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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第11章 休日のお茶会
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おまたせ致しました〜

色々落ち着かない気候ですけど、皆様体調崩さないように気をつけてくださいね〜


 プリン・ア・ラ・モードを口にした面々から吐息が漏れる。アマーリエがファルの方に視線を向けると、うっとりとした表情でプリンを堪能している様子が見て取れた。

「皆さん、御気に召していただけたようで」

 声もなく甘味を堪能するお客達を見て、ニヤリと笑って言うアマーリエ。

「リエさん!素晴らしいです!目で堪能してさらに舌で味わう!はぁ、なんて幸せなんでしょう!」

「それは、良かったです」

「この所、溜まっていた物が洗い流されるようです」

 憂いの晴れた笑顔で言うファルに、ちょっと顔がひきつったアマーリエだった。ファルの隣で真面目な顔をしたベルンが親指を立てて、アマーリエに良くやったと合図を送くる。

 それに一つ頷いて、アマーリエは内心で思う。

(ベルンさんもかなり参ってたのか?ファルさんの機嫌が治ってよかった。まあ、明日には老人会の皆様帰ってくるでしょうし、ダンジョンに潜れば魔物ぶん殴ってウサ晴らしもできるでしょうしね)

 ファルが言葉を発したことで我に返ったのか、皆一斉に話し出す。

 既に食べ終わったダフネとシルヴァンは切ない顔をして空のお皿を見つめた後、アマーリエの方に視線を向ける。

 その、強くもの言う視線に苦笑を浮かべたアマーリエが、カットナイフの用意をはじめる。

 カットナイフを手にとって火の魔法で刀身を温めはじめたアマーリエを見て、マリエッタが首を傾げる。

「あら、リエ。ナイフを生活魔法の火で温めてるの?」

「ええ。人肌より熱め程度の温度ですけどね。熱で切りやすくなるんですよ」

 アマーリエの言葉になるほどと頷くマリエッタ。

「確かめるからカットナイフ貸してくれる?」

パトリックは温められたカットナイフをアマーリエから受け取ると刃の温度を触って確かる。アマーリエにナイフを返して、同じようにカットナイフを温めだした。

「ダフネさん、りんごのパイをお切りしますね。他のお菓子も、どうぞお好きに取ってください」

 アマーリエがナイフを入れるとサクッと音のするパイに皆が注目する。切り分けたパイを皿に乗せ、ダフネに手渡す。シルヴァンはパトリックに切り分けてもらっている。

「これは、この間食べたバターの匂いがするサクサクしたパンとおんなじ物か?」

 受け取ったアップルパイをしげしげ見て、ダフネがアマーリエに聞く。

「ええ、そうですよ。少し甘みを足してますけどね。頂いたりんごを砂糖で煮たものとジャムにしたものを詰めてあります。フォークで食べにくければそのままかぶりついちゃっていいですよ」

