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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第10章 二日目のパン屋さん
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 神殿に着くとグレゴールとシルヴァンは他の面子を呼びに行き、アマーリエ達は食堂に向かう。

「この十人掛けのテーブルでいいですかね。料理の入った袋や鍋はここに置いといて、食器を厨房から持ってきましょう」

「こっちだ」

 ダリウスが食器棚にアマーリエとパトリックを連れて行く。三棹の食器棚に木製の食器がしまわれている。

「えっと、平皿、スープ用の深皿、ご飯用はこの大きさのお皿でいいか。えーっとシルヴァン入れて九人前と後はフォークとスプーンは八人分」

 取り出した食器をダリウスとパトリックに渡していく。

「揃ったぞ」

「お酒飲むんですかね?」

「一応青の日までは留守番の依頼だからな、我慢」

「それはそれは。んじゃ後でお茶淹れますか」

「そうだね。じゃあ、食堂に戻ろうか。取り分けるの手伝うよ」

「ええ、お願いします」

 食堂に行くとベルン達が揃っていた。ファルがアマーリエに突撃する。

「リエさ~ん。ラスクありがとう」

「いえ、お留守番、お疲れ様です。なんか温泉村計画のとばっちりがあちこちにいってるみたいで、申し訳ないです」

「あ・れ・は!温泉の効能研究と称した、ただの骨休めですよ!」

 ムキーッと普段穏やかなファルが珍しく吠える。

「あー、やっぱり?老人会の旅行のノリに近かったか」

 温泉村に行った面子を思い浮かべて乾いた笑いを浮かべるアマーリエ。

「老人会!そうです!そのとおりです!あれはただの老人会です!」

 ファルは余程、神殿に缶詰状態されたことが堪えているようだった。

「ちょ、ファル、落ち着きなさいな」

 マリエッタがなだめに掛かる。

「マリエッタさんは、ここの神殿の図書室の禁書の魔法書読み放題でそりゃウハウハでしょうね!」

「え」

 ファルの八つ当たり発言の中の危険な単語に思わずマリエッタの顔を注視したアマーリエだった。

「いいのよ。ヴァレーリオ様も魔女様方も載ってる魔法を使わないなら読んでいいとおっしゃったもの」

「で?」

「使わないって言うよりね、使えないの。馬鹿みたいに魔力が必要だから。それに使う意味あるのかっていう魔法も多かったのよ。面白かったけど」

「へ〜。使う意味がない魔法ってのが気になるけど聞かなかったことにします」

「ま、それが無難ね」

「リエさん、聞いてください!子どもたちが遊びに来ておやつ見せびらかすんでよ!ちょこっとしか持ってないおやつを大人なのにくれとは言えないじゃないですか!」

「(見せびらかしたつもりはないんだろうけど)……分けてもらえなかったんですか?」

「一番小さな子が口に入れたのはいって……」

「あー、(いとけな)い子って、それやりますよね。自分の口に入れたやつをはいってくれるの。手に口に入れてないの持ってるのにねー。あははは」

 小さな子がよくやる行動を思い出して笑うアマーリエに、がっくりうなだれて自分がどう対応したのかアマーリエに言うファルだった。

「まさかもらうわけにもいかず、自分で食べてねって」

「色々、削られたと」

「グレゴールさんたら甘いものにあまり興味ないせいか、朝とお昼のご飯しか買ってこないんですもの」

「ファル、悪かったって。ちゃんと買ってきたから。美味しいぞ?」

 そういってアイテムバッグをファルに見せるグレゴール。

「おいしい?グレゴールさん食べたんですか!?」

「え、いや、味見しなきゃどれがいいかわからないじゃないか」

「先に食べるなんてずるいですー」

 ファルのあまりのごねようにアマーリエがマリエッタを食堂の端へと引っ張り、その場を離脱する。

「どうしたんですか、あれ?お菓子を見せびらかされただけにしては子供がえりしてるような?」

「あー。もともとファルは内勤向きじゃないのよ。おっとりして見られるけど、外で走り回ってる方が性分にあってるのよ。なのに、青の日までは神殿の管理があるから外に出られなくて、いろいろ溜まってるのよ。その上大好きな甘いものを好きに買いに行けないわ、明日ダフネとりんごのパイだっけ?新しいお菓子食べるんでしょ?それが羨ましくてしょうがないのよ」

「あ〜」

「なんとかしてくれないかしら?」

「なんとかしましょう。ファルさ~ん」

「……はい」

 ファルに襟首掴まれ、よれているグレゴールを視線から外して、アマーリエはお茶会の話をファルにふる。

「明日、神殿の食堂を貸してもらえませんか?」

「神殿の食堂ですか?」

「お茶会を神殿でやろうかなと、人数増えてますし。ここ広いですから。ファルさんもいかがですか?」

「本当ですか!?」

 ドサッとグレゴールが床に落ち、慌ててシルヴァンが回復魔法をかけに行く。

「……あの世が見えかけた。シルヴァンありがとう!うちの子にならないか?」

「ちょ、グレゴールさん!シルヴァンはうちの子ですから!ドサクサに紛れて何いってんです?あ、ファルさん、本当ですよ。神殿長代理のファルさんの許可があれば神殿の食堂でお茶会、大丈夫ですよね?」

