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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第11章 休日のお茶会
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 いつもと変わらぬ時間に起きたアマーリエ。シルヴァンを起こさぬようにそっと起きる。毛布から前脚を出し、口を開けてヘソ天で寝るシルヴァンを見てアマーリエの記憶が刺激される。

(何かに似てる……?あれだ!赤ずきんの狼扮するおばあちゃん!)

「ぐふっ」

 慌てて口を抑え、音を立てないよう隣の部屋で身支度を整える。そのまま、アマーリエは階下に降りて朝ごはんの用意をする。

「トマトのスープが少し残ってるから、冷ご飯入れてトマトリゾット風ににするか。落とし卵を入れたらボリューム出るかな。あとはキャベツをさっと茹でて、昨日でた昆布の出がらしを刻んだのと塩、粒マスタードを混ぜてなんちゃって浅漬け風サラダにするか」

 あり物でちゃちゃっと朝ごはんを作るアマーリエ。

「アップルパイはオーソドックスなタイプを二ホール。エッグタルトはパイ生地とタルト生地にしてそれぞれオーソドックスなのとベリーのジャムを入れたのを作るか。プリンは最後にまとめて作ろう。パイ生地が余ったらしょっぱいお菓子も作るか……あ、昨日貰ったしいたけでチップス作らなきゃ」

 アマーリエは出来た朝食を盛り付けながら、今日の段取りを考える。

「ん、刻みパセリかけるか。あと粉チーズもあるといいか」

 パセリを刻んで、落とし卵を乗せたトマトリゾット風の上にかけ、チーズをチーズおろしで下ろして小皿にいれる。

「お昼どうするかね?パトリックさんと何食べたいか相談して作るか」

 アマーリエは出来た朝食をトレーに載せ、二階に上がる。途中寝室を覗き、シルヴァンに声をかける。

「シルヴァン!朝ごはんできたよ〜」

「ワフッ?キュウ!」

 ベッドから飛び降り、急いで居間に行くシルヴァン。

「はい、おはよう」

「オン!」

「トマトリゾット風にしてみたよ。卵はそのまま食べる?それとも割る?中半熟なんだけど」

「オンオン」

 リゾットもどきの入った深皿を見せられたシルヴァンは、風魔法を使って落とし卵をきれいに半分に割る。中から黄身がとろりと出てくる。思わず口の端からよだれが垂れるシルヴァンだった。

「器用だねぇ。粉チーズもあるから、風魔法で入れられそう?」

「オン!」

「んじゃ、ここに置くよ?いただきます」

「オン!」

 シルヴァンは鼻先でリゾットの熱さを確かめながら、風魔法で冷まして食べはじめる。それを見ながらアマーリエは思いついたことをシルヴァンにたずねる。

「シルヴァンて魔狼でしょ。レベルアップや進化の先にライカン・スロープ(狼人)とかあるのかな?」

「クゥ……オン!」

 頭をかしげて少し悩んだシルヴァンは何か思いついたように立ち上がってアマーリエに尻尾を見せ振ってみせる。

「何?」

 シルヴァンの尻尾が消えた。

「え」

 また尻尾が現れる。

「オン!」

「あ、尻尾を消すところまでは出来ると?」

「オンオン」

「シルヴァン、尻尾はそのままでさ、二足歩行系のワーウルフを先に目指したほうがいいんじゃないの?」

「クゥゥ」

 ガーンという顔をしたシルヴァンに、アマーリエは色々察して苦笑を浮かべる。

「ありゃ、最初からより人らしい形を目指してたのか。今度、失礼じゃなきゃダフネさんに、獣人の方の人化の方法聞いてみようか?魔力の流れとか見たら分かるかもしれないし」

「オン!オン!」

 やる気になってるシルヴァンに笑顔を向けて、アマーリエはごはんを食べるように言う。

 アマーリエは朝食を食べ終えると、部屋の掃除、と言っても浄化魔法一発(こちらは部屋掃除仕様)で済ませ、衣類の手入れやアイテムボックスやバッグの整理をする。シルヴァンは庭に出してもらって運動代わりに折りたたみのテーブルと椅子を使って障害物走をしている。

「やぁ、シルヴァン、おはよう!」

「オンオン!」

 生け垣越しに声をかけてきたパトリックに走り寄るシルヴァン。

「何?お茶会のための腹ごなし?」

「オン!」

「リエちゃん居る?」

「オン」

 一声吠えて、アマーリエを呼びに向かうシルヴァン。パトリックはそのまま店の入り口へ向かう。

「おはようございます、パトリックさん」

「おはよ〜。悪いんだけどパン買って食べていい?朝まだなんだよね」

「ああ、残り物で良ければトマトリゾット風が残ってますけど食べます?」

「もちろん!問題ない」

「んじゃ、二階に上がってくださいよ。シルヴァン、お連れして」

「オン」

「お邪魔します〜」

 シルヴァンはパトリックを居間に通す。

「結構、広いねぇ。あ、この椅子、ご領主様の私室にある椅子に似てる。お茶菓子を持っていった時に座らせてもらったんだよね。座り心地がいいんだって自慢されたんだよ。ほんと、ここのご領主様って気さくすぎて」

