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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第10章 二日目のパン屋さん
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 アマーリエとシルヴァンが役場の角を曲がってパン屋の通りに入る。すると、シルヴァンがダッシュして店の方へと走り出す。

「あ、こら、シルヴァン!?」

 慌ててその後を追いかけるアマーリエ。店の前でダリウスに抱っこされて甘えるシルヴァンの姿があった。

その隣でグレゴールとパトリックが苦笑している。

「こんばんは。あれ〜?珍しい組み合わせですね」

「ああ、そこで一緒になったんだ」

「うん」

「どうしたんですか?」

「ハハハ。シルヴァン、下ろすぞ?俺は近くでベリーとキノコの採集をしてきたから持ってきたんだ」

 ダリウスはシルヴァンを下ろすと、足元においていたアイテムバッグをアマーリエに渡す。

「わぁ、ありがとうございます」

「お菓子楽しみにしてるぞ」

「任せてください!あ、ちなみに明日の鐘五つ(午後二時)に庭でお茶会しますからダフネさんと一緒に来てくださいな。ファルさんは神殿のお留守番でしたっけ?」

「ああ、そうなんだ。他に神官が居るなら良かったんだがな。青の日までファルは神殿駐留だ。アップルパイだっけか?楽しみにしてたから行けなくなって愚痴ってたからなぁ。お茶会の話を聞いたら泣きそうだなぁ。そうでなくとも……」

 そう言ってダリウスはちらりとグレゴールを見る。

「俺はファルにラスクを何故買ってこなかったのかと泣かれて。ダフネはちゃんとラスクもらってきたのにって、もう、うるさいんだよ」

「??」

「神殿に遊びに来た子どもたちがおやつに新しい味のラスクを持ってきててな、見せびらかされたらしいんだ。流石に子供のものをまきあげる訳にいかないだろ?」

「そりゃそうですよ。まだありますから大丈夫ですよ」

「いろいろ悪いなぁ、もう店閉めたのに」

「いえいえ、気にしないでくださいな。お茶会ですけどもういっそ、神殿でやりますか?食堂広かったし。神殿長の代理がファルさんならファルさんがいいって言えばありなんじゃ?」

