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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第11章 休日のお茶会
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書籍の方ご購入ありがとうございます。おかげさまで次巻につながりました。

そしてお願いですが、本文感想欄ではなく活動報告のコメント欄の方に書籍に関するコメントをお願い致します。

それでは、今後もよろしくお願いいたします。

 アマーリエがお茶会用の支度を整え終わる頃、鐘五つ(午後二時)が鳴り始めた。暫くするとブリギッテとアリッサが一緒にやってきて、アマーリエからパトリックを紹介される。

「パトリックさん、こちらの二人がうちのお店で働いてもらってるブリギッテさんとアリッサさん」

「はじめまして。商業ギルドの宿の食堂で料理人として働き出したパトリックです」

「薬草園のアッカーマンの娘のブリギッテです。はじめまして、こんにちは」

「槍専門の鍛冶屋のラングフォードの娘のアリッサです。こんにちは」

「パトリックさんには今日のお茶会のお菓子を作るのを手伝ってもらったんだよ。お茶会にも参加するからね」

「色んなお菓子ができたから、楽しみにしてね」

 ニコニコとパトリックが娘二人に声をかける。

「「はい!」」

「それで、お茶会の場所なんだけど、人が増えたのもあって神殿の食堂を借りることにしたから。ブリギッテさんは遠回りになってごめんよ」

「ああ、大丈夫よそれぐらい。あ、薬草をいろいろもってきたよ。父さんと母さんがラスクありがとうって」

「わぁ、こんなに沢山いいの?」

「うん。母さんが料理に使える薬草とレシピを教えてほしいって」

「店が落ち着いたら、料理講習会するつもりだから」

「私も参加していい?」

 アマーリエの話に目を輝かせて身を乗り出すアリッサ。

「もちろん」

「私はね、お茶の葉を持ってきたのよ。母さんの親戚にお茶を作ってる農家があって毎年送ってもらってるの」

「ありがとう。ほう、発酵茶だね。早速お茶会用に持っていくよ」

「苦味はあまりなくて少し渋い飲みやすいお茶なの」

「なら、お菓子にぴったりだね」

 パトリックの言葉にアマーリエが頷く。

「ええ、口の中の甘さをお茶でさっぱりさせれば、さらに食べられますね」

「「楽しみ〜」」

 ブリギッテとアリッサは目を輝かせる。

 そうこうしてる内にソニアとナターシャがそれぞれの夫を連れてやってくる。

「「「「こんにちは〜」」」」

「こんにちは、いらっしゃい」

「やぁ、ヨハンソンさん!久しぶり」

 ニコニコ手を振るパトリックにヨハンソンが目を丸くする。

「あれ?パット?あんた、今ここに来てんのか?よくアルバン滞在の許可がおりたなぁ」

「そりゃぁ、これでもご領主様のお屋敷の厨房で働いた実績あるからね」

「ああ、そうだった」

「ハリーったら、なにげに失礼よ」

 ソニアに突っ込まれたヨハンソンがソニアに謝りはじめる。謝る相手が違うとさらに叱るソニアと叱られるヨハンソンを放置してアマーリエがパトリックに話しかける。

「お二人はお屋敷の厨房であったことがあるんですっけ?」

「うん、魔導焜炉の納品のときにね。料理長を抑える役目だったよ」

 ちょっと困った顔をして、肩をすくめるパトリック。

「あはは。イワンさん、ナターシャさん、こちら商業ギルドの宿屋の厨房の料理人のパトリックさん」

