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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第12章 割れない卵
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すんません、章題変えました。

 声なき悲鳴を上げた客人は、アーロン以外がもふもふとふわふわに向かってダッシュしようする。

 とっさに身体強化をしたアマーリエは、アルギスに足を引っ掛け床に沈め、右足で身動きできぬよう踏みつけ、南の魔女のズボンのベルトを掴み、マーサの襟首を掴んでなんとか取り押さえることに成功した。

「お客さ〜ん?うちの子はお触り厳禁ですから」

 オクターブ下がったアマーリエの声が居間に響く。

 パチパチとアーロンが拍手をする。

「いやぁ〜、皇都の花街の用心棒として推薦状を書きたいくらいの手際じゃの」

「ちょっと、アーロンさんもこの三人止めてくださいよ」

「老骨に鞭打ったら骨折どころですまんからの」

「せめてマーサさんを止めて!」

「人妻においそれと手を出すわけにはのぅ」

「アーロンさんまじで笑ってないで止めてくださいよ!」

 クスクス笑いながらアマーリエとの掛け合いを楽しむアーロンが、ジタバタと約束を守って無言でもがく三人を止めに入る。

「これこれ、三人さん。可愛いのは分かるが落ち着きなされ。わしとしてもコカトリスの雛は珍しいから気になるんじゃがの。流石に無言でそう迫られそうになったら、怖かろう。シルヴァンも雛も腰が引けとるぞ」

「「「はっ!?」」」

 シルヴァンたちの様子を見て正気に返る三人だった。

「はぁ。手を離していいですか?」

「足も離してくれ」

「ゴホン!私としたことがぁ、取り乱しまくっちゃったわぁ、可愛すぎて!」

「スミマセン、あまりに可愛いからつい」

 南の魔女とマーサに頷いて、アマーリエは手を離す。

「アルギスさん?」

「大丈夫。落ち着いたから」

 アマーリエは右足をアルギスの背中から下ろした。やんごとなきお方が特注した神官服は足型一つなく白さを保っている。

「えーっと。ひよこは今朝生まれたばかりです。今のところ、安全ですが何をきっかけに石化や毒が発動するのかわからないんですよ。なので、落ち着いて静かにお願いしますよ?」

「「「はい」」」

 アマーリエの真剣な声音に、ステイと命令された犬のごとくおとなしくその場にとどまる三人。アマーリエはひよこに近づいて声をかける。

「ひよこちゃん。こっちの落ち着いてるアーロンさんに鑑定してもらうけどいい?」

「ピッ」

 シルヴァンの上で元気よく鳴いて、羽根も生えていない小さな羽をパタパタさせるひよこにアマーリエが困った表情を浮かべる。

「このまま鑑定できそうですか?」

「ああ、大丈夫じゃ。どれどれ……」

「「「……」」」

 鑑定を始めたアーロンに固唾を呑んで見守る三人。

「……魅了は流石にないって思いたい。でも、この三人いきなり目の色変わったからなぁ」

 アマーリエの疑惑の眼に三人は慌てて首を横に振る。

「結果じゃ。『コカトリスの雛、雌:過去に神殿の神官によってコカトリスと交配した鶏の子孫。先祖返りをたまたました個体。人間と魔狼の魔力によって孵ったため、人と魔狼に懐く性質あり。幼鳥時よりスキル石化が発現』と出たぞ」

 アーロンは難しい顔をして結果を答える。

「え、先祖返りした個体って……まずいんじゃ?」

 サーッと血の気が失せるアマーリエ。

 コカトリスが生まれた原因を、アマーリエは神殿の鶏舎の近くに魔力溜りができてたまたまそこに産み落とされた卵が魔物化したか、結界にほころびがあって、そこをくぐれたコカトリスが産んだか産ませたか程度の想定をしていた。