 パトリックの話に首を傾げるシルヴァン。そのシルヴァンを苦笑しながら撫でるパトリックだった。

「パトリックさんお待たせしました」

「ゴメンね、なんか朝ごはんまでごちそうになっちゃって。その分ちゃんとお菓子作りで返すからね」

「えへへ、頼りにしてます」

 パトリックはすすめられた席に座り、目の前に置かれた朝食をまじまじと見つめる。

「これは、昨日のスープの残りにコメ入れて、落とし卵のっけたんだ。なるほどね、手軽に美味しく出来るって朝は助かるよね」

「アハハ、ほんと残り物ですいません。きちんと作るのなら生の米からスープストックで炊いて作るんですけどね」

「ホウホウ。それならうちの食堂でも出せるね」

「ええ、もちろんですよ。高級料理は食材と料理人技術の粋を集めてご馳走にするから高級料理になるんですよ。うちのは家庭料理ですから」

 頂きますと食べはじめるパトリック。最初にそのまま、トマトスープを吸った米を口に入れる。徐に、卵にスプーンを入れて、とろりと出る黄身をトマトスープを吸った米に絡めて口に入れる。

「ウン、この半熟卵の黄身と絡むと、トマトの酸味が抑えられて、口当たりがまろやかになるね。美味しい。コメはあまり主張しないから色々使えるねぇ」

「ええ」

「朝ごはんなら、十分だね。腹持ちも良さそうだし、リジェネもついたし」

「アハハ、あんまり効果は気にしてないんですけどね」

「リエちゃんらしいなぁ。所で今日のお菓子はどんなふうにするの?」

 パトリックはトマトリゾットもどきを食べながら、今日の段取りをアマーリエから聞く。

「まずは、アップルパイですね。昨日の内にりんごの処理とパイ生地の下処理は済ませてあります。二ホール分作るので、わたしとパトリックさんで一個ずつ作りましょう」

「……わかった。それぞれの処理の仕方も後で簡単に教えてね」

 パトリックが食べながらになるので、ゆっくりしたテンポの会話になる。シルヴァンはアマーリエの膝に頭をおいて撫でてもらっている。

「もちろんです。その次に残ったパイ生地とタルト生地でエッグタルトを作ります。カスタードは一度一緒に作りましたよね?」

「ウン、大丈夫。あれから何度か作ってるから大丈夫だよ」

「うふふ、なら大丈夫そうですね。後はプリンを作って、あちらの厨房に行ってからきれいに盛り付けをしようと思います」

「……盛り付け?」

 口の中の米を飲み込んでパトリックが首をひねる。

「ええ。お茶会ですし、ちょっと華やかにしてみようかと」

「お屋敷の料理長やダニーロさんが聞いたら悔しがりそうなことをまた……」

「アハハ、内緒でお願いします」

「この村の噂の伝播力を知らないだろ?」

「いえ、昨日一昨日でかな~り身にしみましたよ」

 情報の広まる速さにかなり驚いたアマーリエは、しみじみという。

「ほんとに?」

「ホントですって。ただ、ここだけの話が何故かここだけにとどまらないっていうね」

「くくっ、わかってるじゃん」

 吹き出しそうになったパトリックが口を抑えてこらえる。

「じゃ、素のプリンでいいですか?」

「うっ。料理人としてはちゃんと見たいので内緒の方向で」

「よろしくお願いします」

 アマーリエの横でシルヴァンは目をキラッキラさせ、尻尾を小さく振って(パトリックが食べてるのでホコリがたたないように気を使った)期待に胸踊らせていた。

「そして朝食べてる段階で昼ごはんの話もどうなんですかって感じなんですけど」

「何食べようね?」

「お菓子が粉系ですから、私としてはお昼も小麦系よりもコメを食べたいところですが、控えめにしたいと申しましょうか」

「そうだねぇ。お菓子食べるもんねぇ」

「そうなんですよ。たとえ甘い物は別腹といいましても、限度がありますし」

「何かある?」

「五目あんかけご飯なら魚醤で代替きくからなんとかなりそうな?」

「新しくて美味しいレシピならなんでも大丈夫。いいよ」

「じゃあ、その方向で」

「……ふぅ。ごちそうさまでした」

 パトリックは食べ終わった食器を浄化魔法できれいにする。

「お粗末さまです。あ、お茶淹れてきます」

 アマーリエはきれいになった皿をトレーで階下に運ぶ。

「ありがとう。シルヴァンおいで」

「オン?」

「うーん、見た目は魔狼なのに中身は人間臭いよねぇ、おまえ」

「?」

 ジーっと見つめてくるパトリックに、とぼけたふりして頭をかしげるシルヴァン。

「ほら、そういうとこだよ」

 思わずパトリックから目をそらしたシルヴァンだった。

「まあ、いいんだけどね。リエちゃんは家族と離れてこっちに来ちゃってたから、ちょっと心配だったんだけどお前が居るなら大丈夫だね。よろしく頼んだよ」

「オン!」

 当然というように返事をするシルヴァンをパトリックは撫でる。

「はいお茶ですよ〜。一服したら、お菓子作りに入りましょうか」

「ありがとう。そうだね」

 お茶を飲みながら、アマーリエは自分が出発した後の領都の様子を聞いたり、知り合いの話をパトリックとした。

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