないといけないと思いますけどね」

「そこはなんとでもなるわよ。職人の村ですもの」

 自信たっぷりにマーサが請け負う。

「あとは、この紐の調整ですね」

 仮縫いの今は鞄に紐を通し、その紐をシルヴァンの胴体に結んでいる状態だ。

「いつもは、共布か革を輪にして、従魔に付けたあと魔法で小さくするの」

「なるほど」

「アマーリエさんはどんな方法を?」

 マーサに聞かれたアマーリエはノートに輪っかを二つ使ったベルトの方法と、ベルト金具を使って、ベルトに穴を開けて調節する方法をマーサに教える。

「おお!これなら鍛冶屋さんに頼めばすぐ作ってくれそう」

「でも、ダンジョンで戦闘になったら、魔法でちゃんと体にひっついてる方が安心なのかなぁ?」

「実際に使ってみればいいんじゃなぁい?冒険者ギルドの訓練場で試せばいいのよぉ」

 あっさりと南の魔女が提案する。

「「そうですね」」

 アマーリエ達は細々と材質やら実験を何時するかなどを取り決めた。

 

 その後はアルギスが持ってきた卵を取り出して、世間話をしながら、皆で魔力感知で卵を検査していく。シルヴァンも嗅覚の魔力察知で卵を調べていく。

「あ、そうそう。村に出る幽霊の話は聞きました?」

 マーサが話題をふる。朝市のブリギッテの話以降も、何人か幽霊を目撃しているという話だった。

「出るだけで特に何も被害はないんですよね?」

「そうなのよね」

「じゃあ、そのままねぇ」

「わたしもちょっと見てみたいです」

 好奇心に満ちたアルギスの発言に肩をすくめるアマーリエ。

「こういうのって、何かあったら冒険者ギルドに依頼なんですか?」

「村として依頼を出すでしょうね」

「なるほど」

「ヴァルが居るし、レイス退治はすぐ終わるわよぉ」

「へ〜」

「ヴァレーリオ様は浄化魔法が得意なんです」

 鼻息荒くアルギスが自慢する。それをアマーリエが適当にあしらう。

「何かあれば、銀の鷹の皆さんもいらっしゃいますしね。そうだ。銀の鷹の皆さんは珍しく他のパーティーの方と合同でダンジョン探索に行ったんでしょ?」

 マーサの話題変更にアマーリエが頷く。

「今朝、皆さんうちの店でパンとスープを携帯食代わりに買って行かれましたよ。明後日の夕方には戻るそうです。結局二日探索にあてるようですね」

 アマーリエがマーサに答えると、

「あら!魔道具屋さんの保温マグと保温瓶、冒険者の方にも売れてるのねぇ。わたしも買うことにしたのよ」

 マーサが、魔道具を買うことに決めたと報告する。

「そうなんですか?」

「普及版の魔導焜炉も注文しちゃったわぁ」

「おお!」

「あれ便利そうねぇ。薪じゃあ、火加減が大変なのよ!助かるわぁ。家で料理する回数も増えそう」

「普及版のこんろぉ?あの食堂で見たこんろのことぉ?」

 南の魔女達に詳しく話を始めるアマーリエだった。ひとしきり魔道具屋の新しい魔道具の話題で盛り上がる四人。

「そうだ、魔女さま。シルヴァンに戦闘の時の魔法とか教えるんですか?」

「あ、そうよねぇ。ダンジョン行くんですもんねぇ。皆で戦う方法も教えないとねぇ」

 南の魔女に呼ばれて、撫で回されるシルヴァン。

「効果的な回復魔法は私が教えるからね!シルヴァン」

「お願いしますー」

「オン!」

「シルヴァン良かったわねぇ。伝説級の魔女さまに魔法なんてめったに習えないわよ」

 マーサが如何にすごいことかとシルヴァンに教える。

「……マーサ。私の歳は教えなくていいのよぉ?」

「あ、はい。魔女さま」

「「アハハハ」」

「ピーピー」

「あら、なぁにぃ?」

「ピーちゃんも魔法習いたいとか?」

「使えるのかしらぁ?」

「どうなんでしょうか?」

 何やら鳴いて主張するひよこに皆首を傾げる。

「まぁ、いいわぁ。シルヴァンの訓練にあなたも来なさいなぁ」

「よろしくお願いします。うっかり焼き鳥にだけはしないでくださいね。ダリウスさんが立ち直れなくなりますんで」

「ぴ!」

「やんないわよぉ!失礼しちゃうわねぇ!」

 硬直したピーちゃんを見て、南の魔女が吠える。

「いえ、火力高いと巻き込まれるかなぁと」

「あたしの魔法さばきを今度、あんたにも見せてあげるわぁ!」

「いいんですか!やった!」

 よっしゃと気合を入れるアマーリエにその狙いに気づきハッとなる南の魔女。

「はっ!しまったぁ!あんたわざとねぇ?」

「なんのことでしょう?」

「南の魔女さまを釣り上げるとは。すごいな、リエ」

「ふふふふふ」

「アマーリエさん、なにげにワルねぇ」

「魔法使いの魔法を直に見たことないんですよ!前にマリエッタさんのを見損ねましたし。後はもっぱら私のほうが生活魔法使うの見せるばっかりでしたしー」

 誘拐からの救出の際に、爆破音だけ聞いたアマーリエだった。

「東のが、あんたの生活魔法を気に入ってたわよぉ」

「東の魔女様の魔法も見たい!」

「アレの魔法はね……」

 目をそらす南の魔女に首を傾げるアマーリエ達。

「省魔力で威力の高い魔法だってマリエッタさん言ってましたよ?」

「ええ。そうよぉ?でもねぇ、魔力制御は上手いんだけどぉ方向制御のほうがねぇ……。結局範囲魔法盛大にドカーンになるのよねぇ。昔よりはぁマシになってんだけどねぇ」

「「「……」」」

(ノーコンなのか……)