 とくにマナーも決まりもない現状、美味しく食べてもらえばいいとアマーリエは気にせず食べやすい食べ方をダフネに勧める。

 ダフネはカットされたアップルパイを手に持ち、豪快にかぶりつく。

「!」

 ダフネは咀嚼するたびにサクッと音がしてバターの香りが広がり、りんごの甘酸っぱい味が広がるパイを夢中で食べはじめる。

 そして、あっという間に食べ尽し、指先をぺろりと舐める。

「リエ!おかわり!」

 その声に慌てて皆がアップルパイを頼みはじめる。

「こらダフネ!お前がリエにりんごを渡したのは分かるが少し遠慮をしろ!」

 ベルン(おかん)の言葉にぷっと頬をふくらませるダフネ。

「むぅ、しょうがないな。独り占めしたいくらい美味しいんだぞ、このりんごのパイ!またりんごの季節にりんごを持ってくるから作ってくれ、リエ」

「ええ。もちろん。りんごが仕入れられるようになったら、店でも小さなアップルパイを売りますよ」

「本当か!」

「ええ。ファルさんから甘いお芋も譲ってもらってますから、それでパイも出来ますし、栗の季節になったら栗でも出来ますよ」

「おお!栗も拾ってこなければ!」

「そ・れ・に!お肉の好きなダフネさんには、お肉のパイも作りますよ!ただし!美味しいお肉持ってきてくださいね!」

「もちろんだとも!リエ!」

 食いついたダフネに栗とお肉確保と内心でニンマリするアマーリエ。それを見たベルンが呆れた顔でお手上げだと首を横に振っている。

「お肉もパイになるの?甘いの?」

 ブリギッテが首を傾げてアマーリエに尋ねる。

「いえいえ、しょっぱいですよ。パイ生地も甘みを引いて作るんです。お肉はひき肉にして調理したものをパイにするんですよ。そっちは食事用の肉料理になりますよ」

「俺は、そっちの方を食べてみたいな」

「俺も」

 ベルンの言葉にイワンも同意する。

「あら、イワン。だったら作り方を知りたいわ。アマーリエさん大丈夫かしら?」

「わたしも。ハリーもお肉のパイのほうが好みでしょ?」

 ソニアの言葉にパイを咀嚼中のヨハンソンが頷いて返事をする。

「店の方に余裕ができたら、料理の講習会をする予定なのでよかったら参加してくださいな。問題は村の共同石窯をまだ使ったことがないんですよね〜。皆が上手に焼けるようになるのって難しいからなぁ」

「……なら村で魔導コンベクションオーブンを共同購入してもらうか?あれは焼きムラが出ないからね」

 パイを飲み込んでヨハンソンが言う。

「はいぃ?レシピ公開してませんでしたよね?」

「普及用魔導焜炉が広まりきったら、オーブンの方を公開する予定になってる。先にこの村で使って使用感や利用率を知ってれば、オーブンの販売方法も先に考えられるからな」

「そりゃ、市場調査は大事ですけど……」

「ご領主様に訴状を出してみる。ご領主様は王様や貴族の方から売ろうと考えてるようだが村単位で買うのならありだと思うんだ」

「忙しくなりすぎるような気が?職人さん大丈夫ですか?」

 流石に、色々やらかして後ろめたいアマーリエは、職人連中が倒れないか不安になってヨハンソンに尋ねる。

「うーん、オーブンの方は魔法陣が複雑だけどね。ただ、金属に書ける絵の具ができてるからもう少し生産速度も上がるはずなんだ。腕のいい職人が揃ってるからね。魔法陣も改良を重ねれば書きやすくなるはず」