「もちろんです!」

「じゃあ、よろしくお願いします。食堂と厨房、備品貸してください」

「はい、自由に使ってください!」

「じゃあ、夕飯にしましょうか?」

「はい♡」

 いつもの穏やかなファルに戻り、遠巻きにしていた面子はほっと肩を撫で下ろす。

「良かった。やっと機嫌が治ったわ」

「やんごとなきお方、さっさと神殿掃除済ませて、人員戻してくださいませんかね?」

「きっちり掃除するなら時間が掛かるでしょうよ。それに掃除したら人が減ったままかもしれないわよ」

「ありえそー」

 コソコソとマリエッタと話しながらテーブルに戻るアマーリエ。

「それじゃ、スープからよそっていくよ?」

 場の空気を読んで、空気になっていたパトリックが動き出す。

「お願いします。私はキッシュもどきと野菜のチーズ焼き、タタキを盛り付けていきます」

「俺はコメをよそっていくよ」

 グレゴールが手伝いを申し出る。早くファルにご飯を食べさせて空きっ腹で八つ当たりされないようにしようという防衛本能が機能したようだ。

「お願いします。はい、ダフネさん。順に回してってください」

「わかった!」

 アマーリエはせっせと盛り付けた皿をダフネへと渡していく。パトリックとグレゴールは先によそってしまい、各自に渡していく。シルヴァンは椅子の上にお皿を置いてもらう。

「スープはお代わりできます」

「コメもおかわり大丈夫」

「おかずは、お皿の分だけです〜。お二方、席につきましょうか?」

 アマーリエはパトリックとグレゴールを促して席に着く。後は、持ってきたソース類を出してテーブルに載せた。

「じゃあ、飯にするぞ」

 べルンの一言で食事が始まった。

「あ、これはローレンで一切れ食べたお魚?」

 ファルがタタキを思い出して、ひとくち食べて顔を緩ませる。

「米に乗せて食べても美味しいですよ」

 そう言うとアマーリエはタタキをご飯の上に乗せて頬張る。

「どれ……ん!美味い」

 それを見たダリウスも真似をしてご飯にタタキを載せて食べる。

「半分生なのね」

「……ええ。身のトロリとした食感が美味しいんですよ」

「……ほんと。このネギとソースともあってる」

「クッ、辛口の白ワインと合いそうなんだが」

 アマーリエはベルンの発言に米麹と酒米があったら清酒も作れるのになーと思う。

「ベルン、一応仕事中だからね?」

「わかってる」

「ダフネさん、おかずとコメを交互に食べると、コメが食べやすいですよ」

「わかった!」

「リエちゃん、そのソース使っていい?」

「はいどうぞ。かけすぎないように気をつけてくださいね」

「ん」

 アマーリエは、パトリックにソースの瓶とスプーンを手渡していく。

「先に、この卵料理をそのまま食べてと」

 パトリックはキッシュもどきを一口口に入れる。

「……ウン塩胡椒だけだけど素材の味がいろいろあって美味しい。リエちゃんどれからいけばいい?」

「最初は、その赤いトマトケチャップからどうですか。トマトをベースに香辛料や野菜を煮込んで作ったソース系の調味料です」

「トマトね。卵と合いそう。どれどれ」

 あれこれ試しはじめているパトリックに視線が集まる。

「リエ、ものすごく気になるんだが」

 パトリックの表情の変化が気になってしょうがないベルンがアマーリエに話しかける。

「どうぞ、試してみてください。今の段階だとあの茶色いソースとトマトケチャップはお取り寄せになります。トマトケチャップは野菜のチーズ焼きにも合うと思います。味を変えたいときにつけてみてはどうでしょう」

「わかった」

 皆、最初はそのまま料理を食べて堪能し、パトリックからどんな味になるのか聞いてソースを足していく。

「野菜のチーズ焼きはそれぞれの野菜の旨みとチーズのコクが合って美味しいです。トマトケチャップを付けるとトマトの酸味と様々な香辛料の香りで複雑な味になりますね。でも付けすぎるとソースの味とチーズの味だけになってしまいます」

 ファルが一口ずつ味わって食べ、感じたまま言葉にする。

「ええ、程々につけるのが美味しく食べるコツですね。そう言えば、ベルンさん」

「ん?」

「全然話は変わりますけど、拠点は決まりそうですか?」

「ああ。今日、決めてきた。明日から色々改装とか頼むんで、その間神殿ぐらしになりそうだ」

「え?」

 南の魔女とのことはどうなったのかと思わず顔をひきつらせるアマーリエ。

「神殿なら、ちょっと神殿の掃除と手伝いをすれば宿代は無料でいいとヴァレーリオ様に言われてな」

「へ〜」

「拠点の方の仕上げも来週半ばには終わるらしいからな。赤の日からはその間はダンジョンに潜ろうと思うんだ」

「なるほど」

 ベルンは上手く南の魔女を避けて通る予定らしかった。

「赤の日は店が終わってから南の魔女さまと一緒にシルヴァン用のアイテムバッグを作る予定なんですよ」

「そうなのか?」

「はい。ダンジョンに行くにしてもポーション類や携帯食、拾ってきたアイテム入れるのに必要かなと思いまして」

「そりゃそうだな」

「シルヴァンは回復もできるから、すごく助かりそうよね」

 さっきのグレゴールを回復する様子を見てマリエッタがシルヴァンを連れて行っても大丈夫と判断する。

「うんうん。コメも炊けるようになってたよ。このコメ、シルヴァンが炊いたんだもんね?」

「オン!」

「「「「え!?」」」」

「食事係にもなれると思う」

 グレゴールが力強くシルヴァンの能力を肯定する。それにダリウスが深く頷く。

「ちょっとリエ、あんた何をシルヴァンに教えてるの!?」

「いや、思った以上に生活能力高くて。魔法の応用が上手なんですよ、この子。マリエッタさん見たら驚くと思うなぁ。魔女様方も」

 アマーリエの言葉に額を抑えるマリエッタだった。

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