「お二人とも、初めまして」

「初めまして。アマーリエさんのところでお世話になってる、アナスタシア・オレニコフです。こっちが夫のイワンです」

「イワンだ。建具職人をやってる。よろしくな」

「こちらこそよろしく」

 落ち着いたらしいソニアとヨハンソンを見てアマーリエが紹介を続ける。

「イワンさん、こちらの夫婦が魔道具職人のヨハンソンさんとその奥さんのソニアさん。ソニアさんにうちを手伝ってもらってます」

「「初めまして」」

「初めまして、ベルクさんのところに腕のいい職人が来たってのは噂になってる。イワンだ、よろしくな」

 イワンとヨハンソンがガッチリと握手する。

「妻がお世話になってます。こちらこそよろしくお願いしますね」

「ナターシャさんとは仲良くしてもらってます」

「こっちこそ、アナが世話になってるようで、これからも仲良くしてやってほしい」

「ええ、もちろん!」

 それぞれがやり取りを終えた頃合いを見計らって、アマーリエが声をかける。

「えーっと、皆さんそれぞれ顔合わせが済んだ感じですかね?すみませんがお茶会の場所が変更になりました。神殿の食堂をお借りしてますので、そちらに移動をお願いします」

 アマーリエの言葉に後から来た四人が驚くが、頷いて了承する。

「銀の鷹の皆さんもお茶会に参加しますのでよろしくお願いします。では、神殿に行きましょう」

「オン!」

「あれ、シルヴァンも行くのか?留守を守るんじゃないんだね」

 元気よく返事をするシルヴァンにヨハンソンがわざと目を丸くして言う。言われたシルヴァンはガーンと口を開けてアマーリエを見た。

「ハリーったら、もう!からかわないのよ!」

「ごめんごめん。つい。シルヴァンて反応が面白いんだよ」

「面白いよねぇ、シルヴァンて」

 ウンウンと深く頷いてヨハンソンの言葉に同意するパトリック。二人の言葉にさらにショックを受けるシルヴァン。イワンはまじまじと人間臭いシルヴァンの様子を見ている。

「手伝いだけさせて、置いてくなんて非道なことはしないからね、シルヴァン?」

「キュウ」

 慰めるように言うアマーリエに鼻面を引っ付けるシルヴァン。それを見たヨハンソンが吹き出す。

「ブククク、目がうるうるしちゃって、かわいいいなぁ」

「ハリー?」

「はいはい。行こうか?シルヴァン。アマーリエは戸締まり忘れるなよ」

「ええ。皆さん出ちゃってくださいな」

「リエちゃん、荷物持つよ」

「あ、お願いします」

 アマーリエが戸締まりを終えると一行は神殿へと向かった。


 神殿の入口で行ったり来たりするファルとそれを面白そうに眺めているダリウスを見つけたシルヴァンが勢い良く走り出す。

「あ、こら、シルヴァン、また!」

「あの子、ダリウスさんのこと大好きだねぇ」

 ダリウスに突撃をかましたシルヴァンは抱き上げられて尻尾をちぎれんばかりに振っている。

「そうなんですよね〜。でも、家はうちなんですよねぇ」

「胃袋はアマーリエが掴んでるのか」

「です」

 シルヴァンを見たファルが、やってくるアマーリエたちの方に駆け寄ってくる。

「リエさ〜ん!」

「ファルさん、今日はよろしくお願いします」

「いえいえ、こちらこそ。皆さん、ようこそ。さあ、食堂に」

 ファルはいそいそとアマーリエ達を食堂に案内する。アマーリエは、食堂に居た銀の鷹のメンバーと今日のお客を引き合わせた後、パトリックと厨房に行き、お菓子の盛り付けに入る。シルヴァンは、ダリウスに相手をしてもらっている。

