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ダンジョン村のパン屋さん2〜1年目の物語  作者: 丁 謡
第9章 戦いすんで日が暮れて
39/175

「……」

「……」

 ソニアを迎えに来たヨハンソンとしばし睨み合う、空の寸胴鍋を持ったアマーリエ。

「……増やす気だね」

「色々ありまして、鍋三個追加で。こっちは状態維持魔法のみです」

「新婚なんだって言ってるよね?」

「ええ。今日は嫌ってほど身にしみましたよ?仲がよろしくてよかったですねー」

「うん」

 棒読みのアマーリエに満面の笑みで頷くヨハンソン。

「ソニアさんにかっこいいとこ見せたいですよね?チョチョイのチョイで出来ちゃうって」

「ソニアは僕のダメなところも愛してくれてるから格好良くなくていいんだ!」

 ヨハンソンの言葉にシルヴァンがこっそり砂を吐く態度をとる。

「くっ、別にタダだなんていいませんよ。ちゃんと働いていただいた分に特急料金上乗せしますし!」

「当たり前だろ!」

「ハリー、意地悪言わないで。ね?」

 ソニアが夫の腕を引いてとりなしにかかるが、アマーリエとブリギッテ、シルヴァンはさらに精神的ダメージを受けることになる。

「ソニア……でも君との時間が減ってしまうじゃないか」

「ハリー?貴方が好きそうな甘いものもらったのよ。一緒に食べましょ?」

「はぁ。わかったよ。明日は棚の扉の拡張魔法との鍋一個の状態維持!残りの鍋は次の青の日ね!」

「……よろしくお願いします(もげてしまえ!)」

「ああ。じゃあ、戸棚の扉外すから」

「お願いします。あんドーナツとクリームパン入れてくるよ」

「ありがとう、アマーリエさん」

 ソニアに手を振って地下に行くアマーリエ。

 ヨハンソンは扉を外すと鍋と一緒に大きな口のアイテムバッグに放り込んでいく。そして、アマーリエからパンの入った紙袋を手渡され、ソニアと手を繋いで二人仲良く帰っていった。