「この先、またコカトリスの雛が生まれる可能性があるってことですよね?」

 異種族婚があるこの世界では、たまに先祖の種族の相が出ることがあるため、先祖返りについての情報は皆が共有している。

「……そうねぇ。どこのバカ神官がそんなことやらかしたのかしらぁ?」

「魔女さま、既にあの世かもしれない犯人は置いといて、神殿の鶏舎の鶏をどうするのかとこのひよこどうするのか決めないと」

「そうよねぇ。アマーリエ、あんた碌でもない考え持ってるでしょぉ。この雛が生まれた時点で私たちに連絡よこさなかったんだから」

「一匹ぐらいならなんとかなるかなと思ってたんですけどね。流石に、また生まれてくるかもってなると、ちょっと流石に焼き鳥かな~と心が傾いてます」

「……食べて、何もなかったことにするのも一案ね」

「ちょっと待って下さい!こんなに可愛いのに、食べるんですか!?」

「アルギスさぁ〜ん?あなたが食べてる鶏も、かつてはひよこだったの。わかるぅ?」

「わかってますけど!」

 話が胃袋消化案に傾き始めたのを見て、シルヴァンが念話で助けを呼んだ。

「シルヴァン無事か!」

 マリエッタの転移魔法で跳んできた、ダリウス達銀の鷹と見知らぬ冒険者たち。居間はもう人でギュウギュウだった。

「ダリウスさん?」

「オン!」

「こ、これは!」

「あ、こら、ダリウスさん!不用意に今近づいちゃダメですよ!」

 流石に現職タンカーを止められなかったアマーリエ。ダリウスは、そっとシルヴァンとひよこの前に跪き、もふもふとふわふわを見つめる。

「か、かわいい」

「ぴ!」

「さすがはコカトリスの雛!ダリウスを見て気絶しないとは」

「ちょっと、ベルン!冗談いってる場合じゃないでしょ!なんでコカトリスの雛が居るの!?」

 人が増え、さらに混沌とする現場にアマーリエは頭を抱える。

「さ、触っていいか?」

「ぴぃ?」

 ダリウスはそーっと手のひらを上にしてひよこに近づけると、ひよこはその上に乗り移った。

「ピピッピピッ」

「はぁ、かわいい」

「ちょっと!ダリウス!それコカトリスの雛なのよ!」

 マリエッタの鋭い声に真面目な顔になるダリウス。

「俺を受け入れてくれるならなんでもいい。俺んちに来い」

「ピ!」

 ピカッとダリウスとひよこの周りが光る。

「え、何事?」

「ダリウスさんが雛をテイムしたようです」

 突然の出来事に驚くアマーリエの言葉に見知らぬ冒険者の一人が答える。

「えー!?」

 一同騒然である。

 しばしの混乱の後、パン屋の居間では人が入りきれないのと諸悪の根源が神殿にあるために神殿へと場所を移すことになった一同であった。



「……なぜ、こうも問題が起こるんだ?せっかく温泉で生き返った心地で帰ってきたのに」

 ひよこのスキル鑑定をしながら、ブチブチと愚痴るヴァレーリオ。

「過去の神官のせいよぉ。どこの馬鹿なの?鶏とコカトリスを混ぜたバカはぁ!」

「禁書庫の何処かに記録があるだろうから、アル坊、ファル、ちょっと行って探してこい」

「「はい」」

 ヴァレーリオに言われて神殿の図書室にある禁書庫に向かう二人。アマーリエはベルンとアーロンから一緒に来ていた見知らぬ冒険者を、鬱金採集していた冒険者だと紹介される。

「ダリウス、出たぞ。読め」

「はい」

 ダリウスはひよこをシルヴァンの頭の上に戻し、ヴァレーリオから紙を受け取り、魔力を通して読みはじめる。

「うん、雛だから大したレベルでもないし、スキルもない」

「魅了はないんですよね?」

「ない」

 アマーリエの疑問にきっぱりはっきり否定したダリウスだった。

(モフモフスキーなだけか)