 アマーリエはアイテムリュックからお菓子や盛り付けの材料、道具を取り出し準備を始める。パトリックは食器棚から食器を選び出し、お湯を沸かしはじめる。

「今回、プリンをクリームとベリーで飾り付けます」

「ふむふむ」

「まずは生クリームに砂糖を混ぜ、角が立つまで泡立てます。風の魔法を使うと早いです」

「……シルヴァンは得意そうだよね」

「風の属性持ちですから、あの子。ああ、もちろん自力でも可能ですよ」

 そう言ってアマーリエは泡立器を見せ、身体強化を使い泡立ててみせる。

「俺はそっちにするよ」

「私は風魔法でちゃちゃっと作っちゃいますので、プリンを皿に一つずつ取り出していってもらっていいですか?」

「うん、任せといて」

 アマーリエは、生クリームをホイップし始め、パトリックはプリンが崩れないように型から出して皿に取り出していく。

「こんな感じでしっかりクリームの角が立つと完了です。布製の絞りに口金をはめ、クリームを入れていきます」

「絞り袋?口金?」

「こんな風に飾りが作れるんですよ」

 アマーリエはパトリックが用意したプリンの皿にホイップクリームを絞り出していく。

「おお!華やかになったね」

「そして、ベリー類をきれいに並べれば盛り付け、シルヴァンが作ったシュガーパイをのせて完成です。やってみます?」

「ん、ちょっと他の皿で練習してからでいい?」

「もちろん。わたしは他のお菓子を用意します」

 生来の器用さからパトリックは絞り方のコツをすぐに掴み、プリンの飾り付けに入る。アマーリエは持ってきたアップルパイを皿に乗せる。

「うーん、カットはその場でするか。カッティングナイフは火魔法で温めれば大丈夫っと」

「リエちゃん、こっち出来たよ」

 人数分きれいに盛り付けられたプリン・ア・ラ・モードを見せるパトリック。

「パトリックさん、さすが!後はエッグ・タルト二種類とシルヴァンが作ったパイ菓子を大皿に並べてっと」

「お茶の用意するね。一応宿のポット借りてきた」

「おお!ありがとうございます。お願いします」

 パトリックはアマーリエから渡された茶葉をポットに入れ、お湯を注ぐ。

「こっちも出来ました」

「料理用の台車ってあったっけ?」

「これだけ広い食堂ならあるはずです。あ、あそこに」

「これ使おう」

「ええ」

 二人は大きめの料理用ワゴンにまず、大皿に乗せたお菓子とアップルパイ、取り皿とカトラリーを乗せて食堂に向かう。

 食堂の方では特に気まずい様子もなく、皆それぞれ話しに花を咲かせていた。

「皆さん、席についてくださいな」

 アマーリエとパトリックはテーブルの中央に大皿のお菓子とアップルパイの皿を置き、それぞれの前に取り皿とカトラリーを置いていく。アマーリエはパトリックにお茶を任せ、プリン・ア・ラ・モードを運びにかかる。

 皆は、そのお菓子に目をきらめかせている。

「お茶淹れますよ〜。はい、まだとっておきがこれから来ますからね、少し我慢して下さいよ」

「パトリックさん、とっておきですか?」

「ええ、女性の皆さんはお好きだと思います」

 パトリックは淹れたお茶をまわしてもらいながら、ファルの質問に答える。

「?」

「とってもきれいで美味しいものですよ」

「きれいなんですか?」

「ええ、きれいですよ」

「はいお待たせしました〜。プリン・ア・ラ・モードです」

「わぁ!」

 女性陣から歓声があがる。アマーリエは持ってきたプリン・ア・ラ・モードをそれぞれの前に置いていく。

「ほんとうにきれい」

「食べるのがもったいないわ」

「リエさんこれは?」

「卵を蒸し焼きにして作ったお菓子を生クリームとベリーを使って飾り付けしたものです。ちなみにお砂糖がかかってるパイはシルヴァンが作りました」

「この波波の焼き菓子はシルヴァンが作ったのか?」

「オン!」

 ダリウスの横の椅子にプリン・ア・ラ・モードを置いてもらったシルヴァンが、ドヤ顔で返事をする。

「どんどん器用になってくわね、この子」

 これでいいのか悩ましいマリエッタが首をひねる。

「パン屋の小僧さんだものね、シルヴァンは」

 ソニアがおどけたようにシルヴァンに話しかける。

「オン!」

「あはは。じゃ、皆さん始めましょうか。アップルパイは好きな大きさに切りますから言ってくださいね」

 アマーリエの音頭でお茶会が始まったのだった。

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