 三人と一匹はまた庭の椅子に座ってお茶を始める。

「クッ、今日は色々削られたかも」

「キュウ」

「……次の祭りで恋人見つけるんだから!」

「うふふ、頑張ってねブリギッテ」

 拳を握ったブリギッテに、ナターシャがおっとりと応援する。

「祭り?」

「クゥ?」

「年に二回あるの。リラが咲く頃に花祭りで、秋に収穫祭。マチェット、ホーゲル、バーシュクの三つの村 が持ち回りでするのよ。今年はマチェット村ね」

 首をかしげるアマーリエとシルヴァンにナターシャが丁寧に説明する。

「ほ〜。リラが咲く頃なら一ヶ月ぐらい先?」

「そんな感じね。花祭りは花の咲き始めに告知があって、花の盛りの白の日が祭りの日になるのよ」

「なるほど。うちも余裕があったら、なんか屋台出そうかな」

「あら!それはいいわね」

「え?屋台?」

「ああ、ブリギッテはアリッサと一緒に祭り楽しんでよ。私は、売り時と宣伝時を逃したくない」

「アハハ、代わりに弟貸し出そうか?売り子ぐらいはできるよ」

「その時はよろしく」

「あら、イワンだわ」

 通りの方から男性と少年の話す声が聞こえ始めるとナターシャが席を立って生け垣に向かう。

「アナ!」

「ねーちゃん!迎えに来たぞ!」

「ねーちゃ!」

 生け垣の方からイワンと少年、幼児が声をかけてくる。

「あなた、迎えに来てくれたの?ありがとう」

 生け垣越しに軽くハグし合う夫婦にアマーリエとブリギッテは顔を見合わせて肩をすくめる。

「ブルーノ、クリス。来てくれたんだ。ありがとね」

「新しいパン屋さんが気になったんだ!」

「パン屋しゃん!」

「あっそ」

「あはは、お迎えだね。ちょっと待ってて、パンつめてくるから」

 アマーリエは店に戻って紙袋にクリームパンとあんドーナツをいれて、二人のところに戻る。

「はい、どうぞ。感想よろしくね〜」

「「ありがとう」」

「「「?」」」

「イワン、試作の甘いパンを頂いたのよ。今日の夕飯の後にいただきましょう」

「そりゃ、ありがたい」

 生け垣越しに会話を始める夫婦二人。ブリギッテの弟の大きな方は背伸びをして一生懸命姉の持つ紙袋に視線をやっている。小さな方はその周りをワタワタと動き回っている。

「イワンさん、扉ありがとうございました。おかげさまで混雑することなく、お店も回りました」

「そうか、そりゃ良かった。うちもここの扉のおかげで仕事が入ったよ。大工のライトのところも大忙しになりそうだ」

「ほらね」

 ブリギッテがドヤ顔で言うとナターシャが苦笑を浮かべる。

「二人の予想は大当たりだね〜」

「?」

 アマーリエの言葉にイワンが首をかしげる。

「あなたが忙しくなるかもって噂してたのよ」

「アハハ、そうか。村のやつには新鮮だったみたいだからな、庭に出る扉なんて」

「あまり無理しないでね?」

「扉を付ける場所や大きさ、ライトの所の仕事の状況によるから今よりちょっと忙しくなる程度さ。むしろ、給金が上がるからお前に新しい服を買ってやれるぞ」

「まぁ、ありがとう。でも、先にあなたの服を誂えなきゃ、ね?」

「ああ、大丈夫だ。その分もちゃんと出る」

 仲睦まじい二人を放置して、アマーリエとブリギッテは迎えに来た弟達を庭に呼ぶ。

「「わぁ!おっきなわんこ!」」

 シルヴァンを見た二人が目をキラキラさせてブリギッテを見つめる。シルヴァンの方はそそくさとアマーリエの後ろに隠れる。

「犬じゃないわよ、魔狼なの。アマーリエさんの従魔だからね。いたずらしちゃダメよ、二人共」

「ねーちゃん、触っていい?」

「ちゃわりたいー」

「ブルーノ、クリス。先にアマーリエさんに挨拶!」

「こんにちは!パン屋の姉ちゃん!俺、ブルーノ」

「こんちゃ!ねーちゃ」

「二人ともこんにちは。よろしくね。お姉ちゃん迎えに来たの?エライねぇ。甘いパンをお姉ちゃんに渡しといたから、おうちに帰って一緒に食べてね」

 及び腰のシルヴァンを見て、ブリギッテの弟達の意識をそらすために甘いもの話題をアマーリエは持ち出す。

「「やったぁ!」」

「ご飯ちゃんと食べてからだからね」

 弟二人に紙袋を見せて、釘を刺すブリギッテ。

「「ええー」」

「もう夕方だしね。ご飯が先」

「「は〜い」」

 そんな姉弟三人を眺めてナターシャがイワンに微笑む。

「うふふ、イワン、私達も早く子供が欲しいわね」

「ああ、そうだな」

「アマーリエさん、そろそろ帰るわね」

「ナターシャさん、イワンさん本当にありがとうございました。明日もまたよろしくお願いしますね」

「こちらこそ。また明日ね」

 ナターシャはそういうとイワンのもとに行き、生け垣越しに手を振って帰ってった。

「私達も帰るか。また明日よろしくね」

「ブリギッテさん、ありがとうね。ほんと助かったよ。また明日ね!ブルーノとクリスは甘いパンの感想今度教えてね」

「「うん!」」

「さっ、帰るよ」

「ねーチャン、その袋俺が持つ!」

「だめ。落として泣くのはあんただけじゃないのよ」

「え〜」

「ねーちゃ、またねー」

「はい、気をつけてね〜」

 ブリギッテ達もワイワイ言いながら家に帰っていく。

「フゥ〜。今日は一日お疲れ様。シルヴァン!」

「オン!」

「さて、夕飯の支度するか」

「オーン」

 空になった器類をトレーに乗せて、アマーリエとシルヴァンは店の中に戻る。

「シルヴァン悪いんだけど、お昼に食べたハヤシライスのルーが残ってるから夕飯はそれのアレンジになるよ」

「オンオン」

「んじゃ、作りますか」

 アマーリエは市で買ったじゃがいもを取り出しさっと浄化魔法で洗って、薄く切っていく。そして、サンドイッチ作りで出たチーズの端切れもスライスしていく。

 シルヴァンはそれを尻尾を振りながら観ている。

「うーん、陶器の器がほしいなぁ。商業ギルドに仲介してもらったら頼めるかなぁ?」

「クゥ?」

「グラタン皿がほしいなって。あったら、ドリアもできるよ〜」

「オンオン!」

「いくらするんだろうねぇ?」

「クーン?」

 アマーリエはパウンドケーキの型を取り出して、内側にバターを塗り、じゃがいも、チーズ、ハヤシライスのルーを順に重ねて入れていく。

「よし、上にさらにチーズを載せて、オーブンで焼けばこれは完成」

「オン!」

「これじゃ、シルヴァンはお肉足りないよねぇ。よし、実験済んでるし、ビッグマジッククウェィルの胸肉と春キャベツ、人参にブロッコリーを蒸して温サラダにするか。魔力もこれで補給できるでしょ?」

「オン!」

 アマーリエは蒸し器に水を入れてコンロに掛け、野菜を食べやすい大きさに、かなり大きな胸肉を熱が通りやすいように切っていく。

「えーっと、前に作ってもらったガラスのお皿、お皿」

 取り出した皿に、野菜を敷き、その上に肉を載せ、白ワインをふりかけ塩コショウする。そして、湯が湧いた蒸し器の中に皿を入れる。

「あとは、バゲットでガーリックトーストでもするか。食べる?」

「オン!」

「地下に降りるから、火だけ見ててくれる?」

「オンオン」

 アマーリエはシルヴァンに火元を頼み、地下にパンを取りに降りる。

「こんばんは~」

 店の入口からの声にシルヴァンが反応する。しばし逡巡した後、シルヴァンは画像念話でアマーリエにメラニーが来たことを知らせる。

『すぐに上がるから火を見てて』

「オン!」

 パンを掴んだアマーリエが地下から駆け上がってきて、パンを作業台に置くと店の入口を開けた。

「こんばんは!メラニーさん」

「こんばんは、アマーリエさん。忙しい時間にごめんね」

「いえいえ。どうしたんですか?」

「昨日注文したソースが届いたんで、届けに来たんですよ。あと手紙も」

「わぁ、わざわざありがとうございます」

「いいの。今日もまた留守番させられたんだもの!」

「え?」

「聞いてくれる!?」

「長くなりそうなら夕飯食べてきますか?」

「いいの!?」

「一人増えたぐらい大丈夫です。シルヴァン!メラニーさんと上に行っててくれる?」

 シルヴァンが厨房からパタパタと尻尾を振りながら出てきて、メラニーに愛想をふりまく。

「シルヴァンちゃん!ちょっと癒やしてくくれるかな!?」

「オンオン!」

 シルヴァンはメラニーと一緒に居間に行き、アマーリエは急いで夕飯の支度を済ませた。

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