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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第13章 シルヴァンのダンジョン探索準備と村の噂
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「わしは狼も蛇も大っ嫌いじゃ!」

 翌日店が終わったあと引っ越しのご挨拶をと、鍛冶場から戻ったお向かいさんを訪れたアマーリエ。シルヴァンとピーちゃんも同居獣ということで一緒について行ったのだが。

「キュゥ」

「ぴぃ」

 モフモフとふわふわは、目をうるうるさせてちょこんと頭を一つ下げると、しょんぼりパン屋へと帰っていった。

「……」

「……」

「……あ、えっと」

「何なんじゃ!?わしが悪者みたいではないか!」

 お向かいさんの目までうるうるなっている様子から嫌いではなく理由があって苦手なのだと察したアマーリエは大人対応に入る。

「いきなり連れてこないで、確認すればよかったですね。驚かせてホント申し訳ありません。なるべく、そちらにご迷惑にならないようしますので、よろしくお願いします」

 静かに謝るアマーリエにお向かいさんも冷静になったようでつり上がっていた眉毛が、しょんぼりハの字になってしまっている。

「……いきなり怒鳴ってすまんかった」

「いえ。やっぱり苦手な方もいらっしゃると思いますし」

「ふぅ。ちょっとあってな。怖いんじゃ」

「はい。あの子達が不用意に近づかないように気をつけますので」

「あれらは、ちゃんと嬢ちゃんのゆうことを聞くのか?」

「はい。大人しい子たちなので」

 ちょっぴり心配そうなお向かいさんにニコっと笑って普段は静かなことを強調しておくアマーリエ。

「わしも、努力する」

「はい?」

「いきなりは無理じゃが、向かいに居るのに無視というのも良うないじゃろ」

「あの、ホント無理なさらないでくださいね?」

「うむ」

「あ、これうちのパンとスープです。仕事終わりで食事がまだでしたらどうぞ」

「お気遣いありがたく。コリン・スミスじゃ」

「アマーリエ・モルシェンです。魔狼のほうがシルヴァンでコカトリスの雛がピーちゃんと言います。ピーちゃんは銀の鷹のダリウスさんの従魔で、うちでたまに預かる予定です」