「魔法陣を重ねすぎですよね。もっと分けて、必要なところに必要な魔法陣を書いて最後に魔力がつながるように書けば作業分担できますよね?」

「それだ!」

 椅子を蹴っ飛ばして立ち上がるヨハンソンをソニアがたしなめる。

「ハリー落ち着いて。魔法陣の改良を始めたいでしょうけど、明日から、ね?」

「あ、ああそうだね。皆さん、失礼しました」

「その前に、保温マグも増産して普及しきらないとダメですよね?」

 アマーリエがそっと現状を口にする。

「はぁ、それもあった……」

「……大丈夫なのか、魔道具職人たちは?」

 がっくりと椅子に座り直すヨハンソンに、ダリウスが心配そうに声をかける。

「親方連中は張り切ってますよ。ここの村の魔道具はもっぱら魔獣退治用やダンジョン用で、使う人間が限られてますから」

「ああ、量産する機会が少ないんだ」

「うん。お陰で腕が上がるって、職人のケツ蹴飛ばして働かせてるよ」

「ありゃ、ま」

「ものづくりは数もこなさないとダメだからね」

「確かに」

「……いつの間に保温マグが人気になったんだ?」

 ベルンの言葉にブリギッテが昨日の朝の出来事を伝える。

「え、昨日俺が持ち帰りを頼んだせいなの!?」

 話を聞いていたグレゴールが手にしていたエッグタルトを落としそうになる。

「ええ。そうなんですよ」

「恐るべし、村の噂伝播力!ですよね」

「……そんなすぐに広まるなんて知らなかった。店でちょこっと話しただけなのに。毎年村に来てるけど、ダンジョンに潜るほうが大事だったからなぁ」

 ブリギッテの真顔の肯定とアマーリエの戯けた言い様にグレゴールがしみじみと言う。

「皆さんが来たことも、毎年その日の内に広まってますよ」

 アリッサが肩をすくめて言う。

「オウ……」

「キュゥ」

「パンの品揃えも、考えてやんないと。私と材料が尽きるほうが先になりそうだしね」

「オン」

「携帯食を追加で頼むつもりだったんだが……」

「それもありましたよね。何日潜るつもりなんですか?」

「あー、三日ほどのつもりだったが、ファルの機嫌が治ってるからな。まず一日、一階層目の部屋を調べるだけにしようか?」

 ベルンがマリエッタの方を見る。

「そうね、一日でどれだけの部屋を調べられるか把握したいし、しっかり調べるならどれぐらい時間がかかるかも調べたいわね」

「そうだな。四階層分あるしな」

「毎日、村とダンジョンを行ったり来たりですか?」

「いや、流石に行き来の時間が無駄になるから一度目安を作ったら、そのまま潜りっぱなしだな」

「なるほど」

「ん?一階層?またどうしてそんなところを?」

 イワンが不思議な顔をして尋ねると、ベルンが四階層目までの探索が不十分だったことを説明する。アルヴァンに長くから居る者も初めて聞く話なようで、新たな発見がありそうなことに心をときめかせている。

 そして話はそのままダンジョンのことやそこに来ている新しい冒険者パーティの話に移っていった。


「フゥ。リエさん今日は本当にありがとうございました。お菓子を心ゆくまで堪能できました。シルヴァンが作ったパイも美味しかったですよ」

「オン!」

 ファルの満足そうな言葉を皮切りに皆それぞれアマーリエに感想を言う。

「楽しんでいただけて良かったです」

「店の品揃えの方は今後どうするんだい?領都の店の品揃えと同じにするのかい?」

 ヨハンソンが気になっていたことを聞く。

「あ〜、それは現状無理かなと」

「シルヴァンが手伝ってると言っても流石に無理だよね」

 領都のアマーリエの実家のパン屋に行ったことのあるパトリックがウンウンと頷く。

「なので定番のパンとは別に月替りで新しいパン一〜二種類を入れていこうかなと思ってます。サンドイッチは定番のものと数量限定のものにしようかなと」

「スープはどうするの?冒険者ギルドの食堂も悪くはないんだけど、飽きちゃうのよね。出るものはあまり変わらないから。リエの作るものは美味しいし、目先が変わるのよね」

 マリエッタの言葉に銀の鷹のメンバーが頷く。

「スープの方は朝市の仕入れ次第で、出すものが変わりそうですね」

「ああ、それなら飽きずにすむわね」

「お菓子は?」

 ファルが目をうるませて聞く。

「ラスクは定番、他は数量が限定になったりいろいろ物によって変わるかもしれませんね。仕入れられる材料によりますから」

『新しいお菓子を出す時は念話で連絡くださいね!』

『わかりました』

 ファルからの念話に応えるアマーリエだった。

「さて、ではそろそろお開きにしましょうか」

 アマーリエの言葉に皆自分が使った食器に浄化魔法をかけ始める。ファルが片付けを引き受け、またお茶会をやろうという話をして、それぞれ帰途についたのだった。



うーん、適度に忙しいとストーリーもサクサク進むのですが、忙しすぎると頭が灰になっててリセットに時間がかかりますねぇ。

なにごともほどほどですね(==:)


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