 内心でため息を吐いたアマーリエだった。

「俺がテイムした状態になってる。後、リエとシルヴァンが抱卵親になってるぞ」

「うっ、やっぱり親認識されてたか」

「ダリウスがテイムしたしぃ、アーロンさんの鑑定と合わせてもぉ、この子は安全になったわけねぇ。食べずに済んでよかったわぁ」

「それで、この子はダリウスさんが面倒見るってことでいいんですか?」

「いや、明日からダンジョン潜るから、なんの力もないのは連れていけないぞ」

 ベルンが難しい顔をして否定する。

「そうなんだよなぁ、連れていきたいのはやまやまなんだが流石にこれじゃぁ連れていけない」

 がっくりと肩を落とすダリウス。

「オン!」

「シルヴァン、すまんがお守りを頼みたい」

「オンオン!」

「結局そうなりますよねー」

「ピーちゃん、シルヴァンとリエの言うことをちゃんと聞くんだぞ」

「ピ!」

 グフっと息の漏れる音がほうぼうからする。

(ピーちゃんなのか)

 アマーリエは内心でつぶやいて遠い目をする。

「芋っ娘!あんた、この子飼うつもりで居たんでしょ?皆をどう説得するつもりだったのぉ?」

「え、ああ。まあ、案の一つとしてはテイムスキルをお持ちの方にテイムしてもらおうかなと。ダリウスさんがテイムしちゃいましたからそこで話は終わりかなーと」

「誰もテイムしなかったらどうするつもりだった?」

 ベルンに問われて肩をすくめて答えるアマーリエ。

「冒険者ギルドか神殿で管理してもらって、この子が石化スキルや毒スキルを使えるようになったら、冒険者の訓練にそれを使ってもらえるように提案しようかと思ってました」

「なるほどな!それはいい考えだ。冒険者がとっさに対応できれば生き延びる確率が増えるからな」

「ええ。後、アーロンさんの鑑定で雌ってわかりましたんで、卵を産むようならその卵で石化関連の食べ物系アイテムに出来ないかなーとか」

「ふむふむ」

「取り敢えず、ピーちゃんに関しては問題なくなりましたけど、今いる鶏舎の鶏どうするんです?」

「アーロンの鑑定で人の魔力で孵せば人に懐くとあるからの、増やしてもいいんじゃないか?卵と肉が手に入る様になるぞ?」

「ヴァルぅ、あんた何増やそうとしてんのよぉ」

「ダンジョン攻略が進むだろーが。食料アイテムが増えれば」

「そりゃぁそうだけどぉ。誰がテイムするのよ?」

「はいはい!わたしが!」

 書庫から戻ってきたアルギスが立候補する。ファルはヴァレーリオに古い書類の束を渡す。

「アルギスさん、あんちゃんとこに帰る気あります?」

「あっ」

 ジト目になったアマーリエに指摘されてアルギスが目をそらす。

「まあ、一羽ぐらいなら護衛代わりに居ても問題ないでしょうけど、増やすんですよねぇ?」

「うちもコカトリス欲しいです。居たら、冒険が楽になりそうですし。食料と戦闘に役に立ちそうです」

「なら、うちで卵の取扱をしたいです。人に懐くコカトリスならテイマーにしてみればテイムしやすいでしょうし」

 新顔の冒険者とマーサが意見を述べる。

「ふむ、ジョルを巻き込んでコカトリスの一大生産地にするか」

「あーあ、大隠居様とダールさんに仕事増やしたってまた怒られそうな予感〜」

「大丈夫だ。神殿が中心になって動くから。そもそも卵を孵す許可を南のが許可したんだしの」

「うッ、そうなのよねぇ。私としたことが、甘かったわぁ、ついシルヴァンが可愛くって許しちゃったのよねぇ」

「誰も、鶏の卵からコカトリスが孵るなんて思わないですしね」

 アマーリエの言葉にため息を吐きながら頷く一同であった。


 しかし、これ以降しばらく神殿の鶏の卵からコカトリスが孵ることはなかった。色んな期待に胸を膨らませていた人々はがっかりすることとなったのである。

私のやる気スイッチを入れるためのコマンド入力が難し過ぎる(==;)誰か格ゲーの上手な人に頼みたいぐらいです。さて、仕事でたれ耳うさぎの耳を作らねばならんので逝ってきます。

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