「……ダリウス、あやつは何を考えとるんじゃ?」

「あ、お知り合いでしたか。何か、子供の頃から動物を飼ってみたかったのに飼えなかった反動みたいですよ。巨人族の相を持つ方は小動物に怯えられやすいみたいで」

「なるほどの。あやつは巨人族の血を引いておったの。知り合いなのは、ダリウスの盾をわしが作っとるからじゃ」

「そうでしたか」

「三年じゃったか?嬢ちゃんがこちらに居るのは?」

「はい、次のパン職人が育つまでのつなぎのようなものです」

「フフ。ずっとおってもええぞ?」

「ははは、流石に実家の方も心配ですので」

「なんじゃ、兄弟姉妹はおらんのか?」

「ええ、一人っ子です、今のところは。うっかりできるかもしれないのでなんとも言えませんけど」

「?」

「未だに、うちの両親は仲がいいので。アハハハハー」

「ぶはは!嬢ちゃんも家を出ちまったしの!」

「えへへへ」

 軽いシモネタで盛り上がる二人であった。

「それじゃあ、お暇します」

「おう。パン屋の隣と裏は空き家じゃし、わしはほとんど鍛冶場で暮らしとるようなもんじゃから、何かあったら嬢ちゃんは役場に駆け込んだほうが早いぞ」

「わかりました〜。それじゃまた」

「おう」

 お向かいからパン屋に戻る途中でマーサと出会う。昨日流れた、シルヴァンのカバンの相談をこれからするのだ。南の魔女も来る予定だ。

 隙間の空いた扉を見てアマーリエが首を傾げる。

「どうしたの?」

「いや、シルヴァンて扉も開けられるようになったみたいで」

 そう言って、扉の隙間を指差すアマーリエ。

「あらあら。泥棒じゃないわよね?」

「いませんよね?」

「聞いたことないわ。うちの村じゃ」

「ただいま〜。シルヴァン?マーサさん来たよ」

 店の中に入って声をかけるアマーリエ。中はシーンと静まり返っている。

「何かあったの?」

「んー。さっきお向かいさんにご挨拶に行ったんだけど、いきなり大っ嫌いって面と向かって言われちゃってね」

「コリンさん?」

「ええ、狼と蛇が苦手な様で」

「へ〜、初耳!」

「グハッ。内緒だったのか。だよねぇ、知ってたらブリギッテさんも注意してくれただろうし」

 やらかしたと頭を抱えるアマーリエ。

「大丈夫!ここだけの話にするから」

「ここだけの話がここだけだった試しなんてありゃしないじゃないですかぁ」

「内緒!」

「信じてますよー」

「大丈夫!大丈夫!」

 マーサに肩を叩かれながら、二階に上がるアマーリエ。

「「!」」

 居間の角に顔を突っ込んで伏せ状態のシルヴァンがいた。ピーちゃんの蛇もやさぐれた空気を漂わせていた。

 吹き出しそうになった二人は、慌てて居間の扉を閉め、階下に降りる。

「ぶふっ。やばい、可愛い」

「すごく傷ついたんだろうけど、可愛い」

 二階に声が聞こえないように、必死で笑いをこらえる、何気にひどい二人であった。しかしシルヴァンは狼である。耳はいいのだ。

「「ふぅ」」

「ちょっと、先に慰めてくるんでここで待っててもらっていいですか?」

「いいわよ。大丈夫」

 マーサに断りを入れて、居間に戻るアマーリエ。

「シルヴァン?」

 ぴくっと耳をさせるも振り向かないシルヴァン。その様子に聞こえてたかと察するアマーリエ。

「笑って悪かったよ」

 今度は振り向いてじろりとアマーリエを見る、シルヴァン。

「ほんとに悪かったって。もう笑わない」

「キュウ」

「ほい、おいで」

 しゃがんだアマーリエに突撃する、ひよこ付きシルヴァン。アマーリエは膝立ちしてシルヴァンを抱きしめ、背中をなだめるように撫でる。

「キュウキュウ」

「うんうん。いきなり大嫌いって言われてびっくりしたし傷ついたね」

「キュウキュウ」

「その上私たちは笑うし」

「ワフ」

「ぴ」

 アマーリエは一旦シルヴァンを離し、その顔を優しくモフリながら話を続ける。

「お向かいのコリンさんね、昔、狼と蛇に怖い目にあったみたい。向こうも突然で驚いたんだよ。いきなり怒鳴ってすまなかったって言ってた」

「クゥ」

「ぴぃ」

「あんた達が、コリンさんにひどいことしたわけじゃないんだけどさ。コリンさんが、あんた達に慣れるまで優しくしてあげてほしいかな」

「オン!」

「ぴ!」

「ありがとう」

「オン」

「ぴ!」

「マーサさん来てるから、シルヴァン、カバン作ろうね」

「オンオン!」

「じゃ、呼んでくる。私はお茶淹れてくるから、おもてなししてね」


 アマーリエが階下に降りると、マーサは来ていたアルギスと卵の話で盛り上がっていた。南の魔女の方はそんな二人を呆れた顔で見ているようだった。

「こんにちは」

「お邪魔してるわよぉ」

「やぁ!卵持ってきたんだ」

「は?」

「コカトリスが生まれる卵を見つけるんですって!」

「それはいいですが、ウチでする必要性って?」

「割った卵の処理」

「ぐはっ。わかりました買い取りましょう。卵は使い道多いですから。でも、卵を割らないで見分ける方法ないんですかね?」

「どうだろう?」

 アマーリエの言葉に首を傾げるアルギスとマーサ。

「魔物なんだし、魔力があるとか?」

 ちょっと考えて自分で答えを出すアマーリエ。

「おお!」

「あらぁ!なら魔力感知を使えばいいわね。目に魔力まとわせるやつ」

「なんですか、それ?」

 マーサの疑問に南の魔女が答える。

「早速やろう!」

「いや、私シルヴァンの鞄作りの話がありますから、勘弁して下さいよぉ」

「神官さん!後でわたしと手分けしてやりましょう!」

「いいんですか!」

「はぁ、しょうのない二人ねぇ。わたしも手伝うわぁ。手分けしたほうが早いでしょぉ」

「そのノリで行くとわたしも手伝うわけですね。てか、卵、毎日持ち込まないでくださいよ?パンを焼いてる暇がなくなりますから」

「明日から、わたし朝、神殿に行きますよ!」

 アマーリエの言葉にマーサがアルギスに手伝いを申し出る。

「いいんですか!」

 マーサとアルギスが卵について話をまとめる。普通の卵は二日に一度、マーサが帰りにアマーリエに配達することとなった。放置しているとそのままどんどん鶏が増えるため、食べたほうがいいという結論になったのだ。

「魔女さま、あれいいんですか?よくよく考えると、早々先祖返りなんてないと思うんですけど」

「諦めるまでは、やらせようと思うのよぉ」

「はぁ(あんちゃん、コカトリス連れて帰ってきた弟見たらどうなるんだろうか?)」

「ほらぁ!二人とも、シルヴァンの鞄作りの話をするわよぉ」

 南の魔女に呼ばれ、マーサとアルギスがコカトリスの卵の話を一旦止める。

「わたし、お茶淹れてくるんで、皆さんは居間の方にお願いします」

 アマーリエに言われ居間に向かう三人。アマーリエは厨房へ。

「シルヴァン!こんにちは〜」

「オンオン!」

「ピ、ピーちゃんもこんにちは」

 アルギスは名付け親のダリウスを思い出して吹き出すのをこらえる。

「ダリウスったらぁ、もうちょっと名付け、どうにかならなかったのかしらぁ」

「可愛いじゃないですか」

「大きくなったらコカトリスよぉ?ピーちゃんて」

「きっと可愛いコカトリスに育ちますよ」

「マーサ、あんたって前向きねぇ。まあ、いいわ。カバン見せてちょうだいなぁ」

 ピーちゃんに突かれてにやけているアルギスを見ながら、南の魔女とマーサはテーブルにシルヴァン用のカバンを広げて話を始める。








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