「キュゥ」

 聞かなきゃ良かったと思ったアマーリエ達だった。

「あ、マーサさん。リラ祭りの話なんですけど」

「そろそろ村役場に告知が出ると思うわよ」

「おお!」

「あら、芋っ娘は参加するのぉ?」

「屋台をやってみたいなと」

「それ、いいわね!うちの村はもっぱら祭りの時は生活道具の直しの店とか農具の直しとか晴れ着の仕立てとかで、食べ物系はからっきしなのよ」

「あらま、そうなんだ」

「食べ物の屋台が増えるなら、皆喜ぶわぁ」

「よっし!本格的に考えよう!」

「あんた、大丈夫なのぉ?村の外に出てぇ?」

 張り切るアマーリエに、一応確認する南の魔女。

「あ」

「じゃあ、私が護衛してあげよう!」

「ちょっ、アルギスさんも護衛されてる身で言いますか」

「いいんじゃないのぉ?わたしもついでに護衛してあげるわよぉ」

「オンオン!」

「ピー!」

「まあ、豪勢な護衛ね?」

 マーサが参加表明するシルヴァン達を見てクスクス笑う。

「大隠居様に許可取ってから屋台出します。流石に怒られるのやだし」

「まあ、それは大事よねぇ」

 南の魔女の言葉に深く頷くアマーリエだった。


「よっし!最後の卵異常なし!」

 最後の一個を見終わったアマーリエの言葉にがっくり項垂れるアルギスとマーサだった。

「明日プリン販売しますね」

「そういえばぁ、あんたあのプリンのガラス容器どうしてんのぉ?売った後よぉ」

 アマーリエの言葉に南の魔女が気になっていたことを聞く。

「そのまま家で使ってもらってたり、返却してくれる方にはカードに判子を押して、十個溜まったら好きなお菓子と交換にしてますよ」

 領都のお店でやってることをそのままこちらでも採用したアマーリエだった。

「あらぁ、考えたわねぇ」

「これですよ、カード。明日買いに行くわね。旦那がすごく気に入ってたから」

 マーサが巾着からカードを出して南の魔女に見せる。既に四個判子が押されていた。

「毎度ありがとうございます」

「兄上も気に入ってた!」

「左様で」

「うちの弟子も喜んでたわぁ。ガラスの容器も気に入ってたわよ。実験に使えそうって。お小遣いはたくからまた送ってほしいって言われちゃったわよぉ」

「え、そっちなんですか?」

「もちろんプリンも美味しいって言ってたわよぉ。あと、こっちに行きたいーって騒いでたけどねぇ」

「魔力溜まりのほうがまだ終わってないから無理そうですか?」

「まあ、もう少し時間かかるわねぇ」

 魔法ギルドの方から定期連絡が来ている魔女達。西の魔女の方は魔力溜まりの深さや広さを調べているところだ。

「頑張れ!お弟子さん達!」

「あんたみたいに魔力制御が器用ならもっと捗るんだけどねぇ」

 アマーリエの応援に、南の魔女が頬杖をついてつぶやく。

「浄化魔法なんて毎日使ってますからね。上達しますよ」

「あんたは、日々改善する根性があるんだものぉ。それは大事よねぇ」

「魔力少ないですからね。上手に使わないとすぐ枯渇しちゃいますし」

「やっぱり、見せないと実感しないわよねぇ。一度呼ぼうかしらぁ」

「許可おりますか?」

「そこは、申請の仕方次第よぉ」

「なるほど」

「皆さんいらっしゃったら賑やかになりそうですね、この村も」

 マーサがニコニコ話す。

「今、冒険者の人って何人ぐらい来てんですか?」

「まだ、今は少ないですよ。銀の鷹の皆さんと新しく来た冒険者の皆さんぐらいですね。冬は、雪が降って、村とダンジョンへの行き来が大変になるので潜る人がほとんど居なくなるんです。雪も溶けた今からが増えるんですよ」

「なるほど」

 アルギスの質問にマーサが答える。

「これからかぁ。って言うことはパン屋の客も増える?」

「増えるでしょうねぇ。スープの販売もあるし。携帯食代わりにいいと思うもの」

 云々とマーサが頷く。

「うーん。うちばっかり儲かってもなぁ。仕事忙しくなりすぎるのやだし。冒険者ギルドの食堂で改良型の携帯食の販売やんないかなぁ。今までのはいざって時用にして」

「それはいい考えねぇ」

「村に普及版の焜炉が増えたら、村のお母さん達の内職にいいかもしれない」

「あんたってぇ、ほんと色々思いつくわよねぇ」

「仕事があれば稼ぎが増えますから。稼ぎが増えればいろんなものを買うので、仕事が増えます。一人が儲かってもその人が使う分なんて知れてますからねぇ。皆がそこそこ稼いでそれなりに使うほうがお金が回るんです」

「なるほど」

 アマーリエの言葉にアルギスが目を輝かせて頷く。ただ、一定数物が行き渡れば停滞も起こるのではあるが。供給が増えすぎ、需要が追いつかなくなるのだ。増えすぎて消費者が選ぶのが面倒になる時代が来るのだ。

「ただ、購買欲を煽る目新しいものや、定番の良いものを作り続ける必要性はでますけどね」

「そうよねぇ」

「ええ、ええ」

 そんなに簡単にはいかないんですと頷くマーサ。

「商人は大変だねぇ」

「どの仕事も大変でしょうけどね」

 アマーリエの言葉にそれもそうかと頷くアルギスだった。

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