「食い物の恨みを買うぐらいなら、いっそそのほうがいいかもなぁ」

 ダリウスがため息を吐きながら真顔でいう。

「そうだねぇ」

「パトリックさんもお茶会どうです?朝からお菓子作るの手伝って下さいよ。一緒にその後お茶会!」

 働き手確保とブリギッテとアリッサに紹介するためパトリックを巻き込むことに決めたアマーリエ。

「別にいいよ。新しいお菓子?」

「りんごのパイとたまごのタルトは初めて作りますね。後は領都でも売ってたプリン」

「いいよ。料理長も居なけりゃお客も居なくて食堂は休みだから。新しいもの覚えられるならぜひ。朝いつ来ればいい?」

鐘二つ(午前八時)過ぎでどうです?」

「いいよ」

「よっしゃ!作る人増えたから数増やせるし!」

「あははは」

「「ちゃっかりしてるなぁ、リエは」」

「ところでパトリックさんは何か御用だったんですか?」

「あ、そうだよ。メラニーさんからソースが届いてるって聞いて、ダニーロさんの代わりに受け取りに来たんだ」

「あ、なるほど。んじゃ、用意しますんで中にどうぞ」

 アマーリエが鍵を開けて、ぞろぞろと皆で中にはいっていく。

「そう言えば皆さん夕食は?」

「「「まだ」」」

「食べるとしたら自分で作るか、冒険者ギルドの食堂ですか?」

「「「そうなんだよなぁ」」」

「神殿でベルン達も待ってるしなぁ」

「ここで作って神殿で食べますか?そしたらファルさんに神殿の食堂が借りられるか確認できるし。まあ、念話でもいいんですけど」

「いや、美味しいご飯を食べたい!」

「ダリウスさん最近欲望に忠実だよね」

「いいんだ。美味しいは正義で」

 すっかりアマーリエに洗脳されたダリウスだった。

「俺も一人分作るの面倒だから一緒に作って神殿で食べてもいいかい?」

「作り手増えたら助かるよ」

 そんなわけでアマーリエを中心に夕飯づくりが始まった。ダリウスはベルンに念話で夕飯を持って帰ると連絡する。

 厨房に入る前に皆で浄化魔法をかける。そしてぞろぞろと厨房へ。

「パトリックさんはローレンでカツオのタタキを食べたんですか?」

「うん。漁師の人に教えてもらって作って食べた」

「まだカツオのさくが残ってるんで作ってもらっていいですか?」

「わかった。任せといて」

「シルヴァン、ご飯炊くの任せていい?」

「オン!」

「「「え?」」」

「うちの子生活スキルがぐんぐん伸びてるの。凄いでしょ」

「いいのかそれ?」

 ドヤ顔するアマーリエに困惑するダリウス。

「いいんじゃないかな?シルヴァン連れていけば美味しいご飯が食べられるってことでしょ?」

 物事のいい面を取り上げるようにすることを覚えたグレゴールはメリットをダリウスに言って納得させる。

「なるほど!」

「料理人として、従魔に負けるわけにはいかないような?」

 首を傾げるパトリックにカツオの柵を渡すアマーリエ。

「はい。あとこれ金串。ボールやバットはこっちの棚に。あとこれネギと生姜とレモンとね。調味料はここにあるから好きに使ってください。氷水は出しときます」

「ありがと。色々揃ってるね」

 色々確認をするパトリックだった。

「シルヴァン、これお米ね。お米といだら教えて。吸水はスキル使うから」

「オン!」

「汁物はトマトスープがあるからいい。先に火にかけとこうかな」

 アマーリエはトマトスープの鍋を奥側の火口に置いて火にかける。

「オンオン!」

「はいはい。時間経過っと。じゃ、後シルヴァン任せたよ」

「オン!」

「タタキはご飯にのっけて丼でもそのままでもいい。あともう一〜二品ほど?タンパク質の量が微妙なのと野菜が足りてない気がする。増やすか」

 焜炉はシルヴァンとパトリックが使っているので、オーブンを使うことにし、アマーリエはオーブンを余熱状態にする。

 そしてダリウスからもらったきのこを適当な大きさにカットし、じゃがいもをと人参と玉葱を千切りし、ボールに入れそこに卵を一ダース割り入れ、塩胡椒して味を調える。

 タルトの型二つにバターを塗り、ボールの中身を流し込んでオーブンに入れる。

「もう一品。緑色の野菜が足りないか。ブロッコリー、ほうれん草、ネギにチーズかけてオーブンで焼くとしよう」

 アマーリエは野菜それぞれを一口大に切ってタルト型にバターを塗って入れ込む。塩胡椒してチーズを載せてオーブンへ。

「オンオン!」

「お、ご飯炊けた?」

「オン!」

 アマーリエはシルヴァンが米を炊いた鍋を確認する。

「お、バッチリ!いい感じで炊けてるよ、シルヴァン。後は蒸らせばばっちり。作業台に置くよ」

「やるなぁ」

「シルヴァン、神殿で料理人スキルが生えてないか確認した方がいいぞ?」

「オン」

 ダリウスに撫でてもらうシルヴァンだった。

「リエちゃん、タタキの方仕上がった。ソースはこれでいい?」

「味見しますね……魚醤だとやはり塩気が強いですね。昆布出汁で割りますか」

「昆布?」

「はい。ちょっと待ってください、時間無いのでスキル使います」

 アマーリエは昆布に切込みを入れてボールに入れて、水を足し錬金スキルで時間の経過を早める。

「おっし」

「味見していい?」

「どうぞ」

「ほのかに味がする」

「旨味というものです」

「ほうほう」

「基本出汁、スープストックなんかはいろんな素材からこの旨味を抽出したものだと思ってください」

「わかった。でこれで塩辛さを抑えて旨味を増やすんだね」

「そういうことです」

「よし、任せて」

「お願いします」

 パトリックはかけダレの方の調節を始め、アマーリエはオーブンの方を確認する。

「チーズ焼きの方はいいかな」

 オーブンミトンをはめてチーズ焼きの方のタルト型を取り出す。串を手にとってキッシュもどきの方に刺して焼き加減を見る。

「もうちょいと。シルヴァン、グレゴールさんと一緒にラスク用意しててくれる?」

「オン!」

 シルヴァンはグレゴールを連れて店の方に行き、紙袋の場所とラスクの入った蓋付きのガラスの大瓶の場所に移動する。

「オン!」

「この袋に詰めればいいんだね。わかった。味見していい?」

「オン!」

 グレゴールは蓋を開けて、味見用にラスクを取り出す。

「これはお砂糖。うん、ファル向き。こっちも甘い。でもよりバターの味がするのかな?こっちもファル向き。で、これはチーズ。ああ、これベルンさんとマリエッタのお酒のつまみ用だね。こっちは胡椒?辛いけど美味しい。これもおつまみにいいかな」

 グレゴールは瓶に入っていた、アルミのスコップでそれぞれのラスクをすくい上げ、袋に詰めていく。きっちり蓋を締めて、グレゴールはシルヴァンと厨房に戻る。

「リエ、詰めてきたよ。全部大きな袋にしちゃったけど。いくら?」

「六百シリングが四袋で二千四百です」

「ほい、ちょうど」

「まいどありがとうございます〜」

「そう言えば、ベルンさんがエール飲みながらきのこのチップスがどうとか言ってたけど」

「あー。明日作って持っていきます」

「わかった。酒のつまみなの?」

「呑兵衛は好きかと思われ。別に飲まなくても美味しいんですけどね。しょっぱいおやつです」

「なるほど」

「そろそろいいかな」

 アマーリエはオーブンを再度開けて、キッシュもどきに串をさす。

「よし。出来た」

「こっちもソース出来たよ」

 アマーリエの声を聞いてパトリックが声をかける。

「じゃあ、バットにタタキを切って並べてそのソースと小口に切ったネギをかけちゃってください」

「わかった」

「ご飯は鍋ごと、アイテムバッグに入れてと。キッシュもどきと野菜のチーズ焼きもそのまま入れるっと。拡張してもらった鍋が空だからそこにトマトスープを入れてこれはダリウスさんに運んでもらおう」

 アマーリエは一番口の大きなアイテムトート・バッグに料理を詰めていく。火にかけていたトマトスープを拡張魔法をかけてもらった鍋に移し替える。

「リエちゃんタタキは?」

「冷蔵魔法かけます。んで普通の袋で持ってきます」

「その方が味がしみるから?」

「そうで〜す」

 アマーリエはタタキの入ったバットごと冷やして布巾で包み、普通の袋に入れる。

「よし、完了!後は、パトリックさんにソースを持ってくればいいと」

「よろしく」

 アマーリエは二階に上がってソースを予備のアイテムバッグに入れてくる。

「確認お願いします」

「うん」

「これがトマトケチャップ、これがウスターソース、こっちが中濃ソース、これがとんかつ用のソース。んでこれがゴママヨネーズでこっちはうちで売ってるマヨネーズと粒マスタード」

「うん、確かに。これお勘定ね」

「毎度あり〜」

「なに、その瓶?」

「ああ、ソースというか調味料ですね」

「美味しいの?」

「味を変えるという意味で使い勝手はいいです。うちの使いさしのやつをもっていきましょう。キッシュもどきに使ってみましょう」

 アマーリエは料理の入ったバッグに調味料の瓶を放り込んでいく。

「じゃあ、こっちの鍋はダリウスさんに任せました」

「任された」

「タタキはパトリックさんお願い。傾けないようにだけ気をつけてくださいね」

「うん。任せて」

「グレゴールさんはラスク忘れないでね」

「もちろん!忘れたらまたファルに泣かれるからなぁ」

「火元も大丈夫!」

「オン!」

「では神殿に向けて出発!」

「オン!」

 アマーリエは料理の入ったアイテムトート・バッグを持ち、戸締まりをして神殿に向かった。

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